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【ライブレポ・セットリスト】フレデリック『FREDERHYTHM TOUR 2021-2022〜朝日も嫉妬する程に〜』 at Zepp Haneda 2022.2.4(金)

良い演奏をします。良い歌をうたいます。良いセットリストを用意しました。

 

あとは、あなた次第です。

 

フレデリックのワンマンツアー『FREDERHYTHM TOUR 2021-2022 〜朝日も嫉妬する程に〜』のツアーファイナルで、ボーカルギターの三原健司がMCで話した言葉に痺れた。

 

言葉から気迫を感じた。嘘偽りは無い言葉だと実感するような、最高のライブを序盤から作り上げていた。

 

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コロナ禍が続く中でのライブなので、当然ながら客席からは声を出すことはできない。客席の配置だってソーシャルディスタンスを保つことで、安全に配慮されている。

 

もう2年近く続いていることではあるが、制限だらけの環境でバンドはライブを行わなければならない。

 

しかしロックバンドはどんな環境でもロックを鳴らせる。最高のライブを作ることができる。フレデリックのツアーファイナルは、それを証明するような内容だった。

 

「フレデリズムツアー始めます」と挨拶してから『飄々とエモーション』で始まったライブ。健司がハンドマイクで煽りながら歌い、いきなりフルスロットルで盛り上げていく。続く『ディスコプール』からは健二もギターを弾き、さらに厚みのある音でバンドの凄みを伝える。

 

今回はライブハウスでの公演。だからかステージセットや演出はシンプルだ。自分がフレデリックのワンマンを観たのは横浜アリーナ以来なので、その違いに最初は驚いた。

 

しかし演奏の熱量やバンドとしての凄みは、アリーナよりもダイレクトに伝わってくる。今回は「魅せるライブ」ではなく「ロックの衝動を伝えるライブ」に感じた。

 

「音楽が好きな人は手を挙げてくれ」と煽ってから始まった『KITAKU BEATS』で、一体感がさらに増す。これほどまでに手拍子が揃うライブは珍しいと感じるほどに、見事なクラップが客席から鳴らされる。それもバンドの熱量がしっかり伝わっているからだ。

 

ギターの赤頭隆児は『ガールズルール』の乃木坂46みたいなジャンプを、何度もやりながら演奏していた。満面の笑みで『ガールズルール』のジャンプをしている。序盤から彼は遊びきっている。

 

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ジャンプする乃木坂46(参考資料)

 

「メジャーデビュー曲、やってもいいですか?」と健二が言ってから、早くも『オドループ』を披露

 

ベースの三原康司がステージの前の方へ出てきて煽る。やはり赤頭は『ガールズルール』のジャンプをしている。

 

演奏を終えた後の拍手は、とても長くて大きかった。まるでライブの最後に贈られるような拍手だ。メンバーも笑顔で客席を見渡して、やり切ったような表情をしている。

 

序盤でこんな空気になるのは異例だ。

 

バンドは全力を出しすぎていたし、ファンはハイテンションすぎた。最初から最高の頂点みたいなステージングを見せつけられたので、後半は盛り下がってしまわないかと不安になる。

 

しかしそんな心配は無用だった。フレデリックの勢いは止まらない。

 

青いのスポットライトに照らされながら健司が歌い出してからバンドの演奏が重なった『名悪役』。去年リリースされた新曲だが『オドループ』に負けない盛り上がりだ。

 

さらに『FUTURE ICE CREAM』と、過剰なぐらいにキラーチューンを連発してファンの体力を奪っていく。赤頭は控えめに『ガールズルール』のジャンプをして、体力を消耗していた。

 

しかしフレデリックの音楽性は幅広い。『サイカ』のように、ミドルテンポの心地よい楽曲もある。この後は音楽性の深さを実感させる曲が続いた。

 

フレデリックには色々な曲があります。

 

