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【レビュー】あいみょん『おいしいパスタがあると聞いて』であいみょんが「おいしい」と思ったパスタは何なのか?

おいしいパスタがあると聞いて 

 

あいみょんの新しいアルバムは素朴で優しい作品に思った。本人は意識していないのかもしれないが、原点回帰的なサウンドに聴こえる。

 

1曲目の『黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を』からしても素朴さと原点回帰といえるサウンドを感じる。

 

黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を

黄昏にバカ話をしたあの日を思い出す時を

  • あいみょん
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

アコースティックギターの音と手拍子。そしてあいみょんの歌声。そんな素朴な演奏から楽曲が始まり、アコーディオンとドラムの音が重なり優しい演奏を繰り広げる。

 

その温かな余韻を残すように『ハルノヒ 』へと続く。王道J-POPといえる曲展開とメロディだが、音数は少なくアコースティックギターの音が目立つ優しい。

 

あいみょんはヒット曲を連発した平成生まれのカリスマの一人でありつつも、素朴で身近な存在で居続けている。本人のキャラクターも音楽の軸も、活動当初から変わらない。

 

ハルノヒ

ハルノヒ

  • あいみょん
  • J-Pop
  • ¥255
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前作『瞬間的シックスセンス』は幅広い音楽性を感じるバラエティ豊かな楽曲が揃っていて、サウンドも徹底的に作り込まれたJ-POPアルバムだった。注目の若手アーティストによる力作といった感じだ。

 

しかし今作はそれに比べると肩の力がいい意味で抜けている。アルバムを通してテンションはほぼ一定。

 

今作のタイトルは『おいしいパスタがあると聞いて』。

 

前作が様々な料理が順番に出てくるコースメニューだとしたら、今作はタイトル通り美味しいパスタをじっくりと味わうような感じの音楽だ。

 

生パスタ

 

今作をパスタで例えるならば、乾麺ではなく生麺に思う。生パスタとあいみょんは似ているのだ。

 

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乾麺はデュラムセモリナ粉を100%使わなければならないという決まりがイタリアにはある。常温で長期保存するためには、この粉が必要なためだ。

 

しかし製造方法が限定的なので製造者による味の違いが少ない。味が安定していて長期保存ができるメリットはあるが、個性を出しづらいというデメリットがある。

 

それに比べて生麺のパスタは使う粉に縛りはない。

 

家庭によっても作り方も使用する粉の種類も違う。パン用の小麦粉を使ったり、薄力粉を混ぜて使う調理者もいる。

 

そのため調理者の個性やこだわりが反映されやすい。イタリアの一般家庭でも家によって味が違う。日本の家庭における味噌汁のような存在である。

 

つまり家庭的な女がタイプなオレと大親友の彼女の連れは、イタリア人だったと推測できる。

 

生パスタは乾麺パスタよりも家庭的で素朴で優しい味だ。

 

乾麺よりもモチっとした食感が出しやすいこともあり、食後の余韻も残りやすい。それは今作のあいみょんが素朴な歌声と優しい音色の編曲をしていることに似ている。

 

あいみょんは乾麺パスタの美味しい店へデートに誘っても付いてこないが、生パスタの美味しいお店に誘ったら喜んでついてくるはずだ。

 

つまり乾麺を使うジョリーパスタよりも生麺にこだわっている鎌倉パスタをあいみょんは好んでいると仮定できる。

 

尾崎世界観は鎌倉パスタにあいみょんを誘ったのかもしれない。

 

カルボナーラ

 

あいみょんはカルボナーラが好きだと思う。

 

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今作は優しいサウンドが多い。過激な歌詞も少ないし尖っていて刺激的な展開の楽曲も皆無。聴いていて胸に染み入る気持ちになる曲が中心だ。

 

そのためペペロンチーノやトマトソースはあいみょんが求めている「おいしいパスタ」とは違う。

 

ペペロンチーノは唐辛子が入ったりと刺激を感じる味。トマトソースは少しだけ味が濃い。もっと優しい味を求めているはずだ。

 

