オトニッチ

ニッチな音楽情報と捻くれて共感されない音楽コラムと音楽エッセイ

【ライブレポ・セットリスト】aiko『Love Like Pop vol.22』セミファイナル 2021年12月13日 東京ガーデンシアター

3ヶ月ぶりにaikoのライブを観た。会場も3ヶ月前に観た時と同じ、東京ガーデンシアター。セットリストも前回から大きくは変わっていない。

 

 

それなのに、最初から最後まで、新鮮な気持ちでライブを観ることができた。

 

弾き語りの『片想い』で始まった時はやはり息を呑むほどに引き込まれたし、『メロンソーダ』の多幸感に満ちた空気も、初めて体感した気持ちになって胸が温かくなった。

 

aiko自身が「その場にいる人のため」に歌っていて、そんな想いがオーディエンスに伝わっているからかもしれない。

 

『ボーイフレンド』の曲中には久々に来たファンに手を振り「久しぶり!」と話しかけ、MCでは常連のファンに「少し太ったやろ?」と言ってイジっていた。ファンの顔を覚えているようだ。交差点で君を見つけられなくても、ライブ会場でファンを見つけることはできるのだろう。

 

これはライブをこなしているのではなく、毎回その場にいる人に向けて真摯に歌っている証拠だ。常に新鮮にその場でしか生まれない空間を大切にしているからこそ、生まれる空気だ。だからaikoのライブは、毎回新鮮な気持ちで楽しめるのだ。

 

aiko「はじまりまーーす!うひひwww 最高の日曜日にしましょう!いや、ちゃう!月曜日や!まあいっか、今日は土曜日ってことにしよう!」

 

客席「???」

 

ロングツアーのセミファイナルなのに、謎の発言をしたりとひたすらに楽しそうなaiko。やはり彼女にとっては、同じライブなど1つも存在しないのだろう。

 

あなたはお母さんと一緒に来たの?お母さん、aikoです。初めまして。

 

そこのサラリーマンはネクタイがTM Revolutionになってますね。

 

明日の仕事が朝5時からの人も居るの?今日は寝かさないぞ♡

 

MCではひたすらにファンに話しかける。aikoにとってもファンにとっても、ライブはコミュニケーションの場なのだろう。

 

とはいえライブの本質は音楽。しっかり歌と演奏でも楽しませてくれる。『一人暮らし』『No.7』と最新アルバム『どうしたって伝えられないから』の収録曲を、丁寧な演奏と歌で届ける。それを腕を上げたり手拍子したりと楽しむファン。

 

言葉だけでなく音楽でもコミュニケーションを取っている。音楽も気持ちを共有し交換し合う手段なのだ。aikoのライブを観ていると、そんなことを実感する。

 

MCで宇宙旅行をしている前澤友作社長から連絡が来た話になると、「宇宙からメールと電話が来るってすごいやろ?」と興奮しマシンガントークをするaiko。そもそも前澤社長から連絡が来ることが凄い。

 

宇宙に行くまで6時間かかるんやって。6時間もジッとしてられる?aikoはジッとしてられへん。だからライブでもイントロからずっと動いてる。

 

たしかにこの日も全曲でイントロから動き回っていたし、MC中もステージを動き回っていた。

 

aiko「昔ポルノグラフィティの昭仁さんに1曲ぐらい止まって歌えないのかって言われた。無理。止まってられへん。ずっと浮いている感じ。aikoにとってはステージが宇宙やから。曲紹介よろしく!」

 

佐藤達哉(Key)「アンドロメダ!」

 

まるで台本があったかのようにスムーズに曲紹介に繋がり、『アンドロメダ』が披露された。aiko史上、最も綺麗にMCから演奏へと繋がった瞬間かもしれない。

 

MCとaikoの行動はカオスであるが、やはりミュージシャンとしては一流で最高だ。それは『ばいばーーい』を聴いて、特に感じた。

 

音源以上に感情的に歌っているのに、音程がブレることがない。心を震わせるようなエモーショナルさを持っているのに、技術力の高さに冷静に唸ってしまう凄みがある。

 

演出は楽曲の世界観を完璧に理解しているようだった。

 

『ばいばーーい』の歌の後半で、ステージの電気が全て消えて、会場が真っ暗になった。視覚が奪われた暗闇の中で、aikoの歌声だけが響く。aikoの繊細な歌声だけが会場に響く。その瞬間に鳥肌が立つ。

 

最新アルバムの中で、特にインパクトが強い楽曲ではあったが、演出によってさらに魅力的に進化したと感じる。この感動はライブだからこそ体感できたものだ。

 

