2022-01-24 【レビュー・感想】ズーカラデルが『JUMP ROPE FREAKS』でサニーデイ・サービスをオマージュしている ズーカラデル サニーデイ・サービス レビュー JUMP ROPE FREAKS [初回限定盤CD+DVD] アーティスト:ズーカラデル ビクターエンタテインメント Amazon ズーカラデルの音楽からは、サニーデイ・サービスへの愛が溢れている。最新アルバム『JUMP ROPE FREAKS』の2曲目を聴いて、そう思った。 その曲のタイトルは『シーラカンス』。 イントロを聞いた時点で、どことなくサニーデイ・サービスのとある曲に「似ている」とは思った。三連符が続くAメロの歌を聴いて、「あの曲も同じだ」とも思った。 途中で「熱い缶コーヒー」という歌詞が出てきて、「あの曲は熱い濃いコーヒーだったな」と思う。 そっちはどうだい うまくやってるかい そして後半のサビに、この歌詞が出てきて、全てを理解した。思わずニヤリとしてしまった。 サニーデイ・サービス『青春狂走曲』にも全く同じフレーズが出てきたからだ。歌詞が平仮名表記なことまでも同じだ。 こらは狙って気づいてもらうための、愛を持ったオマージュだ。自分はこういうオマージュに弱い。 しかもアルバムの後半には『若者たち』というタイトルの曲がある。これにもニヤリとしてしまう。サニーデイ・サービスにも同名タイトルがあるからだ。ズーカラデルのオマージュは美しいしユーモアと愛がある。 だが「オマージュしたから」という理由だけでは好きにならない。むしろ愛や敬意を感じなければ不快に思う。パクリにはならないオリジナリティも必要だ。 ズーカラデルの場合はどうかと言うと、メロディも歌唱も演奏も、ズーカラデルのオリジナリティで溢れている。サニーデイなど影響を受けたアーティストの要素を、隠し味として取り入れている感じだ。 そういえば1stアルバムでは、銀杏BOYZのオマージュが盛りだくさんだった。それでも全曲でズーカラデルの個性を感じる作品になっていた。 自分達が唯一無二の個性を持っているという自信があるから、パクリではなくオマージュとして音楽を成立させられている。そして音楽への深い愛や先輩アーティストへのリスペクトがあるから、オマージュを取り入れる勇気も持てるのだろう。 思い返すと山下達郎や奥田民生や小沢健二など、オマージュを取り入れつつも、他にはない個性を出して評価されているアーティストもいる。ズーカラデルも、そんな感じで評価される未来もあるかもしれない。 オマージュを取り入れていない他の楽曲も素晴らしい。今作はバンドメンバー以外の音を取り入れて、音楽性の幅を拡げている。 例えば『まちのひ』ではピコピコしたシンセサイザーの音が楽曲の要になっているし、『未来』ではオシャレなピアノの演奏が楽曲の魅力を引き立てている。 『どこでもいいから』ではFINLANDSの塩入冬湖がゲストボーカルとして参加している。過去作でもコーラスとして参加はしていたが、今回はデュエット。ガッツリと絡んでいる。それによってズーカラデルとして新境地といえる楽曲となった。 つまり最新作はバンドメンバーの音が薄まる作風の楽曲が多いのだ。 それでもやはりズーカラデルとしか言いようがない個性が、『JUMP ROPE FREAKS』の収録曲にはある。 むしろオマージュを取り入れたり、新しい挑戦をしたり、ゲストミュージシャンを招くことで、バンドの個性が浮き上がり滲み出ている。 バンドは最新作でさらに進化した。個性に磨きがかかった。これからさらに良いバンドになる予感がする。 ズーカラデルはバンド活動は、今んとこはまあそんな感じなんだ。