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春に聴きたい『桜ソング』おすすめの名曲を2001年〜2020年のリリース年ごとに紹介する

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 2001年から2020年までの20年間の『桜ソング』の個人的なおすすめ曲をまとめました。

 

リリース年ごとに1曲ずつ紹介し計20曲紹介しています。21世紀に入ってから20年間の『桜ソング』を聴くことでで20年間の日本の音楽シーンの振り返りもできるかと思います。

 

 

2001年 GOING STEADY『佳代』

佳代

佳代

  • GOING STEADY
  • ロック
  • ¥153
  • provided courtesy of iTunes

 

 ロックやパンクは反骨精神を持っていて尖っているものだと思っていた。ゴイステもそのような曲もある。でもそれだけではないということもゴイステは教えてくれた。

 

そんな自分のパンクに対するステレオタイプの価値観を壊してくれた曲の一つが、GOING STEADYの『佳代』だ。

 

真っ直ぐすぎるぐらいに真っ直ぐな歌詞。優しいメロディ。でも演奏は荒々しい。その組み合わせが胸に沁みた。突き刺さった。自分とは関わりのない『佳代』という女性のことを歌っている歌なのに、歌詞が真っ直ぐすぎるから感情移入してしまう名曲。 

 

2002年 TOKIO『花唄』

花唄

花唄

  • アーティスト:TOKIO
  • 発売日: 2002/03/06
  • メディア: CD
 

 

鼻歌で歌いたくなるような音階が上下するキャッチーなメロディの『花唄』。

 

〈花が咲く 理由はないけど〉と歌いだすのに〈僕らがいる 意味は奪えない〉と後半で歌う歌詞が良い。花が咲く理由はなくとも僕らがいる意味はある。さらにいうと花が咲く理由はなくとも、花が存在する理由はある。

 

〈泣き出しそうな僕のために舞う花吹雪〉という歌詞から「花が存在する理由」もはっきり告げずとも伝わる。

 

切なさを感じる歌詞なのに前向きな応援ソング。

 

2003年 森山直太朗『さくら(独唱)』

 

森山直太朗はアコースティックギターの名手だとも思う。歌ももちろん良いのだが、彼の弾き語りは素晴らしい。CDでは編曲が凝った曲も多かった。音作りにこだわった楽曲もある。

 

しかし『さくら(独唱)』は歌だけで勝負している。

 

構成はAメロ→Bメロ→サビとJ-POP的な構成だが、音を重ねて華やかにするJ-POPとは違いシンプルな演奏。それが当時のJ-POPとしては新鮮だった。新しいことをやって新鮮さを感じさせるのではなく、歌の原点に立ち返ったことで新鮮に感じさせた珍しいタイプの楽曲だ。

 

シンプルに歌や曲の持つ力で勝負して、それがしっかり伝わってヒットした名曲に思う。

 

J-POPの枠を飛び出して卒業ソングの定番として合唱されることが多いことも納得。

 

2004年 フジファブリック『桜の季節』 

 

フジファブリックのメジャーデビュー曲『桜の季節』不思議なメロディと不思議な歌声。バックは複雑なフレーズが絡み合った演奏で高い完成度が高い。

 

〈桜が枯れた〉という表現と〈桜のように舞い散る〉という桜に対して二つの表現を使っていることがこの曲のポイントに思う。それに関しては過去に記事を書いたのでそちらを読んでほしい。邦ロックシーンきっての桜ソングの名曲。

 

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2005年 嵐『サクラ咲ケ』

サクラ咲ケ

サクラ咲ケ

  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

爽やかなメロディと疾走感あるバンドサウンドが特徴的な曲。

 

応援ソングだが他の応援ソングとは違う個性があるように思う。主人公が自分で自分を応援している。自分を応援した後に”君”を応援する。まずは自分を奮い立たせなければならないというメッセージが込められているのだ。

 

それが応援ソングとして珍しい表現方法に思う。応援する側もリスナーと変わらない人間だということが伝わってくるので、歌詞により説得力が増す。それをアイドルの嵐が歌うことで多くの人に勇気を与えてくれる。

 

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2006年 藍坊主『桜の足あと』

 

爽やかな曲調でキャッチーなメロディの曲。しかし演奏はギターが印象的なロック。その組み合わせが良い。

 

〈たんたん〉〈とんとん〉〈のんのん〉など4文字の擬音をいくつも使用した歌詞が印象的。言葉遊び的なフレーズだが、その後に続く歌詞の展開と繋がっていくので、言葉遊びに意味を持たせる歌詞。

 

〈私は飛べない〉と前半で歌いつつも最後は〈歩いてゆけそう〉に繋げてまとめる歌詞も流石。

 

2007年 YUI『CHE.R.RY』

 

YUIの代表曲で名曲。

 

好きな相手とメールのやり取りをしている恋の始まりの歌。当時中高生にも人気だったアーティストがメールのやり取りをテーマに曲を作ったことからも、時代の変化を象徴しているような曲に思う。

 

この曲の面白いところは歌詞の流れでメールのやり取りとわかるのだが「メール」という言葉を出していないところだ。

 

