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【ライブレポ・セットリスト】ネクライトーキー『ゴーゴートーキーズ!2025 北上』 at 西川口ハーツ 2025年6月28日(土)

開演前からチケットが完売した会場はぎゅうぎゅうで、フロア全体が期待で震えていた。お馴染みのSEが流れると、待ちきれない観客の拍手と歓声が爆発。メンバーがステージに姿を現した瞬間、自分を含め観客は心臓は跳ね上がったかのような熱気で包まれた。

 

西川口ハーツで行われたネクライトーキーのツアー『ゴーゴートーキーズ!2025 北上』の埼玉公演。バンドもファンも熱くて騒がしいライブになった。

 

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「西川口ハーツ、よろしくお願いします!」ともっさが叫んでから始まった1曲目は『人生なんにもわかんねえ!』。安定感のある演奏に、気持ちが一気に掴まれる。観客の大きな手拍子の後からはライブ開始への熱気と興奮を感じる。そこから怒涛のように『夢見るドブネズミ』へ。サビ前にもっさが「いっけー!」と叫ぶ声に、観客は叫び返して拳をあげる。


『bloom』に突入した瞬間、フロア全体が跳ね上がるような盛り上がりになった。〈オクターブギターを弾け!〉と叫ぶもっさの声が胸を突き抜ける。それによって観客のボルテージは一気に最高潮に。


『ボケナスのうた』ではサビで観客全員で大合唱をした。サビを叫ぶもっさと観客の声の大きさに鳥肌が立った。途中のジャムセッションではメンバー紹介をかねたソロ回しも行われた。その演奏も圧巻で、やはりこのバンドは演奏力が半端じゃないと改めて実感する。


最初のMCで「今回のツアーは5周年を記念したもの。自分たちにおめでとうと言う機会があってもいいよねって気持ちでやってます」ともっさが語った時、観客からの拍手も温かくて、この空間全体が祝福の気持ちで包まれていた。

 

もっさ「みんなにも何か周年があるでしょ?美味しいもの食べたり祝っていこう!」

朝日「今日のライブがカッコいいと思ったらそれだけでおめでとうって叫んで(笑)」

 

独特なお願いをするもっさと朝日。

 

「今回のツアーでは初めてやる」と告げてから始まったのは『だけじゃないBABY』。ゆったりとしたリズムに自然と手拍子が重なって、ふわっと会場が優しい空気に変わる。そこから『踊る子供、走るパトカー』では一転、複雑なリズムに絡み合う楽器の音色で観客を唸らせる。


前半で最も盛り上がったのは『許せ!服部』だ。もっさが朝日のギターの音量ノブをゆっくりと回し音量をあげるいつもの演出から始まった時点で観客から歓声が湧き上がる。サビで観客が「服部!」ともっさと一緒に叫んだ瞬間の熱気も凄まじい。

 

「CD」「ライブ」のボードをもっさが持ち、そのどちらかを掲げるとバンドがそれに合わせて違うアレンジをする演奏は、何度観ても最高だ。 ベースの藤田やキーボードの中村郁香が前方に出てきてソロ回しをするパフォーマンスもカッコいい。

 

もっさ「クーラーで寒いかと思ってたけど、熱気で熱いね。クーラで冷やしといて良かったね」

朝日「これからはライブ前にステージ冷やしておきました!って言われるのが主流になるかも」

朝日「出番前に言われたらめっちゃびっくりする」

もっさ「どんだけ空気悪いのかと不安になる」

 

メンバーも観客の熱気を浴びて驚いている様子だ。話題はぼっちぼろまるからの差し入れの話へ。

 

朝日「UFOキャッチャーで取ったお菓子らしいで」

藤田「だからテープでぐるぐる巻きになってたんか」

朝日「彼は大塚ハーツ出身やからハーツでのライブは誰が出るのかを常に把握してる」

 

この話は朝日の適当な冗談らしい。

 

『 そういうものでしょう?』から演奏が再開。 ベースとドラムの力強いリズムとキーボードのポップな音色が印象的で、丁寧な演奏で披露された。

 

そこからクールな演奏の『ランバダ・ランバダン』で観客を魅了する。サビではしっかり盛り上げる迫力の演奏も良い。間奏でのギターソロでは歓声もあがっていた。


中盤の『深夜とコンビニ』は完全に心を撃ち抜かれた。美しいピアノの旋律から曲が始まり、もっさの優しい歌声がじんわりと胸に沁みてくる。叫ぶように歌うもっさも魅力的だが、このよつに丁寧で繊細な優しさを含んだ声で歌われると、ボーカリストとしての表現力の高さを実感する。あの瞬間は自分にとって、このライブのハイライトだった。

 

 家で歌う時は叫んだりしないやん。家ではゆったり歌うことが多くて。「ボカナスども!」とか歌わないんよわ(笑)

 

だから『深夜とコンビニ』を歌ったら、家にみんなを招いてる気分になった。

 

もっさのMCでの言葉は、まさに音楽によって作られたこの空気感を的確に表現していた。


ライブも後半。もっさの「今日はダンシングモードで!わたしが踊るとトモダチコレクションみたいだっていわれるんですけど、下手でもいいの!気持ちが大事だから!」いう言葉から『ジャックポケットなら踊らにゃソンソン』が始まると、観客も上手いか下手かなんて関係なくがむしゃらに踊り騒ぐ。サビでは大声で歌ったりとみんな自由に踊っている。

 

続く『石ころの気持ち』ではもっさと一緒に観客も〈うるせえタコが!〉というフレーズをバカでかい声で叫ぶ。バンドの鬼気迫る演奏と歌声に観客が自然と応えているかのような盛り上がりだ。


