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【ライブレポ・セットリスト】くるり ライブツアー2021 at Zepp Haneda 2021.6.9(水)

くるり、久々のライブツアー

 

ロックは衝動だけではない。興奮させるだけではない。じわりと胸に染みるロックや、スっと胸に沁みるロックもある。くるりはそんなロックを鳴らしている。

 

『くるり ライブツアー2021』のZepp Haneda公演の初日。このライブを観て、改めてそう感じた。

 

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痺れるほどカッコいいのに、聴いていて心が穏やかになる。安心な音色なのに旅に出る日のような興奮をくれる。

 

これが「すごいぞ、くるり」と言われる所以だろうか。他の誰にも真似出来ないし、他には存在しないロックンロール。

 

「思いっきり泣いたり笑ったりできるような、最高のライブ」の一言に感想は収まるわけだが、それはめちゃくちゃ綿密な演奏とライブ構成の果てに生まれた答えである。深くこだわっているからこそ、簡単に感動してしまう錯覚に陥る。

 

それも「すごいぞ、くるり」と言われる所以だろう。

 

前半

 

この日のくるりは、ずっと自然体だった。

 

登場も自然体。リラックスした様子で「こんばんは。くるりです」とゆるく挨拶をした岸田繁。

 

演奏をすふ佇まいも自然体。しかし鳴っている音には緊張感がある。それが両立する不思議なバランスに魅了される。

 

1曲目の『琥珀色の街、上海蟹の朝』からそうだ。繊細な演奏で、音にあえて隙間を作りリズムを作る。音色や音のバランスにも徹底的に拘っているであろうライブアレンジ。

 

琥珀色の街、上海蟹の朝

琥珀色の街、上海蟹の朝

  • くるり
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  • ¥255
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観客は心地よく聴いているだけだ。メンバーも楽しんで演奏している。しかし音楽に真摯に向き合うからこそ生まれる緊張感もそこにはある。

 

音源よりも生々しいバンドサウンドで披露された『ばらの花』や、美しいメロディが引き立つ演奏だった『さよならリグレット』など、序盤は人気のシングル曲を立て続けに演奏する。

 

『ハイウェイ』は岸田がアコースティックギターを弾いていたものの、ビートは力強く身体に響く演奏に進化していた。

 

ハイウェイ<Alternative>

ハイウェイ

  • くるり
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  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

くるりはファンを煽ることはない。激しく盛り上げることもしない。名曲を名演で届け続けることで、じわりじわりとファンの胸を熱くさせる。それに感動する。

 

それでいて捻くれた変なバンドでもある。今回は新作アルバム『天才の愛』のリリースツアーだが、そこにも収録されていない未発表の新曲を披露したのだ。誰も知らない曲に動揺する客席。捻くれたセットリストだ。

 

しかしミドルテンポの美しく儚いメロディのフォーキーな曲に聴き入ってしまう。〈カレンダーをめくれば季節は変わるけれど 想いはポットの中にある〉という歌詞が印象的だ。セットリストの捻くれ具合も新曲のクオリティも、すごいぞ、くるり。

 

続いては『鍋の中のつみれ』。今までずっと未発表曲でお蔵入りしていた曲だ。

 

鍋の中のつみれ

鍋の中のつみれ

  • くるり
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前半4曲とは打って変わったマニアックな楽曲だが、バンドの凄みを感じる楽曲でもある。

 

後半に進むに連れ絡み合うようなグルーヴが生まれる。プログレッシブロックのように複雑なジャムセッションへと移行していく。そんな曲構成に凄みを感じる。

 

ファンは誰も腕を上げない。もちろんコロナ禍なので騒ぐこともない。しかし演奏に痺れて胸が熱くなる。そんな気持ちが共有された空気で満ちるフロア。これもロックの一つの形だ。

 

