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【ライブレポ・セットリスト】小沢健二「LIFE再現ライブ」at 日本武道館 2024年8月31日(土)

武道館の正面に設置された看板が、とても粋だと思った。

 

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通常、武道館ライブの看板には演者と公演タイトルが書かれるものである。だがこの日の看板には「↓LIFEから30年後の未来の武道館にいます!」と書かれている。

 

この日行われたのは、小沢健二の名盤『LIFE』の再現ライブ。この看板の文字ではライブの内容はわからないし、誰のライブなのかもわからない。たがライブに参加するファンならば、看板を見れば一瞬で意味や意図を理解できる。

 

それが粋なのだ。ファンへの信頼がある故の文面になっていることが、粋でグッとくるのだ

 

リクエストを元に組まれたセットリストの前半

 

ステージはアリーナの中央に設置され、ステージを客席が360度囲むような配置になっていた。武道館のキャパを限界まで使う配置だ。会場には13,000人と、通常の武道館ライブよりも多くの集客があったらしい。ウエディングケーキのようにステージが円形で3段になっていて壮大である。

 

期待に満ちた観客を焦らすかのように、ライブは30分押して始まった。今回のライブは当時のレコーディングメンバーのほとんどを集めてのライブだ。参加人数が多いこともあって、準備や対応に時間がかかるのだろう。

 

まだステージも客席も電気が付いている中、さりげなく一部のメンバーがステージに上がり 『台所は毎日の巡礼』の演奏を始めた。日常の中に自然と音楽が溶け込むかのようなライブの始まりに、動揺が混じった歓声があがる客席。それと同時に小沢健二の歌声も聴こえた。姿は見えないので、おそらくステージ裏で歌っているのだろう。

 

『台所は毎日の巡礼』の演奏は30秒ほとで終わった。生演奏で開始を告げるSEを鳴らしたような感覚なのだろうか。すると今度はステージ上のスタンドライト以外の会場の全ての照明が落とされ『流星ビバップ』の演奏が始まる。その演奏に合わせてバックバンドのメンバーが、ステージ裏の小沢健二の紹介アナウンスに合わせてスポットライトを浴びながら自転車で1人ずつ登場した。

 

今回のライブは当時のレコーディングメンバーのほとんどが参加している。つまりバンドメンバーに誰が参加しているかの紹介は、いつも以上に重要なのだ。そんな想いを感じる演出である。 服部隆之の紹介で特に大きな歓声が沸き起こったことから、観客がそられを理解していることも伝わってくる。

 

メンバー紹介が終わったタイミングで、いつの間にかステージに現れていた小沢が「スマホの光で歌詞カードを照らして!歌詞カードを見て歌ってください」と小沢が言う。客席にはそれぞれ〈1994年から届いたFAX〉と書かれたA4サイズのプリントが置かれていた。それを見ろということなのだろう。

 

観客は小沢の要望に応え、スマホを光らせ歌い始める。小沢健二がワンフレーズ歌い、その後のワンフレーズが観客が歌い、ここぞというタイミングて小沢健二と観客が一緒に歌う。示し合わせたり練習したわけでめないのに、自然と完璧な歌の掛け合いが、ステージと客席までできていた。ここまで完璧な一体感があるライブを観たのは初めてかもしれない。

 

そのまま曲間なしで『 フクロウの声が聞こえる』が続く。オーケストラを含む大人数のバンドで演奏されると、この楽曲の壮大さが際立つ。それに負けないぐらい大きな音の観客の手拍子も良い。後半に巻き起こった観客との大合唱も最高だ。昔の曲も今の曲も、平等にファンに愛されていることが伝わる空気である。

 

『強い気持ち・強い愛』も服部隆之率いるオーケストラの演奏が壮大さを引き出していて素晴らしい。サビで小沢が「歌え!」と叫んだ後の、壮大な演奏をかき消すほどの観客の大合唱に鳥肌が立つ。「 ライトをつけろ!懐中電灯をつけろ!」とメロディを歌うように小沢が言って、観客が一斉にスマホのライトを点灯させた景色も美しく感動的だった。

 

