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【ライブレポ・セットリスト】あいみょん ファンクラブツアー 『PINKY PROMISE YOU』at 東京ガーデンシアター 2022.2.8(火)

東京ガーデンシアターで行われたあいみょんのライブツアー『PINKY PROMISE YOU』は、ほんの少しだけだけ、ここ最近のワンマンライブと雰囲気が違うと思った。

 

あいみょんは終始リラックスした様子で穏やかだったから、そう思ったのだ。1曲目の『ジェニファー』であいみょんがステージ前方に出てきて「東京!」と煽った時の声すら、穏やかで暖かかった。

 

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自分があいみょんのワンマンライブを観るのは、2020年に行われた『AIMYON TOUR 2020“ミート・ミート』の横浜アリーナ公演以来である。

 

その時の1曲目は『黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を』だった。鬼気迫るギターの弾き語りからライブが始まっている。そんなパフォーマンスに痺れた。

 

2018年の『SIXTH SENSE STORY』は幻想的な演出からライブが始まっている。それに圧倒され感動した。

 

しかし今回はアットホームな雰囲気がステージに登場した瞬間から伝わってくる。おそらく「ファンクラブ限定ライブ」だからだろう。この場に居る全員があいみょんガチ勢。コアなファンしかいない。音楽フェスや通常のツアーとは、少しだけ客層が違う。

 

だからあいみょんは〝平成生まれのカリスマ〟ではなく、等身大の姿でステージに立てるのだろう。そんな気持ちや空気がアットホームな雰囲気に繋がっているのだ。

 

『ジェニファー』を颯爽と演奏し会場を温め、青い照明の中で『空の青さを知る人よ』を伸びやかなボーカルと迫力ある演奏で届ける序盤。

 

そういえばこの2曲は人気があるものの、最近のライブでは演奏されることが珍しい。今回のツアーで2年振りに演奏された楽曲たちだ。「ファンクラブ限定」だからこその選曲と曲順なのだろう。

 

 

 

 

しかしこれは序の口。続いて演奏されたのは『好きって言ってよ』。インディーズ時代の楽曲で、ライブで演奏されるのは4年ぶりだ。おそらくライブでは初めて聴くファンの方が多いだろう。

 

あいみょんの弾き語りから始まり、バンドによるロックな演奏が重なるアレンジ。これは今回のライブのためにされた、特別なアレンジだ。初期の楽曲も今のあいみょんが歌うべき楽曲へと進化させている。

 

今回のバックバンドは2020年のツアーと同じメンバーによる6人編成。山本健太(Key)など長年サポートし続けたメンバーもいる。『好きって言いなよ』のアレンジを聴いて、バンドも含めて「あいみょんの音楽」を作っていることを改めて実感した。

 

あいみょんです!ここはめっちゃ広い会場やなあ。3階席まである!

 

わたしもみんなのファンだから!これを使ってみんなの顔を見るね

 

そう言って双眼鏡を使い客席全体を見渡すあいみょん。「バードウォッチングみたいやw」「鼻息で双眼鏡が曇ってきたw」と言ってニヤニヤしながら、ファンを鳥扱いして観察している。

 

コロナ禍なので客席から声を出すことはできない。それでもファンはあいみょんとコミュニケーションを取りたいのだろう。メッセージを書いたスケッチブックを持参し掲げているファンがたくさんいる。こんな愛すべき図々しさを出すファンがいるのは、aikoとあいみょんぐらいだろう。

 

双眼鏡を覗きながらスケッチブックのメッセージを読み、質問や要望に答えていくあいみょん。

 

「恵方巻き食べた?」という質問には「肉が入ってるやつを食べた」と答え「友達同士で来たJKです。 ほっぺに指でたこ焼きつくって!」という要望には「何がおもろいねん!」と言いつつも、要望に応えてほっぺにたこ焼きを作っていた。おもろかった。

 

コロナ禍やし久々にライブに来た人もおるやろ?

 

だから緊張してるかもしれないけど、ライブが進めば緊張もなくなると思います。そんなライブにします。

 

ファンクラブは家族なんで、そんな気持ちで楽しみましょう!

