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ジャニオタじゃない男がジャニーズ楽曲大賞2018の受賞曲を評価してみた

 ジャニーズ楽曲大賞

 

正直、ジャニーズのグループのメンバーの名前と顔が一致しない。

 

名前すら覚えていないメンバーもいる。自分が男でジャニーズのタレントに興味がないからかもしれない。今話題のキンプリすら1人もメンバーを知らない。 

 

しかし、ジャニーズの楽曲は一流のミュージシャンが関わっていたり、良い曲が多いことは知っている。メンバーには一切興味はないが、音楽はチェックしているのだ。

 

先日、『ジャニーズ楽曲大賞』というものがあることを知った。

 

ジャニーズ楽曲大賞2018

 

ファンが好きなジャニーズ楽曲について投票し、順位を決めて楽しむというイベントで、非公式ながら人気のイベントらしい。

 

自分はジャニーズの楽曲やアルバムをいくつか聴いてはいるが、詳しいわけではない。ファンの人たちがどのような曲を選ぶのか興味があった。

 

『楽曲部門』の1位から10位までの楽曲を聴いてみた評価してみた。この記事では上位10曲の個人的な感想について書いている。

 

メンバーのことはわからないので、メンバーのことには一切触れていない。音楽部分のみに触れたジャニーズ楽曲の感想。

 

 

10位 君のうた / 嵐

君のうた(通常盤)

作詞:ASIL

作曲:多田慎也, A.K.Janeway

編曲:佐々木博史

 

作曲の多田慎也はAKB48の『ポニーテールとシュシュ』を作曲したことでも有名。キャッチーなメロディと爽やかさを感じる楽曲が強みの作曲家に思う。

 

この曲でもその強みは生かされているが、『君のうた』のメロディには爽やかさよりも切なさを感じる。

 

人が切なさを感じるメロディは、フレーズの最後の音階が下がっていることが多い。逆にフレーズの最後の音階が上がっていると楽しさや盛り上がりを感じる。

 

『君のうた』ではフレーズの最後の音階が下がることが多い。歌のメロディだけでなく、イントロの楽器も音階が下がっている部分が多い。楽曲全体として切なさを印象つけるような構成になっている。

 

しかし『君のうた』は切ないだけではない。明るさも感じる楽曲だ。

 

基本的に音階が下がるメロディだが、ところどころで音階が上がっている。そのため切ないのに希望を感じるような明るいメロディになっている。

 

そして三連符を織り交ぜることで疾走感も表現している。それによりキャッチーさも深まっている。

 

J-POPとして丁寧に作り込まれた名曲に思う。

 

 

 

9位 All you need is laugh / 関ジャニ∞

ここに (201∞盤) (CD+DVD)

作詞:錦戸亮・安田章大

作曲:錦戸亮・安田章大

編曲:錦戸亮・Peach

 

ダンスチューンだが生楽器が印象的な楽曲。ファンクな演奏がかっこいい。

 

そして、それぞれの楽器に見せ場があるような演奏にも力が入れられている楽曲に感じる。特に中盤のギターソロのフレーズも音作りが良い。

 

サビでは曲名にもなっている「All you need is laugh」が繰り返し歌われる。この繰り返しが聴いているうちに心地よくなる。

 

ダンスミュージックは同じフレーズを繰り返すことで躍らせる音楽が多い。この曲もその部分を教科書通りに丁寧に取り入れている。しかし、曲の展開はAメロもBメロもありJ-POP的。メロディも単純ではなく複雑。様々な方向にメロディが展開していき、それが個性的。

 

ダンスミュージックとポップスのいい部分を取り入れ、それに個性を隠し味にしているような楽曲。

 

 

 8位 名脇役 / Sexy Zone

XYZ=repainting(初回限定盤B)

作詞・作曲:竹縄航太(HOWL BE QUIET)

編曲:竹縄航太 / sugarbeans

コーラスアレンジ:竹内浩明 

 

シンプルなピアノのバラード。かと思いきやサビのストリングスがいい仕事をしている。あとアコースティックギターのカッティングも素晴らしい。それぞれの楽曲が壮大に弾くのではなく抑えつつ弾いてる。美しい歌のメロディを引き立てるような演奏。

 

1番と2番とでは演奏にも変化がある。2番ではドラムなど楽器の音が加わるし、ピアノもストリングスも違うフレーズを弾いている。

 

楽曲提供者はHOWL BE QUIETの竹縄航太。2016年にメジャーデビューしたロックバンドのフロントマン。

 

バンドマンだけあって、やはり楽器へのこだわりもあるのだと思う。バンドの曲を聴いてもらえばわかると思うが、HOWL BE QUIETはキャッチーなメロディが強みのバンド。その強みが楽曲提供でも活かされている。

