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【ライブレポ・セットリスト】竹原ピストル『すうぉ〜む‼︎』発売記念リリースイベント at アリオ川口 2025年2月22日(土)

開演予定時刻の30分前。ふらっとステージに登場した竹原ピストル。満面の笑みで「サウンドチェックをします」と言ってギターをぽろんと弾き始めた。

 

CコードとAm、Fのコードを中心にアコースティックギターをストロークして、音を確かめている。開始予定時刻の1時間前から優先エリアの入場が始まっていたので、CDを事前に購入したファンはほとんどが集まっていたはずだ。そんな中でサウンドチェクをするとは、なかなかに貴重な時間である。

 

一通り確認をしたところでステージ裏へ戻るかと思いきや、そのままビートたけし『浅草キッド』のカバーを歌い始めた。その力強いギターのストロークと歌声はサウンドチェックのリハーサルとは思えないほどの凄みがあったし、ショッピングモールに設置されたステージでのパフォーマンスとは思えないほどに熱量があった。

 

埼玉県にあるショッピングモール、アリオ川口で行われた竹原ピストルの7枚目のアルバム『すうぉ〜む』のリリースイベント。

 

そのイベントで行われたミニライブは普段のワンマンと変わらない内容に感じるほど素晴らしくて、ミニライブとは思えない曲数を演奏してくれた。

 

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サウンドチェックの2曲目は『全て身に覚えのある痛みだろう?』。今度は繊細なアルペジオでギターを弾きながら語りかけるように歌う。

 

ショッピングモールのステージの前だけが、異空間になったかのような状況だ。日常の中に非日常の空間が組み合わさると、このような感覚になるのかと新鮮な気持ちになる。

 

始まるまでずっと立っているのはしんどいと思うので、本番の時間までサウンドチェックという名の本気のライブをしようと思います。

 

お買い物のみなさんはBGMだと思って聴いてください。

 

すでに音の確認は取れているので、ステージ裏に戻るかと思いき観客のために演奏をつづけてくれると言う。このサプライズに盛大な拍手が巻き起こる。リリイベにも関わらず開演1時間前から入場を開始したのは、このサプライズがあるからだったのかもしれない。

 

そんな拍手の中で演奏されたのは『マスター、ポーグスかけてくれ』。ショッピングモールの空間とはミスマッチな歌詞の内容ではあるが、竹原ピストルが歌い演奏するだけで、この異空間もライブハウスと同じように音楽をじっくり聴く空間になってしまう。

 

「次の曲は競走馬のお馬さんをイメージして描きました」と言ってから演奏された『一等勝』では観客は手拍子をして盛り上がっていた。観客も完全に普段のライブを観る時と同じ気持ちになって楽しんでいる。

 

ゆっくりとチューニングをしてから「いつもよりも丁寧に丁寧にチューニングしてから、次の歌をうたおうと思います」と言って演奏されたのは『もしもピアノが弾けたなら』。ギターを丁寧に弾きながら、他の曲よりも優しく歌い、表現していた。

 

竹原が出演した映画『永い言い訳』で日本アカデミー賞の優秀助演男優賞を受賞した際、司会をしていた西田敏行と会えたことに感激していたことをナタリーのインタビューで話していた。彼はずっと西田敏行のファンだったらしい。このカバーは西田敏行への追悼の想いが込められていたのかもしれない。

 

「本番は違う曲をやるんで帰らないでくださいね!本番になってガラガラになっていたら寂しいので(笑)」と言って、サウンドチェックの最後に演奏されたのは『僕は限りない〜One for the show〜』。ギターは優しいストロークなのに歌声は力強くて、そんなパフォーマンスにグッとくる。後半のラップパートはクールでカッコいい。

 

会場が良い感じに温まってきたところで本番の時間が近づきサウンドチェックは終了した。「この後に本番なんで、裏に一応戻ってまたすぐ出てきますね」と言ってステージ裏の楽屋に戻っていった。だがその3分後には開演予定時刻になってしまったので、すでにステージに戻ってきた。

 

ライブを観にきてくださったみなさん、ありがとうございます。

 