聴いてもらいたい曲や身体を揺らしてもらいたい曲。そしてこの曲は踊ってもらいたい曲です

 

 

 

そう言ってから演奏された『Wake Me Up』では、健司がハンドマイクでステージを動き回りながら歌った。

 

客席は身体を動かしたり腕をを上げたりと、統一感のない一体感を生み出しながら楽しんでいる。みんな自由に踊っている。みんな踊ってない夜を知らないのだろう。

 

フレデリックはロックバンドでありながらも、ダンスミュージックの要素が強い。ライブだとDJのように曲間なしで演奏することもあり、その時は会場がダンスホールになっていた。

 

『正偽』を曲間なしで続け、康司がベースを置きシンセサイザーを弾いていることからも、それを顕著に感じる。その時は客席の湧き上がり方も、ロックコンサートというよりもクラブのような状態になる。

 

新曲の『Wanderlust』もダンスミュージック。こちらも曲間なしで続くが、ファンを驚かせるサプライズがあった。

 

ステージの後方に天井まで覆い尽くす金色のカーテンが現れたのだ。それが照明によってキラキラと光っている。この曲からレーザー照明も使われ、客席に無数のレーザーが伸びていく。

 

ここまではバンドによる肉弾戦的な、演奏の凄みで圧倒させるステージングだった。しかし新曲ではライブハウスとは思えない、壮大で美しい演出を取り入れた。

 

このギャップによってライブのハイライトに思うほど、新曲に感動してしまう。フレデリックはライブハウスを湧かせるバンドであると同時に、壮大なライブで魅せるバンドでもある。それを実感させられた。

 

健司「前半はフレデリックの曲をとにかく届けたからったから、曲をたくさん連続でやりました。新曲では演出を入れてみんなを驚かせようと思って、こういう形にしました」

 

赤頭「新曲で使った金の幕を持ち帰ってカーテンにしようかな?」

 

健司「家がバレちゃうよ。今日はCSテレ朝で中継されてるけど大丈夫?」

 

赤頭「だ、だいじょうぶ......。シャワーカーテンにも使おうかな?」

 

金の幕の使い道をウキウキしながら考える赤頭。シャワーカーテンが必要な彼の自宅は、ユニットバスなのだろうか。

 

CDを手に取って欲しいなと思っています。

 

親の世代は文通とかしてたじゃん。それが素敵だなと思っていて、バンドにとってのCDは手紙だと思っています。

 

今は主流ではないかもしらないけれど、CDで出すアルバムはとても大切な手紙だと思っているので、よろしくお願いします。

 

ドラムの高橋武は金の幕の使い道よりも、3月にリリースする新作アルバムを気にかけているようだ。アルバムへの想いを熱く語っていた。

 

「新曲のWanderlustは旅をテーマにした曲なんです。旅にながらなか行けない世の中だけど、そんな気持ちを共有できてるんだなと実感できて嬉しい」と話す康司も、やはり金の幕の使い道よりも新曲について考えていた。

 

 

 

ライブも後半戦。ここから再びファンを巻き込み湧き起こすような曲が続く。

 

『かなしいうれい』でクラップを巻き起こし、そのままサビのクラップが一体感があり気持ちいい『逃避行』を曲間なしで続ける。再び熱気で満ちていくフロア。

 

「残り3曲」と告げてからは、バンドもファンもラストスパートをかけるように、さらに盛り上がる。

 

『スキライズム』では荒川静香に褒められそうなイナバウアーをやりながらギターソロを弾く赤頭。ファンは拳を上げたり拍手をして、彼のイナバウアーを賞賛している。

 

ライブ定番曲の『TOGENKYO』を最高の演奏で届けてから、「2021年のフレデリックを代表する曲を」と言ってから最後に『TOMOSHI BEAT』を披露。

 

代表曲や人気曲だらけのセットリストであった。しかし最後はリリースされたばかりの新曲でライブを締めた。

 

