2020-02-13 モンスターアイドル・豆柴の大群『ろけっとすたーと』が良いと思う理由(歌詞・感想・レビュー・評価) レビュー 豆柴の大群 クロちゃんは天才だと思った 白雪姫 あなたは 毒林檎と知ってても 食べたでしょ? 歌始まりの最初のフレーズ。素晴らしい歌詞に思った。作詞したクロちゃんは天才だと思った。このフレーズで曲に引き込まれてしまった。 豆柴の大群の新曲『ろけっとすたーと』の歌詞。 自分は白雪姫ではない。しかし「白雪姫 あなたは」というフレーズによって、自分が白雪姫になった気分になってしまう。 このフレーズのすごいところは「白雪姫」から始まりリスナーに白雪姫が出てくる歌と思わせた後に「あなたは」と語りかける部分だ。「あなたは」と語りかけられるので、まるで自分に対して話しかけられている気分になる。リスナーを白雪姫として扱う歌詞になっている。 その後に続くのが「毒りんごと知ってても食べたでしょ?」だ。 リスナーを白雪姫にさせた後に問いかける。リスナーは白雪姫になったつもりで考えてしまう。「毒りんごと知ってても食べたかなあ?」と。 一瞬でリスナーを楽曲の世界観に引き込む歌詞。歌の始まりとしては完璧なフレーズに思う。工夫が施されていて素晴らしい。 『ろけっとすたーと』の魅力的な部分は歌詞だけではない。メロディにも工夫が施されている。 『ろけっとすたーと』は変なメロディ 『ろけっとすたーと』は変なメロディだ。 音階が上下することが多いJ-POPと違い、音階はあまり上下しない。女性ボーカルの曲としてはキーが低い。特にAメロは男性が歌いやすいキーになっている。 そのため「歌う」というよりも「語る」に近い聴こえ方がする。そのためリスナーに語りかけるような聴こえ方になる。 歌詞の言葉が途切れることも多い。 白雪姫 / あなたは / 毒林檎と知ってても / 食べたでしょ? 「/」で区切った部分で歌が途切れ間ができている。その間も長い。 スムーズに進まないメロディにもどかしさを感じる。一般的なJ-POPはその間を詰めるようなメロディにしたり、語尾を伸ばして間を埋めることが多い。 しかしもどかしいからこそ「何で間が空くんだよ」と感じて印象に残ってしまう。そして間があるから考えてしまう。間が空いた短い時間で考えてします。「自分は毒りんごと知っていても食べただろうか?」と。 そうじゃないと/ ドラマチックな/出会いが/待ってないよね? その後も質問系の歌詞が続く。これも最初のフレーズと同じようにフレーズが細かく区切られ、長い間がある。 同じAメロなのに文字数が違うためメロディが一部違うことにももどかしさを感じる。 もどかしさによって「何でメロディが違うんだよ」と感じて印象に残ってしまう。そして間があるから考えてしまう。間が空いた時間で考えてしまう。「ドラマチックな出会いが待っていないのだろうか?」と。 曲がり角でぶつかる出会い サイドステップで踏みつぶした恋心が Bメロの不安定なメロディにももどかしさを感じる。 特に「踏み潰した恋心が」の部分で突如早口になりメロディも変化する部分がもどかしい。そこから強引にサビにつなげようとするメロディで不思議な感覚になる。 しかしサビは直球でキャッチーなメロディなのだ。 AメロやBメロで歪なことをしていたこととのギャップでサビのポップさが際立つ。自然とサビのメロディを覚えてしまう。サビを魅力的に聴かせるための前振りとしての歪なメロディだったのだ。 天性の才能により作られたのか、計算して作ったのかはわからない。どちらにしろクロちゃんには個性的なメロディを作る才能があるようだ。 2番で主人公が変わる歌詞 本当の自分を見てもらったら顔が爆発シンデレラ 1番のAメロでは「白雪姫 あなたは」とリスナーに語りかける歌詞だった。2番では「本当の自分を見てもらったら顔が爆発シンデレラ」というフレーズからAメロが始まる。 これはリスナーに語りかけているわけではない。アイドルとして自分のことを歌っている。 アイドルとして活動している時は素の自分とは違い「アイドルとして」のキャラクターを作ったり演技をしている。そのため素の自分を見られたら恥ずかしいという「アイドルあるある」をメッセージとして取り入れている。 1番ではリスナーを主人公にして楽曲の世界に引き込んだが、2番ではリスナーにアイドルへの親近感を感じさせ、歌っているアイドルに興味を持たせる。 曲がり角でぶつかる出会い サイドステップで踏み潰した恋心が 1番のBメロでは「ファンとアイドルが出会う様子」を表現しているようにも受け取れる。 明日この世が終わろうとしても 最終ベルはならさない 魔法をかけたんだ 2番のBメロではアイドルが「ファンにいつまでも夢をみさせる様子」を表現しているようにも感じる。 あいらぶゆーより(ゆーらぶあい) しかしサビは1番も2番も全く同じ内容なのだ。 アイドルもファンも愛すよりも愛されたいと思っている。アイドルとファンは永遠に結ばれない関係であることを表現している。切ない歌詞に涙が出そうになる。つまりクロちゃんとカエデも永遠に結ばれない。 『りスタート』よりも進化した歌詞 歌詞全体を見た時、クロちゃんの作詞の技術が『りスタート』の時よりも成長しているように感じた。 白雪姫 あなたは 毒りんごと 知ってても 食べたでしょ? そうじゃないとドラマチックな出会いが待ってないよね? 