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【ライブレポ・セットリスト】くるり ライブハウスツアー2024 at 渋谷クラブクアトロ 2024年6月13日(木)

渋谷クラブクアトロは、多くの音楽ファンに嫌われている。フロアの前方に大きな柱が立っていて、それが邪魔でステージが見えない死角が生まれてしまうからだ。

 

でも自分はこの会場が嫌いでは無い。場所選びを間違えなければステージは観やすいからだ。最後列でもメンバーの表情が見えるほどの広さで、後方でもステージとの近さを感じながら楽しめる。ステージは高いので楽器を弾く手元も観やすい。ビルの最上階にあるため長い階段を登る必要があるのは億劫だが、全然悪い会場ではないと思う。

 

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だから渋谷クラブクアトロで行われるくるりのライブチケットが手に入ったことが嬉しい。普段はZepp以上の規模でワンマンを行うバンドなのだから、この小キャパで観れることは貴重である。しかも何の前情報も入ってきていないツアー初日だ。

 

開演時間ちょうどに登場したメンバーは、ツアー初日ではあるもののリラックスした様子だった。温かな拍手で迎え入れる観客はライブへの期待で興奮しているというよりも、穏やかに音楽が鳴るのを待っているような雰囲気だ。この心地よい空気は、くるりの音楽楽しむには最適である。

 

1曲目は『鹿児島おはら節』。 岸田繁がマンドリンとハーモニカを鳴らしながら始まり、そこにバンドが丁寧に音を合わせて、重厚なバンドサウンドへと変化していった。そのまま曲間なしで岸田がマンドリンをアドリブで爪引き「みなさん、こんばんは〜。くるりです〜」と癖のある節回しの挨拶をしてから『Hometown』をメドレーのようにつづける。アウトロでは長尺のジャムセッションになったりと、ライブだからこそのアレンジが加えられているのも最高だ。

 

前半は曲間なしでDJのように曲を繋げていく。3曲目の『リルレロ』も『Hometown』が終わるや否や松本大樹がギターリフを弾いて雪崩れ込むように始まった。 落ち着いたテンポの曲が続いていたが、コアなファンが喜ぶレア曲が続いたことや、グッとくるライブアレンジによって、フロアの熱気はジワジワと上昇している。

 

『コンバットダンス』も同じように曲間なしで続いたが、サビでは腕を上げたり身体を激しく揺らす観客もいたりと、いつも以上に観客は盛り上がっていた。初夏のシチュエーションにマッチしている『麦茶』も、かなりのレア曲ではあるものの盛り上がっている。キャパが小さな会場でチケット入手が困難だったためか、レア曲を求めるコアなファンが多いのかもしれない。

 

佐藤征史「コンバットダンスの時の岸田さんのスキャットがすごく良かったですね。ライブならではの特別さというか」

岸田繁「佐藤さんの髪の分け方もライブならではで良いですね」

佐藤征史「ツーブロックをやめようと思って髪を下ろして、生えかけてみっともない剃った部分を隠してるんですよ」

岸田繁「中川敬さんみたいな髪型やね」

佐藤征史「先輩の名前を使ってイジるのは止めてください!たしかに自分でも鏡を見て似てると思いましたけど」

 

序盤はコアなくるりファンが喜ぶレアな楽曲が続いたが、MCもコアな音楽ファンでなかれは伝わらないマニアックな内容だった。

 

岸田繁「ヒット曲ばかりやりましたが大丈夫ですか?」

観客「wwwwww」

岸田繁「まだまだヒット曲が続きます」

 

マニアックな楽曲を続けていたのに、ヒット曲ばかりと言い張る岸田。だが次に披露されたのは、知名度がそれなりに高い『シャツを洗えば』。松任谷由実とコラボレーションした楽曲で、それなりのヒット曲である。

 

爽やかで疾走感あるサウンドで、会場が華やかな空気で彩られる。ユーミンのパートは佐藤が歌ったりと、髪型だけでなく歌声でも“ライブならでは”な部分を佐藤は観客に伝えていた。

 

最近のライブでの定番曲かつライブで特に化ける楽曲である『Morning Paper』は、今回もライブならではの凄みがある。演奏力の高さを見せつけるような演奏をしつつも、中盤で岸田がアドリブでポップでキュートなフレーズを弾いたりと、メンバーは自由に演奏を楽しんでいるように見えた。連れられて観客の盛り上がりも上昇する。

 

岸田繁「Morning Paperは日本語訳すると朝刊という意味です。今の2曲は朝起きて洗濯した後に朝刊を読むという流れを表現しました」

佐藤征史「カフェラテも飲んでみたりしてね」

 

くるりのセットリストに隠された謎のテーマを説明する2人。

 

