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【感想・レビュー】Negiccoの『MY COLOR』を聴いたら「長く続くアイドルの条件」がわかった

15年活動しているグループ

 

10年以上活動している女性アイドルグループは殆どいない。

 

女性アイドルは男性アイドルやバンドと比べても活動期間が短いとことが殆どだ。その中でもオリジナルメンバーが在籍しているグループはさらに少なくなる。

 

ぱっと思い浮かぶのはperfumeやももクロあたりだろうか。アリーナやドームなど大規模な会場でもライブを行い、老若男女に知名度のあるグループだ。

 

そんな2組と比べると知名度もないしヒット曲もないがNegiccoというグループも今年結成15年目を迎えた。

 

地味かもしれないが地道に活動を続け、地道にファンを増やしているグループ。パフォーマンスや楽曲などでアイドルファンや音楽ファンに一目置かれている。

 

そんなNegiccoが新しいアルバムを発売した。『MY COLOR』という作品。このアルバムが素晴らしい。アイドルのアルバムとしてはもちろん、ポップスのアルバムとしても作り込まれている。

 

そして、『MY COLOR』には「Negiccoが長年続ける事ができた理由」を感じる作品にもなっている。

 

MY COLOR(2CD/初回限定盤)

MY COLOR(2CD/初回限定盤)

 

 

 

豪華でジャンルレスな楽曲提供者

 

1.「Never Ending Story」
作詞 connie 作曲・編曲 Keishi Tanaka
2.「キミはドリーム」
作詞 こだまさおり 作曲・編曲 石濱 翔(MONACA)
3.「スマホに写らない」
作詞 高橋 一 作曲・編曲 思い出野郎Aチーム
4.「愛、かましたいの」
作詞・作曲 堂島孝平  編曲 石崎 光
5.「Tell me why?」
作詞 森雪之丞 作曲・編曲 connie
6.「She’s Gone」
作詞・作曲 夏目知幸 編曲 シャムキャッツ
7.「カリプソ娘に花束を」
作詞・作曲 connie  編曲 サイトウ “JxJx” ジュン、YOUR SONG IS GOOD
8.「そして物語は行く」
作詞 岩里祐穂 作曲 上田知華 編曲 connie、CRCK/LCKS
9.「ノスタルジア」
作詞・作曲 中川理沙 編曲 ザ・なつやすみバンド
10.「グッデイ・ユア・ライフ(下りver.)」
作詞・作曲 connie 編曲 connie、長谷泰宏
11.「硝子色の夏」
作詞 中島 愛 作曲・編曲 ミト(クラムボン)
12.「雫の輪」
作詞 connie 作曲・編曲 冨田恵一
プロデュース by 冨田恵一
13.「15」
作詞・作曲・編曲 connie

 

上記は今作に収録される楽曲と作詞作曲者一覧だ。冨田恵一やクラムボンのミトなど、人気もあり本人が第一線で活躍しているミュージシャンもいる。

 

ザ・なつやすみバンドやシャムキャッツやYOUR SONG IS GOODなどの実力派バンドや、堂島孝平などの個性的なソングライターも参加している。

 

作詞には森雪之丞のような大物作詞家がいたり、声優の中島愛がいたりと幅広い。

 

参加しているミュージシャンの音楽性は多種多様。一癖も二癖もある個性派が多い。収録楽曲の共通点はミドルテンポの落ち着いた楽曲が多いことぐらいかもしれない。

 

しかし、音楽性の違うミュージシャンが多く参加しているのにアルバムとして統一感がある。まるで全曲同じ作曲家や作詞家が作ったのではと感じるほどに。

 

誰の曲もNegiccoぽくなる

 

Negiccoの楽曲は全ての楽曲からNegiccoでしか聴くことができないような「Negiccoの個性」を感じる。どの曲も「Negiccoぽい」のだ。

 

それはメンバー3人の声色に特徴があることも理由の1つだとは思う。それぞれの声質が個性的で3人がユニゾンで歌った時も他のアイドルとは違うハーモニーに聴こえる。

 

しかし、それだけではない。楽曲自体に「Negiccoぽさ」があるのだ。楽曲の方向性も作った作家がバラバラだとしても。

 

