オトニッチ

ニッチな音楽情報と捻くれて共感されない音楽コラムと音楽エッセイ

音楽フェスが開催できるならオリンピックも有観客開催は可能だと思う

※2021年6月21日18時頃に書き終えた文章です。

 

2021年5月。自分は久々に1万人規模の音楽フェスに参加した。

 

野外で行われたJAPAN JAMと、屋内のアリーナで行われたVIVA LA ROCKだ。

 

どちらも素晴らしいアーティストばかり揃っていた。コロナ禍で制限がある中でも、最高のライブをやってくれていた。

 

運営はリスクを減らしたオペレーションと、それでも楽しめる環境作りを徹底して考え実行していた。ほとんどの参加者が運営方針や制限を受け入れ、リスクを減らす行動を心がけ楽しんでいた。絶対的に安全ではないものの、会場内での感染リスクは低かったと思う。

 

このご時世に音楽フェスを開催することは、不要不急の外出を促進することではある。県外移動した参加者もいるだろう。批判されても仕方がない。

 

それでも行うべき理由はあった。国や自治体が自粛を求めたとしても、満足いく保証や補償が無いのならば、行うしかないのだ。

 

コンサートを初めとするエンタメ興行を生業として生計を立てている人が沢山いる。その人達の生活を守らなければならない。感染症ではなく経済的理由で死を選ぶ人もいてもおかしくない。逆に経済を回すことによって、コロナに感染してしまう場合もある。

 

何かを守るということは、何かを犠牲にすることである。そこからは免れることはできない。

 

しかし犠牲を最小にすることはできる。様々なメリットとデメリットと、犠牲と救いのバランスを考えて最善の答えを出すことはできる。

 

不要不急の外出を自粛し自宅から出ないことは一つの答えだが、絶対的な正解がない問題ではある。そのため徹底的な対策をして興行を開催することも、一つの答えになる。

 

JAPAN JAMとVIVA LA ROCKからはクラスタは発生しなかった。あまりにも対策内容が豊富て書ききれないので割愛するが、開催地域の県や市からも許可を貰った対策内容を実行し、当日に会場に足を運んだ自治体の担当者からも取り組みを評価された。現状で可能な限りの最大限の対策をしていたと思う。コロナ禍でも興行は成功することを結果として示した。

 

もちろん全ての感染経路を追いきれてはいないだろうから、参加者に感染者はいたかもしれない。しかし関係者やスタッフからは感染者は発生しなかったし、参加者でクラスタが発生していたのならば、公表せずとも騒ぎになっていただろう。

 

リスクを減らして経済を動かし、エンタメを続けることができた。コロナ禍でもエンタメ興行は成り立ち、成功させられることを証明したと思う。

 

しかし音楽フェスやライブ、その他演劇やスポーツ興行などの開催を批判する人や懐疑的な人もいる。何を大切に思うかによっても考え方も変わる。

 

花火大会や地元の祭りが中止された地域で、音楽フェスが開催されるパターンもある。「なぜ花火大会や祭りばかり中止になるのか?」と思う地元住民もいる。

 

2020年は「映画や演劇やスポーツは良いのに、なぜライブハウスはダメなのか?」という意見があった。逆に2021年の緊急事態宣言時は映画館に休業要請が出て「なぜライブやスポーツ観戦は良くて、映画館はダメなのか?」という指摘があった。

 

同じジャンルのエンタメでもこのような議論は巻き起こっていた。例えば「アラバキロックフェスが中止になったのに、なぜJAPAN JAMとビバラロックは開催するのか?」「関西のライブハウスは営業できないのに、なぜ関東は営業できるのか?」などなど。

 

それが意見や指摘ではなく、嫉妬やヘイトへと変化した人もいる。コロナ禍とそれに関わる政治のせいで、エンタメを愛する者同士で争いが生まれる。本来は共鳴し共感し合う関係なのに。

 

2021年7月28日間から東京オリンピックが開催される。おそらく中止になる可能性は低い。確実に開催するのだろう。

 

オリンピック開催に反対する意見もある。観客を動員することや、その他諸々の取組への批判も耐えない。

 

これに関しても意見や批判ではなく、嫉妬やヘイトになっている人もいる。具体的な理由を持っていないのに、中止を訴えている人もいるように見える。

 