岸田繁「今日はヒット曲満載でやっています」

観客「wwwwww」

岸田繁「ここまで古いヒット曲をたくさんやってるきましたが、次はさらに古いヒット曲です」

観客「おお!!!」

岸田繁「ロマンティックな曲です」

 

演奏されたのは『スロウダンス』。岸田はアコースティックギターを、野崎泰弘はアコーディオンを弾くアレンジだった。温かくて優しい演奏と音色は、たしかにロマンティックで最高だ。そのまま曲間なしで岸田の弾き語りから『BABY I LOVE YOU』が続く。こちらも優しくて温かい演奏だ。小さなキャパの会場だからこそ、その温かみがダイレクトで伝わってくる。

 

穏やかな空気が流れる会場だが、次の曲で空気がピンと張り詰める。『ARMY』が演奏されたからだ。幻想的なサウンドと薄暗い照明が、壮大さと妖艶さを生み出していた。集中して演奏する演者が立つステージも、その演奏を真剣に聴き入る観客がいるフロアも、緊張感がある。たった1曲の間に全く違う空気に変えてしまった。

 

かなり久々に演奏された『永遠』では、人力の演奏でクラブミュージックを鳴らすかのような演奏で観客を踊らせる。そのような音楽は無機質さを感じるものだが、岸田が鍵盤ハーモニカを吹くことで温かさや泥臭さをサウンドに加えていることが面白い。

 

この日観客が最も湧き上がったのは『 ワールズエンド・スーパーノヴァ』だ。『永遠』からメドレーのように繋がりイントロが流れた瞬間、フロアから湧き上がるような歓声が響いた。自然と手拍子が巻き起こったりと、観客はめちゃくちゃ楽しそうに踊っている。

 

岸田のギターリフから『愛なき世界』を疾走感ある演奏で続け、『花の水鉄砲』を重厚な演奏で表現すると、フロアの熱気はさらに高まっていく。ライブ中盤にして盛り上がりのピークになった。その後のMCで佐藤が「くるりのライブってこんなに盛り上がりましたっけ?」と言ってしまうほどだ。

 

そんな熱いライブを繰り広げつつも、MCはまったりとしていて、2人は野球トークを雑談のように続けていた。

 

岸田「年齢重ねるとMCが長くなるんよ。昔、谷村新司さんのライブを観に行ったらMC30分ぐらい喋ってた さだまさしさんほどでは無いけどな」

佐藤「この間Scoobie Doのライブを観に行って、MCの時にタバコ吸おうと思って外で2本吸って戻ったら、まだMCしてた」

岸田「Adoはどれくらいライブで喋るんやろね?

佐藤「あまり喋らずにカリスマでいて欲しくないですね」

岸田「今日は気温が暑いねえとか言うんやろか」

佐藤「言わないで欲しいですね」

 

他アーティストのMC事情について、話に花を咲かす2人。くるりも谷村新司ばりにMCが長くなっている。くるりの2人にはAdoはフリートークが上手くて多忙のため1年で終えた『Adoのオールナイトニッポン』はなかなかに面白かったことを教えてあげたい。

 

中盤まで過去の楽曲が披露されるセットリストだったが、ここで「最近の曲もやります」と岸田が告げて、最新アルバムの楽曲が続け様に披露された。

 

まずは『朝顔』。名曲『ばらの花』のセルフオマージュといえるミドルテンポの楽曲で、観客の身体をを心地よく揺らす。朝顔をイメージしたであろう紫の照明も美しい。

 

CMソングでもお馴染みの『California coconuts』でも、しっかりと観客を楽しませる。ミドルテンポの曲調なため騒いで盛り上がる観客はいないものの、しっかりと音楽が伝わっているような良い雰囲気で会場が満たされている。

 

だかそんな観客が再び盛り上がった瞬間がある。それは岸田がミスをした瞬間だ。カポの位置を間違えて、高いキーで演奏を始めた。すぐに違和感に気づき「カポの位置間違えた!」と言って演奏を止めたものの佐藤に「新曲かと思いましたw」といじられ、観客も笑う始末である。ツアー初日だからミスも仕方がない。だがこれによって和んで良い空気になったとも感じる。その後の『In Your Life』は名演だった。

 

岸田がアドリブでギターを奏で、タイミングを見計らったドラムの石若駿のカウントから『ロックンロール』へと雪崩込む。ライブも終盤。演奏の勢いは増し、終演に向け盛り上がりを加速させる。この日1番に感じるほど多くの観客が腕を上げて盛り上がっているし、歓声も大きい。アウトロは長尺のジャムセッションになっていた。岸田と松本がユニゾンで同じフレーズを楽しそうに弾く姿が印象的だ。

 

