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カネコアヤノを初めて観た時、客は30人しかいなかった

4年ほど前の話

 

カネコアヤノの『来世はアイドル』というタイトルのミニアルバムがある。自分はこのアルバムがとても好きだ。

 

 

タワーコレードの試聴機に置いて合ったカネコアヤノのCD。目立たない位置に置いてあったが、なんとなく気になって試聴し、その場で衝動買いした。それがカネコアヤノとの出会い。

 

素朴で繊細な歌声。個性的な声質。音や歌詞は70年代日本語ロックぽさを感じるかが、どことなく現代的な雰囲気もある。

 

不思議だけど魅力的なシンガーソングライターだと思った。

 

 

『来世はアイドル』の収録曲で特に好きな曲は『はっぴいえんどを聴かせておくれよ(仮)』。フォーキーな演奏とほっこりする歌詞に癒された。

 

歌声もメロディも、歌詞に使う言葉のセンスも、何もかもが惹きつけられるものがあった。他にはない、代わりなんて絶対にいないような個性がある。絶対に多くの人に聴かれる音楽になると思った。

 

しかし、カネコアヤノの存在はなかなか浸透しなかった。素晴らしい音楽をやっているのに、とてつもない才能があるのに、埋もれそうになっていた時期があるように思う。

 

ガラガラのフロア

 

カネコアヤノのライブを初めて観たのは、存在を知ってから1年ほど後。渋谷O-nestというライブハウス。3組出てくる対バンライブで、カネコアヤノは1番手で出てきた。

 

客入りは良いとは言えなかった。平日のライブだったので、仕事や学校の関係で開演に間に合わなかった人もいたのかもしれない。

 

約200人キャパのフロアには、30人ほどしか客はいない。カネコアヤノ目当ての客も少なそう。カネコアヤノは知名度が低いシンガーソングライター。客の少なさは当たり前だったのかもしれない。

 

バンド編成で行われたカネコアヤノのステージ。ライブを観て、驚いた。CDを聴いてイメージしていた姿とは違う印象を感じたからだ。

 

CDでは繊細な歌声に感じた。しかし、ライブでは力強い歌声で髪を振り乱し、何かに憑依されたかのように感情的に歌っている。その姿に圧倒された。引き込まれた。

 

ライブとCDとは表現方法は違う。それでも、CDで感じたカネコアヤノの個性と同じものは感じた。どんな表現方法でも、どんな歌い方でも魅力的な音楽。一筋縄では説明できない物凄い個性がある。

 

CDとライブでは全く違う2面性のある魅力を見せつけてくる。これ程凄いアーティストが埋もれてることに勿体ないと思った。

 

カネコアヤノの出番が終わると、だんだんとフロアに人が増えてきた。やはり他の出演者目当てが多かったのだろう。最後の出演者の時、フロアはほぼ満員の客で埋め尽くされていた。

 

ライブの終演後には各出演者がCDやグッズの物販を行なう。カネコアヤノも本人が物販に立ちCDやグッズを売っていた。しかし、それほど売れているようには見えなかった。それも当然だ。

 

30人ほどしかカネコアヤノのステージを観ていないのだから。他の出演者目当てで後から来た客は、聴いてもいないアーティストのCDやグッズに興味を持つはずがない。

 

他の出演者も良いライブをやっていたと思う。でも、悔しかった。これだけ凄い才能をもっているアーティストがライブやっていたのに、観ていない人がたくさんいる。

 

きっとライブを観た約30人の客は凄さを感じたはずだ。しかし、他の170人はカネコアヤノの才能に気づいてすらいない。気づこうともしていない。

 

どれだけ良い音楽をやっていても、どれだけ才能があっても、それが見つからなければ意味がない。見つけてもらえる場所に行っても、見つけようとする人がいなければ意味はないのだ。

 

カネコアヤノのその後の活動

 

カネコアヤノは『恋する惑星』というアルバムをリリースした後、しばらく全国流通のCDはリリースしなかった。アマチュア的な活動になって行ったように思う。

 

ライブ会場や一部のCDショップでしか買えない作品が中心になった。リリース形態もカセットテープでリリースしたり、CDのパッケージを布にしたりと珍位販売方法。

 

ライブを行う会場もライブハウス以外の珍しい場所が増えた。演劇をやる小劇場や、銭湯の宴会場など。他のアーティストがあまりライブを行わないような会場でライブを行った。

 

決して以前が縛られて活動していたとは思わない。それまでも自由に表現し素晴らしい作品を作っていたのだから。

 

しかし、より自由に活動しているように感じた。型にはまることなく、自身のやりたいことを、自身のやりたい方法で表現しているように見えた。音楽の作り方も作るペースも。リリース方法やライブを行う場所も。

 