歌詞の流れや情景描写でメールでやり取りしていることが伝わる歌詞なのだ。それが粋にも思うし、文章でなく歌詞だからこそできる表現に思う。

 

〈指先で送る君へのメッセージ〉というフレーズで、メールを使ったコミュニケーションの魅力を一言で表現してしまっていることがすごい。

 

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2008年 エレファントカシマシ『桜の花、舞い上がる道を』

 

桜に対して〈舞い散る〉ではなく〈舞い上がる〉という表現を使うことが個性的。 その表現によってか「風は吹いているのか」「舞い上がると思うほどの量の桜の花なのか」など一言でより深い想像ができる表現になっている。

 

歌詞の内容は遠い昔を振り返って現在と比べているような歌詞。ベテランだからこそ書ける重みがある歌詞に思う。

 

サウンドは力強い。エレカシのロックバンドとしての凄みを感じる。ストリングスも使っているが、バンドの演奏の隠し味的に使われているので、バンドサウンドが印象的な楽曲。

 

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2009年 AKB48『10年桜』

 

イントロには『仰げば尊し』のメロディを引用して卒業ソングということを始まった瞬間に理解させる編曲は見事。

 

ボーカルには難有りだが曲自体は作り込まれているように思う。王道J-POPの流れで編曲は王道アイドルソング。しかしサビでリズムパターンが大きく変化し、リスムに合わせた歌メロになる部分が個性的で印象的。

 

基本的には王道をなぞっているので心地よく聴けても印象に残りづらい曲だが、このサビの変化によって印象に残る仕掛けになっている。

 

2010年 放課後ティータイム『天使にふれたよ!』

 

あずにゃんペロペロ (^ω^)

 

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2011年 miwa『春になったら』

 

〈春になったら遊びに行こうなんて貸してた教科書のすみっこ落書き残ってるき〉というフレーズと〈君からのメール見たよ〉というフレーズがあるmiwaの『春になったら』。アナログのやりとりとデジタルのやり取り両方を曲中に登場させる部分が2010年代の表現に思う。

 

YUI『CHE.R.RY』は〈メール〉という単語を出さずにメールのやり取りを歌詞で表現していたが、miwaは〈メール〉という言葉を出している。〈携帯〉〈電話〉という言葉を出すことから、メールだけでなく携帯電話によるやり取りを表現したかったのだと思う。

 

学生が携帯を使いこなすことが当然の時代になったことが歌詞からもわかるし、携帯を使いこなしコミュニケーションを取っている描写があるから、若者に支持された楽曲になったのかもしれない。

 

 

2012年 泉まくら『春に』

 

泉まくらの『春に』はポエトリーリーディングで歌詞のメッセージが真っ直ぐ届く。

 

春をテーマにした曲は出会いと別れや新しいスタートをテーマにすることが多い。前向きな曲も多い。切ない曲もどことなく未来への希望を感じる曲もある。

 

しかし『春に』は新天地でのスタートを歌っているが、明るい歌ではない。別れの切なさを歌うわけでもない。絶望と悲しさについて歌っている。だがそれにリアルを感じる。このような歌に共感して救われる人もいるのだと思う。誰もが希望通りの望んだ未来へ進めるわけではないのだから。

 

〈戸惑いの中 置いてきぼりの春が来る〉

 

この言葉に重みとリアルを感じるのは、自分が”前向きなだけの音楽”を求めていないからかもしれない。

 

2013年 UNISON SQUARE GARDEN『桜のあと (all quartets lead to the?)』 

 

基本的には前向きな歌詞なのに〈愛が世界を救うなんて僕は信じないけどね〉と歌ってしまうのがロックバンドだなと思う。

 

〈エレキギター〉〈キック リズムを打て〉〈ベース〉と楽器の名前を出す部分もロックバンドだからこその歌詞に思う。そもそも「桜」が歌詞に出てくるが「春」であることを重視している内容ではない。どの季節でも成立する内容だ。春をテーマにしたのではなく、歌詞の流れや伝えたいメッセージのために「桜」が出てきたように感じる。それが他の「桜ソング」とは違うように思う。

 

ドラム、ベース、ギター、ボーカルの四重奏はユニゾンの個性しか感じない演奏。「桜ソング」というよりもキレッキレのユニゾンの名曲の一つという感じだ。

 

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2014年 でんぱ組.inc『サクラあっぱれーしょん』

 

個人的に女性アイドルソングの桜ソングではダントツの名曲だと思っている。ナンバガやフジファブリックなど多くのロックバンドを発掘した加茂啓太郎は自分の葬式で『サクラあっぱれーしょん』を流したいと語っていた。

 

ポップで明るい楽曲歌だけでなくイントロのリフも印象的。曲間にもこのリフは流れる。曲の要とも言える部分だ。歌というよりもセリフに近いような歌詞の詰め込み方。

 

曲構成も独特。Aメロ→Bメロ→サビの構成だがBメロが長い。Bメロでサビかと思うぐらいに盛り上げる。テンションを上げさせたままサビに行くので、さらにリスナーのテンションが上がる。個性的な部分に感じる。

