2021-04-26 【ライブレポ・セットリスト】カネコアヤノ ワンマンショー 2020春 @中野サンプラザ 第一部 2021.4.23 カネコアヤノ ライブのレポート カネコアヤノ ワンマンショー 2020春 カネコアヤノの中野サンプラザ公演。本来ならば2020年の4月24日に行われるはずだった。 それが新型コロナウイルスの影響で延期を重ねた。それが2021年4月23日に50%以下のキャパにして、1日二回公演に変えて対応することで、ようやく開催された。約1年の延期である。 ライブタイトルは『カネコアヤノ『ワンマンショー 2020春』。去年と同じライブタイトル。何があっても開催するらしい東京オリンピックと同じく、2021年に開催しても数字は2020のまま。 2021年に2020年のライブをやるというケジメをつけるライブだとも思った。2020年をなかったことにはしない。そんな意思を感じる。 前半 バンドメンバーも含めて4人全員が全身黒で統一された衣装。赤や青や黄色などの派手な色の照明はない。暖色のランプのような色だけ。ホールのライブとしては、かなりシンプルなステージである。 演奏もシンプルなバンドサウンドだ。しかしシンプルでも力強い歌と演奏だから、ライブは成立する。むしろこの演奏と歌に無駄な装飾や演出など必要なく、音楽を引き立てる最小限のものだけでいいのだ。 1曲目の『アーケード』が始まった時点で、歌と演奏だけで成立するライブだと実感する。一瞬で心を奪われ圧倒させられる。次の『かみつきたい』で、客席を鋭い眼光で見渡しながら歌う姿にも引き込まれる。 かみつきたい カネコアヤノ J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes カネコアヤノの歌は力強い。音源での歌い方も良いのだが、ライブだと感情を剥き出しにして叫ぶように歌う。パンクの魂も感じる。聴いていてヒリヒリするしゾクゾクする。 同様にバンドの演奏も素晴らしい。長年同じバンドメンバーで活動しているだけあって、主役にすら感じる時があるほど個性があるし、歌声との相性も抜群だし演奏に唯一無二のグルーヴがある。 演奏スタイルも良い。『天使とスーパーカー』で林 宏敏(Gt) と本村 拓磨(Ba)が向き合って演奏する姿や『星占いと朝』で全員がBob (Dr)方を向いて目を合わせてから演奏する姿を見ると、このメンバーでなければならない意味を感じる。 星占いと朝 カネコアヤノ オルタナティブ・フォーク ¥255 provided courtesy of iTunes ひたすら音楽だけで感動させる。だから演出は最小限。2018年以降はMCもほとんどやらなくなった。この日もほぼ喋らずにひたすら演奏を続けた。音楽が最も重要で、音楽さえあえれば良いと思えるライブ。 『朝になって夢から覚めて』『窓辺』とスローテンポの楽曲では、演奏の流れや歌詞の内容に合わせて、歌唱表現を変えていく。1曲の中でドラマを見せられているような感覚だ。 演出や照明は最小限のライブではある。しかしここからは客席の壁や天井にも光が当てられ、会場全体に星空が映し出されているような空間になった。 「カネコアヤノ ワンマンショー 2020春」延期・中野サンプラザ公演にお越しいただいた皆様、スタッフの皆様、Ka na taさん、ありがとうございます。感染防止対策、開催内容変更に伴うアンケート等にもご協力いただき、ありがとうございました。 pic.twitter.com/dC9FJ5KMvv — カネコ商店(カネコアヤノ スタッフ) (@kanekoayanoinfo) 2021年4月24日 美しい音楽を美しい空間で聴く感動。そんな空間で聴く〈星が降りてくる夜の話〉という歌詞から始まる『抱擁』は素晴らしかった。この日のライブで特に感動したのがこの曲だ。 抱擁 カネコアヤノ オルタナティブ・フォーク ¥255 provided courtesy of iTunes 後半 本村拓磨がエレキベースからコントラバスに楽器を替え、何かしら叫んでから(何を言っていたかよくわからんかった)激しくソロで演奏を始める。そして『腕の中でしか眠れない猫のようにが始まる。 腕の中でしか眠れない猫のように カネコアヤノ オルタナティブ・フォーク ¥255 provided courtesy of iTunes 激しかったのは最初の木村の演奏と謎の叫び声だけ。落ち着いた雰囲気の胸に染み入る名曲が名演で届けられた。この後も落ち着いた楽曲が続く。それでも歌の力強さはある。だから真っ直ぐ胸に突き刺さる。 『孤独と祈り』で〈絵画よりも広いこの世の爆発は祈り〉と歌い『爛漫』で〈わかってたまるか 涙が溢れる〉と歌う声は力強くも切ない感情を感じた。だからしっかりと胸に染み入る。 爛漫 カネコアヤノ オルタナティブ・フォーク ¥255 provided courtesy of iTunes 「中の音の返しを歌以外を全部上げてもらっていいですか?すんません!」 ここまで挨拶すらせずに14曲連続で立て続けに演奏してきたカネコアヤノ。しかしここで少し照れながらスタッフに話しかけ、照れ笑いしながら観客に軽くお辞儀をした。 ここまで良い意味で緊張感ある雰囲気でライブが進んでいた。鋭い眼光で目を見開きながら歌っていた。