買い物中のみなさん、騒がしくすると思います。ごめんなさい。なんかやってんなって興味を持ってもらえるよう、精一杯歌うのでよろしくお願いします。

 

サウンドチェックではニット帽をかぶっていましたが、 ちょっと気分を変えるために本番はタオルを頭に巻いてみました。

 

竹原らしい配慮とユーモアが混ざった挨拶をしてから歌われた本番1曲目は『逃してあげよう』。優しくも力強い歌声が心地よい。通りがかった買い物客も足を止める人が増えてきた。

 

「ドラマのブラックジャックの主題歌に使ってもらった曲で、一つの夜と書いて”かずや”と読む曲です」と言って演奏された『一夜』はゆったりとギターを弾くことで歌を際立たせる。そのためか歌詞のメッセージが胸にダイレクトに響いてくる。

 

「全然違う街の歌ですが」と告げてから演奏された『LIVE IN 和歌山』は、個人的に今回のライブで最もグッときた曲だ。

 

〈「俺、精神病なんですよぉ」なんて平気でいってくるお前は うん やっぱり精神病なんだと思うよ〉という歌詞から始まる楽曲なので、ファン以外の買い物客も含めた不特定多数が聴く場では曲のメッセージが勘違いされる恐れもあるが、そんなことも気にせず〈薬漬けでも生きろ〉とサビで叫ぶ姿に鳥肌が立つ。もしかしたらこの楽曲が偶然通りがかった買い物客の誰かを救うきっかけになっていたかもしれないと思ったりもする。

 

『アンチヒーロー』では尖ったサウンドのギターとポエトリーリーディングを組み合わせた歌唱で圧倒させた。そこから曲間なしで『誇れよ、己を。』も、なかなかに尖ったサウンドだ。どちらもクールな歌と演奏で、前半とは違う印象を観客に与えていた。

 

今回のライブで最も盛り上がったのは代表曲『よー、そこの若いの』だ。曲が始まった瞬間から大きな手拍子を観客が鳴らしていたし、サビではショッピングモールの店舗から怒られないか心配になるほどの大合唱が巻き起こっていた。

 

通りがかった買い物客も集まってきたし、エスカレーターを登りながら見下ろして手拍子をしている買い物客もいた。誰もに知られている代表曲は、誰もの心をつかむのだろう。

 

時が流れるのは早いもので、季節の中のある1日をピンポイントで描いた曲があります。

 

その日はすでにすぎてしまいましたが、成人式について描いた曲があるので、それを歌おうと思います。

 

そう告げてから『今日は成人の日』をギターターをアルペジオで丁寧に弾き、繊細な音色を出しながら、優しく語りかけるように歌った。『よー、そこの若いの』と続けて演奏したのは、ここに集まった若者へのメッセージなのだろうか。

 

昨日もサイン会をやっていました。その時に僕が以前出演した映画にエキストラとして参加した方がきてくれました。

 

その時の僕の対応がとても良かったらしくて、エキストラの人にも丁寧に接してくれたことが嬉しくて、それをきっかけにファンになってくれたそうです。

 

何がきっかけで好きになってもらえるかわからないですね。だから今日はいつもよりも丁寧にたくさんお辞儀をします。CDを売るためならなんでもします!

 

そう言って四方八方に深々とお辞儀をする竹原。お辞儀をする都度に四方八方から拍手が送られた。もしかしたらこのお辞儀がきっかけで彼のファンになった人が、今日はいたのかもしれない。

 

WEST.の重岡さんと藤井さんに曲を提供したことがあります。これは僕の一生の自慢です。

 

次はその曲を歌わせてもらいます。みなさんが手拍子でビートを支えてくれたら嬉しいです。

 

そう言ってから演奏されたのは『ぼくらしく』。MCでの説明通り重岡大毅と藤井流星に提供した楽曲のセルフカバーだ。竹原が歌うとまた違った魅力が生まれて新鮮に聴こえる。観客の手拍子はまるで演奏に参加しているかのような、良い感じのビートだった。最竹原が何度も観客の手拍子に「助かります!」と言っていたことが印象的だ。

