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【ライブレポ・セットリスト】SHISHAMO NO BUDOKAN!!! 〜10YEARS THANK YOU〜 at 日本武道館 2023年1月4日(水)

Theピーズの楽曲がBGMとして流れる開演前。日本武道館を埋め尽くす観客の多くが、バンドロゴが書かれたTシャツを身にまとい、物販コーナーて買った1枚1000円のタオルを首にかけている。

 

それは普段のSHISHAMOのライブと同じ景色だ。違うことといえばアリーナ中心に花道が伸びていて、その先のアリーナ後方にサブステージがあることと、10周年イヤーに入って1発目のワンマンライブということぐらいだろうか。

 

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開演時間ちょうどに客席の電気が消えた。

 

コロナ禍でのイベントガイドラインが変更されたので、一定のルールを守れば観客が声を出すことは可能になった。しかしSHISHAMOのファンは真面目で慎重派だからか、客席から歓声は聞こえない。その代わり盛大な拍手でバンドを迎え入れようとしている。これはこれでSHISHAMOファンの温かさや真面目さが伝わってきて良い雰囲気だ。

 

しかしメンバーは出てこない。その代わりステージ中央のスクリーンにドラマ仕立ての映像が流れた。内容は「片思いしている男性をSHISHAMOの武道館ライブに誘おうとする女性の物語」だ。主演は上原実矩。『君と夏フェス』『君とゲレンデ』『さよならの季節』など、SHISHAMOのMVには複数回出演しる役者だ。

 

そういえば2016年に行われた1回目の武道館公演の時も、同じように上原実矩が主演で「片思いしている男性をSHISHAMOの武道館ライブに誘おうとする女性の物語」のドラマ映像が流れていた。

 

2016年の映像は学生の恋愛ドラマだったが、今回は社会人の恋愛ドラマになっている。つまりドラマの主人公も現実の時間軸と同じように、年月を重ねているということだ。そんなドラマ映像が、間接的にSHISHAMOの歴史を伝えている。

 

そんなドラマは現実とリンクする。ライブ開演ギリギリの時間に想いを寄せる男性が武道館の入口に到着し、そのまま女性と一緒に会場に入っていったのだ。

 

その映像を観ていた観客は、少しだけ騒めく。この映像の場面は、今まさに武道館の外の様子と同じだからだ。どうやら映像は武道館の外から生中継さらているらしい。会場の廊下を歩きながら2人が「座席どこだろう?」と会話する映像が流れると、さらに客席が騒めく。

 

そして女性が「ここじゃない?」と言って扉を開けた瞬間、驚きによる悲鳴に近い歓声が客席に響いた。映像の2人が扉を開けた瞬間、会場の扉が実際に開き、そこに上原実矩と男性役の岡田翔大郎がいたからだ。

 

フィクションとノンフィクションが重なった。それを合図にいつもと同じSEが流れ、メンバーが登場しライブが始まる。ドラマの2人はライブに間に合ったという粋な演出なのだろう。

 

そんな10周年の歴史を感じる演出を取り入れたスタートだったが、メンバー3人が向かい合ってから始めた演奏はいつも通りだ。最高のグルーヴが生まれているし、ロックバンドとしてクールだ。いや、この「いつも通りの演奏」をどんな場所でもやれるのは、10年以上の経験があるからこそかもしれない。

 

そんな10周年ライブの1曲目は『恋する』。1stアルバムの1曲目だ。この曲からSHISHAMOが本格始動したとも言える。10年間の歴史を大切にしていて、ここから始まったということを、セットリストの1曲目にすることで示しているのかもしれない。

 

ステージ両サイドのスクリーンにはリアルタイムのメンバーの姿が映り、中心のスクリーンには10周年仕様のバンドロゴが映っている。さらには大量の紙吹雪がステージから客席へと舞い散る。演出は武道館の規模を活かしていて、派手で壮大だ。

 

