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音楽フェス・音楽ライブの開催判断について思うこととメディアの報道やルール違反者について思うことについて

ライブ・音楽フェスが開催決断を選ぶことについて

 

 

先日リアルサウンドに寄稿した。今まで複数のメディアにいくつもの文章を寄稿したが、この記事はは特に慎重に執筆した。

 

『音楽ライブやフェス、3度目の緊急事態宣言で迫られる開催判断 積み重ねてきた感染者ゼロの実績』というタイトル。

 

3度目の緊急事態宣言で公演の中止や延期が再び増えたことについて、個人的に想うことを書いた内容だ。

 

賛否が分かれる内容だと思う。賛否が分かれるテーマだと思う。それは書く前からわかっていた。それを前提として書いた。

 

編集担当者の方は「ライブエンタメ業界の現状を伝えつつ、支援や開催の後押しをしたい」との想いを伝えてくれた。そんな記事を書いて欲しいと依頼をしてくださった。

 

明確な答えがないデリケートな事柄について、明確な意志を表明する記事を出すことは、企業のメディアとしては危険で難しいことだ。それでも依頼をして掲載してくださったことに、心の底から感謝をしている。

 

しかし1200字前後という文字数の指定があり(1800字書いても許してもらったけども)全ての想いを言葉にできたわけではない。誤解されても仕方がない表現もあった。

 

だから少しだけ自分のブログで追記することにした。そして自分が先日Twtterのスペースで話した考えについて改めて文章にしたい。GWの音楽フェスが開催終了した今だから感じることについても追記してみた。気づいたら7000字になった。ボリューミーすぎる。最後までちゃんと読んでもらえるのだろうか。

 

まず自分のライブに対する考えの前提として「絶対的に開催するべき」とは思っていない。そして「ライブ会場は絶対的に安全」だとは思っていない。その上でライブが開催されるならば受け入れ賛同するし、開催されるならば参加するという立場だ。それを知って欲しい。

 

リアルサウンドに寄稿した記事及びこの記事は、そんなひねくれ者が書いた文章だと思って欲しい。

 

ライブの開催はバッドな選択

 

自分は音楽が好きだ。ライブにも頻頻に行っている。趣味でもあり生きがいでもある。だからライブが中止になることは、悲しいし悔しい。

 

それでも今の社会情勢を考慮するならば、本来は全てのライブを中止すべきだと思う。音楽のライブは世間的には不要不急の代表のようなものだ。大人数が同じ場所に長時間留まる。人の移動もあるし県外移動も増えるだろう。

 

ライブだけではない。映画も劇場で月に数本観る程度には好きだが、映画などのその他エンタメや興行も可能ならば中止にするすべきだ。

 

感染拡大を防ぐには人の流れを止めることが重要である。密を防ぐことが大切だ。ステイホーム。ソーシャルディスタンス。これを徹底的に守るべきである。

 

しかしエンタメ産業に関わる人は、ボランティアで行っているわけではない。仕事だ。生活のために働いている。感染症にかからないことを重視することと同じように、そこで働く人たちの生活や収入も守らなければならない。

 

だから働くしかない。仕事を続けるしかない。世間から不要不急と言われるエンタメは、誰かにとっては大切な収入源である。

 

今の社会で不要不急の仕事はエッセンシャルワーカーだけだ。それ以外の仕事に就く人で働き続けている人は、エンタメ業界で働く人を批判し中止を求める権利はないだろう。

 

「エンタメを守る」「文化を守る」とライブ参加者は言う。それはもちろん大切だが、綺麗事でもある。その言葉に良くも悪くも酔っている部分もある。本当に素晴らしい文化やエンタメは、一時期行なわれない程度では消滅することはない。自分たちがそこを過剰に心配する必要はないだろう。

 

1番重要なことはエンタメを仕事にする人の生活を守ることだ。その仕事で収入を得られる状態が続くようにすることだ。

 

だから補償や保証を誰もしてくれないし、寄付やクラウドファンディングに限界があるならば、続ける手段を選ぶしかない。

 

ベストではないがベターな選択。生活のためにやらざるを得ない部分や、マイナスな理由やリスクも含んでいるので、バッドな選択と呼ぶことがきっと正しいのだろう。

 