そんな「ライブだからこそ」の体験は他にもあった。

 

MCでファンからの「aikoは宇宙に行ったら何てツイートする?」という質問に対して「宇宙で息してるとツイートする」と答えたことをきかけに、『宇宙で息して』をサプライズで披露した時だ。歌いながらファンの質問に答えるという、カオスな状況になっていたが、これもライブだからこその体験である。

 

先日Zepp Tokyoでライブをやった時に興奮して全然寝れなかったという話から「いい夢がが見れたらいいですね」と言ってから『しらふの夢』を歌い、「昨日は何を食べたか?」という質問をバンドメンバー1人ひとりにしてから『食べた愛』を披露。「上京したばかりの時に、都庁の近くで迷っている時にできた曲」とデビュー当初の思い出を語ってからの『飛行機』にもグッときた。

 

今日のaikoはまるで台本があるかのように、MCから演奏への流れが驚くほどにスムーズである。本人も「今日は流れるように曲に行くよね!」と自画自賛していた。これもライブだからこその体験だ。

 

落ち着いたテンポの楽曲が続いていたが、ここからアップテンポの楽曲が続く。カラフルな照明に照らされながら『磁石』『シャワーとコンセント』を、ステージを動き回り、時折センターステージに行ったりとしながら叫び歌う。会場はどんどん熱気が上昇していく。

 

一気に盛り上げた後は、MCで一体感を高めていく。

 

「男子」「女子」「そうでない人」に分かれて江戸前寿司を握り動作を順番にさせるという、カオスな行動をファンに強要する。ドMなファンは素直に江戸前寿司を握る動作を行う。aikoによってカオスな空間が作られていく。

 

この時もaikoは客席を見渡してファンの様子を観察している。ち●こを扱くような動作を間違えてしている女性ファンを見つけて「子どもも来てるんだから、その動きは止めてwww」と言って、ファンの動きをイジる。

 

aikoも真似してち●こを扱くような動作をしていた。子どもも来てるんだから、その動きは止めて。

 

その後は突然aikoが寝そべり、セクシーなポーズを披露。照明は妖艶な紫色になり、バンドメンバーはSam Taylor『Harlem Nocturne』を演奏し、aikoのエロスを最大限に引き出す。

 

ハーレムノクターン

ハーレムノクターン

  • サム・テイラー
  • ポップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

アドリブなはずなのに、バンドもスタッフも謎の一体感がある。カオスである。aikoは「今日はみんなとベッドインまでしちゃった//////」と照れながら言っていた。ステージに関わる全員が信頼関係で繋がっているから、aikoが変態行為を行ってもすぐに対応できるのだ。

 

しかし子どもも来ているんだから、お色気路線は止めて。

 

そんなカオスな言葉と動作で作った一体感を、最高な音楽でさらに強力なものにする。ロックサウンドが印象的な『愛の病』からバンドメンバーのソロ回しがある『58cm』を続け、後半に向けてさらに盛り上げていく。

 

曲間に「aikoです!よろしくお願いしまーーす!」と、ライブ後半なのに今更叫んで挨拶するaiko。声を出せない代わりに盛大な拍手を贈るファン。ステージの上からは金色の紙吹雪が舞い落ちる。

 

声を出せないこと以外は、音楽と言葉を通じてしっかりコミュニケーションができていた。演出だって最高のものを作り上げていた。

 

「最後の曲歌いまーーす!」と叫んでから歌われたのは『ストロー』。笑顔で飛び跳ねステージを動き回り、ファンに手を振りながら歌う。音楽によってファンの心に赤いストローがさされた。

 

多幸感に満ちた空間に、アンコールの拍手が響く。すぐにそれに応えてaikoが再登場。アンコールの挨拶を後回しにして、そのまま『あたしたち』を胸に沁みる繊細な歌と演奏で披露。アンコール1曲目でシンガーとしての凄みを伝える。

 

そして初めてライブに来たというカップルに「付き合って何年目?」「彼氏は彼女に連れられてきたの?」「くっつくな!」などと絡んでから『なんて一日』を歌い盛り上げる。カップルもaikoに絡まれるとは、なんて一日だと思っただろう。

 

アンコールの最後は「あなたに歌います。1対1で聴いてください」と語ってから『いつもいる』が歌われた。

 

もしからしたらaikoはこの曲に限らず、会場に何人いようが関係なく、常に「1対1」になったつもりで「あなた」に向けて歌っているのかもしれない。

 

だからaikoのライブは毎回新鮮な気持ちで楽しめるし、彼女の言葉や音楽は胸に響く。一対一のコミュニケーションだからこそ、何度でもaikoに会いたくなる。

 