鳴り止まない拍手を浴びながら、総立ちの観客を落ち着かせるように「総立ちライブになっていますが、少し珍しいかもしれませんが総座りしてみてもいいのではないでしょうか?」と言って観客を座らせた。長丁場のライブということもあり、観客のペース配分に気を使ってくれたのだろうか。

 

ここで小沢からバトンタッチされたスチャダラパーが「みなさんから声をいただいて盛り上がるコーナーです!」と言って『サマージャム'95』を演奏した。

 

スチャダラパーの楽曲だが、観客はみんな知っているのだろう。しっかり観客は歌っている。〈夏のせい〉というフレーズが武道館に響く声量は、小沢健二の楽曲の時の大合唱の声量と変わらない。座席を東西南北に分けてのコールアンドレスポンスも完璧だ。関係性の深い二組だからこそ、多くの観客が30年前から二組ともに好きでい続けていたのだろう。

 

続けて演奏されたのは『天使たちのシーン』。先ほどまでお祭りのような騒いでいた観客が、今度は静かに真剣に聴き入る。間奏に入る都度、参加しているメンバーが小沢に紹介されていた。

 

アウトロでは「青木達之!」と紹介された時、大喝采が巻き起こったことが忘れられない。この日のライブに参加していなかった、この日のライブに参加が叶わなかった、でも小沢健二にとって大切な人物の名前も、しっかりと呼ぶことに愛を感じた。小沢は音源とは違うエモーショナルなギターソロを弾いていたが、それは青木に捧げる演奏のようにも見えた。

 

感動で包み込まれる会場に軽快なピアノの音が響き『旅人たち』が演奏されると、少しだけ穏やかで明るい空気へと変化する。ミニマムながらも隙がない演奏に合わせて、小沢が跳ねるようなリズムで歌う。前半は壮大な演奏の楽曲が多かったが、ここからは近さや温かさを感じる楽曲が続いた。

 

ニューヨークのカフェで詩人が詩の朗読をしていた時、聴衆は賞賛の気持ちをフィンガースナップ、つまり指パッチンで表現していた。手拍子だとうるさくて苦情が来てしまうので、その代わりの指パッチンだ。

 

今でもポエトリースラムに行くと、聴衆は指パッチンをしている。拍手よりも音が小さいから、言葉の邪魔をしないのだ。熱い拍手よりも、クールな指パッチンで想いを伝えるのだ。

 

指パッチンについて熱く語る小沢。その想いに応えて観客も指パッチンを返す。

 

小沢が3回指パッチンをすれば、観客も3回同じように指パッチンを返す。だんだんと指パッチンがビートになり、指パッチンのビートにバンドが演奏を乗せる。演奏されたのは『大人になれば』。観客の奏でる指パッチンのリズムに合わせバンドがソロ回しをしたりと、観客も演奏に参加しているような空気感になっている。

 

その後に「1番新しい曲です」と説明されてからの『台所は毎日の巡礼』では、指パッチンでは賞賛を表現しきれなかった観客が手拍子を鳴らす。開演直後から思っていたが、この日はステージの歌や演奏だけでなく、観客も最高だ。

 

「今日は子どものお客さんが1000人います。すごいよね。集団でこっちに来られたら大変だ(笑)」と嬉しそうに話す小沢健二。今回のライブは親子席が販売されていた。そのチケットが1000枚売れたのだろう。小沢健二のライブにおいて、生まれて育ってくサークルが生まれている。

 

そしてステージに子どものコーラス対を呼んだ。演奏されたのは『ぶぎ・ばく・べいびー』。小沢がワンフレーズ歌うごとに子どもたちが童謡『かえるのうた』のように追いかけるように続けて歌う。そんな微笑ましい掛け合いの後、小沢が〈まるで90年代の夏のよう〉と歌ったことを合図に、バンドの演奏とスチャダラパーのラップが始まる。その始まり方が美しすぎて鳥肌が立つ。

 

曲が終わった瞬間〈そして時は2020 全力疾走してきたよね〉と歌い『彗星』へと雪崩れ込んだ。まるで音楽によって1990年代から2020年代へとタイムスリップしたかのような流れだ。

 