 

レア曲が連続した序盤だったが、次に演奏されたのはブレイクのきっかけとなった『君はロックを聴かない』。ライブでほぼ毎回演奏される楽曲だ。

 

セットリストから外すことができない重要な曲ということなのだろう。客席からは手拍子の音が鳴り響く。緊張を一瞬で解してしまった。穏やかな表情で客席を見渡しながら歌う姿が印象的だった。

 

今回はツアーロゴが描かれた幕が後ろにあるだけのステージセット。アリーナやホール規模のライブとしてはシンプルだ。照明も派手な使い方をしておらずシンプル。演出よりも歌と演奏で魅せるライブで、演出はそれをサポートすることに徹していた。

 

しかし『ら、のはなし』ではファンクラブという深い繋がりがある関係性だからこその、粋で素敵な演出があった。

 

ステージが真っ暗になると、ステージ下からだんだんと照明の光が照らされてステージが再び明るくなり、ツアーロゴの小指を繋いだイラストが浮き上がる。

 

 

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そしてツアーロゴの腕のハートがピンクに、腕時計が青に、繋がった小指には黄色いピンスポット照明が当てられた。

 

今回のツアータイトルを日本語にすると「あなたとの小指の約束」という意味になる。そして『ら、のはなし』には〈君の持っているもの僕に少し下さい それがきっとふたりを繋ぐ何かになるだろう〉という歌詞がある。

 

この演出はツアータイトルに込められた想いと、楽曲の世界観と、あいみょんとファンクラブ会員の深い絆を同時に表現しているのだろう。

 

今回のツアーでライブ初披露となった『ミニスカートとハイライト』では、紫の照明の中をハンドマイクでステージを動き回り、歌いながら2階席や3階席に向けても手を振ったり指さしていた。その動きの一つひとつが、ファンとの絆を確認しているように見えた。

 

温かな空気に包まれた客席を見渡しながら「もう6曲歌ったんか。早いなあ!」とテンション高めに言うあいみょん。再び双眼鏡を覗き再び客席をバードウォッチングし始めた。

 

カップルを見つけて「うわ!ラブラブで熱い!半袖でへそ出しの衣装で良かった!」と言ってイジるあいみょん。さらには「規模のわりにはカップル少ないな...」とおひとり様までもイジる。

 

しかしファンも負けてはいない。彼女が表紙になった『装苑』の表紙を掲げてアピールするファンがいた。あいみょんをイジっているとしか思えない。

 

装苑 2022年 3月号 (雑誌)

 

「装苑の表紙を掲げるな!それをアピールされると恥ずかしいわ/////」と照れるあいみょん。アーティストとファンとでイジり合う謎の戦いが発生していた。これは信頼関係があるからこそのプロレスだ。

 

ファンのスケッチブック(今日のネイルは何色?)

 

あいみょん「今日のネイルはなあ、オレンジ!」

 

客席「・・・・・・」

 

あいみょん「みんなわたしの爪には興味ないんかい!」

 

コアなファンだからこそ、アーティストに媚を売ることはしない。興味がないことに対しては、残酷な反応をする。これも信頼関係があるからこそ許されるのだろう。

 

ファンに辛辣な反応をされたとしても、あいみょんは笑顔で喋り続けていた。普段の3倍の時間は喋り続け、積極的にファンとコミュニケーションを取っていた。いつにも増してノリノリである。散々喋った後にはジャンケン大会を始めたりと、音楽以外も自由奔放に楽しんでいる。なかなかにカオスな状況である。

 

しかし歌と演奏が始まれば、あいみょんがカオスな女ではなく一流のシンガーソングライターということを思い出すことができる。

 

「初めて女性のシンガーに提供した楽曲をセルフカバーします」と言ってから、木村カエラに提供した『Continue』をセルフカバーした。その歌声と演奏により、一瞬でMCのカオスな余韻は吹き飛んだ。

 

木村カエラの音源を再現するような演奏だが、あいみょんが歌うとイメージがガラッと変わる。

 

木村カエラが歌うと優しく包み込む楽曲に聴こえるが、あいみょんが歌うと力強さを感じる。しかし聴き終えた後は背中を押してもらえた気持ちになることは、どちらも共通している。それぐらいに楽曲の持つ力が凄いのだと実感する。

 

そこから流れるように最新シングルの『ハート』を披露。ゆったりとした演奏に合わせ、ハンドマイクでゆったりと歌っていた。そんな雰囲気が心地よい。寒さに負けないようなぬくもりを音楽から感じる。