そのままライブ定番曲『ねえ、』を続けてから最初のMCへ。宮崎朝子が「あけましておめでとうございます。正月早々、こんなたくさんの人がライブに来てくださってありがとうございます」と少し照れくさそうに客席を眺めながら挨拶をした。その様子は来てくれた観客への感謝と、10年間で積み上げてきた活動を感慨深く浸っているように見える。

 

簡単な挨拶を終え。『中毒』から演奏を再開した。渋谷のセンター街などの街並みを映す映像演出も印象的だ。この楽曲は最新アルバムの1曲目で、初期とは違う貫禄や重厚さを感じる音色と演奏である。10年の積み重ねがあったからこそ生まれた楽曲だろう。

 

『君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!』もそうだ。朝子がミニキーボードを演奏してから始まった様子からしても。活動初期と比べると演奏のアイデアがさらに広がったことを感じる。この楽曲では怪獣が渋谷の街を練り歩くアニメ映像が使われていた。シュールだがポップで楽しい映像が、ライブを明るく彩る。

 

そこから続く曲は『きっとあの漫画のせい』。アルバム曲ながら人気があるライブ定番曲だ。今度はシンプルな演出で、演奏の凄みで魅せる。この曲がライブ定番曲として育ったことも、10年の積み重ねがあるからだ。

 

宮崎朝子「10年の活動で8枚アルバム出しました。すごくない?ここにきてるあなたが聴いてる他のバンドはそんなにアルバム出してないでしょ?」

客「wwwwwww」

 

アルバム枚数を自画自賛する朝子。たしかにSHISHAMOは量産型バンドなので、楽曲のリリースペースは早い。

 

吉川美冴貴「高校を卒業したら終わりだと思ってた。CDデビューからは、10年だけと、結成から考えたら12年以上は経ってるでしょ。ここまで続けてこれたのはスタッフの皆さんや、ファンの皆さん、そしてメンバーのおかげだと思います。本当に感謝の気持ちでいっぱいです」

宮崎朝子「まだエモい話をするには早いから(笑)」

松岡彩「まだ5曲しかやってない(笑)」

 

終盤に話すようなMCをして、早くもエモい気持ちになる吉川。それぐらいに今回のライブに、特別な想いを持って臨んでいるのだろう。

 

ツッコミをしていた朝子も「高校を卒業したら辞めるつもりでいたし、私たちが続けたいと思っていただけでは、今日のこのステージには立てなかったと思います」とエモい話をする。それを聴いている観客もエモい気持ちになる。序盤からエモエモのエモなライブだ。

 

熱く語った後、照れながら「終電がある人がいるから喋りすぎないようにしないと」言う朝子。SHISHAMOはMCが長くなりがちだが、今回はメンバーがエモエモのエモ状態なので、特に長い。

 

演奏は『狙うは君のど真ん中』から再開。去年リリースされた新曲だ。それでも初期衝動かと思うような勢いと熱さを演奏から感じる。MCだけでなく音楽もエモエモのエモだ。

 

『量産型彼氏』はカラフルな水玉模様のエフェクトがメンバーに重なる映像が可愛らしい。しかし演奏はロックとしか言いようがない重厚さがある。彼女たちはロックを軸にポップに食い込む音楽を奏でるのだ。それがSHISHAMOの魅力のひとつであり、その魅力はライブだとより際立つ。

 

ここまでアップテンポの曲が中心だったからか、ここでミドルテンポの『メトロ』が演奏された。そういえば前回の武道館公演は『メトロ』がライブ構成において重要な楽曲として扱われていた。SHISHAMOの武道館公演には欠かせない曲になったということだろうか。

 

ここでメンバーがステージから去り、SHISHAMOの歩んできた10年の歴史を振り返る映像が流れた。年代順にリリースされた楽曲をBGMにした、当時のMVやライブ映像やアーティスト写真が組み合わさった内容だ。当時を知る人は懐かしい気持ちになるだろうし、最近ファンになった人は改めてSHISHAMOの歴史に触れることができる。

 

映像が終わりステージの明かりが灯されたが、メインステージは暗いままだ。その代わりアリーナ後方に設置されたサブステージが光で照らされる。そこで向かい合う形で楽器を持っているメンバー。そのまま朝子が『僕に彼女ができたんだ』のリフを弾いて演奏が始まる。ここからはサブステージで演奏をするようだ。