それをどうにかしてベターな選択に持っていくために、ライブ・エンタメ業界は感染症対策を徹底している。開催への批判を受け入れつつ、なんとか認めてもらうために本気で努める。人件費や経費が増えて収益が減ったとしても、自分たちの仕事が世の中に必要なのだと伝えなければならない。

 

だからこそ参加者は今まで以上にルールやマナーを徹底しなければならない。エンタメを守ることと同時に、彼らの生活を守らなければならない。それが「開催する」というバッドな選択をベターにするために、最も重要なことだ。

 

 

東京で緊急事態宣言が発令される中で開催された関東の音楽フェス

 

東京都で緊急事態宣言が発令されている中で、約1万人を集客する音楽フェスが開催された。千葉県で行われたJAPAN JAM2021と、埼玉県で行われたVIVA LA ROCK2021だ。

 

県外移動して会場に向かう人もいる。同じ場所に多くの人が集まる。このご時世では批判されても仕方がない。政府がステイホームを呼びかけているのに、外出を勧めているようなものだから。

 

開催はバッドどころかワーストな選択だ。運営はそれを理解した上で、万が一のことがあった時は会社が潰れることも覚悟の上で開催しているだろう

 

運営はワーストな選択を徹底した対策と準備により、なんとかしてバッドな選択にしようとしている。

 

自分も両方のフェスに参加した。そこではコロナ禍以前のフェスではありえないような対応がされていた。どちらも殆ど同様の対応をしていたが、ここでは室内でJAPANJAMよりリスクが大きいビバラロックの対策を紹介したい。

 

入場するためにはcocoaアプリの画面提示と本人確認画面を提示しなければならなかった。手指の消毒や検温ももちろん行う。アルコールの持ち込みも飲酒してからの入場も禁止。持ち物検査は入念に行っていた。

 

入場はチケットのアルファベット順での分散入場。終演後は細かくブロックごとに規制退場を行なった。

 

飲食ブースでは黙食の徹底が呼びかけられ、テーブルごとに一蘭のような板が設置されていた。喋れば直ぐにスタッフが飛んできて厳しく注意する。あれほど静かな音楽フェスの飲食ブースは初めて見た。それほどにルールを守っている人が殆どだった、もちろんアルコール販売は行われていない。

 

フロアも密にならないよう、工夫されている。

 

スタンディングエリアは事前抽選で当選した人しか入れない。これによって人が前方に押しかけることを防いだ。しっかり前後左右の人と距離が保てるように立ち位置は指定されていた。

 

椅子席は前後左右が1席空けになっている。通路は一方通行にすることで、スタッフが人の出入りや流れを管理しやすくして、入退場での密を防ごうとしていた。そして1ステージ終わる事にスタッフは空いた椅子や床を消毒殺菌する。

 

様々な工夫と努力で、徹底的な対策を行っていた。なんとかして安全な環境を創ろうとしていた。

 

「コロナ禍での音楽フェスの開催」というワーストな選択を、なんとかバッドな選択にまで持った。しかし運営の力だけでは、これ以上の対策は無理だ。

 

これをベターな選択にするにはどうすれば良いのだろうか。それには観客の協力が重要だ。

 

運営の定めたルールに素直に従う。マナーに気を遣う。自身でも感染症対策について考え実行し徹底する。制限が多く不自由な思いをするとしても、それを我慢して受け入れる。それが無理ならば行かない。そのような選択をするべきだ。

 

参加者側も本気にならなければ駄目だ。それでようやく「ベターな選択になるかもしれない」という状態だ。参加者全員が同じ気持ちで徹底をしなければならない。

 

たった一人でもルールを破った場合、感染症対策を怠った場合、万が一の事態が起こってしまうかもしれない。視聴率を稼ぎたいメディアに狙われ叩かれても、言い訳も反論もできなくなってしまう。

 

 

音楽フェス開催について報じるメディア

 

テレビの情報番組や報道番組で「ゴールデンウィークに行われた音楽フェス」としてJAPAN JAMとビバラロックが紹介された。

 

紹介の方法は様々だ。伝え方は局ごとに違うが、内容に嘘は殆どなかったと思う。

 

良かった部分と悪かった部分を、フラットな目線で取材し伝えた日本テレビ。

 

ビバラロックの感染症対策に対する取組や音楽業界の現実、主催者の想いを伝えてくれたフジテレビ。

 