最高の盛り上がりを生み、メンバー紹介をする岸田。これでライブも大団円かと思いきや「あともう一曲だけやらせてください」と小さく呟いて、最後の曲が演奏された。

 

最後に演奏されたのは『東京』。岸田がイントロを弾いた瞬間、喜びと驚きが混ざりつつも、真剣に聴かなければという想いも伝わるような、口から思わず漏れてしまったかのような歓声が、客席から響く。

 

『ロックンロール』で大団円したかのような雰囲気での追加曲なのでサプライズ感があったし、東京で聴く『東京』は格別だったりと、様々な理由からくる歓声だろう。ミドルテンポながらも演奏はエモーショナルで、岸田の歌唱だけでなく佐藤のコーラスも叫ぶような歌声だった。

 

感動的な余韻を残して終えた本編だったが、アンコールは岸田の笛や鍵盤ハーモニカに合わせて佐藤が歌いながら物販紹介するという、本編の感動が嘘かのように緩い雰囲気から始まった。佐藤の対応力の高さが見出されたから、ここ最近のライブではお馴染みになった光景である。

 

佐藤の熱唱物販紹介を終えサポートメンバーもステージに登場し演奏が再開。岸田が「新曲のようなそうじゃないような最近出した曲」と説明してからのアンコール1曲目は『STILL LOVE HER (失われた風景)』。TM NETWORKのトリビュートアルバムに参加した際にカバーした楽曲だ。岸田は拳を振り上げたりと普段のくるりでは見せないであろう姿でパフォーマンスしている。観客もそれに鼓舞されてか、いつも以上に拳を上げたりと熱い盛り上がりをしていた。

 

そんな会場の熱さを保ったまま岸田のギターリフから『オルドタイマー』へとなだれ込む。久々の楽曲かつアップテンポのロックンロールナンバーということで、この日一番と言えるぐらいに観客が湧き上がっていた。しかしステージ上で佐藤が慌てふためいている。どうやら使うベースを間違えてしまったようだ。歌が始まる前に演奏が止まった。

 

岸田が「ツアー初日だから色々とあります(笑)」とフォローして気を取り直し演奏が再開。再開後の演奏は完璧で盛り上がりも上々だ。中盤のMCで佐藤が「くるりのライブってこんなに盛り上がりましたっけ?」と言っていたが、その時の盛り上がりを超えるほどの、まるで若手ロックバンドのライブかのような勢いと熱気だ。

 

佐藤「今日は初めて裸眼でライブやってるんですよ。そうしたらお風呂に入っている時と同じように景色がぼやけて見えます」

岸田「湯気の中でライブやってるんですねえ!いいですねえ!」

佐藤「・・・・・・先程は申し訳ございませんでした!」

観客「wwwwww」

 

今日はツアー初日。このセットリストを客前で演奏するのは初めてだし、久々に演奏する曲も多かった。ミスやトラブルも起こりやすいだろう。だがそれすらもライブを盛り上げるための調味料になっている。完璧な演奏ができれば良いライブになるわけではない。それを実感するような時間だった。

 

「今日からツアースタートしますが、今日の感じなら良い旅に出れそうな気がします」と岸田が言ってから最後に演奏されたのは『潮風のアリア』。壮大なロックサウンドが会場に響き渡る。この楽曲は東京ガーデンシアターで行われた結成25周年記念ライブのラストにも演奏された。その際は大きな会場が似合う壮大な楽曲だったが、今日は小さな会場を大きな会場に感じさせるような迫力があった。

 

くるりの普段の規模からすると、渋谷クラブクアトロは小さな会場だ。他のツアー会場も小さな箱が多い。近い距離な分だけ演奏の熱量がダイレクトに伝わってはくる。だからこそ普段以上に観客は騒ぐように盛り上がっていたのだろう。

 

だがそれに対してくるりはいつも通りだった。いつも通りに良い演奏をして、いつも通りに観客を感動させていた。彼らにとってはどの会場でもやることは同じなのだと思う。それがバンドの魅力のひとつであって、長年日本のロックシーンで第一線で活動できる理由なのかもしれない。

 

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■くるり ライブハウスツアー2024 at 渋谷クラブクアトロ 2024年6月13日(木) セットリスト

1.鹿児島おはら節

2.Hometown

3.リルレロ

4.コンバットダンス

5.麦茶

6. シャツを洗えば

7.Morning Paper

8.スロウダンス

9.BABY I LOVE YOU

10.ARMY

11.永遠

12.ワールズエンド・スーパーノヴァ

13.愛なき世界

14.花の水鉄砲

15.朝顔

16.California coconuts

17.In Your Life

18.ロックンロール

19.東京

 

アンコール

20. STILL LOVE HER (失われた風景)

21.オールドタイマー

22.潮風のアリア