岸田「天空橋には初めて来ました。東京に住むなら天空橋にした方がいいと関西の知り合いに適当に言っていた」

佐藤「名前のカッコよさだけで言っていましたね。飛行機に乗る時だけは便利ですけど」

岸田「天才の愛というアルバムをリリースしたんですけど、その中からまだ1曲もやっていません。でも色々な曲をやるので楽しんでください」

 

会場のZepp Hanedaの最寄駅である天空橋駅。周辺にはなにもない。ライブハウスと少ない飲食店と空港しかない。ぶっちゃけ住むための住居もない。

 

やはりくるりは捻くれている。音楽だけでなく関西の知人に対しても捻くれている。真面目に受け取っていたら、関西の知人が可哀想。

 

新作に言及しつつも次に演奏したのは2009年リリースの『三日月』。捻くれバンドらしい曲順である。

 

三日月

三日月

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そしてフォーキーな演奏で夏をイメージをした歌詞の未発表の新曲を続ける。誰も知らない新曲だな、やはり名曲を名演で披露するので感動してしまう。すごいぞ、くるり。

 

個人的に前半で最もグッと来たのが『花の水鉄砲』だ。

 

花の水鉄砲

花の水鉄砲

  • くるり
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最近はライブでやる機会が少ないレア曲。くるりにしか作れないであろう不思議なメロディと、力強いバンドのグルーヴが印象的な名曲。

 

今回はそのグルーヴ感がより強まり、ズッシリと身体に響く演奏になっている。特にドラムの石若駿が生み出すリズムが素晴らしい。

 

やはりくるりはロックバンドだ。貫禄と個性を見せつけるタイプのロックバンドだ。

 

 

後半

 

岸田「大谷翔平がまた打ちましたね」

佐藤「だからライブ前にスカッとしましたね。たまたま大谷選手がメジャーに行った年にテレビで見て、こんなに美しい人なんだと知って惚れました。ずっと見ていたくなる。自分にとって、推しメンっていうやつ//////」

 

アイドルオタクが橋本奈々未について語るようなテンションで、ジャニオタが中島健人について語る時と同じ笑顔で、星野源が新垣結衣について語るような照れ方で、推しメンの大谷翔平について語る佐藤征史。

 

岸田「自分は重箱の隅を突くような、なんJ民なので。野球好きの風下にも置けないやつ。そんな人間が作った曲をやります」

 

しかし岸田繁は野球や選手への愛を真っ直ぐには語らない。斜めな視点で語る。

 

アイドルオタクが秋元康について語るようなテンションで、ジャニオタが厄介なファンについて語る時と同じ渋い表情で、星野源がAVについて語るような嫌らしい喋り方で、捻くれた野球愛を語る。

 

余談だが星野源は300本以上のAV作品をDVD&Blu-rayで所有しているらしい。現在は処分したのだろうか。

 

そんなMCを挟んで披露されたのは、歌詞に野球選手の名前やニックネームが使われている『野球』。

 

野球

野球

  • くるり
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この日披露された楽曲の中では最もBPMが早くアップテンポの楽曲。歌から野球愛が伝わる。演奏から熱気が伝わる。それに痺れて盛り上がる。

 

さらに『さっきの女の子』を続けて盛り上がりを加速させる。

 

くるりとしては珍しいストレートな演奏のロックンロール。捻くれ者が素直になる瞬間は、めちゃくちゃカッコいい。

 

さっきの女の子

さっきの女の子

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盛り上げたかと思いきや『ハム食べたい』『潮風のアリア』で、うねるようなグルーヴで魅了する。音に圧倒され、演奏には感動する。

 

さらに別の表情を演奏で観せて魅せる。

 

『loveless』では優しい演奏と切ないメロディを届ける。ステージを紫色に染める照明が美しかった。My Bloody Valentineの『Loveless』のジャケットと同じ色の照明だ。これは一種のリスペクトの表明だろうか。

