2020-12-04 【ライブレポ・セットリスト】フジファブリック アコースティックライブ「FABRIC THEATER 3」第一部 @EX THEATER ROPPONGI 2020.12.02 フジファブリック ライブのレポート FABRIC THEATER 3 ライブが始まってから、たった3秒でカオスな状況になった。 この日はフジファブリックのアコースティックライブ「FABRIC THEATER 3」。EX THEATER ROPPONGIという素晴らしい会場で、アコースティックの上質な演奏を堪能するつもりだった。 だからカオスな始まりには動揺した。 ステージには白い幕が張られていて、そこに『金澤ダイスケ生誕祭 -Flyaway-』のダイジェスト映像が流れたのである。キーボードの金澤ダイスケの40歳の誕生日を祝ったライブで、カオスすぎて良くも悪くも伝説扱いされているライブの映像だ。 その中からカオスな部分を一部ピックアップして映像が流れた。なぜか演奏シーンは控えめでイリュージョンマジックや料理をしている映像が中心にだった。 会場は反応に困りざわつく。混沌とした雰囲気になる。商品化したいもののレーベルからNGが出ているので、映像を流してファンの反応を見て考えようとしていたらしい。 そしてNO MORE映画泥棒のパロディコスプレをした金澤ダイスケと加藤慎一が、注意事項を案内する映像が続く。 キャラクタースリーブ NO MORE映画泥棒 カメラ男&パトランプ男 (EN-015) 発売日: 2015/03/20 メディア: おもちゃ&ホビー 新しくカオスな映像制作しやがった。 反応に困りざわつく客席。映像が終わり混沌とした空気の中で拍手をする客席。 そういえば金澤ダイスケ生誕祭の会場もEX THEATER ROPPONGIだった。この会場は、フジファブリックにとって「何をやってもいい会場」と判断されてしまったのだろうか。 まだ演奏が始まっていないのに、カオスな映像だけで10分ほど時間が経っていた。 前半 カオスな映像が終わりゆっくりと幕が上がっていく。そこにはサポートドラムの伊藤大地を含んだ4人がステージにいた。そして1曲目の『徒然モノクローム』の演奏を始める。 徒然モノクローム フジファブリック ロック ¥255 provided courtesy of iTunes ブルースなアレンジになって渋いサウンドに変化している。原曲の明るくてポップなイメージとは180度違う。先程まで謎の映像を流していたバンドと同じ人物とは思えないカッコよさ。 音楽の力は凄いと改めて思う。さっきまでのカオスな雰囲気を一瞬で感動的なものに塗り替えてしまうのだから。 この日はアコースティックということもあり、まったりと楽しんで欲しいのだろう。MCの回数が多く、話す時間も長かった。 山内「声を出せないので拍手や手拍子は普段よりも大きめでお願いします!」 金澤「笑い声は出して良いらしいですよ。オープニングの映像では、みんな気を使って我慢してたのかな?もしかしてすべってた?笑って良いんですよ?」 客席「・・・・・・」 金澤「ほらスベりましたね。今日は心を強くして頑張ります」 「笑い声を出さない」という行動によって一体感が高まる客席。会場にいた全員が「MCがすべった」という気持ちを共有している。その一体感を保ったまま『ポーランド・ロップ』を披露。 カップリング曲ということもあり、ライブで演奏されることが珍しいレア曲。原曲もアコースティックな編曲ということもあり、原曲をより温かみのあるサウンドにアップデートさせたような演奏。 曲始まりで手拍子を煽っていたものの、金澤ダイスケのテンションが高すぎて変な空気になったため演奏を途中で止めてやり直した。 「生誕祭の変なテンションを引きずってるでしょ?」と怒る山内聡一郎。金澤ダイスケはステージでも自由にゆるゆるいかせて欲しいのだろうか。 山内がアコースティックギターをアルペジオで爪弾いてから、一呼吸置いて演奏されたのは『赤黄色の金木犀』。 赤黄色の金木犀 フジファブリック ロック ¥255 provided courtesy of iTunes 志村正彦が「変則チューニングだからライブであまりやりたくない」と生前に言っていた曲だ。そのためか人気曲でありながら演奏回数が少ない。 それをアコースティックにすることで、チューニングを変えずとも問題ない編曲で演奏した。原曲よりも哀愁をより感じる切ない音色が印象的である。 特に意外な編曲になっていたのは『Small World』だ。 