カネコアヤノはもともと凄い才能を持ってたと思う。それがより自由に活動するようになってから、さらに才能が爆発した。楽曲の幅はさらに広がり、表現力もさらに磨きがかかった。

 

不思議なことに、ファンも少しずつ増えて行った。さらに世間に見つかりにくい活動形態になったのに。

 

きっと偶然対バンやイベントでライブで観た人や、偶然曲を聴いた人を確実にファンにしていったのだと思う。

 

カネコアヤノの音楽はやはり人を惹きつける力があった。自由に活動すればするほど、その魅力はどんどん増して行った。それに比例して人気も上がって行った。

 

そして、個人的にカネコアヤノのターニングポイントんなったのではと思う曲がある。

 

とがる

 

2017年4月、カネコアヤノは久々に全国流通のCDをリリースした。『ひかれあい』というEP。個人的にこのEPのリリースによって、カネコアヤノが多くの人に見つかるきっかけになったと思っている。

 

この作品は多くのCDショップで大きく展開されていた。目立つ位置にポップが飾り付けられ、CDが置かれた。CDショップの店員にも、カネコアヤノの魅力がしっかり届いたのかもしれない。

 

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 特に1曲目に収録されている『とがる』という曲は、多くの人にカネコアヤノの存在と才能を知らしめた。この曲をきっかけにファンになった人も多いように感じる。

 

 

『とがる』は一般の音楽ファンにカネコアヤノの凄さを知らしめただけではない。例えば、エレキコミックのやついいちろうはこの曲をきっかけにカネコアヤノを知り、自身のラジオ番組で繰り返し流した。

 

スピッツの草野マサムネもカネコアヤノを『とがる』で知り、才能を認めた。スピッツのファンクラブ会報で「最近よく聴くCD」としてカネコアヤノの作品を選び、2018年にはスピッツ主催のイベント『新木場サンセット』にカネコアヤノを招いた。

 

今年のフジロックにもカネコアヤノは出演した。年末にはカントダウンジャパンにも出演する。音楽業界全体に、存在や才能が認められ始めている。

 

気づいたらワンマンチケットは簡単には取れなくなってきた。500人以上入るキネマ倶楽部でもチケットは即完するようになり、全国ツアーのチケットも地方を含めて完売している。

 

人気も評価もどんどん上がってきている。あの日、30人だけしかライブを観ていなかったシンガーソングライターだとは思えないほどに。

 

カネコアヤノを再び渋谷O-nestで観た

 

 『JAPAN'S NEXT 渋谷JACK 2018』というサーキットフェスがある。渋谷のライブハウスを複数使ったライブイベント。このイベントにカネコアヤノも出演していた。

 

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 カネコアヤノが出演する会場は、渋谷O-nest。自分が初めてカネコアヤノのライブを観た場所と同じ。200人キャパの会場に、約30人しかいなかった場所。

 

この日のライブはMCを殆ど行わず、立て続けに曲をぶつけてきた。あの日と同じように力強い歌声で、髪を振り乱し、何かに憑依されたように歌う。あの日と同じように、圧倒された。

 

あの日と同じような凄いライブを見せつけてきたカネコアヤノ。しかし、あの日と違う部分もある。

 

それは、フロアがほぼ満員のお客さんで埋め尽くされていたことだ。30人どころではない。その6倍はお客さんがいる。そして、フロアにいた全員が圧倒されたはずだ。

 

あの日と状況は違う。それは当然かもしれない。今はカネコアヤノを見つけた人がたくさんいる。カネコアヤノの音楽を求めている人がたくさんいる。

 

とがってるかなりね 

わかるだろ

 

カネコアヤノは『とがる』の歌詞でこのように歌っている。

 

 思い返すと、カネコアヤノはずっととがっている。ライブでのパフォーマンスもとがってる。自分のやりたいことを自由にやる方向性も、業界や関係者やファンに媚びを売らない活動もとがっている。

 

そして、そんな姿にみんな魅了されたのかもしれない。魅了された人は、とがっているカネコアヤノのことをわかっているのだと思う。

 

自分がカネコアヤノを知った時、100人で満員の会場でもワンマンライブのチケットはすぐには売り切れなかった。チケットなんて、本人のTwitterへリプライやDMをして予約していたぐらいだ。

 

それが、今では平日の500人キャパでもなかなかチケットが取れない。今年リリースしたアルバム『祝祭』も評価されている。

 

とはいえ、世間的にはまだ無名のシンガーソングライター。まだまだ伸び代もある。これからも、とがり続けていれば、もっと多くの人が魅力を感じるはずだ。

 

改めて言うが、カネコアヤノは凄いシンガーソングライターなので聴いてほしい。かなりとがってるカネコアヤノの魅力をわかってほしい。