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【レビュー】カネコアヤノの新曲『爛漫』は捻くれていて尖っている(歌詞・感想)

少しでも光になれたら。一緒にがんばろう。

 

 

両A面シングル『爛漫/星占いと朝』の発売日に投稿されたカネコアヤノのツイート。少しだけ、意外なツイートに思った。

 

最近のカネコアヤノは多くは語らない。ライブのMCは人気が出ることと比例して少なくなっている。SNSでの発信量も減ってきた。意識的に言葉ではなく音楽で語ろうとしているアーティストに思う。

 

だから「少しでも光になれたら。一緒にがんばろう。」というツイートを以外に思った。久々に音楽以外で力強いメッセージを届けるカネコアヤノを見た気がした。

 

シングルを聴いた。収録されている2曲はどちらも素晴らしい曲に思った。演奏も歌声も最高だ。力強い歌声と演奏なのに、聴こえてくる音色は優しい。そんな不思議で魅力的なカネコアヤノの音楽が力をくれる。

 

 

個人的には『爛漫』の方が好みだ。歌も演奏も歌詞も、全てが胸に突き刺さった。

 

尖った歌詞

 

こないだ夜道をあるいていた

発行してる 赤いみのり

熱でうなされて見た夢は

東京の空 ピノキオの星

枕元で女神が抱き寄せてくれた

わかってたまるか わかってたまるか 

わかってたまるか 涙が溢れる

 

お前は知るのか

季節の終わりに散る椿の美しさを

身体が火照るような赤、赤、赤い色

ぼくの ぼくの心の様

 

うまれてしまった そのせいで

ぼくにはできるお前を守る

珈琲にミルクが溶けてゆく

名前もない 快楽のため

自暴自棄よりも走るしか

明るい部屋はないんだよ

 

お前は知るのか

季節の終わりに散る椿の美しさを

身体が火照るような赤、赤、赤い色

ぼくの ぼくの心の様

心の様 心の様

(カネコアヤノ / 爛漫)

 

力強い言葉が並ぶ歌詞に思う。でも捻くれていて尖っている歌詞にも思う。暗い内容なのか明るい内容なのか、それもリスナーによって捉え方は変わりそうだ。

 

捻くれているのにリスナーに寄り添ってくれているような不思議な歌詞にも思った。捻くれ者にはそのように聴こえるのかもしれない。自分には『爛漫』は応援歌に聴こえた。

 

わかってたまるか

わかってたまるか

わかってたまるか

 

曲中に繰り返されたこの言葉が、胸に突き刺さった。

 

「わかってたまるか」と思うことが自分は多い。特に最近は自分の身の回りだけでなく、自分の好きなライブハウスという場所への世間のイメージに対しても、色々と思うことがある。「わかってたまるか」と。

 

「君のことをわかっているよ」なんて上っ面の言葉で励まされても自分は何も響かない。でも『爛漫』の主人公も捻くれてている。自分と同じように。

 

「わかってたまるか」という言葉は「わかってほしい」の裏返しでもある。

 

かと言って「わかるよ」なんて言われても捻くれ者は素直に受け取らない。「わかってたまるか」と歌ってくれるから、自然と共感してしまう。同じ気持ちでいるのだと伝えてくれているようで、寄り添ってくれた気がしてくる。

 

 

ひねくれつつも背中を押す歌

 

うまれてしまった そのせいで

ぼくにはできるお前を守る

 

素直ではないのに真っ直ぐさも感じる独特な表現。産まれたことも生きていることにも特に感謝していないようなスタンスの捻くれ者が、生きる意味を捻くれながら伝えている。愛のある言葉だと思う。

 

リスナーを応援している歌ではない。内向的な音楽かもしれない。でも捻くれ者の自分は同意や共感を求めようとしてくる曲よりも、少し突き放してくれるぐらいが自然と共感してしまう。

 

でも、優しい歌詞だとも思う。

 

自暴自棄よりも走るしか

明るい部屋はないんだよ

 

ぶきらぼうなフレーズが多いのに、このフレーズだけ優しいのだ。「わかってたまるか」と思っている人たちに優しくエールを送ってくれているように思える。

 

 

 〈少しでも光になれたら。一緒にがんばろう。〉というカネコアヤノの言葉。誰もに伝わる応援ソングではないかもしれないが、カネコアヤノの音楽を求める人にとては光に感じる曲なのだ。この曲だからこその、このツイートの言葉なのだ。

 

 

カネコアヤノを表したような歌詞

 

お前は知るのか

季節の終わりに散る椿の美しさを

身体が火照るような赤、赤、赤い色

ぼくの ぼくの心の様

 

サビに出てくる〈椿〉と〈赤〉という言葉。これはカネコアヤノの生き様やスタンスを表しているように感じた。

 

赤い椿の花言葉は「控えめな素晴らしさ」「気取らない優美さ」という意味。西洋の花言葉では「You’re a flame in my heart(あなたは私の胸の中で炎のように輝く)」という意味だ。

 

カネコアヤノは派手な音楽ではない。気取っているわけでもない。

 

しかし聴けば個性的で素晴らしい音楽だとわかる。70年代の日本語ロックやフォークロックから影響を受けている音楽。それらの音楽は泥臭さを感じる音楽も多い。しかしカネコアヤノの音楽は優美で品がある。

 

しかしライブでは激しく叫ぶこともある。余計なMCはぜすに音楽で圧倒させる。ライブ中に熱い思いを語ったりはしない。ただただ胸の中の炎を音楽で表現している。それによって音楽が魅力的になっている。

 

まるでカネコアヤノは「椿」だと思った。椿の花言葉が誰よりも似合うアーティストに思った。

 

曲名に使われている『爛漫』は「花が咲き乱れる」「光り輝く」という意味がある。タイトルまでもカネコアヤノを感じる。

 

ぼくの ぼくの心の様

心の様 心の様

 

このように歌うカネコアヤノは『爛漫』では自身の存在そのものを歌っているとすら思えた。

 

でもこんなことをリスナーが思ったとしても、カネコアヤノは「わかってたまるか」と言うかもしれない。

 

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