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【レビュー・感想】indigo la End『夜行秘密』はBGMに向いていない不思議なアルバム

 BGMにできない

 

 indigo la Endの『夜行秘密』は不思議なアルバムだ。

 

このアルバムはミドルテンポからスローテンポの曲が多い。音色の一つひとつにまで拘っているようで、聴いていて心地よい。ロックバンドとしてこの境地に辿り着いた事はすごいことだ。

 

しかしこれだけ聴いていて心地よいアルバムなのに、BGMに向いていないのだ。どうしても聴いていて引っかかってしまう部分があって、その引っ掛かりのせいでBGMとして聴き流せないのだ。

 

心地よくて聴いていて穏やかな気持ちになるのに、なぜか刺激も感じる。だから不思議なアルバムに思うのだ。

 

そのせいで困ったりもする。『夜行秘密』を聴くときは、音楽とだけ向き合って集中して聴かなければならないのだから。聴いていたら他のことが手につかなくなる。

 

リズム隊による最高の演奏

 

1曲目『夜行』は心地よいミドルテンポの楽曲だ。しかし曲始まりの全員が一斉に音を出すオーケストラヒットと呼ばれる演奏から落ち着いた演奏へと変化する様子が、新鮮で刺激的に感じる。

 

夜行

夜行

  • indigo la End
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

バンドの一体感を感じる演奏と独特なリズム。そこから方向性の違う心地よい演奏に入っていく瞬間に痺れる。こんな始まり方されたら、その後も違う展開があるのではと思い集中して聴いてしまう。

 

その予想通りに2番では演奏のパターンを変えてきた。独特なリズムを奏でるドラムとベース。個性的なフレーズを積み重ねるエレキギター。エフェクトがかかったボーカル。

 

丁寧に音作りがされて、徹底的にこだわった編曲がされている。だから心地よさと刺激が同居した音楽になっているのだ。

 

他の曲も同様に「心地よさと刺激の同居」が成立している。

 

『夜風とハヤブサ』も曲の始まり方が凝っていて面白い。

 

夜風とハヤブサ

夜風とハヤブサ

  • indigo la End
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

ドラムの独特なリズムからシンセサイザーのリフが重なり、バンドの力強い演奏が加わることで刺激的な演奏から心地よい演奏へと変化している。凝った始まり方をすることで、音楽が聞き流されることを防いでいるのだ。

 

特に今作はリズムを凝ることで惹きつける曲が多く、ドラムやベースが演奏を支える重要な要であることを再実感させられる。

 

『夜の恋は』や『たまゆら』の始まり方が新鮮に感じるのも、ドラムのリズムパターンが独特であることが影響している。

 

たまゆら

たまゆら

  • indigo la End
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

ベースもリズム隊として良い仕事をしている。『さざなみ様』や『固まって喜んで』のベースラインは個性的なのに曲と馴染んでいて魅力的。演奏を支えることに徹しているのに存在感がある演奏だ。

 

さざなみ様

さざなみ様

  • indigo la End
  • J-Pop
  • ¥255
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ドラムとベースは脇役に思われがちだ。しかしバンドにおいて重要なポジションで、そこがブレた演奏をしてしまうとバンドは崩れてしまう。しかしindigo la Endはそこが崩れる事はない。

 

だから『夜行秘密』は魅力的な作品に感じるのだ。

 

 

バンドとして魅力的なサウンド

 

曲を支えるドラムとベースがしっかりとしているから、楽曲の構成を複雑にしても成立するし、ギターは面白い実験的な演奏をすることにも挑戦できる。

 

例えば『華にブルー』の2分30秒ごろからの演奏と曲の終わり方。『晩生』と中盤からのプログレッシブロックのような複雑な展開。これらはエレキギターの個性的で複雑な演奏と、複雑な曲構成が魅力的な楽曲だ。

 

晩生

晩生

  • indigo la End
  • J-Pop
  • ¥255
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これもリズム隊がしっかりと支えているから成立する。リズム隊への絶対的な信頼があるから、ギターが個性的なフレーズを取り入れて楽曲を彩ったり、キレのあるギターソロを入れて楽曲を盛り上げられるのだ。

 

安定した演奏で支えるドラムとベース。楽曲を魅力的に彩る演奏をするギター。主役ともいえるほど重要なボーカル。このバランスがしっかりと取れているときに、バンドとして最高の演奏が創られる。

 

『チューリップ』はロックバンドの雰囲気を残しつつも、独特なタイム感のリズムで打ち込みのチルな音楽にも近い空気を醸し出せている。これもindigo la Endがバンドとして軸がしっかりしていてバランス感覚が絶妙だからできることだろう。

 

チューリップ

チューリップ

  • indigo la End
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

全体的に同じようなBPMの楽曲が多いアルバムではある。「夜」をテーマにした曲が多く、歩行性が似ている曲も多い。それなのに似たような曲はない。

 

コンセプトがあって楽曲も方向性を統一しているのに、1つひとつの曲が個性的。これは狙っても簡単にはできないことだ。徹底的に音楽と向き合い、indigo la Endというバンドの役割を再定義したからできたことに思う。

 

 

歌のせいでBGMにできない

 

演奏が心地よいのに刺激的だからBGMにできないと、ここまでは書いてきた。

 

しかし歌もそれには影響している。むしろ最も大きな理由かもしれない。

 

『フラれてみたんだよ』では少し捻くれた表現で別れの切なさを歌っている。『不思議なまんま』のようにサビの語尾で韻を踏み続けることで、インパクトを与える歌詞もある。

 

〈実名告白します〉というフレーズがから始まる『左恋』は、歌が始まった瞬間にドキッとして引き込まれてしまう。

 

左恋

左恋

  • indigo la End
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

そんな印象的な歌詞を川谷絵音が様々な表現方法で歌う。

 

力強く歌ったり、裏声を駆使して切なく歌ったりと。だから歌声や歌詞が耳から離れない。集中して聴いてしまう。その歌声は普段の「ツイッタラー川谷絵音姿」の姿からは想像できない歌声だ。

 

アルバムを聴き終わった時には、深い余韻に浸ってしまう。どうしてもBGMにできない音楽なのだ。

 

そんな「ツイッタラー川谷絵音」も今作は特に自信作なのだろう。音楽への熱い思いを感じるツイートをしていた。

 

 

そのツイートは普段のふざけたことしか言わないツイッタラーとしての姿からは、想像できない発言である。しかしそれも納得の素晴らしい作品であることは、聴けば理解できるだろう。

 

川谷絵音の本業はツイッタラーではなくミュージシャンなのだ。

 

今作は『夜行秘密』というアルバムタイトルの通り、夜をテーマにした楽曲で構成されている。夜の深い時間に一人で浸りながら聴きたい作品だ。

 

しかし心地よいのに刺激的な不思議なアルバムだから、夜にお酒を飲みながら聴いたり、読書をしなが聴くような、BGMとしての音楽ではない。

 

派手さはないけれど、しっかりと聴くと発見がいくつもある作品で、夜の一人の時間に集中して音楽を聴くという楽しみを与えてくれる作品だ。

 

『夜行秘密』は自分だけしかしらない秘密の夜の時間を過ごす時に、一人で集中して聴きたい名盤である。

 

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夜行秘密 (初回限定盤A Blu-ray)

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  • アーティスト:indigo la End
  • 発売日: 2021/02/17
  • メディア: CD