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【ライブレポ・セットリスト】ザ・クロマニヨンズ 『SIX KICKS ROCK & ROLL』at Zeep Haneda 2022.1.24(月)

ザ・クロマニヨンズのワンマンライブでは、スタッフが開演前にステージに出てくる。そこで開演前にステージに出てきて注意事項の説明を行う。

 

『SIX KICKS ROCK&ROLL ツアー』の初日であるZepp Haneda公演でも、前説は行われた。しかし2年ぶりでコロナ禍になってからは初めて行われるツアーだからか、以前とは少しだけ内容と雰囲気が違う。

 

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マスク着用や声出しNGについてや、規制退場などのアナウンスが追加されていた。

 

今まではマイクパフォーマンスをするように観客を煽って盛り上げていたが、黙々と注意事項を読み上げていた。以前なら前説からファンも興奮して叫んていたが、この日は時折拍手をする程度で、騒がずに黙って聞いた。

 

ライブハウスは非日常の空間だ。ロックンロールは夢を見させてくれる。

 

しかし今はライブハウスでも現実と向き合わなければならない。むしろ今は現実と向き合わなければ、ロックンロールを楽しむ資格がない。きっとそれを、みんな理解しいた。今のご時世にライブが行われることの重みを感じていた。

 

しかし「五臓六腑に染み渡るロックンロールショーをお楽しみください!」と前説が最後に言うと、大きな拍手が客席から巻き起こった。気をつけつつも楽しむ準備は、みんなできていた。

 

そのまま客電が落ちSEが流れると、最新アルバム『SIX KICKS ROCK&ROLL』のジャケットと同じデザインの大きなフラッグがステージ後方に表れ、メンバーが登場した。

 

歓声は無い。メンバーの名前を誰も叫ばない。ライブハウスなのに椅子がある。その代わり以前よりも盛大で長い拍手が会場に響き渡る。だからかコロナ禍以前と変わらない雰囲気がフロアに生まれていた。

 

 

 

フロアを甲本ヒロトが笑顔で見渡してから「オーライ!ロックンロール!」と叫び、真島昌利の爆音のエレキギターが鳴らされライブがスタート。

 

1曲目は『ドライブ GO!』。本来ならばファンも一緒に叫びたいフレーズが、サビに盛りだくさんある楽曲だ。

 

それでも無言でみんな拳を突き上げる。無言でもロックンロールショーが成立している。ザ・クロマニヨンズだけでなく、お客さんもみんなカッコイイ。

 

よく来てくれたなあ!最後まで楽しんでいってくれよ!

 

ヒロトが客席を見渡しながら語りかける。バンドはこの日、コロナ禍であることや、2年振りにようやくツアーを開始できたことについて、深くは語らなかった。

 

そんなことを語る必要はないのかもしれない。「よく来てくれたなあ!」という一言と、爆音のロックンロールで全てを説明できるし、全ての想いが伝わるのだから。

 

序盤のたった一言のMCで、バンドとフロアの一体感がさらに増したように感じる。『光の魔人』『千円ボウズ』では、さらにフロアは盛り上がっていたし、コロナ対策で換気を行い続けていて室内温度は低かったのに、熱気に包まれて室内温度が上昇していた。

 

『大空がある』は前半の演奏曲の中では、特に印象深かったた。

 

〈大丈夫だ 大丈夫だ〉〈すべてはうまくいく すべてはうまくいく〉と何度も繰り返す歌詞。こんな世の中だからこそ、ザ・クロマニヨンズのシンプルながら真っ直ぐな歌詞が響く。

 

時々、みんなの心の声が聞こえるよ。本当のように聞こえる時もあるよ

 

ヒロトがそう言うと、嬉しそうに笑うメンバー。歓声の代わりに、心の声と拍手を贈るファン。

 

アップテンポの楽曲を続けた序盤だが、ここでミドルテンポの『もぐらとボンゴ』を披露。ユーモアに満ち楽曲で、聴いているとホッコリする。ファンの手拍子も温かくホッコリしている。

 

 

 

『ここにある』でフロアを上手から下手まで、順番に指さしながら歌うヒロトの姿も印象的だった。

 

音楽を生で楽しめる空間と、音楽を愛する人が集まれる場所がここにあることを示しているようにも思った。音楽が不要不急と呼ばれるようになってしまった時代だからこそ、そんな想いを感じてグッとくる。

