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Kis-My-Ft2のアルバム『To-y2(トイズ)』を聴くと幸せな気持ちになる(感想・レビュー・評価)

音楽=おもちゃ

 

「おもちゃ箱をひっくり返したような」という表現はよく使われる。

 

音楽のアルバムを評価する時にも使われる。特に様々なジャンルの曲が収録されたバラエティ豊かなアルバムや華やかな音が使われた作品は、このように評価されることが多い。

 

Kis-My-Ft2が産み出す「音楽=おもちゃ」を使って一緒に遊び、幸福・感動を分かち合い、人生を豊かに彩ろう」

 

Kis-My-Ft2の新作『To-y2(トイズ)』のコンセプトを知った時も、「おもちゃ箱をひっくり返したようなアルバム」だと思っていた。アルバムタイトルには「トイ」という言葉が使われているし、コンセプトにも「おもちゃ」という言葉が使われているからだ。

 

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しかしどうやら違うらしい。作品を聴いてみたが、バラエティ豊かな楽曲が揃っているが、賑やかに散らばっているわけではない。おもちゃ箱をひっくり返したような作品ではなかった。

 

リードトラックの『To yours』も華やかでポップな曲だが、音作りは丁寧。必要最低限の音で構成し音色の一つひとつの良さで魅了するような曲。打ち込みによる電子音でポップで明るい雰囲気にしている楽しさを表現している。

 

おもちゃ箱をひっくり返したというよりも、おもちゃを丁寧に取り出してギミックを楽しむような作品。”ごちゃごちゃした派手さ”でおもちゃのような楽しさを表現するのではなく、”洗練された音色”で楽しさを表現している。

 

もう一度アルバムコンセプトを確認してみた。「音楽=おもちゃ」という言葉に納得した。

 

Kis-My-Ft2は音楽をおもちゃと例えることで、音楽の楽しさを表現しようとしているのだ。

 

キスマイの歌によって一緒に遊んでいる気分になる

 

この作品はジャンルを当てはめることが難しい。様々なジャンルの様々な方向性の楽曲が揃っているからだ。

 

特定のジャンルで楽しむのではなく、まさしく「音楽=おもちゃ」にして音楽そのものを楽しんでいるのだと思う。

 

特に8曲目のの『MAHARAJA』を聴いた時に「音楽を楽しんでいる」と思った。

 

歌謡曲テイストなメロディとインドの民族音楽をモチーフにしたようなバックトラックの組み合わせあ新鮮だ。それなのにサビはJ-POP的なキャッチーなメロディに変化する展開が面白い。

 

作曲は川口進とスウェーデンのミュージシャンAndreas Ohrnの共作。異文化交流的な曲だからこその個性かもしれない。〈チャーチャラチャマハラジャ〉という掛け声があったりとユーモアがある歌詞も聴いていて楽しくなってくる。

 

変な曲なのに口ずさみたくなる。変なく曲だけど聴いていて楽しくなってくる。メンバーも楽しそうに歌っている。アイドル的な爽やかな歌い方やクールな歌い方とも違う。

 

仲間とじゃれるように楽しんでいるような歌唱方法。まさに「音楽=おもちゃ」にして楽しんでいる。

 

『Positive Man』のようなレゲエを取り入れた楽曲があるのも印象的だ。

 

この曲も途中おどけながら歌っている歌唱が耳に残る。レゲエはリズムが特に重要な音楽。リズム感がなければレゲエの独特なノリは表現できないが、歌詞に合わせた歌唱をしつつもリズムを大切に歌っている。しっかりとレゲエのノリを表現できている。そしてサビになると綺麗なユニゾンを響かせる。このギャップが刺激的だ。

 

「音楽=おもちゃ」にしてメンバーも楽しみながら歌っているようだが、ふざけているわけでも気を抜いているわけでもない。全力でおもちゃで遊んでいる感じ。だからリスナーも聴いていて楽しくなってくる。一緒に遊んでいる気持ちになってくる。

 

 

おもちゃは面白いだけではない

 

おもちゃも種類がたくさんある。面白いおもちゃもあれば、カッコいいおもちゃもある。ロボットだったり戦隊モノの人形だったり、カッコいいおもちゃに子どもの頃は憧れた。

 

『Toy-2』にはカッコいい音楽もある。

 

『HANDS UP』はEDMとユーロビートを混ぜ合わせたサウンドが印象的なダンスチューン。大雑把な言葉になってしまうが「カッコいい曲」に思う。

 

フィンランドの音楽クリエイターChristian Janssonが手がけたこともあり、J-POPではあまり聴くことができないような、海外のトレンドを取り入れたような洋楽テイストのサウンド。しかし歌詞はユーモアを混ぜたフレーズが盛りだくさんなので聴いていて楽しい。

 

『Cannonball』や『Letting Go』でも音色や編曲から洋楽のテイストを感じる。どちらも海外の音楽クリエイターが制作した楽曲だ。『Letting Go』はアルバムの中でも良い意味で異質な楽曲に思う。

 

スローテンポのバラードで少しかすれた歌声が魅力的だが、歌のバックで流れる打ち込みのリフも印象に残る。複雑なリズムパターンも印象的で、ラップもある。

 