それは過去の楽曲に頼るだけではなく、新しい音楽を作り続けて勝負し続けることへの表明に感じた。

 

アンコールの選曲やMCからも、それは感じた。

 

 

 

ミニアルバムは「こういう音楽にフレデリックはハマっている」ということを伝える目的があります。

 

でもフルアルバムは写真を集めたような、思い出や想いを詰め込んたものだと思います。2020年から2022までの思い出や想いを詰め込んだのが、新しいアルバムの『フレデリズム3』です。

 

みんなと作った作品だと思っています。あなたに届けたい1枚です。

 

音楽を好きなみんなと俺たちで、音楽を通して幸せな人生を作りましょう。

 

アンコールで健司が話したMCには「今のフレデリックを聴いて欲しい」という想いで溢れていた。新しいアルバムへの自信でみなぎっていた。

 

アンコールの1曲目は『YONA YONA DANCE』。和田アキ子に提供した楽曲のセルフカバーだ。

 

この楽曲はSNSを中心に大きなバズを巻き起こした。それには楽曲の魅力が大きく影響していると思う。和田アキ子だけでなく、楽曲提供したフレデリックも注目された。

 

セルフカバーながらも自身のオリジナル曲目かと思うほどの演奏と歌声だった。これからライブ定番曲になると予感させるほどの盛り上がりだった。

 

〈ミラーボール輝いて 心照らしあっていく〉というフレーズが歌われると、客席上のミラーボールが輝き回った。

 

ロックバンドの最高の演奏と、それを引き立てる最高の演出が組み合わさる。カッコよくも美しい空間になる。それに鳥肌が立つ。

 

「ライブはファンと一緒に作るもの」と言うミュージシャンは多いが、「スタッフと一緒に作るもの」でもあるのだろう。そんな演出だった。

 

ラストは『ANSWER』。こちらも須田景凪と一緒に作った新曲だ。やはりフレデリックは新曲で勝負する。

 

新曲もファンにしっかり受け入れられている。『オドループ』に負けない盛り上がりになっている。

 

そういえば2018年の『VIVA LA ROCK 2018』にフレデリックが出演した時に、「オドループだけの一発屋だと思うなよ」とMCで言っていたことを覚えている。

 

それから4年。彼らは今でもロックシーンの中心で活躍しているし、着実に名曲を増やしている。常に最新のフレデリックが最高にカッコイイ状態であり続けている。今は誰も彼らを一発屋だとは思わないはずだ。

 

全ての曲を演奏し終えて「今日最高だった人は手を挙げてくれ!」と健司が言った時、Zepp Hanedaに居た全員が手を上げたと思う。

 

それほどに素晴らしいライブだった。それでいて今後が楽しみになるような未来に繋がるライブでもあった。

 

口だけじゃなく、行動で示していきます。

 

この言葉を最後に言い放って、メンバーはステージを去っていった。

 

今日のライブをやり遂げた時点で、既に行動で示しているじゃないか、と思った。

 

でもまだまだ本人達にとっては、ファンの想像を超えた見せたい未来があるのだろう。フレデリックが与えてくれたライブの余韻は「未来への期待」だった。

 

このライブを観た人はきっと誰もが「今のフレデリックを追わなきゃ損」と思ったのだろう。

 

■フレデリック『FREDERHYTHM TOUR 2021-2022〜朝日も嫉妬する程に〜』 at Zepp Haneda 2022.2.4(金) 

01.飄々とエモーション
02.ディスコプール
03.KITAKU BEATS
04.オドループ
05.名悪役
06.FUTURE ICE CREAM
07.サイカ
08.Wake Me Up
09.正偽
10.Wanderlust ※新曲
11.かなしいうれしい
12.逃避行
13.スキライズム
14.TOGENKYO
15.TOMOSHI BEAT

 

EN1.YONA YONA DANCE
EN2.ANSWER

 

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