 

ギブアンドテイク

ギブアンドテイク

  • HOWL BE QUIET
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

『名脇役』が収録されているアルバム『XYZ=repainting』は個人的にも去年聴いていてレビューも書いていた。とても良いアルバムなので他のアルバム曲も聴いて欲しい。

 

 

 

7位 「生きろ」/ NEWS 

「生きろ」 (通常盤)

作詞・作曲:ヒロイズム

編曲:ヒロイズム・石塚知生

 

サビの爆発力がすごい曲だと思う。

 

落ちついた演奏と歌唱のAメロから少しづつ盛り上がり、Bメロで演奏にブレイクを入れ展開に変化が出たかと思うと、サビでいっきに盛り上がる。段階を踏んで盛り上げていくのでサビの力強さが引き立つ。

 

サビの歌詞の「生きろ」というメッセージが力強く響く。シンプルな言葉なのに最も印象深いフレーズになる。

 

それはこのメッセージを届けるために曲の展開や演奏が工夫されているからだと思う。力強くかっこいい楽曲。

 

 

6位 Topaz Love / KinKi Kids

【早期購入特典あり】Topaz Love/DESTINY(初回盤A)(ミニポスターA付) CD+DVD [KinKi Kids]

作詞:堂本剛

作曲:堂本光一

編曲:堂島孝平

 

どことなく80年代歌謡曲を感じるような編曲。それにシティポップを付け加えたようなオシャレな雰囲気もある。

 

歌のメロディもJ-POPというよりも歌謡曲的。しかし古さは感じない。

 

それは編曲の堂島孝平が現代の音の質感で80年代風の編曲をしているからだと思う。”あえて”懐かしさを感じる編曲にし、そこに現代のエッセンスも混ぜる実験でもあるのかもしれない。

 

また、KinKi Kidsの二人のボーカルの後半の掛け合いが個性的。2人組ということもあるが、このような掛け合いは他のジャニーズでは珍しいように感じる。この歌唱により後半でいっきに盛り上がっているように感じる。

 

 

 5位 BANGER NIGHT / Hey!Say!JUMP

SENSE or LOVE (通常盤)

作詞:MiNE

作曲:Tommy Clint, 坂室賢一

編曲:坂室賢一

 

この楽曲の主役は歌ではないように感じる。

 

もちろん歌も楽曲における重要な部分を占めている。しかし、この曲での要となっているのはバックトラックだ。

 

サビの歌よりもバックトラックのシンセサイザーのリフが印象的なのだ。歌はそれを引き立てる要素になっているように思う。

 

アイドルの楽曲はアイドルの歌が主役になることが多い。

 

しかし、この曲は楽曲としてどのようにすれば最もかっこいいか」を意識しているように思う。そのためバックトラックが最も印象的になるように作られているのではと思う。

 

印象的なシンセサイザーのリフも1番と2番では変化している。この工夫により1番での盛り上がりを2番ではさらに超える盛り上がりしている。

 

アイドルソングというよりもEDMのダンスミュージックとして完成度の高い楽曲。

 

 

 4位 逆転ラバーズ / KEN☆Tackey

逆転ラバーズ(通常盤) 

作詞:岡嶋かな多, Hayato Yamamoto

作曲:原田卓也, Christofer Erixon

編曲:CHOKKAKU

 

サビが頭から離れない。一度聞いたら忘れられない。インパクト抜群のメロディと歌詞。

 

楽曲全体として聞くと、メロディや曲展開は王道のJ-POP。キャッチーさがある音階が上下するメロディ。AメロBメロサビと続く安心感のある構成。サビのインパクトを引き立たせるためにそれ以外の部分では複雑なことはしていないような構成。

 

しかし、バックトラックの編曲は凝っている。リズムパターンも目まぐるしく変化して複雑。歌のメロディだけでなく、シンセサイザーのリフもキャッチーなフレーズを弾いている。

 

キャッチーで楽しい音楽に振り切っている楽曲でもあり、それを実現するために細かい部分を計算して作り込んでいる作品。

 

 3位 カラクリだらけのテンダネス / Sexy Zone

カラクリだらけのテンダネス / すっぴんKISS(初回限定カラクリ盤)(特典なし)

作詞:EMI K.Lynn

作曲:原一博

編曲:船山基紀

 

ジャジーな部分やブルースを感じる部分もある編曲が印象的。編曲は大物音楽プロデューサーの船山基紀。多くの歌謡曲のヒット作品に関わってきた人物。どことなく懐かしさを感じる編曲はそれが理由だろう。