音楽フェスやライブへ頻繁に行く人でも、オリンピックの開催や有観客にすることに反対の立場の人もいる。映画や他のスポーツ観戦が好きな人でも、オリンピックに対しては、同じように開催することを許せない人もいる。

 

しかし音楽フェスやライブ、野球やサッカーなどのプロスポーツは有観客で開催している。それならばオリンピックも開催できるはずだ。海外から来日する選手も選手村に閉じこもり、試合以外で外部と一切の接触を断ち切るならば、リスクも減らせるだろう。

 

オリンピックの開催について、自分は”基本的には”賛成の立場である。有観客でも良いと思っている。〝開催可能かをしっかり検証し、徹底した対策を取り、リスクを最小にして運営できるならば”開催すべきと思っている。

 

生の音楽を聴いて心が救われる人がいるように、オリンピックを見て元気を貰う人もいるだろう。自粛により身体の健康を維持することも大切だが、自粛で病んだ心の健康を取り戻すことも必要だ。

 

とはいえ自分も今の状態での開催には不安はある。疑問もある。今の運営方針や準備のままならば、心から賛成することはできない。

 

自分はスポーツに関しては詳しくない。オリンピックについては、ニュースで流れてくる情報しか知らない。

 

そのうえで感じることではあるが、オリンピックは開催が確定事項で、開催のために辻褄合わせをしているように見える。「大人の事情」を最も考慮し、それを優先していると感じる。

 

 

組織委の選手村担当者は、酒類に関し「組織委自らがお酒を提供することもなければ、村内での販売もない。ただし持ち込みは可。祝勝会などの要望があればケータリングとして届けることもできる。理由としては、選手村はもともとが異なった国の選手同士の交流の場なので」と説明した。

(五輪パラ選手村で酒類持ち込みが可能と判明「選手同士の交流の場」規制せず(スポーツ報知) - Yahoo!ニュース)

 

飲食店での酒類の提供を禁止や自粛を要請されていた地域もある。友人や知人との交流を我慢している人もたくさんいる。

 

しかしオリンピックの選手村では祝賀会や飲酒しての交流も許可している。それどころか促進している。異なった国の選手同士が交流する場を設けようとしていた。

 

民間に求めている協力内容とは真逆である。様々な事情があるのかもしれないが、納得でない人が多いことは当然だ。クラスタ発生の元凶になる可能性も高い。

 

結局の酒の持ち込みは可能ではあるものの、部屋での1人で飲むことを求め、共有スペースで飲んだり宴会を開くことは禁止になった。(選手村、酒OKも「一人飲みで」 コンドームは帰国時に - 東京オリンピック:朝日新聞デジタル)

 

しかしこれは開催1ヶ月前に考えて発表する内容なのだろうか。疑問である。

 

開会式の観客数は、これまでの計画では、一般へのチケット販売で9300人、スポンサーなど大会関係者への販売で1万0500人、IOCや国会議員といったセレモニー関係者で7300人の、合わせて2万7000人あまりとなっていました。

 

これを減らすため、大会関係者を1万0500人から9000人に、セレモニー関係者を7300人から6000人に絞りましたが、それでも、2万4000人あまりとなっていて、最終的には、さらに大会関係者9000人のうち、パッケージツアーの客など5000人を「一般に近い関係者」として、一般販売の9300人と合わせて再抽選し、1万人以内に絞ることで総数を2万人以内にするということです。

(東京五輪の開会式 観客2万人を上限に検討(日本テレビ系(NNN)) - Yahoo!ニュース)

 

政府は民間のイベントに対しては収容人数の50%以下ならば1万人の収容を上限として認めている。しかしオリンピックの開会式は例外の特別扱いで、2万人が上限になるらしい。

 

その理由は感染リスクや安全性を専門家が科学的な検証したからではない。スポンサーや関係者の観客を1万人以下にはできないので、2万人以下に変更したからだ。大人の事情を変更できないということだ。

 

ライブや音楽フェスには特例などないのに。中止の可能性を考え準備をし、開催が難しければ断念する場合も多いのに。それなのにオリンピックは「中止など有り得なく開催が前提」な方針で準備が進められている。

 

6月21日の会談で、試合に関しては収容人員の50%以下かつ1万人以下に変更すると決まったらしい。(東京五輪観客数の上限決定 収容定員の50%以内で1万人を原則に | オリンピック・パラリンピック 大会運営 | NHKニュース)

 