曲がり角でぶつかる出会い サイドステップで踏み潰した恋心が ※あいらぶゆーより(ゆーらぶあい) けど逃げ出しちゃう(現状に) 強めのエルボー(かちあげて) タックルするぞ(全力で) 出来ないことからしるしをつけて地図を作っちゃえ あいらぶゆーより(ゆーらぶあい) けど逃げ出しちゃう(現状に) ババロアパンチ(美味しいよ) タピオカキック(流行ってる?) チワワを外に飼い慣らし実験 印象に残るため前のめり※ 本当の自分を見てもらったら顔が爆発シンデレラ 明日この世が終わろうとしても 最終ベルはならさない 魔法をかけたんだ ※部分繰り返し×2回 歌詞が全体としてまとまっていて、Aメロ→Bメロ→サビで内容が繋がり、内容がわかりやすくなっている。 『りスタート』も込められた意味が伝わる歌詞ではある。しかし意味不明な比喩表現が多く分かりづらかった。 『ろけっとすたーと』も「ババロアパンチ」「タピオカキック」など個性的な表現を使っているが、アイドルソングとしてかわいらしさを引き出す良いフレーズに思う。クロちゃんの言葉の表現方法や歌詞のまとめ方が丁寧になった。伝わる歌詞になった。 しかし「チワワを外に飼い慣らし実験」は意味不明。 印象に残るため前のめり この部分がクロちゃんの作詞家としての才能を最も感じるフレーズに思う。このフレーズはダブルミーニングになっているのだ。 歌詞では「印象」となっているが「一緒」と歌っているように聴こえる。 豆柴の大群はクロちゃんプロデュースの『ろけっとすたーと』と同時に、WACKプロデュースの『大丈夫サンライズ』という楽曲をYouTubeにアップロードした。 『ろけっとすたーと』の再生数の方が『大丈夫サンライズ』よりも多ければクロちゃんがアドバイザーとして今後も豆柴の大群と関わるという『水曜日のダウンタウン』の番組企画だ。 つまり「印象(一緒)に残るために前のめり」というフレーズには「印象に残る楽曲でMVの再生数を伸ばす」という意味と「クロちゃんと豆柴の大群が一緒に残るため前のめりにアピールする」という意味が込められているのだ。 「前のめり」であることはサビから伝わる。サビの回数が多いのからだ。4分の曲で6回サビがある。正直くどい。 しかし繰り返されることでサビを覚えてしまう。印象には残る。一緒に残るためにも前のめりな曲を作ったことが伝わる。 『ろけっとすたーと』にはクロちゃんから豆柴の大群への想いがこもっている。クロちゃんから豆柴の大群への愛が込められていることを感じる。 『大丈夫サンライズ』よりも好きだと思った理由 WACKのプロデュース作品である『大丈夫サンライズ』を聴いて、クオリティの高さに流石と思った。 『大丈夫サンライズ』は聴けばすぐにWACKが関わっているとわかるサウンドメイク。歌詞やメロディもクロちゃんと違ってツッコミどころがない。メッセージがまっすぐ突き刺さる。かっこいい楽曲だ。 しかし自分は『大丈夫サンライズ』よりも『ろけっとすたーと』を魅力的に思った。『ろけっとすたーと』には今までのWACKになかった新しさを感じたからだ。 『ろけっとすたーと』は王道アイドルソングを感じるサウンドではある。しかし歪んだエレキギターの音がAメロとBメロでは印象的に編曲されている。ベース音もゴリゴリだ。そこに打ち込みのキラキラしたサウンドが味付けされている。それによって「アイドルソングらしさ」を感じる仕組みだ。 つまり松隈ケンタ率いるSCRAMBLESのサウンドを元に、クロちゃんの作曲を生かすためのアレンジをしているのだ。 第一期BiSは『アイドル』というネタ曲で王道アイドルサウンドにも挑戦していたが、これは松隈ケンタのサウンドをあえて取り入れないようにしている。 それに対して『ろけっとすたーと』では松隈ケンタの個性もしっかり感じるのだ。その上で今までにない新しさも感じるのだ。松隈ケンタとして王道アイドルソングを編曲したら『ろけっとすたーと』になったような面白さを感じる。 BiSH / BiS / GANG PARADE / EMPiRE / CARRY LOOSE / 豆柴の大群 WACKには豆柴の大群を含めて6組が所属している。音楽性や方向性は殆ど被ることなく活動している。 しかし豆柴の大群は方向性や音楽性がまだ定まっていない。『大丈夫サンライズ』は良い曲だとは思うが、BiSHが歌た方がエモーショナルになると感じたし、EMPiREが歌った方がクールな曲になると思った。豆柴の大群としての個性を感じなかった。 『ろけっとすたーと』は今までのWACKグループにはなかった方向性の楽曲だ。これが豆柴の大群の音楽性で個性に思った。 あえてWACKが王道アイドルソングを作ってみるのも面白いかもしれない。新しいタイプの音楽が聴けるのではとワクワクする。 『ろけっとすたーと』というタイトルも良い。ロケットスタートして一気に売れてほしいという、クロちゃんの想いを感じる。技術や才能も音楽には重要だが、それ以上に想いが重要だ。想いが感情を動かし感動させるのだ。 だから自分は『ろけっとすたーと』が好きだ。豆柴の大群もロケットスタートを切って令和のアイドルシーンに爪痕を残して欲しい。 ↓関連記事↓ 大丈夫サンライズ - Single 豆柴の大群 J-Pop ¥204 ろけっとすたーと - Single 豆柴の大群 J-Pop ¥204