この楽曲は小沢健二があいみょんの日本武道館公演を観たことがきっかけで歌詞が書かれた。そしてあいみょんはこの日のライブに参加したことを、2024年9月6日放送の『あいみょんのオールナイトニッポン』で語っていた。今回のライブはアルバム『LIFE』の再現がメインのコンセプトではあるが、それとは別の特別な意味も今回の公演には偶然にも生まれたと感じる。

 

鉄琴の美しい音色が『彗星』のアウトロを奏でたかと思えば、そこから自然と繋がる形で『 流動体について』が始まった。小沢の「立つ?」という呼びかけで、再び会場は総立ち状態で盛り上がる。サビ前に小沢が「思いっきり!」という独特な煽りをすれば、観客はこの日1番かと思うほどに大きな手拍子を鳴らす。

 

前半に何の曲をやって欲しいかをXでリクエストを募ったけれど、リクエストを見て久々にライブに来る人が多いのかなと思った(笑)

 

それは別に良いんです。例えばライブに来るのが30年ぶりだったとしても。それに子どもを連れてきた人が1000人もいる。だから同窓会のつもりで、今の僕を見せるつもりで演奏しました。

 

演奏を終え、感慨深そうに話す小沢。ここまでの盛り上がりは確かに同窓会のようなお祭り騒ぎだったし、久々の再会を喜ぶかのような盛り上がりだった。

 

そして『LIFE』の小沢健二を戻て来たというよりも、今の小沢健二を求めて来た観客が多いのではと感じるような、多幸感に満ちた空気で前半は終わった。

 

『LIFE』再現

 

1万3000人の前でやったら、エモくなってしまうかもしれません。『LIFE』を音源通りやろうかとも思うけど、エモくなっちゃって音源通りにはできないかもしれません。

 

でもそうなうなってもそれは、ここに来たあなた達が僕らをエモくさせたせいです(笑)

 

照れくさそうに笑いながら、ここから『LIFE』再現が始まることを告げる小沢健二。

 

小沢健二「今回の再現はCDの逆の順番でやります。だから1曲目は『 いちょう並木のセレナーデ(reprise)』。じゃあ次は?」

観客「おやすみなさい、仔猫ちゃん!」

小沢健二「次は?」

観客「僕らが旅に出る理由!」

小沢健二「逆の順番でも曲順を言えるんだよね。『LIFE』はそんな不思議なアルバムなんだ。それぐらいみんな『LIFE』を覚えているんだ」

 

そういってからステージに置かれた手回しオルゴールを回す小沢。ここまで再現するのかと、驚きと感動が入り混じった歓声が会場に響く。その余韻を楽しむ暇を与えず、すぐに『おやすみなさい、仔猫ちゃん!』が始まる。当時は生まれていなかったであろう子どもたちが、当時のレコーディングに参加した子どもの代わりにコーラスとして参加し、リリースから30年後の現在の音として再現された。再現であり再構築でもあるのだろう。これも生まれて育ってくサークルだ。

 

『ぼくらが旅に出る理由』の盛り上がりは、再現の域を超えていた。この30年で楽曲が成長しよりすごい楽曲に進化したと感じる。それぐらいに手拍子も観客の歌声も大きく、ものすごい盛り上がりになっていた。小沢が「思いっきり!」と言って煽った後のサビの大合唱は、ステージの音をかき消すほどに大きい。

 

スチャダラパーが登場し披露されたのは、もちろん『今夜はブギーバック(nice vocal)』。スチャダラパーのラップパートでは、ここぞというタイミングで観客も一緒に叫ぶ。一万三千人で「ルカー!」と叫ぶのは楽しすぎる。〈心変わりの相手は僕に決めなよ〉と歌われた時に、冷やかすかのような歓声があがったのも最高だ。

 

この場に集まった観客が楽曲をしっかり理解し愛しているからこその反応だ。この30年間、この楽曲が心のベストテン第一位だった人が、この場にはたくさんいたのだろう。

 

ここで小沢健二とスチャダラパーによる雑談に近いMCが行われた。

 

BOSS「ブギーバックマンションがあった場所の向かいにスーパーのLIFEが後からできたんだよね。絶対に狙っているよね。そういえば家の向かいにレコード屋が欲しいと思ってたらできたこともあった」

