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【ライブレポ・セットリスト】UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2022「kaleido proud fiesta」at 東京ガーデンシアター 2022年9月27日(火)

開演前からすステージ前には大きな白い幕が張られていて、楽器やメンバーの様子が確認はできない。開演時間をすぎて客席の照明が落ちても、メンバーが登場しても、幕は張られたままだ。

 

青い照明の光に照らされたメンバーのシルエットだけが、幕に映される。それが幻想的で美しい。

 

そんな幻想的な空気に、田淵智也は登場するだけでロックな雰囲気を加えてしまうし、一瞬でUNISON SQUARE GARDENの空気にしてしまう。

 

彼はシルエットでも主張が強いからだ。見えない何かを殴って登場している様子が、シルエットとして大きく映されている。彼はいつも見えない何かを殴りながらステージに登場するのだ。

 

大きな会場で壮大な演出をされても、彼の存在を感じるだけで「いつも通りだ」と安心もする。

 

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そんな美しさと安心が共存した不思議な空気が東京ガーデンシアターに流れる中、UNISON SQUARE GARDENのライブツアー「kaleido proud fiesta」の千秋楽は行われた。

 

しかしバンドは演出の幻想的な空気を大切にしたいのだろう。ピアノの美しい旋律のオケに合わせ、『harmonized finale』からライブをスタートさせた。

 

演奏は繊細なからも迫力があって、会場全体に壮大に響く。白い幕は張られたまま演奏していたので、メンバーの姿はシルエットしか見えない。それでも引き込まれてしまう。音楽だけで心をつかむ求心力があるのだ。田淵のシルエットたけは激しく動くので、視覚的にも楽しめはした。

 

演出も美しくて壮大だ。〈harmonized finale 星座になる 沢山の願いを乗せて〉という歌詞に合わせてか、ステージ後ろの無数の豆電球が星のように光った。まるで満点の星空の下でバンドが演奏しているように見える。

 

そんな感動的なスタートを切ったライブだが、彼らの本質は泥臭いロックバンドだ。

 

ステージの幕が上がりバンドの姿が見え「UNISON SQUARE GARDENです」と一言だけ斎藤宏介が挨拶をして『箱庭ロック・ショー』が始まると、シンプルなステージセットに立つ3人だけでの、キレッキレなロックサウンドが鳴らされた。

 

数千人入る会場だが、箱庭のような近さで爆音を聴いてると思うほどに迫力がある。

 

ここから演奏の勢いはどんどん加速していく。『世界はファンシー』てはカラフルな照明の中で、目まぐるしく変化する展開の演奏を衝動的に演奏した。

 

この日も斎藤のマイファンタスティックギターは炸裂していたし、田淵は回転しながら移動していたし、鈴木貴雄は素敵な笑顔だった。

 

続く『シャンデリアワルツ』も演奏の熱量が凄まじい。そんなバンドのテンションに観客も引っ張られているようだ。会場全体が揺れるかと思うぐらいに観客はみんな身体を動かしている。サビで会場全体の腕が上がる景色は圧巻だ。

 

そんな熱気をあえて落ち着かせるかのように

『CAPACITY超える』をゆったりとしたリズムで演奏する。真っ赤な照明がオシャレで美しい。演奏にも演出にも魅せられてしまう。

 

ここから落ち着いた曲や魅せる曲を続けるかと思いきや、爽やかな水色の照明の中で『Silent Libre Mirage』を疾走感ある演奏で盛り上げ、『Own Civilzation』や『ラディアルナイトチェイサー』では重低音がゴリゴリなロックサウンドで痺れさせる。

 

『fake town baby』も凄まじい熱気だった。激しい演奏に比例して、田淵の動きも激しくなっていく。

 

シャドーボクシングしたりシャトルランをしたりと忙しい。時折、舞台袖に向けて両手を広げ誰かにアピールもしていた。そんな田淵の動きを隠すように、ステージに吹き出る大量のスモーク演出も良い。

 

激しい演奏の最中に『5分後のスターダスト』のような落ち着いた曲が披露されると、いつも以上にグッとくる。

 

齋藤の美しいアルペジオ演奏から始まった時点で、心をつかまれてしまう。この楽曲は秋をテーマにしている。そんな曲が月の終わりのライブで演奏されるとは、シチュエーションも完璧だ。もみじ色の照明も美しくて引き込まれる。

 

そこからポップなギターリフが印象的な『弥生町ロンリープラネット』へと繋がる展開も良い。この曲はメロディが美しいのだ。それをしっかりとした演奏で届けるバンドの姿も最高である。

 

心地よい余韻が残る中、鈴木が立ち上がりタムやシンバルをアドリブで叩き始めた。それに斎藤が『ワールドワイド・スーパーガール』のリフをベースにしたフレーズを弾く。そのままジャムセッションへなだれ込んだ。

 

田淵は腕組みしたり時折バンザイしたりと、セッションを静かに見守っている。自分が演奏しない時は落ち着いていられるようだ。

 