 

この楽曲は1stアルバム収録曲でありながら、スペシャでヘビーローテーションされたり、テレビ東京の『JAPAN COUNTDOWN』のエンディングテーマに使用されたりと、音楽ファンが触れる機会が多い楽曲だった。これをきっかけにバンドが注目されたとも言える。そういった意味で重要な楽曲なので、10周年ライブで演奏しないわけにはいかない。

 

しかし、最初のイントロで、ミスった。

 

映像が終わった瞬間に爆音のギターリフが鳴らされ、カッコよく演奏が始まったのに、ミスってしまい演奏を止めてしまった。苦笑いするSHISHAMOと失笑する観客。

 

小声で「もう一度、電気を消して暗くしてください」と言う朝子。そして暗くなると何事もなかったかのように演奏をやり直す。観客も何事もなかったかのように盛り上がる。後半のサビで武道館を埋め尽くす観客が、演奏に参加するかのように大きな手拍子を鳴らした時の空気感は最高だった。

 

吉川美冴貴「おしりを向けちゃっている席があって申し訳ないです。でもそこはVIP席ですよ!ヒップだけにね!」

観客「・・・・・・・・」

宮崎朝子「おもんな・・・・・・」

 

吉川が、盛大に、すべった。

 

しかしSHISHAMOファンは優しい。彼女を傷つけないようにと、盛大な拍手を贈る。

 

SHISHAMOがサブステージを設置することは、大きな会場のライブでは定番である。しかしサブステージではいつもアコースティックセットで演奏をしていた。バンドセットでゴリゴリのロックサウンドを鳴らしたのは初めてだ。

 

朝子もファンの驚きを察したのか「どうせアコースティックでやると思ったでしょ?今回はバンドだからね」と笑う。3人が向かい合う形で演奏していたが、これはスタジオで練習をする時と同じセッティングらしい。それもあってか武道館の大きな会場でも、このステージでの演奏は生々しく感じる。

 

宮崎朝子「ガイドラインが変わって声を少しだけなら出しても良くなったんですけど、SHISHAMOのファンは声を出さないですね。じゃあSHISHAMOのライブでは声を出さない方向で。でもかわいいとかは言っても良いですよ」

観客の女子たち「かわいいーーー!!!」

宮崎朝子「何年ぶりにかわいいって言われたんだろう(照)。言われなくてもみんなが私たちをかわいいと思っているだろうと察してはいました(笑)。でも実際に言われないとわからないからね(笑)」

吉川美冴貴「ライブぐらいなのよ!私がかわいいって言ってもらえるのは!これで私は明日から絶望的な世の中だとしても生きていける!」

宮崎朝子「これで承認欲求が満たされた」

 

ファンの気遣いによって、機嫌が最高潮に良くなるSHISHAMO。その影響もあってか、演奏の調子もどんどん良くなっているようだ。続く『バンドマン』では、ミスもなくキレッキレな演奏で圧倒させる。

 

この楽曲も1stアルバムに収録されている楽曲だ。当時の初々しさのある楽曲に今のバンドの貫禄ある演奏が組み合わさると、改めてバンドの演奏力や表現力の進化を感じる。

 

それにしてもファンに黄色い声で「かわいい!」と言わせた後に〈黄色い声出してるバカな女ども〉という歌詞のある楽曲を演奏するのは、なかなかにひねくれていてロックバンドらしくて良い。

 

さらにひねくれたロクナンバーが続く。〈目の前を歩くカップル殺したかった〉という背筋が震える歌詞がある『生きるガール』を演奏し、サウンドだけでなく精神もロックなSHISHAMOを見せつける。サブステージで演奏された楽曲は特に3人のゴリゴリなサウンドが際立つ曲が多い。観客に近い場所で、バンドの本質と言える音を届けたかったのだろうか。

 

再びメインステージに戻ると『君の大事にしてるもの』と『二酸化炭素』を渋めのサウンドと落ち着いた演奏で届ける。そして『忘れてやるもんか』ではルーパーを使ってその場でギターリフを録音し再生し、音に厚みを重ねて演奏していた。