そして魚とキノコが使われていないパスタであることも確定事項である。あいみょんが嫌いな食べ物は魚とキノコなのだ。

 

それを除いて優しく素朴なパスタは何かと考えると、卵や生クリームやチーズを使って優しい味付けがされたカルボナーラではと推測できる。

 

カルボナーラは素朴で優しい味でありながら、深い余韻が残る濃厚さも兼ね備えている。それはあいみょんの最新作とソックリだ。

 

裸の心

裸の心

  • あいみょん
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『裸の心』は吉田拓郎的なフォーキーなメロディに歌詞が綺麗に乗っている。そのため言葉が真っ直ぐ胸に響く。

 

朝陽

朝陽

  • あいみょん
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

『朝陽』はアップテンポでシティポップ的な演奏にフォーキーなメロディを乗せて独特なサウンドメイクをしている。

 

これらの曲は素朴なようで作り込まれていて濃厚。だから聴いた後の余韻が深く残る。

 

あいみょんはカルボナーラとしか言いようがない音楽をやっているのだ。

 

あいみょんは鎌倉パスタ

 

あいみょんの存在は鎌倉パスタに例えることができる。ジョリーパスタでもポポラマーマでもない。

 

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鎌倉パスタは「和」空間で生パスタを食べることをコンセプトの一つにしている。

 

鎌倉彫の内装で御座敷も印象的な店内で、和食器に盛り付けられたパスタをお箸で食べることを推奨している。

 

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あいみょんは元々フリッパーズギターのように洋楽の影響が強いポップスを目指していたが、現在はJ-POPや日本のフォークソングの影響を強く感じる音楽やっている。

 

そのため「和」の要素を感じる楽曲や歌唱が多い。

 

しかし『シガレット』のようにブラックミュージックの香りをほんのり感じる曲や『チカ』のようにブルースを感じる曲もある。『マシマロ』の疾走感あるリズムも魅力的だ。

 

それは「和」ではなく「洋」の要素だ。

 

チカ

チカ

  • あいみょん
  • J-Pop
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つまりあいみょんは海外の音楽や文化を取り入れつつも、そこに和の要素も加えて個性的な作品を作っているということだ。それはまさに鎌倉パスタと共通することである。

 

鎌倉パスタはパンも美味しい。

 

店舗で焼き上げた焼き立てのパンは外はカリッと中はモチモチ。芳純な香りが口いっぱいに広がる。それをパスタソースに絡めて食べるのも最高だ。

 

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しかもパンは330円(税抜き)で食べ放題セットをパスタにつけることができる。

 

パスタだけでなくパンを目当てに店舗に足を運ぶファンが多いことも、鎌倉パスタの特徴である。

 

あいみょんはパンが大好きだ。かつてパン屋への憧れを語っていた。

 

音楽以外にも趣味はいっぱいあったから……カメラマンにもなりたかったし、パン屋さんにもなりたかったし、保育士さんにもなりたかったんです。

(引用:歌を歌うだけじゃない、新世代アイコン「あいみょん」を知る - インタビュー : CINRA.NET)

 

パン屋への想いはまだ捨て切れていないようで、パン屋への未練をTwitterのリプライでファンに伝えていた。

 

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 美味しいパスタと美味しいパンの両方が鎌倉パスタにはある。あいみょんの求める全てが揃っている。

 

鎌倉パスタの看板メニューは「カルボナーラ」。

 

あいみょんの裸の心を見透かしたかのように、おいしいパスタを提供してくる。

 

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このように鎌倉パスタにはあいみょんの要素が詰まっている。きっとあいみょんは鎌倉パスタが大好きなはずだ。

 

この記事を読んだ人もパスタを食べたくなったかと思う。あいみょんが好きと言うことはイコールでパスタが好きと捉えられる。

 

あいみょんもファンも湘南乃風もおいしいパスタを求めているのだ。

 

あいみょんを聴いて、この文章を読んで、”おいしいパスタがあると聞いて”鎌倉パスタへ行きたくなったのではと思う。

 

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