 

 

 

 

ここからの3曲は変則的なバンド編成で届けられた。まずは八橋義幸(Gt)とクロサワ(Gt)のギタリスト2人とあいみょんだけで『いつまでも』を披露。

 

2本のアコースティックギターのアルペジオが重なる演奏が心地よい。この形で披露されたのは初めてだ。

 

歌い終えてから「1人で弾き語りでやった武道館ではミスしまくったけれど、2人が演奏してくれたから今日は安心です」と言うあいみょん。どうやらバンドメンバーが2名ずつ順番に入れ替わり、特別なアレンジで楽曲を披露していくようだ。

 

続いて登場したのは井嶋啓介(Ba)とバンドマスターでもある山本健太(Key)。

 

あいみょん「児島さんですか?」

井嶋啓介「井嶋だよ!」

 

今ではアンジャッシュの大嶋ですらやることが少なくなったネタを、井嶋を相手に行うあいみょん。

 

井嶋は人気が高いようで「井嶋」と書かれた団扇やスケッチブックを持ったファンが客席にたくさん居た。それに対し「井嶋と書かれたやつを下げろ!わたしのファンクラブツアーや!」とキレるあいみょん。誰か山本健太のことも応援してあげてくれ。

 

そんな3人で披露されたのは『ハルノヒ』。ベースとキーボードとハンドマイクという、音源とは全く違うアレンジでの演奏だ。

 

ギターのようにメロディを奏でてベースを弾く井嶋と、繊細で美しい音色を奏でる山本。そこに音源よりも丁寧な表現で歌うあいみょんのボーカルが重なる。テンポは遅くなり音源とは全く違う印象のバラードになっていた。

 

しかし2番からはまた印象がガラッと変わる。跳ねるようなリズムになり、明るい雰囲気の演奏になった。1曲の中で違う楽しみ方をさせてくれた。これはアレンジの妙だ。編曲の面白さを、言葉ではなく演奏で伝えてくれている。

 

伊吹文裕(Dr)と朝倉真司(per)のと2人と演奏も、編曲の大切さを教えてくれるものだった。

 

あいみょん「わたしの曲で唯一音源でマリンバを使ってる曲があるんやけど、何かわかる!?」

 

客席「・・・・・・」

 

あいみょん「え、悲しい・・・・・・」

 

伊吹「実は使ってる曲はないのかもしれない」

 

あいみょん「じゃあなんでマリンバを出してきたんや!」

 

コアなファンが多いはずなのに、マリンバを使った曲がわからない人だらけの客席。他のアーティストのライブなら知っているフリをする輩がいるだろうが、あいみょんファンは嘘を付けない正直者ばかりだ。

 

気を取り直して「マリンバを使った曲」と紹介し『森のくまさん』を披露。あいみょんがアコースティックギターを弾き、伊吹はマリンバを弾く。浅倉が洗濯板や鳴き声が出るカバの人形など様々な小物を楽器代わりに使うという、斬新な編成での演奏だ。

 

ポップで可愛らしい音色の演奏だったが、この曲も途中で編曲が変化し大きく印象が変わる。

 

後半でステージが暗くなり、スポットライトがあいみょんだけに当たる。そこからギターの弾き語りになったと思えば、最後のサビはバンドメンバー全員が再登場し、赤い照明に包まれながら衝動的なロックサウンドを鳴らす。これも音源とは違うアレンジだ。アコースティックな温かな雰囲気が、ロックバンドの熱い空気に変わった。

 

そんな勢いを保ったまま、あいみょんが「東京!よろしく!」と叫び『RING DING』へとなだれ込む。

 

衝動的な演奏と叫ぶように歌うあいみょん。ギターの2人はステージ前方に出てきて客席を煽ったり、あいみょんを囲むようにギターをかき鳴らしていた。

 

これほどライブ映えするのに、今回のツアーで4年ぶりに演奏された楽曲である。ファンにとっても待望の披露だったかもしれない。

 

指切りしたイラストのツアーロゴを背にしながら〈指切りげんまん 嘘ついたら ぶん殴りにいくからさ〉と歌うあいみょん。まるで今回のために書いたと錯覚してしまっような歌詞だ。レア曲を多く披露することを目的としたのではなく、今伝えたい想いとコンセプトに合致した楽曲を選んだセットリストなのではと感じる。