スローテンポのバラードでありながらも、ダンスチューンとしても成立する楽曲になっている。歌のメロディ以上に演奏のリフとリズムが印象に残る編曲。それはJ-POPの王道とは違う洋楽に近い編曲方だ。

 

『To-y2』では海外のクリエイターが参加している曲が6曲ある。ジャニーズの楽曲には海外の音楽クリエイターが関わっていることがあるが、キスマイは特に多くの海外クリエイターが関わっているように思う。

 

ジャニーズWESTやNEWSやSexy Zoneなど今年発売された他のジャニーズグループの作品には海外のクリエイターは参加していない。

 

それぞれのコンセプトがあるのでそれが悪いというわけではない。他のグループの作品も素晴らしいと思う。各グループの個性が色濃く出ている作品だ。Sexy Zoneの『POP×STEP!?』は特に素晴らしい名盤だと個人的には思っている。

 

『Toy-2』に個性がある理由は、海外アーティストが参加したことの影響も強い。それによって他のJ-POPとは違う耳障りの楽曲になっている。海外の音楽もおもちゃにして楽しんで遊んでいるように思う。

 

 

楽しむことで感動させている

 

『Toy-2』には「幸福・感動を分かち合い、人生を豊かに彩ろう」というコンセプトもある。

 

心地よい音色と優しい歌声で包んでくれるような多幸感溢れた曲もある。それは特に後半に集中している。

 

〈過去も未来も僕の人生(すべて)を抱きしめてくれる〉という歌詞の通りに、包み込んでくれるような優しい歌声が印象的な『My Place』。スカパンクを感じるアップテンポで前向きなメッセージを含んだ『Be alright』の次に収録されているので、楽曲の振れ幅によるギャップで曲が胸に深く染みる。

 

『Sometime...』は管楽器の印象的な演奏により切なさを感じさせる。その次はバラード曲『mement』が続くので、切ない気持ちをより持続させる曲順になっている。

 

ほっこりさせたかと思いきや『COUNT7SEVEN』でジャズやキャバレー音楽を盛り込んでキスマイ風のJ-POPに消化させた個性的な曲を続ける。切ない気持ちを吹っ飛ばうアップテンポの楽しいナンバー。この曲は後半でリスナーのテンションを高めることに大きく貢献している。

 

最後はポップで爽やかな曲調の『Smilest』でアルバムを締める。〈笑ってよ 誰より綺麗な心で〉という歌詞も曲調と相まって幸せな気持ちにさせてくれる。多幸感溢れた余韻を残してくれる。

 

曲順も考え抜かれたアルバムに思う。丁寧に作り込まれた楽曲を順番を熟考して丁寧に並べたことで、人生を豊かに彩ることを表現しているように思う。

 

良い曲を揃えただけでなく、コンセプトに忠実に守りつつ、良い曲をより良く聴かせるアルバムになっている。これも「音楽=おもちゃ」として考えて音楽で楽しませることを重視したからだろう。

 

おもちゃも音楽と同じように、一緒に遊んでくれるし笑顔にしてくれるし幸せな気持ちにさせてくれる。「おもちゃ」をコンセプトにしたことで、音楽の魅力を伝えてくれるような作品になったのだ。

 

 

ストリーミング配信をして欲しいけれども・・・・・・

 

良い音楽は多くの人に聴いて欲しいと思う。特にジャニーズは「アイドルだから」と舐められがちだ。タレントやアイドルとしては評価されていても、音楽面では過小評価されているグループが多い。

 

ジャニーズは嵐以外のグループは配信でリリースされていない。だから勿体ないと思っている。ジャニーズは日本を代表するクリエイターが集まって作品を作っているし、時には海外のクリエイターも招いて作品を作っている。音楽に一切妥協していない。それが世間に伝わっていないように思う。

 

Kis-My-Ft2の『Toy2』も音楽に妥協せずに制作されている。むしろ「音楽の良さ」を最重要視して制作されている。しかしキスマイやジャニーズのファンと一部の音楽好き以外は、彼らの音楽の魅力に気づいていない。聴く機会が少ないからだ。

 

だからキスマイにも配信でもリリースをして、より多くの人に魅力を伝えて欲しいと思っている。

 

もちろんCDの販売を伸ばした方が売上は大きいとは思うが、気軽に聴いてもらえる環境を作ることで、彼らが日本の音楽シーンに影響を与えて活性化させる可能性だってありえる。

 

しかし『To-y2』に関してはCDを購入することもおすすめしたい。CDが売れない時代ではあるが、CDだからこそ楽しめるギミックが含まれているからだ。

 

おもちゃのようにCDを購入し開封するだけでも楽しめる仕組みもある。特に初回盤Bはすごろくやカードなど付録もついていて、本当におもちゃ箱を開いたような気持ちになるらしい。

 

自分が聴いたのは通常盤だが、通常盤も面白い仕掛けがある。最後まで聴けばその仕掛けに気づく。これはダウンロード配信やストリーミング配信では楽しめない仕掛け。CDだから楽しめる仕掛けだ。それをCDで確認して欲しい。

 

聴く前からワクワクして、聴いた後もワクワクしてしまう。もちろん楽曲も良い。Kis-My-Ft2『To-y2』はCDが売れなくなった時代に「あえてCDを買う価値」を見出せる遊び心に溢れた作品だ。

 

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