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aikoが奇行に走ったら最高のライブになった~ Love Like Pop vol.22 ライブレポ・セットリスト~

客入れのBGMに合わせ、大きな音で手拍子をする人がたくさんいる。それが熱気となって会場を包み込んでいる。

 

9月27日に行われたaikoのライブツアー『Love Like Pop vol.22』の東京ガーデンシアター公演。ライブ開始前から完全に空気が作られていた。完璧なライブを行える環境が整えられていた。

 

そういえばaikoとファンの関係性は、このように強い信頼関係で結ばれているのだった。aikoのライブは観る都度に「ファンと一緒に作っている」と実感する。それを開演前の時点で思い出させられた。

 

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当然ながらaikoはファンの期待と熱気に応えるように、序盤から素晴らしいパフォーマンスを見せていた。

 

開演時間を10分ほど過ぎて、ステージを隠す赤いカーテンが開きライブスタート。

 

エレクトーンの前に座るaikoが見える。そして弾き語りで『片想い』を披露。会場の熱気を一旦落ち着かせ、ライブの世界観に引き込むような1曲目だ。

 

唯一無二の個性と高い表現力で圧倒させると、『メロンソーダ』で会場を明るく彩る。

 

『線香花火』でじわじわと客席を温めていき、代表曲の1つである『ボーイフレンド』で盛り上がりを爆発させる。

 

この曲ではステージ全体を走り回り、花道やセンターステージにも移動し客席を煽っていた。バンドメンバーも前に出て煽ったり激しく動いたりと、心の底から演奏を楽しんでいる様子。ステージ全体から、物凄い熱量を感じる。

 

客席だって負けてはいない。ファンは腕を上げたり手拍子したりと、声を出さずに身体で熱気を表現する。ファンも同じぐらいの熱量をステージに返す。

 

6月ぶりのガーデンシアターです。本当にライブができて良かったと思っています。絶対に1人も置いていかないし、1対1の時間を作るライブをやるので、よろしくお願いします。

 

今日は開演前にトラブルがあってスタートが遅れちゃったんやけど、その間もみんなが手拍子してくれるのが聴こえて嬉しかったです。BGMの曲に合わせてちゃんとリズム変えてるのも面白かった(笑)

 

みんなの手が内出血するぐらいに、ライブも手拍子して楽しんでもらえたらと思います。じゃあ、歌いまーす!

 

挨拶と短めのMCを挟み『一人暮らし』で演奏を再開。

 

青空や夜空、部屋の窓など日常をイメージした映像が流れる。先ほどまでは全身でぶつかってくるような歌と演奏だったが、ここでは演出によって魅せるパフォーマンスをする。

 

ライブパフォーマンスは圧倒的なのに、MC中はファンとの距離感は近い。まるで親戚の気さくなお姉さんのような近さがある。

 

泣いてしまった客席の女の子にステージ上からティッシュを上げたりする。ライブ中にティッシュをファンに渡すアーティストは前代未聞だが、aikoならそれも普通のこと。ファンも当然のこととして受け入れ見守る。

 

リハーサル中に舞台監督が来て「爪落としてませんか?」て言われたんやけど、新手のナンパかなと思った。でもネイルのジェイルが剥がれてたみたい。

 

昔ドン・キホーテでナンパされて、嘘ついてみようと思って「看護師です」て言ってみたら、信じられちゃって最後までaikoだとバレなかった。覚えてもらえるようにもっと頑張らなあかんなって思った。

 

シュールなMCを挟み演奏が再開。ナンパ男もきっとビビるであろう最高の歌声を出すaiko。十分に頑張っている。

 

『アンドロメダ』で再び上手から下手、センターステージと動き回り、パワフルなステージングで熱気を上げる。

 

演出も派手になっていく。イントロではレーザー照明も駆使しステージを彩っていた。スタッフもナンパ男がビビるぐらいに頑張っている。

 

かと思えば『ばいばーーい』を薄暗い照明の中で切なく表現し、『Last』では幻想的な映像をバックにクールに歌う。

 

aikoの音楽性の軸はポップスからブレることはないが、様々な方向性の楽曲がある。だから続けて聴くと感情が様々な方向に揺さぶられる。

 

音楽だけでなくMCでも感情を様々な方向に揺さぶる。歌っている時とMCとのギャップと落差が凄いからだ。

 