セッションはどんどん激しくなり熱気を帯びていく。田淵は少しずつ2人に近づき、ドラムセットのそばに座り、腕組みしながら2人の演奏を眺めている。やはり自分が演奏しない時は大人しい。

 

しかしセッションが激しくなると田淵も参加し、彼の動きは急激に激しくなる。そのまま『ワールドワイド・スーパーガール』へとなだれ込んだ。観客はタイミングよく腕を上げたりと盛り上がる。田淵はタイミングなど気にせず暴れる。

 

あまりにも衝動的に演奏しすぎたからか、後半のサビではリズムが演奏が乱れる瞬間もあった。それでもすぐに持ち直し最高の演奏にしてしまうのだから流石だ。

 

その勢いを保ったまま『ナノサイズスカイウォーク』で観客を踊らせ、齋藤の「三歩先へ!」という一言から『サンポサキマイライフ』を続けて熱気を上昇させる。ライブ後半に向けてスパートをかけているようだ。

 

個人的に今回のライブでハイライトと感じたのが『オリオンをなぞる』と『kaleido proud fiesta』だ。

 

『オリオンをなぞる』でキレッキレな演奏を繰り広げる中、楽曲の世界観を表現するかのようにステージ後方の電飾がいっせいに点して、星空のような景色を作り出した。

 

そこから続く『kaleido proud fiesta』ではバンドロゴがステージ上から登場し、それをカラフルな照明の光で照らしていた。

 

演出が作り出す景色が美しい。それに負けないほどに演奏も煌びやかで多幸感に満ちている。観客もそれに応えるように腕を上げたり身体を揺らしていた。客席も含めて美しい景色だ。今回のツアーはこの楽曲のタイトルが引用されているが、それも納得の名演である。

 

そんな最高の余韻を楽しむかのように『to the CIDER ROAD』を疾走感ある演奏で披露し、斎藤の「ラスト!」という言葉を合図に、全てを出し切るような激しい演奏で『10% roll, 10% romance』を続ける。またもや田淵はステージ上でシャトルランをしていた。この日1番の運動量に思うほど走り回っていた。

 

演奏を終えた斎藤と鈴木は颯爽とステージから去り、シャトルランを終えた田淵はテンションが治まらないのか、スタッフに投げつけるようにベースを渡していた。

 

アンコールを求める拍手が客席から鳴り響き、再登場するメンバー。田淵はやはり見えない何かを殴りながら登場した。鈴木は上着を片手に持って登場したものの、着ないで投げ捨てた。イヤイヤ期の子どもと同じ行動をしている。

 

本編だけでも満足の内容だったし、全てを出し切るような演奏をメンバーはしていたと思う。しかしアンコール1曲目の『Cheap Cheap Endroll』は、この日最も激しいと感じる衝動的な演奏だった。

 

観客のボルテージは一気に最高潮になったし、田淵は再びシャトルランを始めた。時折見えない何かを殴っていた。

 

そして代表曲『シュガーソングとビターステップ』へと続く。カラフルな照明がポップな演奏とマッチしていて良い。やはり田淵はシャトルランをしているし、観客はひたすらに踊って飛び跳ねている。

 

「ラスト!」と齋藤が叫んでラストソングの『場違いハミングバード』へとなだれ込む。田淵のシャトルランはまだまだ続く。

 

スモークが吹き出る演出が再び使われ、シャトルランする田淵の姿が煙に包まれ消えた。

 

最高の盛り上がりを作り、満足気な表情の齋藤と満面の笑みの鈴木。田淵は運動量がおかしいので汗だくだ。

 

「UNISON SQUARE GARDENでした!バイバイ!」と一言だけ言って颯爽と帰っていく斎藤と鈴木。田淵はスキップしながら投げるようにスタッフにベースを渡して去っていった。

 

この日のライブは、挨拶以外のMCはなかった。それでもステージと客席は一体感があって、祝祭の鐘が鳴ったかのような多幸感に満ちていた。最高の音楽があれば、それで心は繋がるのだ。

 

UNISON SQUARE GARDENのライブが楽しすぎちゃって愛しすぎちゃって、ハッピー!

 

■UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2022「kaleido proud fiesta」at 東京ガーデンシアター 2022年9月27日(火) セットリスト

1.harmonized finale
2.箱庭ロック・ショー
3.世界はファンシー
4.シャンデリア・ワルツ
5.CAPACITY超える
6.Silent Libre Mirage
7.Own Civilzation
8.ラディアルナイトチェイサー
9.fake town baby

10.5分後のスターダスト

11.弥生町ロンリープラネット
12.ワールドワイド•スーパーガール
13.ナノサイズスカイウォーク
14.サンポサキマイライフ
15.オリオンをなぞる
16.kaleido proud fiesta
17.to the CIDER ROAD
18.10% roll, 10% romance


EN1.Cheap Cheap Endroll
EN2.シュガーソングとビターステップ
EN3.場違いハミングバード