小沢健二「武道館って8角形の建物なんだけど『LIFE』のジャケットの建物も8角形なんだよね」

BOSS「ちょっとスピってる?」

 

スピリチュアルな話をして、スチャダラパーはステージを後にした。

 

「あと5曲だけ?ヤバ!」と言ってから『ドアをノックするのは誰だ?』が続く。心なしかこの楽曲は声質が30年前と近い歌唱になっていた気がした。観客の手拍子も完璧だ。観客の手拍子すらも再現の一部になっていると感じるほどである。壮大なアウトロは壮大なオーケストラの演奏で感動的に締められた。

 

かと思えば続く『いちょう並木のセレナーデ』ではアコースティックな優しい演奏が披露される。やはり観客の反応は完璧だ。手拍子のタイミングだけでなく、音源にも収録されている歓声までも、全く同じタイミングで観客が歓声をあげていた。

 

やはり観客の反応を含めての再現ライブなのだ。『LIFE』を愛している観客が集まらなければ、今回の再現ライブは実現が不可能だったことを実感させられる。

 

そんな観客の反応に感動したのだろうか。曲が終わったのに小沢は「歌える?」と観客に問いかけて、アカペラでサビを歌い始めた。すると観客も一緒にサビを歌う。曲が終わることへ抗うかのようにサビを何度も何度も繰り返し、小沢と観客が大きな声で、アカペラで歌い続けた。

 

小沢のシャウトを合図にホーンの音が鳴ると『東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロー』へとなだれ込む。観客はコーラスを完璧に歌いこなし、この楽曲でも再現するための重要な役割を担っていた。

 

そんな観客にまたもや小沢は感動したのだろう。フェードアウトで曲が終わりそうになると「フェードアウトはいやあぁぁああ!!!」と叫び手拍子を煽り、何度もフェードアウトする演奏も再度音量を大きくさせ、曲が終わることに抗っていた。

 

ついには「いやあぁあ!」「だめえぇえ!という言葉で観客とコールアンドレスポンスをしたりと、カオスな状況に。最終的にはコールアンドレスポンスの声がフェードアウトするかのようにだんだんと小さくなり、けっきょく曲はフェードアウトで終わった。小沢は「終わりかたがわからなくなって変な感じになっちゃった」と言って反省してた。

 

小沢健二「あと2曲です」

観客「いやあぁあ!!!」

 

先ほどのコールアンドレスポンスを活かした野次を飛ばす観客。

 

改めて今回のバンドメンバーの豪華さについてMCでは言及していた。特に服部隆之については「30年前は新進気鋭の若手だったけれど、曲のことを理解しなければできない完璧なアレンジをしてくれた」と彼のオーケストラアレンジを絶賛していた。今回のライブの演奏にも感動しているようで『ドアをノックするのは誰だ?』のアウトロのオーケストラアレンジだけを、彼の指揮するオーケストラにもう一度演奏させたほどである。

 

Life is commin' backという言葉は、自然と言葉が降りてきた感覚で歌詞にしました。

 

有名な辞書に『LIFE』という言葉の意味について、こう書いてありましたあります。LIFEとは「生きているものが持っているものの特徴」だと。

 

つまりそれが返ってくることをLife is commin' backと言います。

 

そのように歌っている次の曲は、こんなギターから始まります。

 

会場にいる誰もが聴き慣れているギターリフを小沢が弾くと、大歓声が客席から響く。もちろん演奏されたのは『ラブリー』。やはり観客の手拍子は完璧だし〈Life is commin' back〉という歌詞を全力で歌う観客は、やはり『LIFE』というアルバムをしっかりと理解している。

 

もしも今若いミュージシャンをアルバムを出して、それを再現するライブを30年後にやるとしたら2054年になる。

 

30年間は振り返るとあっという間けど、30年先は気が遠くなるほど遠い。振り返るとすぐそこの過去。だけど先を見ると果てしなく遠い未来

 

『LIFE』がリリースされて30年。そんな30年があって『LIFE』は武道館に帰ってきた。Life is commin' back

 

この30年を総括する言葉を話してから演奏されたのは『愛し愛されて生きるのさ』。この日1番に感じる盛大な手拍子が鳴り響き、観客はAメロもサビも何もかも関係なく、最初から最後まで大声でシンガロングしている。この日の全てを出し切るように、30年間の想い全てを伝えるかのように。