CM撮影の楽屋にカルビーのポテトチップスがめちゃくちゃ置いてあったんよ。まだ出てない新商品とかもあって。だから全部持って帰った。風船も置いてあったから、それももらって帰った。風船は首に巻いて持って帰った。驚かれた。

 

MCは久々のCM出演となったポテトチップスの話題に。

 

シュールな行動をしているが「aikoならやりそうだし仕方がないか」と納得してしまう。

 

そして「みんなもポテトチップスたべたいやろ?今日はカルビーのみなさんのご好意で帰りに出口でプレゼントします!」と話すと、この日一番の拍手が会場に鳴り響いた。

 

曲を聴いた後よりも大きく盛大な拍手だった。みんなポテチが大好きである。

 

ちなみに川口春奈さんがCMに出てるやつなので、あたしが出ているやつではないです。そのかわり、あたしの髪の毛を1本ずつ混入させておきました。

 

このMCに対しても盛大な拍手が贈られた。ライブが始まった時よりも、ずっと大きな音の拍手だった。髪の毛の混入は気になるが、みんなポテチが大好きである。

 

しかし「カルビーさんに全力で拍手しようぜ!」とさらに拍手を煽るaiko。彼女はファンと同じぐらいにスポンサーを大切にする。

 

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↑帰りに貰ったポテチ

 

カルビーへの感謝を伝えてから演奏が再開。ここからはミドルテンポの聴かせる曲が続く。

 

最新アルバムから『しらふの夢』をしっとりと歌ってから「ひさびさに歌います」と紹介してから青い照明の中で『飛行機』を丁寧に歌う。

 

アコースティックな演奏の『テレビゲーム』は特に印象的だった。優しくて温かい演奏と歌声によって、アリーナ規模のガーデンシアターが、小さなライブハウスのような空気感になっていた。

 

aikoのライブはコールアンドレスポンスが定番だったが、今はコロナ禍で客席側からは声を出すことができない。その代わりファンに「謎の奇行」をさせてコミュニケーションを取っていた。

 

「メガネ」「裸眼」「コンタクト」「レーシック」「老眼」とファンの眼球事情別に、順番に肩を回させた。

 

カテゴリーごとに順番に無言で肩を回すファン。どうやら老眼が意外と多いようだ。シュールな光景を見て、嬉しそうに笑うaiko。

 

そしてQueen『We Will Rock You』のようにファンに手拍子と足踏みをさせ、そのリズムに合わせフリースタイルラップを始めた。

 

〈手のひらは拍手で大出血 1階のみんなは筋肉痛〉と微妙な韻を踏みつつラップする。aikoはヒップホップに目覚めたのだろうか。

 

一連の流れを終えて「しんどいな......」と呟くaiko。

 

歌い終えた後には言わないセリフを、MCの後に呟く。MCでこれほど体力を使うアーティストは他にいないだろう。

 

とここからアップテンポの激しい曲が続く。『磁石』では激しく動き回りパフォーマンスした。

 

会場の熱気を直に感じたからだろうか、着ていた緑のコートを脱いだ。脱いだ。脱いだ......!

 

そういえば序盤のMCで「金沢のホテルでパンツとブラ姿で部屋のカーテンを開けたら、その前を浴衣姿の男性が目の前を通った」と話していた。aikoは脱ぎたがり屋なのかもしれない。

 

『シャワーとコンセント』でさらに盛り上げ、夏の終わりに相応しい名曲『夏が帰る』で、切なくも明るい雰囲気を作り出す。

 

楽しくてポップだけど切ない。そんなJ-POPの魅力を凝縮したパフォーマンスを見て、改めてaikoはポップスターだと感じる。

 

しかしMCになると、ポップスターとは思えない奇行をする。

 

双眼曲でステージを見ているファンに向けて、「見てみて.......。デコルテ......//////」とTシャツの首元を引っ張ってデコルトを見せる。

 

会場のスクリーンにはアップでaikoのでデコルトが映る。やはりaikoは脱ぎたがり屋なのかもしれない。

 

さらに奇行は続く。

 

コールアンドレスポンスの代わりに「男子」「女子」「そうでない人」「全員」と別れて順番に、一休さんがトンチを閃く様子をイメージした動きを客にやらせる。

 

シュールすぎて意味不明である。それを見て楽しそうに笑うaiko。奇行をするだけでなく、奇行を見ることも好きなようだ。

 

しかし歌い始めれば奇行は治る。歌った瞬間に一流アーティストのポップスターになる。

 