 

そして意味不明言葉遊びのような歌詞が続き、聴き取りづらいメロディが続くが〈君の未来を明るく照らすなんてお茶の子さいさいさい〉など重要なメッセージの部分は聴き取れるようになっているのも、よく考えられている。

 

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2015年 きのこ帝国『桜が咲く前に』

 

とても丁寧なバンドのアンサンブルに思う。必要最低限の音でありながら必要不可欠な音で構成された演奏。アコースティックギターの音も印象的だが、イントロの演奏やサビの演奏からはオルタナティブロックの香りも感じる。

 

この曲は「桜ソング」で歌詞に桜という言葉が出てくるが、桜が咲いている様子も散る様子も描かれていない。その代わり〈粉雪が頬を濡らした〉という描写があるように雪が降る描写がある。

 

桜が咲く前の切なさについて歌った楽曲は珍しいように思う。きのこ帝国はその切なさをしっかりと表現して名曲にした。

 

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2016年 コアラモード.『さくらぼっち』

 

爽やかな王道ポップス。曲も編曲も歌詞も良い。王道で安心して聴ける上に細かい部分まで作り込まれている。音作りが丁寧だ。ストリングスを活かした優しいサウンドにしつつも、ピアノの演奏が曲の要になるような印象に残るフレーズを弾いている。

 

この曲はTikTokでバズった曲でもある。サビの歌詞に合わせて友人とペアダンスをする動画が流行ったのだ。それはリリースから2年後の2018年の出来事。楽曲自体に力があるから時間が経ってからのヒットに繋がったのだと思う。

 

2017年 go!go!vanillas『サクラサク』

サクラサク

サクラサク

  • go!go!vanillas
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

メロディは歌謡曲的。歌詞も70年代の歌謡曲のようなノスタルジーを感じる雰囲気で文脈を読ませるような粋な表現に思う。『木綿のハンカチーフ』のような手紙でのやり取りをしているような歌詞。メールやLINEのやり取りが当然になった現代では珍しいテーマ。

 

しかし演奏はガレージロック。ギターのリフがカッコいい。それが懐かしくも新鮮に感じる理由に思う。

 

よく考えると日本のロックシーンの真ん中でガレージロックをやっているバンドは珍しい。それもバニラズの個性で魅力なのだと思う。

 

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2018年 クリープハイプ『栞』

 

クリープハイプ流の春の別れと出発の曲。クリープハイプはテクニカルな演奏をするわけではない。しかし演奏が始まった瞬間に「クリープハイプの演奏だとわかる個性がある。『栞』もドラムソロからギターとベースの音が重なった瞬間に、クリープハイプにしか鳴らせない演奏になる。

 

尾崎世界観のハイトーンボイスや独特な歌詞が注目されがちだが、バンドとしても個性的なのだ。

 

『栞』の歌詞が独特なのは登場人物の人生を本に書かれた物語に例えていることだ。〈句読点のない君の嘘〉〈ひらひら舞う文字が綺麗〉という文字に絡めた比喩表現が使われている。立ち止まってしまっても、そこに挟んだ栞が〈今を教えてくれる〉と立ち止まることにも意味があることを伝える。

 

クリープハイプにしかできない演奏と尾崎世界観にしか表現できない歌詞による、少し捻くれた応援ソングの名曲に思う。

 

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2019年 Aimer『花びらたちのマーチ』

 

文句のつけようのない名曲だ。それに加えてMVに俺たちの佐々木美玲が出演していることが素晴らしい。

 

2020年 GeG『I gotta go』

 

ミドルテンポで落ち着いたトラック。ノスタルジーを感じる優しいメロディ。落ち着いた声色のラップ。 それが組み合わさって心地よくも切ない曲になっている。

 

美しい声色の女性ボーカルとそれに寄り添うような優しい男性ボーカル。その組み合わせが素晴らしい。

 

ヒットしたわけでもなく知名度があるアーティストの作品ではないが、2020年代の始まりにふさわしい「桜ソング」に思うので是非聴いてほい。

 

まとめ

2001年 GOING STEADY『佳代』

2002年 TOKIO『花唄』

2003年 森山直太朗『さくら(独唱)』

2004年 フジファブリック『桜の季節』 

2005年 嵐『サクラ咲ケ』

2006年 藍坊主『桜の足あと』

2007年 YUI『CHE.R.RY』

2008年 エレファントカシマシ『桜の花、舞い上がる道を』

2009年 AKB48『10年桜』

2010年 放課後ティータイム『天使にふれたよ!』

2011年 miwa『春になったら』

2012年 泉まくら『春に』

2013年 UNISON SQUARE GARDEN『桜のあと (all quartets lead to the?)』 

2014年 でんぱ組.inc『サクラあっぱれーしょん』

2015年 きのこ帝国『桜が咲く前に』

2016年 コアラモード.『さくらぼっち』

2017年 go!go!vanillas『サクラサク』

2018年 クリープハイプ『栞』

2019年 Aimer『花びらたちのマーチ』

2020年 GeG『I gotta go』