アンコールを終えてバンドメンバーと手を繋ぎ挨拶をするが、ステージにメンバーがいるうちからダブルアンコールの手拍子が客席から鳴らされる。

 

しかし「全然聞こえない。aikoはすぐヤる女ですけど、そんなんじゃヤれないです」と不機嫌そうに言うaiko。バンドメンバーにも「ヤりたい? ヤりたくないの?」と尋ねたりと、どことなく下ネタに感じるやりとりをする。子どもも来ているのだから、止めて。

 

そんなaikoのお色気発言に釣られて、ヤってほしいファンの手拍子はどんどん大きな音になっていく。それに満足したのか「ヤりまーーす!」と笑顔で叫ぶaiko。

 

ダブルアンコールは『milk』からスタート。イントロで「みんなのふくらはぎを破壊させてやるぞーー!」と叫ぶaiko。ふくらはぎを破壊する勢いで飛び跳ねるドMなファン。

 

曲間なしで『あたしの向こう』『二人』とアップテンポの楽曲を続けて煽りながら歌い、本気でファンのふくらはぎを破壊しようとするaiko。本気で自らのふくらはぎを破壊しようとするファン。

 

曲中に「ひゃひゃひゃwww」と笑っていたりと楽しそうである。ふくらはぎを破壊することが好きなのだろうか。ドMなファンはふくらはぎに限界が来ても、楽しそうに笑って飛び跳ねている。

 

散々ファンのふくらはぎを痛めつけてから「最後は何を歌うと思う?こういう大切な時は決まって、この曲です!」と叫び、最後の曲が始まる。もちろん最後は『be master of life』。ライブ定番曲であり盛り上がりが確実の鉄板曲。

 

魂を込めて叫ぶように歌う。音程が多少ブレても気にしていない。熱量と力技でファンのふくらはぎを破壊しようとしている。

 

「もっとしんどくなって!筋肉痛になって!明日足を痛めながら歩いて!それで今日のライブを思い出して!」とメンヘラっぽい言葉を間奏で叫び、最後のサビを歌うaiko。ついに自分のふくらはぎは、完全に破壊された。

 

名曲とカオスなMCをひたすら詰め込んだ3時間のライブ。長丁場で盛りだくさんな内容なのに、全く中飽きなかった。むしろまだまだ足りないし、もっと観たいと思うほどだった。

 

aikoはいつ観ても変わらない。いつもラブソングを歌っているし、いつもカオスなMCをしている。常にポップスターであり続けてくれるし、いつも最高の歌をうたっている。ついでに最低な下ネタも言っている。そんな変わらない姿でいつも迎え入れてくれる。

 

しかし毎回違う相手に対してライブを行っている。その場に来た一人ひとりに向けて歌っている。

 

同じ曲をやっても同じ届け方はしていない。だから彼女のライブは安心感があるのに、毎回違った発見や刺激がある。

 

このライブはツアーのセミファイナルだった。翌日のツアーファイナルでaikoは結婚していたことを発表した。

 

アーティストは結婚など人生における大きな変化があると、作風や雰囲気が変わることがある。それによって離れてしまうファンもいる。恋愛感情を持っていたファンは、ショックを受けることもある。

 

しかしaikoはこれからも、一切変わらない気がする。ファンも変わらずに着いていく気がする。

 

そもそも結婚したのは去年。その間にもライブは行っていた。この日のライブでも「みんなとベッドインした////」「aikoはすぐヤる女」などと、下ネタだらけのMCをしていた。たぶん今後のライブでも、おっぱいやち●この話をする予感がする。既婚者なのに。

 

メロンソーダがビールになってもハンバーガーはハンバーガーのままであるように、未婚が既婚になってもaikoはaikoのままであり続けるだろう。

 

こういうの何て言うんだっけ?

 

aiko『Love Like Pop vol.22』2021年12月13日 東京ガーデンシアター セットリスト

01.片想い
02.メロンソーダ
03.列車
04.ボーイフレンド
05.一人暮らし
06.No.7
07.アンドロメダ
08.ばいばーーい
09.Last
10.宇宙で息して(MC中)
11.しらふの夢
12.飛行機
13.テレビゲーム
14.食べた愛
15.磁石
16.シャワーとコンセント
17.愛の病
18.58cm
19.ストロー

EC1.あたしたち
EC2.なんて一日
EC3.いつもいる

WEC1.milk
WEC2.あたしの向こう
WEC3.二人
WEC3.be master of life

 

↓関連記事↓