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【レビュー・感想】SixTONES『1ST』はジャニーズやアイドルをバカにしている人に一泡吹かせる名盤アルバム

SixTONESが自称音楽好きに泡を吹かせる

 

「ジャニーズっぽくない」

 

世間の反応からすると、SixTONESはこのように評価されることが多いようだ。今までジャニーズやアイドルに興味がなかった層でも、彼らの魅力に気づいている人が少なからず居るようだ。

 

そもそも「ジャニーズっぽさ」とは何ぞやという話ではあるが、個人的には様々な音楽に挑戦しつつも、キラキラした雰囲気や時折見せる可愛らしさがある部分だと思っている。そしてキャッチーで口ずさめるメロディも特徴に思う。

 

それは音楽の方向性が違ったとしても、ほとんどのジャニーズ所属アイドルの楽曲や歌唱から感じることが多い。

 

しかしSixTONESの1stアルバム『1ST』からは、それをあまり感じないのだ。

 

テレビのバラエティやラジオでのトークからは、アイドルらしさやジャニーズらしさを感じることは多いが、『1ST』の楽曲からはそれを感じない。『Mr.ズドン』のようなトンチキソングは存在しない。

 

ひたすらにクールでカッコいい楽曲が揃っている。まるで若手の勢いあるロックバンドの作品を聴いている気分になる。

 

アイドルソングはバカにされがちだ。その偏見は少しづつ改善されつつあるが、ジャニーズだってレベルが低いと勘違いしている人も多い。最近はK-POPファンからも批判されることもある。

 

実際はジャニーズを初めとするアイドルソングは、日本の一流クリエイターが集まって作っていることも多いのに。

SixTONES『1ST』は、そんな「自称音楽好き」への宣戦布告に思った。

 

わかりやすく「ジャニーズの音楽は、日本のアイドルソングは凄いし魅力的だ」ということを伝えるような作品だ。音楽好きが認めざるを得ない作品を作ることによって、自称音楽好きに一泡吹かせようとしているとすら思えるハイクオリティな作品である。

 

ジャニーズっぽくない曲とMV

 

アルバム通常盤に収録されている『うやむや』のMVを観て、改めてジャニーズを聴かない層にもアピールしていると感じた。

 

 

このMVはアニメーションでメンバーが登場しない。メンバーが出てこないMVはジャニーズとしてもアイドルとしても、かなり珍しく異質なMVに思う。アイドルはメンバーのルックスも重要な要素であり強みなのだ。

 

『うやむや』のMVはあえてアイドルとしての常識や強みを捨てることで、先入観を持たせずに聴かせようとしているのだろう。しかしアイドルならば誰もがこの挑戦をできるわけではない。SixTONESは歌声だけでも勝負できる実力を持っているからこその、このようなMVで勝負できるのだ。

 

楽曲やMVはボカロや歌い手の文脈から派生した方向性に思う。

 

作詞作曲は多くのジャニーズ楽曲を手がけたイワツボコーダイ。普段の作風とは少し違うことも、あえて狙ったのだろう。それによって「ジャニーズぽくない」という印象を与えているのだ。

 

そもそも他の収録曲も「ジャニーズっぽくない」楽曲が多い。『Mr.ズドン』のようなトンチキソングは存在しない。

 

アルバムのリードトラックである『ST』もかなり攻めた曲だ。

 

 

 

女性アイドルならばPasCodeなどがラウドロックを歌っているが、男性アイドルでここまで攻めたラウドロックに挑戦しているグループは居ないはずだ。ラウドロックを演奏し歌うバンドは男性が多いため、男性アイドルが歌う必然性がなく居なかったのだと思う。

 

しかしSixTONESはラウドロックを歌いこなす上に「アイドルである必然性」を取り入れている。

 

『ST』のサビはユニゾンで歌われている。ユニゾンは日本のアイドルグループでは常識レベルで頻繁に使われていることだ。

 

これをアイドルとは馴染みがないラウドロックと組み合わせることで、化学反応が発生している。ボーカリストが1人であることが多いバンドでは、ユニゾンで歌うことは滅多にない。

 

しかしユニゾンで歌っても「アイドルだからこその強み」を感じるとしても「アイドルっぽい楽曲」にはなっていない。むしろボーカリストが多いことによって、歌声に力強さが増して魅力的になっている。

 