「我慢のGW”も…野外フェスに1万人集結 住民困惑」という見出しをつけ、ルールやマナーを破る参加者を見つけて、それを中心に報道したテレビ朝日。

 

その報道は全て真実だと思う。

 

音楽フェスやライブの開催には賛否が分かれる時代。良い部分も悪い部分もあるのは当然だ。運営が本気の対策をしていたことも真実。ルール違反者がいたことも真実。

 

しかしルールやマナーを破った参加者は全体の何割なのか。何パーセントなのか。

 

一部の違反者に注目し、印象操作を目的とした見出しをつけ、偏った視点や立場で報道すること。それはセンセーショナルでネタにしやすく、視聴率も稼ぎやすいのかもしれない。

 

しかし報道機関ならば本来は中立の立場であるべきだ。良いことも悪いことも真実を伝えることを目的とするべきなのに、視聴率や話題性の獲得を目的としている。それでは偏向報道だ。印象操作だ。

 

 

TBSテレビのように、取材不足な上に真実をねじ曲げた報道をする局まで出てきた。

 

ライブや音楽フェスはエンタメである。それは音楽に興味がない層にとっても変わらない。

 

偏見を持って面白おかしく取り上げバカにして批判するという意味で、奴らにとってもライブは「エンタメ」なのだ。ライブをバカにしている人たちには、音楽を愛する人とは別の受取方で「エンタメ」として消費されている。

 

 

少しずつ前に進むライブエンタメ業界

 

ライブハウスやフェスの会場は不良や身勝手な若者が集まる場所と思い込んでいる人も少なくない。数万人集客しても、世間から見たらアングラなのかもしれない。そのため感染症対策を徹底しリスクを最大限抑えて開催しても、その内容や価値はなかなか外部にまで伝わらない。

 

音楽を好きな人は意外と少ない。ライブ会場へ行き生の音楽を聴きに行く人は少数派。

 

それを音楽ファンは理解しなければならない。だから音楽業界やライブエンタメ業界はどこよりも徹底した感染症対策を行い、少しでも理解してもらえるように、信頼してもらえるようにと努めている。

 

不要不急の外出をすることは、今の世の中では褒められたことではない。どれだけ対策されていたとしても、ライブへ行くために外出することは批判されても仕方がない。それについては音楽ファンは甘んじて批判を受け入れるべきだと思う。

 

だからどう説明してもライブやフェスの開催はワーストな選択もしくはバッドな選択だ。運営が他の業界や業種以上に徹底した感染症対策をすることで、ようやく開催が許されている状態である。

 

しかしバッドな選択だとしても、そこで働く人にとっては大切な仕事であり収入源。「他の仕事に就けばいい」なんて残酷なことを自分は言えない。それを言い出したらエッセンシャルワーカー以外は、全員仕事を変えるべきという極論になってしまう。それでは経済も人生も崩壊してしまう。

 

身体の健康も大切ではあるが、心の健康も大切だ。

 

こんな世の中に後ろめたさ罪悪感を持ちながらライブ会場へ向かう人たちは、音楽によって心の健康を保っている人が多いと思う。生の音楽を聴くことで生きる気力を得ている人もたくさんいる。全ての人に理解してもらうことは難しいが、音楽が不要不急でない人は業界での働き手以外にもいるのだ。

 

とはいえやはりライブの開催はバッドな選択である。観客が協力してようやくベターな選択になるかもしれないという状況が続いている。少しずつ実績を積み重ね、これからも関わる全員が徹底した最策を行い、確実に「ベターな選択」と思われるような状況にしていかなければならない。

 

そしていつかはライブ開催を「ベストな選択」と外部からも思われる状態にしなければならない。そのためには今後も感染者を出さずに運営を続け、リスクを極限まで減らして開催することが可能だと証明し続ける必要がある。

 

牛歩であっても少しずつ前に進んで、いつかはライブ開催が「ベストな選択」と思われる状態を目指していきたい。それが数年後になるとしても。

 

だから大切な場所を守るために運営だけでなく参加者も含め、関わる全員で感染リスクが低いライブを作っていかなければならい。

 

5月末まで4都府県で緊急事態宣言が延長されると政府から発表された。

 