 

この3曲は2020年にリリースされた『SHISHAMO 6』に収録されている楽曲だ。コロナ禍の影響で、このアルバムのリリースツアーは全公演中止になった。10周年ライブで同アルバムの中でも重要でインパクトのある楽曲を3曲続けたことは、中止になったツアーへの未練を果たす意味があったのではと感じる。

 

松岡彩「みなさんお正月は楽しみましたか?SHISHAMOは当然ながら元旦は別々に過ごしましたけど」

吉川美冴貴「仲悪く聞こえるから当然ながらとか言わないで!そりゃあ一緒にはすごさないけれど!」

宮崎朝子「年末年始は食べすぎるよね30日に食べたものがまだ胃袋にいる」

松岡彩「ダイエット中って言ってなかったっけ?」

宮崎朝子「親戚が集まった時にダイエット中だから食べないとか言ったらしらけるじゃん」

吉川美冴貴「場を盛り上がるために食べたんだね!」

松岡彩「私は意識がある状態になってから初めて年越しの時に寝て過ごしちゃいました」

吉川美冴貴「物心ついてからって言いたいの!?産まれた時から意識はあるから!」

 

演奏はキレッキレで序盤のMCはエモエモだったのに、中盤のMCはいつも通りのSHISHAMOだ。ゆるくてくだらないことを言い合っている。

 

「ついつい喋りすぎてしまう。終電がありますから早く進めないと」と言って、無理矢理会話を締める朝子。そして「季節外れですが、夏の曲を」と言って『ハッピーエンド』を続ける。

 

この楽曲はスローテンポの切ないロックバラードだ。向日葵や入道雲、海の波の映像が流れることで楽曲の世界観がライブて最大限に引き出されていた。

 

そんな楽曲による切ない余韻が残る中、優しいメロディの『天使みたい』を繊細な歌声とブルースを感じる演奏で披露し、会場を温かな空気で包み込む。まるで天使の羽のような白い紙吹雪がゆっくりとステージに舞う演出が美しい。そんな景色に見惚れてしまう。

 

そして真っ赤な照明の中で『夏の恋人』を、後半のセッションが胸を震わせる『夢で逢う』を続ける。どちらもバンド屈指の失恋ソングだ。そんな楽曲を続けるのだから、会場はしんみりとした空気で包まれてしまう。

 

SHISHAMOは恋愛の歌が多い。それをロックサウンドに乗せて歌うバンドだと思う。特に失恋ソングでは繊細な歌詞表現が印象的だ。それがバンドの強みであり、多くの人の心を掴んだ理由であるのだろう。

 

ここで吉川によるMCが始まった。SHISHAMOのワンマンライブでは定番の『吉川美冴貴の本当にあった〇〇な話』のコーナーだ。いつもこの時間はくだらない笑い話をすることが多い。

 

しかし今回は違った。吉川はバンドに対する愛や、続けることへの苦悩を語った。

 

自分の人生は挫折ばかりでした。子供の頃はサッカー選手になりたかったけど、自分よりも上手い人をたくさん見て挫折しました。イラストを書くことも好きだったから、デザイン科のある高校に行きました。でも自分よりも上手い人を目の当たりにして、また挫折しました。

 

音楽も好きだったから軽音楽部に入って、今日までSHISHAMOを続けてきてきたけど、今まで挫折してきたことと同じ様に、自分は音楽にも特別な才能を持っていないと気づきました。自分はやっぱり普通の凡人なんです。

 

色々な劣等感や挫折を抱えてきた10年でもありました。辛いことも悔しいこともありました。ステージに上がることが怖いと思う日はあるし、今でもそれはあります。

 

でもSHISHAMOが好きだから続けてきたし、無くなるのは嫌だったから続いたことは嬉しかったです。でも、バンドを続けることが辛いと思ってしまった時、もしかしたら自分はSHISHAMOを嫌いになってしまったのではと思ったりもしました。

 