それはメンバーの歌声が太く、歌唱力も高いからだ。そのためラウドロックを歌っても違和感がないし、むしろ唯一無二の個性を持ったラウドロックへと昇華している。だからアイドルを聴き慣れていない人も聴きやすい楽曲になっているのだ。

 

 

アルバムとしてまとまっている理由

 

『1st』は様々な音楽を取り入れているバラエティに富んだ作品である。

 

『NAVIGATOR』では壮大なストリングスが印象的だが、『Special Order』はEDMとヒップホップとロックを上手く組み合わせたトラックがクール。どちらもダンスチューンだが方向性が違う。

 

 

『NEW ERA』は疾走感あるミクスチャーロックだし、『Cofee & Cream 』のオートチューンがかかったボーカルで歌うポップス。『LifeTime』ではメンバーの高い歌唱力を感じる迫力あるバラードだ。

 

ロックやヒップホップ、EDMにと様々なジャンルの音楽が収録されている。それは音楽性が幅広いとも言えるが、アルバムとしてまとめる時に統一感がなくなってしまう場合もある。

 

しかし『1ST』はアルバムとして綺麗にまとまっていて、1つの作品としてアルバムを楽しむことができる。決して曲をかき集めただけではないのだ。しっかりと曲順の流れやコンセプトも考えられて制作されている。

 

これはジャンルレスでありながらも、歌詞の方向性は近いことが影響している。それによって統一感がうまれているのだ。

 

収録曲の歌詞は英語詞を多く使う作品が多い。

 

『Special Order』や『S.I.X』『Cofe&Cream』は歌詞の半分以上の言葉が英語だし、『Dance All Night』や『Mad Love』などは全編英語詞だ。

 

英語詞の曲を発表するジャニーズもいなかったわけではない。嵐の最新作『This is 嵐』も海外戦略を意識してか英語詞の曲が収録されていた。

 

しかしジャニーズは基本的に日本語や簡単な英語詞で、ファンが一緒に口ずさめるようなキャッチーなメロディの曲が多いかと思う。それに比べると1stアルバムでこれほど英語詞を使うことも異質だし、メロディも複雑でプロではない一般人には歌いづらい。

 

つまり今までのジャニーズや男性アイドルを売り出すときのアプローチとは違うのだ。アイドルということを意識して音楽をやっているのではなく、あえてアイドルらしくない音楽をSixTONESのフィルターを通して表現することで、新しい音楽を創ろうとしていると感じる。

 

そしてそれを成功させるだけのスキルがメンバーにあるから、複雑なメロディも発音が難しい英語詞も歌いこなしているのだ。

 

『1st』はジャニーズやアイドルに偏見を持っていた人の価値観をぶっ壊す「きっかけ」になれる作品だと思う。そしてジャニーズやアイドルの音楽を深く聴くための「きっかけ」を与える力を持った作品にも思う。

 

しかし、作品の内容に直接関わる部分ではないが、少しだけ残念に思う部分がある。

 

それだけにSpotifyなどの定額配信サービスで配信されないことを残念に思うのだ。わざわざ興味がないCDを3,000円以上出して買う人などいない。これがサブスクで聴ければ「試しに」と聴いて沼に落ちる人もいるはずだ。

 

テレビ出演で興味を持って買う人もいるかもしれないが、能動的に音楽を聴く人にアピールするならば、アルバムとして聴いてもらうことに価値があるし、サブスク配信されていることは重要である。それに利益のためとしても、やはり3種類形態で発売することは阿漕な商売に思ってしまう。

 

偏見をぶち壊せる作品なのに、偏見をぶち壊す「きっかけ」を与える機会が少ないのだ。

 

そしてもう一つ残念なことがある。『Mr.ズドン』が収録されていないことだ。

 

アルバムの色に合わないことはわかっている。こんなトンチキソングがクールな楽曲群に挟まれたら、アルバム全体がトンチキになってしまう。

 

しかし個人的に一番好きな曲はアルバムに収録されていない『Mr.ズドン』だし、好きな言葉は「ズドン」だ。

 

残念に思う部分はあるが良いアルバムであることは確かである。少しでも興味を持ったら『1st』を聴いてSixTONESの音楽にズドンとハマって欲しい。

 

 

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  • アーティスト:SixTONES
  • 発売日: 2021/01/06
  • メディア: CD