2023-01-08 マリウス葉のSexyZone卒業について想うこと Sexy Zone コラム・エッセイ ここ数年のSexyZoneは、ハイクオリティな楽曲が増えている。それがSexyZoneやジャニーズに詳しくない音楽ファンにも広がり、気づけば音楽評論家や音楽ライターにも注目されるようになった。 キャリアを重ねメンバーのスキルが上がったことで、難しい楽曲や表現が難しい楽曲にも挑戦できるようになったのだろう。それによって音楽性の幅も広がり、提供される楽曲も自由度が増した。それが音楽マニアにも気づいてもらえて、グループの評価は急上昇したのだと思う。 だが注目をされ始めた時期のSexy Zoneは、活動が順調だったわけではない。最初に音楽ファンに「Sexy Zoneの音楽、実は凄いのでは?」と気づかれたアルバム『POP×STEP !?』の頃は、松島聡は突発性パニック障害の治療に専念していた。この時期の松島は活動に参加してきないのだ。 松島はその後復帰したものの、SNSで大きなバズを巻き起こし著名音楽評論家まで唸らせた『RIGHT NEXT TO YOU』がリリースされた時期もフルメンバーではなかった。今度はマリウス葉が体調不良のため不参加となっているのだ。 つまりここ数年のSexyZoneは、5人全員で活動できた時間の方が少ないのである。そのためメンバー全員が揃ったSexy Zoneを、最近彼らの魅力に気づいた人はほとんど観れていない。ここ数年で5人全員揃った作品はシングル『NOT FOUND』だけだし、コロナ禍の影響で5人全員が揃った有観客ライブは行えなかった。 自分もそうだ。彼らの活動を追い始めたのは2018年からで、生でライブを観れたのは2019年以降に行われた公演のみ。5人全員が揃ったライブを、自分は生で体感できていない。 しかしマリウスのパフォーマンスする姿を、1回だけ生で観ることはできた。2019年の『PAGES』のレコ発ツアーである。 身長が高いマリウスは、ステージで存在感が強かった。それでいて基本的な立ち振る舞いは美しく上品だ。しかし楽曲や演出によっては力強いダンスになるギャップもある。ギャップといえばアイドルとしても表現者としてもオーラを纏っているのに、MCになると子犬のように愛くるしくなる部分も良い。そんなマリウスはアイドルとしても、人としても、魅力的だと思った。 それは生まれ持っての才能だけではなく、相当な努力によって手に入れた魅力だろう。美しい所作を大衆の前で行うことは簡単ではないし、人を惹きつけるパフォーマンスは一朝一夕で身につけられるものではないのだから。 マリウスは2020年に体調不良で活動休止した。内心は本人しかわからないことだが、ファンの目線からはアイドル活動が嫌になったとは思えない。彼は物凄く努力をするタイプだと思う。ほれに好きなことや誇りに思うことでも、頑張りすぎて身も心も疲れてしまうことは誰しもにある。むしろ好きだからこそ無我夢中に頑張りすぎてしまったのかもしれない。 2023年に日向坂46を卒業する宮田愛萌は、卒業発表したブログで「アイドルというのは案外ハードなお仕事です。もしかするとアスリートの方々並みに体力を必要とするかもしれません。」と語っている。 よくよく考えると長時間ステージに立つだけでも相当な体力が必要だ。ツアーになるとそれが短期間の間に、何回も何十回も続く。それに向けた準備やリハーサルでは、さらに身体も頭も使っているはずだ。それに加えてメディアなどの仕事もある。休みもあまり取れないだろう。 我々ファンはアイドルから提供されるものを素直に喜んで受け取り楽しんでいるが、彼らの努力に感謝し敬意を払うべきだ。そしてファンが受け取るコンテンツが少なくなるとしても、アイドルの労働環境の改善をファン側からも訴える必要があるはずだ。 2022年。マリウスはSexyZoneからの卒業を発表した。 彼の活動休止後は体調や近況などについて、週刊誌でも様々な報道がされた。その中には決して好意的ではない内容もあった。真偽不明の噂レベルのものもあった。ファンの中でも彼の活動休止について不信感を持っている人や、グループの今後について不安を感じている人もいたと思う。初の東京ドーム単独公演で、5人のSexyZoneが観れると信じていた人もいただろう。 しかしマリウスを含めた今のメンバー間で軋轢はなかったように見える。自分が他のジャニーズグループに詳しくないので間違っているかもしれないし、他のグループにトラブルがあったと言いたいわけではないが、ジャニーズグループで「脱退」ではなく「卒業」という言葉を使うことは珍しい気がする。前向きに送り出す言葉を選んでいることからも、友好的な関係を保ったまま事務所を離れることを示しているのだろう。 ファンの間でもマリウスの活動休止や4人で活動を続けるSexyZoneについて、様々な感情が渦巻いていた。メンバーの間でも様々な葛藤があったと思う。大人の事情もあったのかもしれない。しかし久々に5人が並んだ時の空気感からは、マイナスな感情は伝わってこなかった。