でも10年続けてきて、好きと楽しいがイコールとは限らないと気づきました。それは悪い意味ではないです。どれだけステージに立つのが怖いと思う日があっても、それはSHISHAMOが嫌いと言う訳では無いんです。10年続けてこれたのは、SHISHAMOが好きだからこそなんです。それに気づいたんです。

 

だから、これからも、もがきながら続けていきます。

 

いつもとは違う真っ直ぐな眼差しで語る吉川。いつもとは違い優しく彼女の話を見守る朝子と松岡。そして、いつもよりも真剣に彼女の話を聞く観客。吉川が話し終えると、自然と盛大な拍手が鳴り響いた。

 

そして朝子がすぐに「才能はあるけどね。吉川の努力の仕方は尋常ではない。私には真似できないぐらい努力するじゃん。普通じゃないよ。努力をするのは才能ですよ。あれは凡人の努力じゃない」と、吉川の方を向いて語りかける。

 

それは彼女をフォローするつもりだとか、気を使っていたわけではないと思う。本心からそう思ったのだろう。「凡人だなんて勘違いするなよ。お前は才能あるぞ」と言おうとしているように見えた。この関係性だから、SHISHAMOは10年続いたのだろう。

 

「ここから終盤戦です!行けますか!?」という煽りから、代表曲のひとつ『君と夏フェス』から演奏が再開。吉川によるエモエモなエモなMCも影響してか、バンドの演奏の熱気も観客の盛り上がりも、序盤や中盤よりもさらに増している。さらにミュージックステーション出演時にも演奏した人気曲『君とゲレンデ』を続け、さらに盛り上げていく。

 

その勢いは止まらない。松岡がハンドマイクでサブステージまで走っていき観客を煽ってから、SHISHAMOのライブには欠かせない定番曲『タオル』を続ける。武道館の客席全体でタオルが回される景色は圧巻だ。

 

こちらもSHISHAMOのライブでは欠かせない楽曲『明日も』では客席の電気も付いた。ステージも客席も明るいので、メンバーの表情までもはっきりと見える。きっとステージからも客席のファンの表情もしっかり見えたはずだ。客席の姿を眺めながら歌い演奏するメンバーの姿が印象的だ。

 

多幸感で満たされる武道館。このままハッピーな空気で終わるのかと思いきや、そうはいかない。「SHISHAMOがロックバンド」であることを見せつけるかのように、最後に〈どいつもこいつも腹立つな〉のという歌詞から始まる『明日はない』でライブを締めたのだ。

 

再び客席の電気が落とされ、クールな照明に包まれながら激しく演奏するバンド。歌声も感情的になっていく。特に歌声はいつもよりも荒ぶっているようだ。そんな音に鳥肌が立つ。そして演奏を終えると涼しい顔をして颯爽と去っていく。世間的にはポップな一面が注目されがちだが、やはりSHISHAMOはロックバンドだ。

 

ロックバンドとして最高の盛り上がりを作りだして終えた本編だったが、アンコールでは切ない冬のバラード『ブーツを鳴らして』から始まった。1月のライブで聴くシチュエーションが、楽曲の世界観とマッチしていて最高だ。

 

白を基調とした照明も良い。雪の結晶をイメージした形の光が、ステージの床を照らしている。大きな会場で客席から床も見えるからこその演出だ。

 

演奏を終えて「一瞬でしたね」と朝子が感慨深そうに話しながら、メンバーが1人ずつライブの感想を告げていった。

 

松岡は「楽しみにしていたし、実際に楽しめた。ここから10周年イヤーが始まるとワクワクする」とファンの期待を煽る。吉川は「私は皆さんに生かされていると本当に思いました。少しでも恩返しができていたらと思いながら演奏してました」とファンへ感謝を伝えていた。

 

朝子は「スタッフの皆さんにも感謝してます。チューしちゃう♡」と言って投げキッスを飛ばしまくっていた。とはいえスタッフ以外の人も大切なようで「身近な人にも、メンバーの2人にも、ここにいる皆さんにも、U-NEXTの中継を見ている人にも感謝しています」と付け加えた。

 