例えば「Never Ending Story」のような爽やかなロックも「愛、かましたいの」のようなアイドルだから歌える可愛らしいポップスも同じように「Negiccoの個性」を感じる。

 

Never Ending Story

Never Ending Story

  • Negicco
  • J-Pop
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

 

愛、かましたいの

愛、かましたいの

  • Negicco
  • J-Pop
  • ¥200
  • provided courtesy of iTunes

 

もしかしたら「アイドルの楽曲」だからこそ、誰が楽曲提供をしても個性を感じるし、アルバムの収録曲に統一感があるのかもしれない。

 

楽曲提供をする場合、作曲家も作詞家も提供先のグループをイメージして制作するかと思う。「グループのコンセプト」「メンバーのキャラクター」「見た目や声」などなど。

 

そして、グループ自体に魅力あればあるほど、そのイメージははっきりとしたものになる。グループ自体に個性があればあるほど、誰が思い描いても同じイメージになる。

 

Negiccoはグループとしてもメンバー個人としても魅力も個性もある。そのため、誰がどのようなジャンルの楽曲を作ったとしてもNegiccoに対して同じ個性や魅力を感じ、それをイメージして制作するので統一感があるのだと感じる。

 

どの楽曲もNegiccoをイメージして作った楽曲だ。ジャンルがバラバラでも統一感があることも、グループとしての個性を感じることも当たり前なのかもしれない。

 

クオリティの重要さ

 

『MY COLOR』はNegiccoの個性を感じるだけでなく、ポップスのアルバムとしても作り込まれている。

 

どの楽曲と編曲のクオリティが高い。打ち込みを多く使用した楽曲はその作り込まれ方に聴き入ってしまうし、楽器がメインに使われている楽曲は丁寧な演奏や音の良さに感動する。

 

もしも歌声のないインスト楽曲だとしても聴き応えがあるし、歌だけでなくバックの音にも聴きどころがたくさんある。

 

また、アルバムの流れも意識して曲順も練っていることもわかる。

 

例えば1曲目の「Never Ending Story」から「キミはドリーム」の曲間なしでスムーズに次の曲に繋げる流れはアルバムで聴くからこそ、それぞれの楽曲の魅力が引き立つ。

 

「愛、かましたいの」から「Tell me why?」の方向性も雰囲気も全く違う曲を並べて段丘をつける流れも素晴らしい。

 

アイドルだからと楽曲には一切手を抜いていない。楽曲のクオリティにこだわることはもちろん、アルバムも1つの作品として「良い作品」を作ることにこだわっているように思う。

 

Negiccoが15年間活動を続け、ファンに愛され、アイドルファンや音楽ファンからも認められている理由は「良い音楽」であることが大きいのではと感じる。

 

アイドルはルックスが重要ではない?

 

アイドルグループには「〇〇っぽい」と言われる個性を持っているグループもいる。

 

それはメンバー自身のキャラクターやルックスに対してだけではない。音楽性に対しても言われる事がある。

 

ももクロやエビ中やでんぱ組のように、様々なミュージシャンが参加し楽曲提供をしているグループに対してもだ。

 

そういったグループは必ず他にない個性や強い魅力を持っている。そして「楽曲が良い」と評価され長年第一線で活動している事が多い。

 

Negiccoも例外ではなく、同じように楽曲が評価され長期間活動を続けている。

 

アイドルはルックスが注目されがちだが、ファンになるきっかけは「曲を聴いたこと」がきっかけの人も多い。アイドルの楽曲に感動したことがある人も沢山いると思う。

 

ライブでパフォーマンスしたり音楽で表現するのならば、アイドルだとしてもルックス以上に音楽性が重要なのかもしれない。音楽の魅力によってファンも増えて行くのではと思う。

 

アイドルグループが長年活動し評価され続けるには「良い音楽」であることが条件なのかもしれない。そんなことをNegiccoの新作であり名盤の『MY COLOR』を聴いて感じた。

 

ちなみににNegiccoの個性で特に凄い部分がある。それは、グループの個性を言葉では説明できないのに、曲を聴いたりパフォーマンスを観ると強い個性を感じてしまうところだ。

 

MY COLOR(2CD/初回限定盤)

MY COLOR(2CD/初回限定盤)