その様子を見ていたら、少なくとも自分のモヤモヤは晴れた。 4人でこれほど凄い楽曲が揃ったアルバムを作れるのならば、5人になった時はどれほど凄い作品を作るのだろう。 5人が再び揃った時が、グループにとって本当のハイライトかもしれない。 Sexy Zone『Forever Gold』の何が凄いのかを分析してみた - オトニッチ 2022年。Sexy Zoneが『ザ・ハイライト』というアルバムをリリースした際、自分が書いた記事に上記の言葉を書いていた。 それから半年。再び5人が揃い、久々に5人でステージに立った。2022年の大晦日に行われた『ジャニーズカウントダウン2022→2023 』にSexyZoneが5人で出演したからだ。しかしこれが5人で最後のパフォーマンスになってしまった。 5人のSexyZoneが最後に選んだ曲は『RUN』だった。 そのパフォーマンスは、まさしく「ハイライト」と言えるような素晴らしさだった。自分はテレビ中継で観たが、それでも感動の余韻が長く残るほどだ。 5人の歌唱はいつもよりも荒々しい。しかし感情がいつもより強くこもっている。ダンスも通常よりもダイナミックで力強い。「なんとしても伝わる歌をうたおう」「最後に悔いを残す訳にはいかない」という気概があるように見えた。 個人的なイメージだが、SexyZoneの過剰にエモーショナルな表現やパフォーマンスはせず、クールに美しく魅せることが多いイメージがある。だから感情を抑えず爆発させるような『RUN』のパフォーマンスは、意外に感じつつも心をグッと掴まれた。グループの中でも特に未来への希望を歌う楽曲を選曲したことも良い。 〈止まらないで 止まらないでよ 僕らはまだ始まったばかりさ〉というサビの歌詞をあえて5人の最後に歌う理由は、新しい道を進むマリウスと、新しいグループの形を作っていく4人のSexyZoneが、お互いに鼓舞し合っているように見える。 5人最後の『RUN』は、まさにグループのハイライトだった。きっとファンの間で語り継がれる伝説となるだろう。 しかし今回がSexyZoneにとって集大成で、これを超えることが不可能かと言うと、そんなことはないはずだ。 ハイライトは「最も際立った部分」「一番の見せ場」「名場面」などの意味として使われる。 映画や演劇、スポーツなどで使われることが多いが、基本的に「ハイライト」は1つの作品や試合などにつき1つしかない。そうでなければ「一番の見せ場」とは言えないのだから。 だがSexyZoneに関しては「ハイライト」がいくつもあると思う。たしかに最後の『RUN』はハイライトではあったが、それは「マリウスが活動休止からの復帰を経て、最後のステージに立つまでのハイライト」だ。 グループ活動は2時間の映画ではないし、1回の試合でもない。10年以上に及ぶ、5人それぞれの人生であり、5人が一致団結した歴史である。ひとつのハイライトでまとめられるほど短くもないし、簡単にはまとめられないほどに濃厚な期間だ。 一般人でも「人生のハイライトは?」と聞かれて、簡単に答えることができる人はいないだろう。「子どもの頃のハイライト」もあるだろうし「二十代のハイライト」もあるだろう。三十代や四十代のハイライトもある。 細かく言うと「今年のハイライト」「今月のハイライト」「今日のハイライト」「仕事中のハイライト」「子育てのハイライト」「趣味のハイライト」と細かくいくつも分岐していき、その先にいくつものハイライトがある。人生とはハイライトの積み重ねにより深みが増していくものだ。 SexyZoneの活動も同じくだと思う。10年も第一線で活動しているのだから、それはメンバーの人生の一部だ。デビュー1年目のハイライトもあるし、5年目のハイライトもあるだろう。「このツアーのハイライト」「このツアーのこのライブのハイライト」もあるはずだ。 「松島が休止してからのハイライト」「松島が復帰してからのハイライト」「マリウスが休止してからのハイライト」もきっとある。そして今回は「再び5人になり前向きな別れをするまでのハイライト」だった。 それはグループにとって、特に重要なハイライトだったと思う。しかしこれで終わりというわけではない。「これからもSexyZoneは続いていく」「マリウスにも輝かしい未来がある」という前提がある。今回のハイライトはかれらの「次のハイライト」を、より素晴らしいものにするための足がかりでもあった。 グループはこれからも続く。マリウスも新しい道へ進む。過去のSexyZoneにしかない魅力はあるとは思うが、これからのSexyZoneにしかない魅力もあるはずだ。これからも「その時にしかない最高のハイライト」がたくさんまっているだろう。SexyZoneにとっても、マリウスにとっても。 4人のSexyZoneも、マリウスの新しい道も、まだ始まったばかりさ。 SZ10TH (初回限定盤A)(2CD+Blu-ray)(BOX仕様)(特典:なし) アーティスト:Sexy Zone Top J Records Amazon