武道館に何の思い入れもないんですよ。こんなこと言ったら怒られるかな(笑)それは武道館だとしても、ライブハウスとやる時と同じ気持ちということを言いたんです。だから過去に2回やった武道館公演に対しては、普段のライブハウスと同じようにステージに立って、いつも通りに良いライブをやろうと思ってステージに立ちました。

 

でも今日は少し違って、バンドが10年続いて、でもコロナ禍もあって、そんな時に武道館という大きな会場で演奏するとなったので、少し違う気持ちでステージに立ちました。

 

改めてバンドの10周年と今回のライブについて語る朝子。彼女の言葉からしても、今回のライブはバンドの歴史において重要なものになるだろうし、ターニングポイントのひとつになるかもしれない。

 

宮崎朝子「3月には大阪城ホールでも記念ライブをやります」

観客A「いくよーー!」

観客B「いくーーー!」

その他大勢の観客「・・・・・・」

宮崎朝子「何も言わない人は来ないのかな......?」

吉川美冴貴「来れる時に来ればいいから!大阪は遠いから!」

 

しかし少し油断すると、いつも通りにゆるゆるなトークになるSHISHAMO。これも10年間で培ったバンドの魅力の一つです。

 

宮崎朝子「じゃ、終わりますか」

観客C「えー!」

観客D「いやだー!」

宮崎朝子「そう言う人は家が近い人だけだから。終電がある人もいるからね。そういう人は早く終わってくれって思ってるから!」

 

最後まで終電を気にする宮崎朝子。この時点でライブ開始から3時間ほど経っているので、終電を気にするのも無理はない。

 

最後の楽曲は『またね』。ここに集まったファンと、また再開することを誓うかの様に感情をこめながら、丁寧に演奏し歌っている。

 

今回のライブは間違いなく集大成だった。しかしこれでバンドが終わるわけではないし、これがバンドのピークでもない。メンバーはMCでも「10周年イヤーは始まったばかり」と言っていたし「これからも楽しいことがたくさんある」と言っていた。

 

昔のインタビューを読むと、宮崎朝子はバンドをずっと続ける気はなさそうな発言をすることもあった。メンバーが女性中心のバンドは、過去の例を見る限りは活動期間が短いことが多い。それもあって長くは続かないバンドではと、不安に思うこともあった。

 

しかし、いつしかそのような発言をすることはなくなった。その代わりに「バンドをずっと続けていく」という意思を感じる発言が増えた。どこかのタイミングで気持ちが変わったのだろう。だからSHISHAMOの未来に不安はない。これからもバンドは続いていき、20周年、30周年を迎える信じたい。

 

10周年記念ライブの最後の曲を〈また会いにきてね それまでまたね〉という歌詞で終わる『またね』で締めたことも、言葉ではなく音楽でその意思をファンに伝えたのではないだろうか。

 

だから近いうちにまたライブを観れるだろうし、これからも新曲をたくさん作ってくれるはずだ。それを自分はずっと追いかけ続けるのだろう。

 

そういえば自分がSHISHAMOの音楽に出会ってからも10年だ。いつの間にか自分にとってのSHISHAMOは、人生の中のイレギュラーではなく、レギュラーと言える存在になっていた。

 

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■SHISHAMO NO BUDOKAN!!! 〜10YEARS THANK YOU〜  at 日本武道館 2023年1月4日(水) セットリスト

01. 恋する
02. ねぇ、
03. 中毒
04. 君の目も鼻も口も顎も眉も寝ても覚めても超素敵!!!
05. きっとあの漫画のせい
06. 狙うは君のど真ん中
07. 量産型彼氏
08. メトロ
09. 僕に彼女ができたんだ
10. バンドマン
11. 生きるガール
12. 君の大事にしてるもの
13. 二酸化炭素
14. 忘れてやるもんか
15. ハッピーエンド
16. 天使みたい
17. 夏の恋人
18. 夢で逢う
19. 君と夏フェス
20. 君とゲレンデ
21. タオル
22. 明日も
23. 明日はない

 

En01. ブーツを鳴らして
En02. またね

 

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