Small World フジファブリック ロック ¥255 provided courtesy of iTunes スローテンポでゆったりと演奏したかと思いきや、中盤ではテンポが早まりギターソロやピアノソロを取り入れて華やかになっていく。そしてまた後半でスローテンポになる。 アコースティックだとシンプルな編曲で歌が際立つ演奏をするバンドが多い。しかしフジファブリックは複雑で難解な演奏で表現している。彼らの技術力と表現力の高さがあるからこそできることだ。 こういう特別なライブで噛み締めながら歌うと色々なことを思い出します。曲を作っていたころのこととか。『Small World』は『徒然モノクローム』と同じ時期に作っていたなあとか、もうなくなってしまったスタジオで作っていたなあとか。 普段と違うコンセプトだから感じてしまうことについて語る山内。「ライブ」という言葉を使ったことに対して、「今日はファブリックシアターだから上映ね」と注意する金澤。 ライブタイトルに「シアター」という言葉が入っているため、「上映」という言葉を使って設定を守りたいらしい。しかし金澤しかこだわりは持っていないようで、その後も他のメンバーは「ライブ」と何度も言っていた。 『ファブリックシアター』ではカバー曲を披露することが定番である。今回も2曲のカバーを披露した。 カバー1曲目は大澤誉志『そして僕は途方に暮れる』。 そして僕は途方に暮れる 大澤誉志幸 ポップ ¥255 provided courtesy of iTunes 跳ねるような疾走感あるリズムに暖かなアコースティックサウンドの音色が重なる。フジファブリックらしさが溢れたカバーだ。 「コロナのせいで友達にも会いづらいんですけど、秦基博くんとは毎日のようにLINEをして連絡を取っています。それで彼の曲を改めて聴いたら良い曲が多いなあと思って、今回は秦基博くんの曲をカバーしたいと思います」 山内が語ってから『ひまわりの約束』を演奏。美しいピアノの旋律から始まったが、すぐに演奏を止めた。 ひまわりの約束 秦 基博 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes どうやら金澤がコードを間違えて演奏したらしい。しかし「え?間違ってた?」とすっとぼける金澤ダイスケ。 そういえばコロナ禍になってから、どのアーティストも気合を入れて特別な意味を込めたライブをやることが多かった。 だからフジファブリックのゆるいやり取りを見て、ホッコリした。あの頃と変わらない雰囲気に思って安心した。 少しづつでもライブが再開されていることで、演者がリラックスして演奏できる空間が戻っているのかもしれない。 仕切り直しされた『ひまわりの約束』のカバーは、感動的で素晴らしい演奏だった。 後半 「自分で言うのも変ですけど、とても温かい曲が出来たと思います。最近は寒いので、より一層暖かく感じるようなアレンジで届けたいと思います」 新曲の『光あれ』は原曲の優しい雰囲気がより強まった演奏だった。ジャジーで楽器の1つひとつの音が際立つようなアレンジ。たしかに温かい楽曲だ。 山内「ダイちゃんが歌う?」 金澤「歌いません」 このやり取りをしてから『恋するパスタ』へ。 恋するパスタ フジファブリック ロック ¥255 provided courtesy of iTunes 山内がギターのイントロを弾き、金澤と加藤が手拍子を煽る。客席からこの日1番大きな音の手拍子が鳴る。 手拍子を全員やっていることを確認してからバンドでの演奏がスタート。原曲の多幸感ある雰囲気に、アコースティックサウンドで優しさを味付けしたような編曲。 「ダイちゃん!」と紹介されてからクールなピアノソロを弾く金澤ダイスケ。MCでスベっても演奏はすべらない。 次の『カンヌの休日』からはアコーディオンを弾いた金澤ダイスケ。やはりMC以外はすべらないカッコ良さ。ステージを動き回り煽って盛り上げる。 カンヌの休日 フジファブリック ロック ¥255 provided courtesy of iTunes 原曲は激しいロックナンバーだが、今回はブルースなアレンジ。しかし疾走感あるリズムなので、自然と身体が動いてしまう。アコースティックギターでの長めのギターソロも最高だ。 「来年もライブをやりたいしツアーもやりたいです。音楽を止めないようにしたいです。明るいニュースを届けられるように頑張るので、首を長くしてまっていてください。健康に過ごしてまた会えたらと思います。そんな未来を願って歌います」 音楽やライブ、活動に対する想いを語る山内聡一郎。そして最後の曲が始まる。 ラストは『LIFE』。