 

初めてやる曲が多くて緊張しています......。でも、やっと、新しいアルバムの曲をみんなの前で発表できて、とても嬉しいです。

 

みなさん、お気づきでしょうが、先日発売したCDと同じ曲順でやっています。

 

ライブの曲順を考えるのが面倒くさかったのだろうか。それとも家に帰ってCDを聴いた時、今日のことを思い出せるようにしたのだろうか。

 

このMCにフロアから盛大な拍手が贈られる。ファンの反応を見て、嬉しそうに照れるヒロト。彼のMCはいつも粋だ。

 

MCで言っていた通り、ここまでアルバム再現ライブのように同じ曲順で披露されていたし、ここからも曲順通りに披露された。

 

『冬のクワガタ』『ナイフの時代』とアルバムの順番通りに披露し、アルバムの後半を盛り上げる『ごくつぶし』で、フロアの熱気をさらに上昇させた。

 

この曲の間奏ではヒロトのハーモニカとマーシーのギターソロが、掛け合いのように順番に演奏される。CDでも痺れるほどにカッコよかったが、ライブで順番にスポットライトに照らされながら演奏する姿は、CDとは比べ物にならないほどに最高だ。

 

「あっという間だなあ」とヒロトがつぶやき、アルバムのラストナンバーである『縄文BABY』が始まる。

 

ゆったりとしていてユーモアを感じる歌詞なのにメロディが美しい楽曲。だからか胸に沁みるし、聴き終えた後は少しだけ切ない余韻が残る。

 

ありがとう!『SIX KICKS ROCK&ROLL』という最高のアルバムができました!

 

もうやる事やったから、ここからはお祭り騒ぎの打ち上げだ!まあ、最初からお祭りではあるけどね(笑)

 

でもこの後も、もう少しだけ、あまりやったことがない曲をやります。本当は去年たくさんやるはずだった曲たちです。

 

ザ・クロマニヨンズは新しいアルバムを毎年リリースし、収録曲を披露するため数十公演の全国ツアーを周ることが定番だった。2020年も『MUD SHAKES』というアルバムを12月にリリースしている。

 

しかし去年と一昨年はコロナ禍を理由に、全国ツアーを行えなかった。そのため前作アルバムの楽曲は、ほとんどライブで披露されていない。

 

そんな無念を晴らすためなのか、ここから『MUD SHAKES』の楽曲が続いた。

 

ファンもライブで聴きたかったのだろう。『カーセイダー』が始まると、熱気はさらに上昇した。

 

その熱気を保ったまま『新人』『かまわないでくださいブルース』と前作の楽曲を、勢いよく続ける。演奏回数が少ない曲だからか不安もあったのだろうか。「上手くできた!」と言って笑顔になるヒロト。

 

 

 

ここからはぶっ飛ばしていくぜ!カツジ!頼んだ

 

拍手が鳴り止まないうちにヒロトが叫び、桐田勝治の衝動的なドラムから『暴動チャイル(BO CHILE)』が始まる。

 

明らかに空気が変わった。序盤から気合十分な演奏をしていたが、さらにギアを1段階上げたような凄みが音にある。

 

それに連れられるように、フロアの盛り上がりもギアが1段階上がった。いや、ギアが上がるどころか、ギアがぶっ壊れている。そんな盛り上がりになっている。

 

コビーが手拍子を煽った『どん底』。ドラマ主題歌になったことで新しいファンを獲得した『生きる』。〈君の窓辺へ〉という歌詞で、ヒロトがフロアを指さしていた『紙飛行機』。

 

そんな過去のシングル曲を連発して、ラストスパートをかけるザ・クロマニヨンズ。そんな曲順で披露されれば、とんでもない盛り上がりになるのも当然だ。

 

ラストの『タリホー』で盛り上がりをピークにして演奏を終えるメンバー。鳴り止まない拍手を響かせる客席に向けて、『SIX KICKS ROCK&ROLL』と書かれたグッズのタオルを掲げる4人。

 

まだメンバーがステージにいるのに、拍手は少しずつアンコールの手拍子へと変化していく。その手拍子は音がどんどん大きくなっていく。4人は笑顔でタオルを降ろすと、再び楽器を手に持ち演奏の準備を始めた。

 

楽屋には戻らず、このままアンコールをやります。楽屋が狭いものでね(笑) あと何曲かやるよ!