『惰情でいいナ』の大合唱の盛り上がりと多幸感は忘れられない。熱狂の中に優しい温度があって、多幸感で胸がいっぱいになる。隣の人と歌声が混ざって、メンバーも含めた会場にいる全員が歌によって繋がった感覚になった。

 

もっさ「TikTokで5人組の男性がネクライトーキーで踊ってくれたよな」

朝日「最後のMCでその話をする?」

 

最後に雑談のような話をするもっさに突っ込む朝日。だが朝日もアドリブでブルージーなギターを弾きながら「下ネタでも話そうか?下ネタやけどエッチじゃなくてウンチの方の」と言う。それに対して藤田が「ワクワクしてきた」と下ネタへの期待を高める。

 

だが 朝日は「最後のMCがこれで終わりたくないからウンチの話はやめよう」と言って、ウンチの代わりに初めて曲を作った時の話を始めた。

 

親父にギターが欲しいと中学生の頃に言って、ギターを買ってもらった。ギターを持って最初に曲を作ろうと思った。練習もしてないしコードも何も知らないのに。考えるよりも手を動かしてた曲を作っていた。サビで〈フライハーイ〉とか歌う曲。中学の頃はフライハイって言葉がカッコいいと思ってたから(笑)


作った曲を家族に聴かせたら、微妙そうな顔をしてた。でもその時に俺は曲を作れるやと思った。そして今でも曲を作ってる。今でも俺は曲を作れると思い込みながら。やればどうにかなるもんだなと。

 

グッとくるMCから「カモン!ドラム!」という朝日の掛け声から続いたのは『君はいなせなガール』。もっさと藤田が交互に叫ぶように歌う。その掛け合いや勢いが聴いていて楽しい。

 

そこから曲間なしで雪崩れ込むように始まったのは『こんがらがった』。ここで観客のボルテージは一気に最高潮に。後半に向けてバンドも熱量をより込めているようなパフォーマンスだ。

 

曲が終わるとメドレーのように曲間なしで激しいジャムセッションが始まる。演奏力をダイレクトに感じるような展開に観客が歓声をあげる。そのまま自然な流れで『北上ノススメ』が始まると、畳がける展開に興奮して暴れまくる観客と、比例して激しくなるバンドの演奏。


「最後の曲です!」ともっさが叫んでからのラストソングは『モブなりのカンフー』。自然と手拍子が巻き起こったり観客も歌ったりと多幸感に満ちた空気になる。温かいけれど熱い。そんなロックバンドだからこその空気感を残して本編は終了した。

 

アンコールで登場すると、真っ先にグッズ紹介するメンバー。メンバーが描いたイラストがプリントされたTシャツはなかなかにオシャレだ。

 

ライブで音源を再現するバンドと、音源とは違う何かを表現しようとするバンドがあると思います。

 

自分たちは毎回悩んでライブでしか見せられないものを表現しようとしています。音源も良いけれど、ライブハウスで聴いたらめっちゃいいやんと思ってもらいたいです。


みなさん、今日のライブハウスは楽しかったですか?

 

朝日のバンドをやる意味や理由とも言える言葉に、観客は大歓声で応える。きっとこの場にいる全員がこの日のライブハウスを楽しいと思ったはずだ。朝日は観客の反応に対し、照れ笑いをしながら 「こんな楽しいライブがある限り、ライブハウスは安泰だな!我々が背負っていきましょう」と宣言のような言葉を残していた。

 

もっさが「アンコールはオマケだからチケット代に入ってないです。だから好きにやります!」と言って朝日のカウントから始まったのは『オシャレ大作戦』。

 

好き勝手とは思えないほどに演奏は安定しているが、好き勝手と思えるぐらいにメンバーは楽しそうで、暴れるように演奏している。サビ前に「叫べ!」と朝日が煽ると、観客も好き勝手に叫んで歌っていた。歌詞もきちんと「川口へヘイヘイ」とご当地バージョンに変えてくれたのも嬉しい。

 

「最後の曲です!」と叫んでから始まったのは『遠吠えのサンセット』。観客もバンドも全てを出し切るような勢いで、激しく歌い演奏し盛り上がっていた。間奏で「たいしたことやってないのに、みんなが笑ってるのを見ると嬉しいな!」と嬉しそうに笑いながら話すもっさが印象的だった。その瞬間、メンバーも観客もみんな笑顔になってたのではないだろうか。

 

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メジャーデビュー5周年を記念したツアーの一環ではあるが、集大成というよりも通過点と感じるライブだった。なんなら5年目にしてさらに高みへ登るための武者修行でもしていると感じるほどの勢いがある。しかしそれと同時にキャリアを重ねたからこその貫禄や安定感もあった。特にもっさの歌唱は5年前より声量も表現力も格段に上がっている。

 

集大成として満足というよりも、楽しかったしこれからも楽しくなりそうというワクワクが余韻として残る。5周年イヤーを駆け抜けている今のネクライトーキーは、そんな希望を与えてくれるライブをしているのだ。

 

ネクライトーキー『ゴーゴートーキーズ!2025 北上』 at 西川口ハーツ 20256月28日(土) セットリスト

1.人生なんにもわかんねえ!

2.夢見るドブネズミ

3.bloom

4.ボケナスのうた

5.だけじゃないBABY

6.踊る子供、走るパトカー

7.許せ!服部

8.そういうものでしょう

9.ランバダ・ランバダン

10.深夜とコンビニ

11.ジャンクポットなら踊らにゃソンソン

12.石ころの気持ち

13.放課後の記憶

14.怠情でいいナ

15.君はいなせなガール

16.こんがらがった!

17.北上のススメ

18.モブなりのカンフー

 

19.オシャレ大作戦

20.遠吠えのサンセット