 

 

 

 

次に演奏されたのは代表曲の『マリーゴールド』。この曲がなければあいみょんと出会わなかった人が、会場にもいたかもしれない。あいみょんの現在の活動内容や規模も違うものになっていたかもしれない。本人にとってもファンにとっても、特別な曲であるはずだ。

 

〈さよならの後が心地いいように キスは我慢しておこう〉という歌い出しの『GOOD NIGHT BABY』が始まると、ライブも終盤だと感じて少し寂しくなる。心地よい歌と演奏がステージから鳴らされ、優しい音の手拍子が客席から響く。ファンも一緒に音楽を作っていると感じた。

 

「次で最後の曲です。えええええーーー!声を出せないみんなの代わりに叫びました//////」と言って、少し照れるあいみょん。そして最後の挨拶として、ツアーやファンへの想いを語った。

 

先が見えない状況の中でファンクラブツアーをやれていることは、幸せなことだと思っています。

 

ファンクラブを作ったのはわたしではないです。支えてくれているみんなです。だからこれはみんなで作ったツアーなんです。今回のツアーは、今日のライブは、忘れられない大切なものになると思います。

 

これからもまだまだみんなと楽しいことができると思うから、ワクワクしていきましょう!

 

最後に歌われたのは『葵』。映画のタイアップもあり人気曲なのに、ライブで演奏されることがなかった楽曲だ。この曲でも自然と手拍子が巻き起こる。やはりファンも一緒に音楽を鳴らしている。

 

また会おうな まだただいま
言える場所はとっておくぜ

※あいみょん / 葵

 

サビの歌詞がファンへのメッセージに感じた。

 

コロナ禍でライブを開催することは簡単では無くなったし、ファンも会場へ足を運ぶことに悩んでしまう時代。だからこそこの歌詞が胸に響く。最後のサビで客席の電気が点灯し会場全体が明るくなった時は、そんな未来への希望を表現しているように感じた。

 

途中でバンドメンバーの紹介を1人ずつしていたことも印象的だった。

 

ファンに向けて「みんなでライブを作っている」とあいみょんは言っていたが、バンドメンバーも一緒にライブを作っている仲間である。彼らの支えがあるからこそ、あいみょんのライブは素晴らしいものになっているのだ。

 

一瞬で終わってしまった!一瞬で終わってしまったけど、みんな満足した?マスクの下は笑ってるような気がするな。

 

ファンクラブだけで6000人のライブをやれるとは思ってなかったし、ファンクラブだけでツアーを回れるとも思ってなかったです。

 

今日は推し曲があった?ファンクラブツアーやから「みんなが聴きたいマニアックな曲はなんだろう?」と思いながらセットリストを考えました。

 

今回は抽選で当たった人と終演後に楽屋でミーグリをしてるんやけど、この間は「あいみょんの包丁は浅草の河童横丁で買ったんですか?包丁の柄の部分は木製ですか?」って聞いてくる子が来たw わたしのファンは変わった子が多いw

 

でも、愛おしいと思いました。

 

そう言ってから、再び双眼鏡で客席をバードウォッチングするあいみょん。ファンも手を振ったりスケッチブックを掲げたりする。それに指さしたり手を振ったり、投げキッスをしていた。

 

一瞬に感じるぐらいのライブは一生忘れられないようなライブでもあった。この日のあいみょんも、やはりグッドなナイトにしてくれた。

 

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ファンクラブ限定ライブということで、あいみょんからの手紙が全員に配られた。

 

「内容はツアーが終わるまでは秘密。ツアーが終わったらSNSとかにガンガン投稿してね」と言っていたので、ツアー終了後にブログを再更新して、手紙の内容を紹介しようと思う。

 

■AIMYON FANCLUB TOUR 2022 “PINKY PROMISE YOU”  at 東京ガーデンシアター 2022.2.8(火)

01.ジェニファー
02.空の青さを知る人よ
03.好きって言ってよ
04.君はロックを聴かない
05.ら、のはなし
06.ミニスカートとハイライト
07.Continue
08.ハート
09.いつまでも
10.ハルノヒ
11.森のくまさん
12.RING DING
13.マリーゴールド
14.GOOD NIGHT BABY
15.葵

 

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