 

そう言ってそのままアンコールがスタート。1曲目は『雷雨決行』。マーシーの歪んだギターに合わせて歌うヒロト。それに合わせてコビーとカツジが拳をあげて煽る。ファンも同じように拳をあげる。

 

Aメロを歌い上げて4人の演奏になり、聴き手の耳も心も震わせる爆音が響く。本編だけでも最高だったのに、アンコールで最高をさらに更新してきた。

 

親指と人差し指をくっつけて、望遠鏡を覗くような動きで客席を見渡し歌うヒロト。そういえば他の曲でもファンを指さしたり、フロアを見渡すことが多かった。きっと客席一人ひとりを見て、一人ひとりと目を合わせ、一人ひとりに伝えようとしているのだ。

 

「今日は最高!今日は最高!」と叫んでから『ギリギリガガンガン』で、さらに熱気を上昇させる。

 

音源よりもBPMが速くなっている。その分だけカッコよさも増している。サビでステージに倒れ込みながら叫ぶヒロトと、前方まで出てきてギターを弾き倒すマーシー。その姿は全てを出し尽くそうとしているようだった。

 

あまりにも圧巻のステージングだったからか、拍手が鳴り止まない。それでもまだまだロックンロールを鳴らしたいのだろう。「もう一発だけやらせてくれ!」と言って最後に『ナンバーワン野郎』を演奏した。

 

お祭り騒ぎのように盛り上げる。以前だったらファンも叫んで歌っていたが、今日は無言で拳をあげてバンドの熱量に応える。

 

やはりザ・クロマニヨンズはどんな環境でも最高のロックンロールをやってくれるし、ファンも環境など関係なくバンドの熱量に応えられる。音がなって聴く者がいれば、それだけで音楽もロックンロールも成立するのだ。

 

今日はやれて本当に良かった!またロックンロールをやりたい!またロックンロールをやらせてください!

 

ヒロトの最後の挨拶には、様々な想いが込められていると思った。コロナ禍で陽性者数が過去最大になった日に行われたライブ。だからこそ、この言葉がとても重い。

 

換気が徹底されていたしソーシャルディスタンスも保たれていたので、開演前は寒さを感じる室内だった。しかしライブ中は汗をたくさんかいてしまうほどの熱気と盛り上がりだった。久々に無我夢中にロックンロールに夢中になれるライブを観た気がする。

 

帰りは全員が規制退場を守り、無言で静かにソーシャルディスタンスを保ちながら、会場を後にしていた。

 

THE BLUE HEARTSの頃、甲本ヒロトは「ルールは破ってもマナーは守れよ」という言葉を残している。おかしなや意味不明なルールは存在する。それに疑問を持って抗議することも必要ではある。それを伝える言葉なのだろう。

 

しかし今は重要で必要なルールも多い。守るべきマナーも増えた。当時もそうだったとは思うが、きっとヒロトは全てのルールを破れと言っていたわけではない。何が大切なのかを考えて理解しろと伝えていたのだろう。

 

ザ・クロマニヨンズのファンは、きっとそれを理解している。守るべきルールも存在することを知っているし、それが何なのかもわかっている。

 

ルールをしっかり守れることこそ、今はロックンロールなのだ。この日のZepp Hanedaにはロックンロールなお客さんばかり集まっていた。だから「今日は最高!」と思えるライブになった。

 

今日は来れて本当によかった!またロックンロールを聴きたい!またロックンロールを聴かせてください!

 

■ザ・クロマニヨンズ ツアー SIX KICKS ROCK&ROLL  at Zeep Haneda 2022.1.24(月) セットリスト

01.ドライブ GO!
02.光の魔人
03.千円ボウズ
04.大空がある
05.もぐらとボンゴ
06.ここにある
07.爆音サイレンサー
08.イエー! ロックンロール!!
09.冬のくわがた
10.ナイフの時代
11.ごくつぶし
12.縄文BABY
13.カーセイダー
14.新人
15.かまわないでくださいブルース
16.暴動チャイル(BO CHILE)
17.どん底
18.生きる
19.紙飛行機
20.タリホー


EN1.雷雨決行
EN2.ギリギリガガンガン
EN3.ナンバーワン野郎