 

テンポが早いわけではないのに疾走感も感じる。Aメロの三連符によって感じるのだと思う。しかし演奏は落ち着いているので疾走感を感じてノリやすいのに色気も感じる。

 

楽器の音が良い。特にドラムの音が良い。演奏が良いだけでなく音作りや録音も丁寧に行われているのだと思う。個人的には歌以上に演奏に注目してしまう楽曲。

 

 

2位 ここに / 関ジャニ∞

ここに (通常盤)

作詞・作曲:WANIMAのMA

編曲:Peach

 

ロックバンドのWANIMAが楽曲提供した作品。聴けばすぐにWANIMAのメロディや歌詞だとわかる。しかし、今のWANIMAではやらないような演奏になっている。

 

編曲は関ジャニ∞の多くの楽曲に携わっているPeach。ピアノの音が加えられていることにより、ロックバンドの提供曲だがポップになって聴きやすくなっている。ギターの演奏もWANIMAの楽曲よりも複雑な演奏をしていて聴きごたえがある。

 

しかし、まっすぐな曲や歌詞はWANIMAの良さが残っている。Peachが関ジャニ∞が歌うにあたって、WANIMAの良さを残しつつ関ジャニ∞の魅力が引き立つように編曲したのだと思う。

 

WANIMAの楽曲提供作品というよりも、関ジャニ∞とWANIMAのコラボ作品と言いたくなるような、両者の魅力がつまっている楽曲に感じる。

 

 

1位 シンデレラガール / King & Prince

シンデレラガール(通常盤)

作詞:河田総一郎(soulife)

作曲:河田総一郎(soulife)・佐々木望(soulife)

編曲:船山基紀

 

欅坂46の『二人セゾン』を作曲したことでも有名なsoulifeが作曲をし、大物音楽プロデューサーの船山基紀が編曲をした作品。

 

この楽曲のすごい部分は、流し聴きしていても歌詞が頭の中に入ってくるところだ。例えばAメロは1フレーズが短く切られていてメロディもそれほど上下しない。そのため話しかけられているかのような聞こえ方になる。

 

そこで耳を奪われて聞いていると、三連符で上下するメロディのBメロに驚く。そしてそのままキャッチーなサビに繋がるので、ついつい集中して聴いてしまう。

 

するとサビ後半の英語詞部分のボーカルのかけ合いがある。この意外な展開もあるので聴いていて飽きない。

 

バックトラックは華やかだが音数を増やして盛り上げているわけではない。必要最小限で洗練した音を使って構成している。そのため音をうるさく感じたりごちゃごちゃしているようには聴こえない。

 

アイドルソングとしてもポップスとしても、こだわりと工夫を感じる。それでいてキャッチー。これは名曲でしょう。

 

 

 全体の感想

 

やはりジャニーズと一言で言っても様々な楽曲がある。

 

ダンスミュージックもあれば正統派ポップスやロックもある。ジャズを感じる編曲の楽曲もある。そして、グループごとにコンセプトや方向性の違いもあるように感じる。

 

そして、純粋に良い曲が多い。楽曲に関わっている音楽家は売れっ子や一流やベテランばかり。そんな人たちが本気で曲を作れば良いものができることは当然かもしれない。

 

アイドルだからルックスで売れているだけではなく、音楽として優れてるから評価されている部分もあるのだと思う。音楽ファンにはアイドルを全く評価せずにバカにしている人も少なくはない。そのような人はおそらくきちんとジャニーズの楽曲やアイドルの楽曲を聴いたことがない人が多いのではないだろうか。そういう人にこそしっかりと聴いてもらいたいと思う。

 

しかし、残念なことにジャニーズのアイドルの曲はネットで配信もされていない。iTunesでダウロードもできないし、Spotifyで聴くこともできない。YouTubeに公式のMVがフルでアップロードされていることも少ない。

 

既存のファンだけでも十分の売り上げや利益を出せるほどの人気があるのだと思う。しかし、良いものは多くの人に知ってもらいたい。あまり興味のない人にも聴いてもらえるような環境を日本の音楽シーンのためにも作って言ってほしいと思う。

 

受賞曲一覧

 

1位 シンデレラガール / King & Prince

2位 ここに / 関ジャニ∞

3位 カラクリだらけのテンダネス / Sexy Zone

4位 逆転ラバーズ / KEN☆Tackey

5位 BANGER NIGHT / Hey!Say!JUMP

6位 Topaz Love / KinKi Kids

7位 「生きろ」/ NEWS

8位 名脇役 / Sexy Zone

9位 All you need is laugh / 関ジャニ∞

10位 君のうた / 嵐