アコースティックの優しいサウンドにファンの手拍子が重なる。 LIFE フジファブリック ロック ¥255 provided courtesy of iTunes 声援を贈ることはできないし一緒に歌うこともできない。それでもバンドとファンの間でコミュニケーションは取れているし、音楽によって一つになっている。 「ギター、俺!」と言ってから自らギターソロを弾く山内はめちゃくちゃ楽しそう。他のメンバーも穏やかな表情で楽しそう。 やっぱり僕ら思ってたよりも簡単にはいかないから一人きりでいればそれでいっか (フジファブリック/LIFE) このフレーズを歌っている時、メンバーが全員ステージの中心に集まって演奏した。ドラムの伊藤大地も大太鼓を抱えて中心に集まる。まるで「一人きりにさせない」というメッセージを含んでいるようだ。 演奏だけでなくメンバーの表情も行動も全てが温かい。ロックバンドのカッコよさとともに、温かさと優しさを持っていることがフジファブリックの魅力の一つに思う。 演奏を終えてステージを去るメンバー。すぐにアンコールを求める拍手が巻き起こる。 アンコールで再登場したメンバーはリラックスした様子で喋り出した。まるで楽屋で喋っているようなテンション。 新作アルバムを3月にリリースすると伝える山内聡一郎。本当は夜に発表する予定だったのだが、言いたくなったからフライングで発表したらしい。 そういえば11月のライブでも新しい情報をフライングで発表していた。その時に怒られなかったため「意外と言っても大丈夫だ」と思って今回もフライングしたとのこと。いたずらっぽく笑っていた。 でも「いち早くみんなの前で言いたかった」と伝える。こういうところが、自分がフジファブリックの音楽以外で好きな部分だ。 「これから先にライブができるのか、音楽業界がどうなっているかはわからないです。でも明るい未来はそこまできているんじゃないかと思いたいです。最後に心を込めて歌います」 フジファブリックのMCはメンバー同士でじゃれあったりふざけあっていることが多い。特にこの日はMCも長く、雑談のような内容が多かった。 それなのに大切な想いは誤魔化さずに真っ直ぐな言葉で伝えてくれるし、なによりも音楽でしっかり伝えてくれる。 最後に演奏されたのは『手紙』。今のフジファブリックにとって最も大切な楽曲の一つ。 手紙 (Album ver.) フジファブリック ロック ¥255 provided courtesy of iTunes いつもよりも少し遅いテンポで、より丁寧に歌って演奏していた。アコースティックだからこそ歌がより真っ直ぐに伝わる。歌を支えるバンドの温かい演奏が優しくて胸に沁みる。 ライブ中のメンバーは明るくてコロナ禍であることを忘れさせてくれるような、最高の雰囲気を作ってくれた。MCですべった時以外は温かい空気だった。 「明るいニュースを届けたい」と中盤のMCで話していたが、実際に「新作アルバムの発売」という明るいニュースも届けてくれた。 今後もコロナの影響で厳しい状況が続くかもしれない。特に音楽業界は大きな影響を受けるだろう。少しづつ再開されたライブも、来年はやれるのかはわからない。 それでもフジファブリックは今までと変わらない雰囲気のライブをやってくれた。ライブによって「非日常を体験する」という「今までの日常」を少しの時間でも取り戻してくれた。こんな時間がずっと続いて欲しいと思う。 会場とか配信とか関係なく、みんなと繋がっていけるのは音楽があるからです 11月に行われたライブではMCでこのようなことを言っていた。もしも来年ライブができない状況が続いたとしても、きっとフジファブリックは「音楽」によって繋がりを感じさせる活動をしてくれるのだろう。 来年3月に発売される新作のタイトルは『I Love You』。まずは音源によって繋がるということか。 フジファブリックの優しくて温かい演奏によって、希望をもらえるライブだった。 いや、ライブではなかった。 今回は「ファブリックシアター」だから「上映」だった。でもこの設定、忘れがちだし必要ない気がする。 フジファブリック アコースティックライブ「FABRIC THEATER 3」第一部 @EX THEATER ROPPONGI 2020.12.02■セットリスト 1.徒然モノクローム 2.ホーランド・ロップ 3.赤黄色の金木犀 4.Small World 5.そして僕は途方に暮れる ※大澤誉志カバー 6.ひまわりの約束 ※秦基博カバー 7.光あれ 8.恋するパスタ 9.カンヌの休日10.LIFE EN1.手紙 ↓他のフジファブリックの記事はこちら↓