跳ねるようなリズムの『58cm』で会場に手拍子を響かせる。この曲ではバンドメンバーによるソロ回しもあった。それも最高だった。aikoのライブはバンドメンバーの支えがあってこそだと改めて思う。

 

本編ラストは『ストロー』。ステージを動き回ったり飛び跳ねたりと、全てを出し尽くすように暴れ回り歌う。それに連れられてファンの盛り上がりは最高潮になる。

 

最高の空気でパフォーマンスを終えると「ありがとうございました!ちょっと終わります。ちょっとだからね」と言って、自らアンコールの拍手を煽る。

 

本当にちょっとの時間でグッズのロングTシャツに着替えたaikoが出てきて、新曲『あたしたち』でアンコールが開始。

 

奇行をするアーティストとは思えない歌声で感動させる。

 

東京の会場は広いな。でもみんなに届けていきたいです。本当にライブができて良かったです。

 

aikoのファンは色々と悩んで感染症対策も徹底して気をつけていると信じているから、来たからには楽しんで欲しいです。

 

これからもあたしは頑張って歌っていくので、みんなも負けずにしっかり生きていきましょう。楽しいことを考えていきましょう。

 

aikoはMCでシュールな発言ばかりするわけではない。奇行に走らない時もある。

 

根底にはファンへの想いがあるし、それを言葉でも伝える。そして音楽へと昇華して心に刻ませる。これがaikoの魅力だ。

 

『なんて一日』『いつもいる』を続けて歌い、感動的にライブは終演した。と思わせた。が、違った。

 

パフォーマンスを終えて盛大な拍手を贈られてはいたが、 その場に寝転んで「全然聞こえへん!」と駄々をこねるaiko 。ポテチをプレゼントすると言った時よりも拍手の音が小さかったので、それが不満だったのだろうか。

 

どうやらダブルアンコールの拍手を、45歳の大人がやるとは思えない奇行によって求めているようだ。

 

どんどん音が大きくなる手拍子。ポテチをプレゼントすると言った時の拍手には負ける音量だったが、aikoは満足した様子で「歌います!」と言ってダブルアンコールがスタート。

 

しかし歌い始めずに再びファンに一休さんがトンチを閃く一連の流れをやらせる。やはりaikoは奇行が好きなようだ。満足した表情になると、ようやく歌い始めた。

 

『恋のスーパーボール』『遊園地』と続けてしっかりと盛り上げる。奇行をしないaikoはやはり一流のアーティストだ。

 

「みんな楽しんで帰ってや!be master of life!」と叫んで、最後に『be master of life』を披露。

 

イントロでも叫んだりと、この日のライブで一番楽しそうな姿を見せる。奇行をファンにさせていた時よりも楽しそう。

 

ファンもとにかく盛り上がる。ポテチをもらえると知った時と同じぐらいに盛り上がる。

 

みんなに名前を叫んで呼んでもらえないのは寂しいけど、またみんなが叫べるようになる日まで、あたしが代わりに一人で叫びます!いええええええええええええええい!!!」 

 

最後のサビ前に演奏が止まると、aikoが叫んだ。

 

これも人によっては奇行に見えるかもしれない。しかし感動的で想いがこもっていて、ファンの心を掴む最高の奇行だ。

 

ファンへの愛と想いが詰まっていて、最高の歌と演奏と奇行で作り上げられた約3時間のライブ。

 

長丁場なのに一瞬の出来事と感じるほどに、素晴らしいライブだった。そして3時間だけとは思えないほどに、余韻がずっと続く最高の空間だった。

 

今度aikoに会える時は、一緒に歌ったり叫んで名前を呼べる世の中になっていたら嬉しい。お互いに想いをぶつけ合えたら最高だ。

 

でも、aikoさん、その時は奇行に走らなくても、大丈夫です。

 

aiko『Love Like Pop vol.22』2021年9月27日 東京ガーデンシアター セットリスト

01.片想い
02.メロンソーダ
03.線香花火
04.ボーイフレンド

05.一人暮らし
06.No.7
08.アンドロメダ
09.ばいばーーい
10.Last
11.しらふの夢
12.飛行機
13.テレビゲーム
14.磁石
15.シャワーとコンセント
16.夏が帰る
17.58cm
18.ストロー

EC1.あたしたち
EC2.なんて一日
EC3.いつもいる

WEC1.恋のスーパーボール
WEC2.遊園地
WEC3.be master of life

 

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