 

客席からの歌声は演奏をかき消すほどの大きさだったけれど、全く不快感はなかった。むしろ感動しかなかった。この観客がいなければ成立しなかったライブだったし、観客の歌声があったことにより再現を超えた進化した『LIFE』を聴くことができたのだから。

 

演奏を終えると「再現したよー」と軽いノリで話す小沢。「日常に帰ろう」と言って締めようとすると観客からブーイングが巻き起こった。それに対して「だって再現したもん!」と歯向かう小沢。だが彼も名残惜しいのだろう。今回のライブについてぽつぽつと語り始めた。

 

誰かが今年リリースしたアルバムの再現ライブを30年後にやるとしたら2054年だよ。ものすごい先のことだよ。今日の僕らはそこに来たんだよ。

 

30年前と違って今の生活はスマホ中心になりました。だからスマホの電源をライブ中にオフにしてスマホを置いだすのはバチが当たる気がした。だからスマホを使う演出にしました。

 

だから今日は自由にスマホを使っていいよ。電話がかかってきて音を出したっていいよ。だってそれが生活でLIFEだから。

 

今日来ることができなかった人もいるから、ステージの上だけどインスタライブをやろうかな?

 

そう言って小沢はスマホを取り出すものの、なぜか通信が途切れてインスタを開けないようだ。「ここWi-Fi繋がってるよね?」と現代の生活及びLIFEに欠かせないワードを使って不具合を知らせる小沢。BOSSのスマホはなぜかWi-Fiに繋がったようで、彼のスマホを使ってインスタライブが始まった。

 

そして小沢がアコースティックギターをぽろんと鳴らし、再び『愛し愛されて生きるのさ』を最初から歌い始める。バンドはステージを降りてしまったので、今度は弾き語りのバージョンだ。

 

弾き語りでも観客は同じように歌う。みんなで一緒に30年後の『愛し愛されて生きるのさ』を演奏し歌っている。生まれて育ってくサークルによってこの場に来た、小さな赤子の鳴き声も聴こえる。それすらも愛しく感じる空間が広がっている。

 

今回のライブは再現ライブというよりも『LIFE』を愛している人がこれほどまでにたくさんいて、これほどまでに素晴らしいアルバムということを再認識するためのライブだったのかもしれない。だって、ステージも客席もエモくなりすぎて、再現とは違った内容のライブになってしまったのだから。

 

「これで帰れるね」と言って「10、9、8、7......」とカウントダウンをする小沢。そしてカウントが0になって「生活にまた帰ろう」と言ってステージを去っていった。

 

ライブ会場は非日常だと言う人はいる。自分もそういった一面はあると思っているし、小沢健二のライブにもそのような一面はある。

 

だがそれは現実逃避としての非日常とは違うとは思う。現実と繋がった生活の中にある日常とは少し違う幸せな出来事なのだと思う。日常があるからこそ非日常が輝くし、非日常を体験することによって日常が彩られるのだ。だって今回のライブも日常が30年間続いたからこその非日常なのだから。

 

『LIFE』再現ライブは、この30年間の間に『LIFE』と出会いアルバムを愛した人たちの30年間のLIFEを感じる空間になっていた。

 

■小沢健二「LIFE再現ライブ」at 日本武道館 2024年8月31日(土) セットリスト

1.台所は毎日の巡礼
2.流れ星ビバップ
3.フクロウの声が聞こえる
4.強い気持ち・強い愛
5.サマージャム'95
6.天使たちのシーン
7.旅人たち
8.大人になれば
9.台所は毎日の巡礼
10.ぶぎ・ばく・べいびー
11.彗星
12.流動体について
13.いちょう並木のセレナーデ(reprise)
14.おやすみなさい、仔猫ちゃん!
15.ぼくらが旅に出る理由
16.今夜はブギーバック(nice vocal)
17.ドアをノックするのは誰だ?
18.いちょう並木のセレナーデ
19.東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディー・ブロー
20.ラブリー
21.愛し愛されて生きるのさ
22.愛し愛されて生きるのさ(弾き語り)

 

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