 

loveless <album edit>

loveless

  • くるり
  • ロック
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『リバー』では明るい演奏とポップなメロディを奏でる。サビを全員がユニゾンで歌う。ファンが歌えない代わりに、バンド全員で全力で歌っている。

 

それにグッと来た。ステージもフロアも多幸感に満ちていた。

 

岸田「今はマスクをしていますが、早くマスクを外せる世の中になって欲しいね。マスクも悪くないけれどな」

佐藤「マスクを外した瞬間に酸素が入ってきて、これが人間普通なんだと思いました。今みたいに普通じゃないのが続くのが嫌だなと思います」

岸田「ただでさえ息苦しい世の中やからね。でも今日はライブができて本当によかった。ありがとう」

 

捻くれ者のくるりが、素直で赤裸々な想いを語る。

 

くるりにとって久々のワンマンライブツアー。彼らもコロナ禍の影響を受け、2020年のツアーを中止している。だからこそ出てきた本心の言葉に思う。

 

タイトル通りにくるりのロックアンセムである『ロックンロール』が始まる。ビートがゆっくりと刻まれる。足早にならず確かめながらも、力強く背中を押してくれる演奏だ。

 

ロックンロール

ロックンロール

  • くるり
  • オルタナティブ
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たったひとかけらの勇気があれば
本当のやさしさがあれば
あなたを思う本当の心があれば
僕は全てを失えるんだ

くるり / ロックンロール

 

「金村!」と叫んだり「ハム食べたい」と嘆くこともあるくるり。

 

そんな変わり者が真っ直ぐなメッセージを歌う時、素直になった姿を一瞬だけ垣間見れた気がして、ものすごくグッとくる。

 

最後に演奏されたのは『東京』。彼らのデビュー曲であり代表曲だ。

 

東京

東京

  • くるり
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真っ直ぐなロックサウンドに、キャリア20年を超えるバンドによる貫禄を加えて演奏する。やはり衝動的なロックだけでなく、胸に沁みるロックもあるのだ。それを証明するような音楽をくるりはやっている。

 

ライブが行われた場所は東京。しかも羽田空港が近くにある会場。

 

もしかしたら地方から『東京』を聴きながら飛行機で上京し、現在は東京で働いたり学校に通うファンもいるかもしれない。この場所でこの曲を演奏する意味や必然性を感じてしまう。

 

アンコールの演奏も、胸に沁みるロックだった。

 

タイトル通り祈るように優しく歌われた『pray』も重低音が響いく痺れる演奏だった。

 

最後に演奏された『奇跡』もそうだ。優しさの奥に力強い芯がある演奏。音源と違いエレキギターの音が印象的になった音色。ロックチームくるりにしかできないロックを鳴らしてライブは終わった。

 

奇跡

奇跡

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最後に「みんな身体に気をつけて、また会いましょう」と岸田繁が一言だけ言って、全員が前にでてお辞儀をしていた。

 

退屈な毎日も当然のようにすぎていく
気づかないような隙間にさいた花
来年も会いましょう

くるり / 奇跡

 

終演後も『奇跡』の歌詞のせいで、余韻が醒めない。

 

かつてのように何も気にせずにライブを楽しめる世の中は、まだまだ戻って来ないかもしれない。それでもまたくるりに会えたらなあと思う。

 

次のツアーはまだ先の話だろう。その時もライブへ行けますように。ライブをやってくれますように。

 

くるりが素敵だったことをわすれないようにしつつ、来年も会いましょう。

 

くるり ライブツアー2021 at Zepp Haneda 2021.6.9(水)
■セットリスト

1.琥珀色の街、上海蟹の朝
2.ばらの花
3.さよならリグレット
4.ハイウェイ
5.新曲
6.鍋の中のつみれ
7.三日月
8.新曲
9.花の水鉄砲
10.野球
11.さっきの女の子
12.ハム食べたい
13.潮風のアリア
14.loveless
15.リバー
16.ロックンロール
17.東京

 

EN1.pray
EN2.奇跡

 

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