過去の宣言ではライブやイベントに関しては原則無観客開催を求められたり、中止を求められることもあった。しかし今回は宣言期間ないでも入場者を5千人か定員に対する収容率50%の少ない方を上限に認め、開催時間は午後9時までと要請された。つまり制限があるものの有観客での開催が認められたのだ。

 

この1年で積み重ねた努力や結果が、少しは認められたのだろう。 ワーストな選択はバットになり、ようやくベターな選択として認められつつあるのかもしれない。

 

しかし再び「バッドな選択」「ワーストな選択」になるかもしれない。ちょっとしたきっかけで、簡単に。

 

自分がリアルサウンドに寄稿した記事に「ライブ会場でのクラスタは発生していない」と書いたが、これは正しくはなかった。申し訳ない。

 

正しくは「音楽を聴くことを目的としたライブ開催ではクラスタは発生していない」だ。

 

 

2020年7月に北海道のライブハウスでクラスターが発生している。

 

しかし原因は出演者と客が至近距離で会話や写真撮影を行なったことや、マスクを外している客がいたこととされている。ライブハウス側や出演者側は対策が甘かったとしか思えないし、客側の意識も低かったとしか思えない。

 

実際に感染者はいる。クラスターも発生した。だから「ライブ会場は安全」とは言い切れない。1人でもルールを守ったり意識が低い人がいれば、取り返しのつかないことになるのだ。

 

テレビ朝日の報道で映された酒を飲んでJAPAN JAM会場へ向かった客もそうだ。テレ朝の偏向報道には疑問を感じるが、ルールを破った客がいたことは事実である。

 

音楽ファンや運営はテレ朝に対して怒るだけでなく、ルールを破った客に対して怒るべきだ。むしろルール違反者に対してこそ怒り批判をし問題視するべきだ。大きな問題で音楽ファンの仲間に軽蔑される行動だと、ルールを破った客に気づかせるべきだ。

 

ビバラロックもJAPAN JAMもルールやマナーを守る参加者がほとんどだった。運営も危機感を持って徹底した対策を行なった。だからゲスい情報番組が偏向報道をすることで話題にはなっても、大きな問題にはならず無事に最終日まで開催できたのかもしれない。

 

しかしこの件については、ライブシーンの現実を知らない人よりも、音楽やライブを愛する人こそ問題視し批判すべきことだ。1万人も集まればルールを破る最低な奴は一定数いるかもしれないが、生の音楽が鳴らせる大切な場所を守るためには、ルールを破る最低な奴を許すわけにはいかない。

 

ライブ会場は安全ではない。

 

どれだけ対策したとしても安全にはなれない。感染リスクを減らせても、安全とは言い切れない。安全だと思い込んではならない。感染対策が徹底されたライブに行くと「ライブ会場は安全だ」と言いたくもなる。しかし感染するリスクがゼロにはならない。

 

むしろライブ会場は危険だと思って、覚悟を持って参加した方がいい。

 

準備と対策を徹底して行く気持ちであるべきだ。「安全だ」と思っていては、どこかで気が緩む。気が緩んだ客がいればルール違反者は増えて行く。運営の気が緩めば感染症対策までも緩んだ内容になってしまう。

 

そんな気の緩みが原因で、北海道のライブハウスではクラスターが発生したのだろう。「安全だ」と思い込んでいる客がいるから、音楽フェスルール違反者が少数見られ、それがテレ朝に撮られて報道されたのだろう。

 

もしかしたら音楽業界の脅かし未来を壊す存在は、ゲスいマスコミでもなく、エンタメ不要派の人たちでもなく、音楽業界の中にいるのかもしれない。

 

一部の意識が低い業界人と、一部の認識が甘い音楽ファンがエンタメ壊すのかもしれない。自らの大切な場所を自らの手で無意識に破壊しようとしている人がいるのだ。

 

自身が音楽業界を破壊する一人にならないように、考えて行動するべきだ。もちろんこの言葉は自身にも言い聞かせてもいる。無意識だとしても破壊する存在にならないように。意識的に守る存在になれるように。

 

「エンタメを守る」

 

主語が大きすぎて実感を持てないかもしれない。大袈裟でピンとこないかもしれない。それでも音楽が大切ならば考えて想うべきではないだろうか。

 

一緒にエンタメを守りましょう。そこで働く人たちの生活を守りましょう。