専門家の有志が「無観客での開催が望ましい」などと提言したことをきっかけに、有観客ながら収容人員を減らすことにしたとのこと。絶対に有観客で開催したいようだ。

 

あくまで自分が参加した範囲でのライブやフェスの話ではあるが、感染症に対する危機感を持っている民間主導のイベントは多いと感じる。感染症対策に対して真剣に考えていると感じる。

 

重要事項は先手を打って早いうちから決定し周知し、問題があれば即座に対応している。アーティストや参加者に対して、その理由や意味や想いを共有し協力を求めている。

 

それに対して国が主導しているオリンピックはどうだろうか。これもあくまで自分がニュースなどで見たり調べた範囲ではあるが、何もかもが後手後手で行き当たりばったりに見える。

 

問題が発覚した時の対応も遅い。そもそも2021年の話とは思えない発表や取組もある。コロナ禍になってから1年以上経っているのに、今でもその程度の認識なのかと呆れることもある。

 

感染症のことを考えると、音楽フェスもオリンピックも全て中止にしたほうが良いとは思う。感染リスクがある移動や行動は全てなくし、エッセンシャルワーカー以外はテレワークもしくは休業にすべきだ。それが理想だ。しかし現実的ではない。絶対に無理だ。感染症ではなく感染症対策のせいで死ぬ人が出てきてしまう。

 

エンタメ興行が中止になることで失業する人や廃業する会社もある。それと同じようにオリンピックが中止になることで取り返しのつかない経済的損失を受ける人や会社もある。それを想うと自分は簡単に中止しろとは言えない。そのような人や会社も守らなければならない。その意味でも自分はオリンピック開催は基本的には賛成ではある。

 

しかしやはり”徹底的な感染症対策をして感染リスクを最小限にできるならば”という条件が必要だ。それができないならば賛成できないし開催すべきではない。

 

オリンピックだけでなく音楽フェスだってそうだ。とある音楽フェスに参加した人から、手抜きをしている運営の話やルールやマナーを一切守らない参加者がいた話をSNSなどで見かけた。全ての音楽フェスでルールやマナーが徹底されていた訳でもない。

 

そんな音楽フェスは中止すべきだ。デメリットしかない。今の世の中でエンタメをやることに、運営は責任を持たなければならない。中学校の文化祭ではないのだから。

 

参加者も覚悟を持たなければならない。幼稚園のお遊戯会ではないのだから。後先考えずに今を楽しみたいならば、他人を巻き込まないでくれ。

 

他のライブも演劇も映画館もプロ野球も同じだ。もちろんオリンピックだってそうだ。徹底した対策ができないならば開催するべきではない。観客を入れるべきでない。

 

中止も視野に入れ、考え抜いた上での開催にすべきだ。開催の根拠と理由を示すべきだし、万が一の時の責任の所在や取り方を表明するべきだ。

 

それができるならば、ぜひとも開催して欲しい。音楽を止めないで欲しい。スポーツを止めないで欲しい。エンタメを続けて欲しい。それが多くの人の経済と心を救う。

 

東京オリンピックはどのような感染症対策を行うのだろうか。責任の所在はどこなのか。誰がどのような形で責任を取るのか。あと1ヶ月でどこまでそれらを考え、表明し周知できるのだろうか。

 

音楽フェスが開催できるならば、オリンピックも有観客で開催しても良いと思う。

 

それと同時に音楽フェスが開催されるからと、オリンピックも開催すべきとは言い切れない。オリンピックが開催されるからと、音楽フェスも開催すべきと言うわけにもいかない。

 

時期やタイミング、内容によって開催可能かは変わる。主導となる運営がどのような仕事をするかによっても変わる。それはどんな興行でも同じだ。

 

ロッキンが開催を決めたものの、ライジングが中止を決断したことも、同じ音楽フェスでも方針や内容が違うことが影響している。どちらも本気で必死に考え抜いた結論だろう。

 

オリンピックはどうなのだろうか。的確な判断で開催可否や内容を決められるのだろうか。徹底した運営でリスクを最小にして開催できるのだろうか。

 

それが全て可能で、不安要素を極限まで減らして開催できるならば、自分は東京オリンピックの開催を支持する。出場選手を応援したいし、多くのメダルを取って欲しい。国民に力を与えて欲しい。

 

しかしそれが不可能で強引に開催するのならば、自分は支持できない。

 

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