それに圧倒させられ感動した。しかし彼女が喋ったことで空気が緩んだ。もちろん良い意味で。 緊張の糸が少しだけ解れ、穏やかな空気が流れる。先ほどとは違うステージも客席もリラックスした雰囲気の中で『僕ら花束みたいに寄り添って』で演奏が再開。ミドルテンポの明るい曲。 ぼくら花束みたいに寄り添ってカネコアヤノJ-Pop¥255provided courtesy of iTunes 〈感動している 些細なことで〉という歌詞は、ライブを観ている観客の気持ちを代弁しているように聴こえた。 かつては生で音楽を聴くことは、些細な趣味で楽しみだった。それがコロナ禍で変わってしまった。だから音楽を聴くという些細なことへの感動を、より実感する。 そしてカネコアヤノ自身もライブができるという、今までは当然で些細だったことについて、改めて感動しているのかもしれない。 『光の方へ』は希望に満ちていた。 光の方へカネコアヤノJ-Pop¥255provided courtesy of iTunes カネコアヤノがエレキギターを掻き鳴らす弾き語りから曲が始まり、そこにバンドの音が重なっていく。 隙間からこぼれ落ちないように するのは苦しいね だから光の方 光の方へ カネコアヤノは多くを語らない。メッセージ性のある歌詞を狙って書くことも無い。この歌詞はコロナについて歌ったわけでも無い。しかし魂を込めて音楽を作り奏でている。 だからかこの日の『光の方へ』は、とても力強く希望をくれる音楽に聴こえた。光が見えない世の中に、光の方へ少しだけ導いてくれた気がする。 最後に演奏されたのは『燦々』。太陽が明るく輝く様子を意味する言葉がタイトルの曲。この曲からも希望を感じた。 間違っても別に構わない次の日も君といれるかがずっと不安で燦々とした気持ちでいよう胸が詰まるほど美しいよ ぼくらは どうしても今の世の中に感じるモヤモヤと重ねてしまう。そのような曲でもないのに。 音楽は聴く環境や、その時の感情によって、受け取り方は変わる。だから自分はこの日の『燦々』に救われたと感じた。 「ありがとう」と一言だけ言ってカネコアヤノはステージを去った。すぐに終演のアナウンスか流れた。1日2回公演だからか、終演時間を早めるためにアンコールなしで終わる予定なのだおるか。 しかしアンコールの手拍子が続く。 ライブのアンコールは「お約束」な要素が強い。ほとんどのライブで定番イベントのように行われる。しかし終演のアナウンスが流れてもアンコールを求める拍手が続くことは、滅多にない。これは「お約束の拍手」ではない。 心の底から感動したからこその拍手だ。もしもアンコールがなかったとしても、感謝や感動を伝えたいという気持ちからの拍手だ。それぐらいに素晴らしいライブだった。 再びステージに出てきたカネコアヤノとバンドメンバー。本編はMC無しで駆け抜けたが、言葉でライブへの想いを語った。 「大変な時期なのに来てくれて嬉しいです。本当に来てくれてありがとうございます。今度やるときは、100%でいっぱいの人が入っている中でやろう。その時もまた来てくださいね。ありがとう!」 ここ数年はほとんどMCを行わないカネコアヤノ。短いながらも自身の思いを赤裸々にMCで伝えようとしたのは、かなり久々のことである。 アンコールは1曲。演奏されたのは『とがる』。 とがる カネコアヤノ J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes かわる!かわる!かわってく景色を受け入れろ カネコアヤノが叫ぶように歌う。最後に全ての想いを込めるように。感情を全て伝えるかように。 やはり『とがる』でも、コロナ禍のことや、今の自分の気持ちを音楽に重ねてしまった。 コロナ禍になってから世の中は大きく変わった。ライブの形も変わった。100%のキャパで行うことが難しくなり、観客は全員マスクを着用し、声を出さず静かに観ている。客席の雰囲気は以前と全く違う。 ステージからみた客席も、今までとは全く違う景色なはずだ。 だから『とがる』のサビは自身に言い聞かせるために、叫ぶように歌ったように感じた。そしてファンに対して音楽で喝を入れ、強く背中を押すような歌声にも聴こえた。 「絶対にまた会おうね」 演奏を終えてステージを後にする前、彼女は笑顔で挨拶をしてステージを後にした。音楽で力強く背中を押してくれたのに、最後の言葉は優しかった。 内容自体は良い意味でいつもと変わらない、キレッキレで最高でロックなカネコアヤノのライブだった。しかしいつも以上に、音楽を生で聴く意味や価値を感じさせてくれるライブでもあった。 かなりとがってるカネコアヤノの音楽は、光の方へ連れていってくれる。 カネコアヤノ『ワンマンショー 2020春』@中野サンプラザ 第一部 ■セットリスト 1.アーケード2.かみつきたい3.天使とスーパーカー4.星占いと朝5.栄えた街の6.ごあいさつ7.セゾン8.朝になって夢から覚めて9.窓辺10.りぼんのてほどき11.抱擁12.腕の中でしか眠れない猫のように13.孤独と祈14.爛漫15.僕ら花束みたいに寄り添って16.光の方へ17.愛のままを18.燦々 EN1.とがる ↓カネコアヤノの他の記事はこちら↓ 『よすが』 アーティスト:カネコアヤノ 発売日: 2021/04/14 メディア: CD