 

続けて演奏されたのは『椿の花は尚赤い』。この楽曲でも盛大な手拍子が鳴らされたされた。この盛り上がりはもショッピングモールのリリイベとは思えない。ライブハウスの盛り上がりだ。

 

そんな盛り上がりから一転して『s.o.s』では繊細なギタープレイで語りかけるように歌う。〈あなたがいる〉という歌詞のフレーズでギターの演奏を止めてまで観客の方に手を差し出す動作をしていたことが忘れられない。まるでこの曲で目の前にいるかもしれないSOSを出している”あなた”をする公としているような姿である。

 

「みなさん、立ったまま17曲も聴いていただきありがとうございます」と改めて観客に感謝を伝える竹原。リリイベとは思えないボリュームだ。実際はここまで16曲を披露したのだが、歌っている本人も忘れてしまうほどの長尺ライブになってしまっている。

 

「新しいアルバムで1番元気がいい曲です。みなさんは手拍子を止めないでください」と言ってから演奏されたのは『見事的中!!予感的中!!』。やはり元気な曲だけあって、観客も元気に盛り上がっていた。言われた通りに手拍子を止めない観客の素直さも素晴らしい。

 

マイクを通さない生の声で「みんな!やってるか!」と竹原が叫んでから、なだれ込むように始まった『みんな〜、やってるか!』では、サビで大合唱が巻き起こった。この時点でリリイベとは思えない曲数をやっているが、後半になるにつれて観客はどんどん元気になっているように感じるほど盛り上がっている。

 

「快晴の土曜日の昼下がりに竹原ピストルを観てくださりありがとうございます。自分が逆の立場だったらこんな暑苦しいライブは昼間に観たくないです(笑)」とユーモアを含めた独特な表現で観客に感謝を伝える竹原。

 

そして「今日が2025年の埼玉で初めてのライブでした。また埼玉に来れるように頑張ります。最後に自分の母ちゃんに捧げたポエムを『Amazing Grace』のメロディに乗せた歌をうたいます。みなさんが2025年も元気に過ごせますように」と最後の挨拶をして、最後に『Amazing Grace』が演奏された。

 

ハーモニカを吹きながら、この日の演奏曲で特に力強くギターを弾き、魂をこめるように歌っていた。これは自分だけがその場で体験した感覚かもしれないが、ショッピングモールの雑音が消えて、歌とギターとハーモニカだけが響いているような感覚になった。それぐらいに竹原ピストルの鳴らす音楽に引き込まれて集中してしまったのだろう。

 

特に最後の〈あなたを蝕む癌細胞をぶっ殺してやりたい〉という歌詞をものすごい声量で叫ぶように歌った時、その感覚は特に強くなった。

 

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サウンドチェックという名の本気のライブと本番のライブを合わせた合計時間は約90分。曲数は19曲だった。無料のリリースイベントとは思えないボリュームだ。

 

竹原ピストルの音楽が素晴らしいから惹かれる人がたくさんいることはもちろんではあるが、彼のサービス精神などを含む人柄も含めて好きになる人も多いのかもしれない。

 

きっと竹原ピストルは来年も再来年もその先も埼玉に歌いに来てくれるだろうから、自分は来年も再来年もその先も竹原ピストルのライブを観ないかなければと思うような、素晴らしいライブだった。

 

◾️竹原ピストル『すうぉ〜む‼︎』発売記念リリースイベント at アリオ川口 2025年2月22日(土) セットリスト

 

リハーサル

1.浅草キッド

2.全て身に覚えのある痛みだろう?

3.マスター、ポーグスかけてくれ

4.一等賞

5.もしもピアノが弾けたなら

6.僕は限りない〜One for the show〜

 

本番

1.逃してあげよう

2.一夜

3.LIVE IN 和歌山

4.アンチヒーロー

5.誇れよ、己を。

6.よー、そこの若いの

7.今日は成人の日

8.ぼくらしく

9.椿の花は尚赤い

10.s.o.s

11.見事的中!!予感的中!!

12みんな~、やってるか!

13.Amazing Grace

 

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