2018-12-05 THE ラブ人間は「ライブだけが全てじゃねえ」と話した コラム・エッセイ THE ラブ人間 下北沢にて 「下北沢にて」というライブイベントがある。 下北沢にあるほぼすべてのライブハウスを使用し、1日中下北沢のライブハウスで音楽が鳴り続けるサーキットフェス。全国から数十組のアーティストが下北沢に集まり、最高のライブをやってくれる。 このようなサーキットフェスへ行くと「ライブって最高だな」と思う。 出演しているアーティストの音楽性は様々。バンドもいればシンガーソングライターもいるしラッパーもいる。ジャンルもバラバラ。勢いのある若手もいるし、貫禄あるベテランもいる。そんなアーティストが生で音を奏でてくれる。最高だ。 ライブの魅力は録音されたものではなく、その場で生で奏でられた音を聴けることだ。CDとは違う響きや印象を感じる音に、CD以上に感動することも多い。 自分はCDで聴く音楽も好きだが、やはりライブで聴く音楽の方が好きだと思う。そのためCD以上の高い金額を出し、1回しか曲を聴けないライブに行く。アーティストも音源以上にライブを大切にしていることも多いように感じる。 「下北沢にて」を主宰しているのは、THE ラブ人間というバンド。 THE ラブ人間を知っている人ならわかると思うが、このバンドもライブのことをとても大切にしているバンドの1つだ。だからこそ、多くのアーティストのライブを観ることができるサーキットフェスを主宰しているのだろう。 THE ラブ人間の音楽 自分はTHE ラブ人間を生粋の「ライブバンド」だと思っている。音源も良いのだが、それ以上にライブがめちゃくちゃ良い。 ボーカルの感情的なボーカルと熱い演奏が魅力的。 激しい曲が多いわけではない。むしろミドルテンポやスローテンポの曲が多いかもしれない。勢いに任せた演奏や歌ではなく、丁寧な演奏で、音作りもこだわっている。それでもパンクバンドを聴くのと同じぐらきに、聴いていて胸が熱くなる。 特にライブだとその熱量は凄まじい。CDの比にならないぐらいの熱量を感じる。 THE ラブ人間は「下北沢にて」では下北沢GARDENでライブを行った。500人以上入るフロアは満員。 ライブは最高だった。いつも以上に熱量を感じた。フロアのお客さんもいっしょに叫び歌った。多幸感あふれた空間だった。THE ラブ人間はライブでこそ本当の魅力が伝わると思うほどに。 だからこそ、ボーカルの金田康平のMCを意外に思った。しかし、それと同時に納得するようなMCでもあった。 「レコードで会いましょう」 「ライブに来れないならばレコードで会いましょう。ライブが全てじゃねえ」 ライブ終盤のMCでボーカルの金田康平はこのように話していた。 繰り返すが自分はTHE ラブ人間をライブバンドだと思っている。ライブを最も大切にしているのだと思っている。だからこのMCを意外に思った。しかし、それと同時に納得もしたし、とても印象的なMCだとも思う。 MCの後に演奏された曲は「電波」という曲。 電波 THEラブ人間 ロック ¥250 provided courtesy of iTunes レコードなんて売れねえしな でもラジオで流れたら あれ?まだまだやれそうだな 根拠なんてないけどさ この楽曲で歌われていることは、レコーディングしてCDやレコードをを作り、それがラジオの電波に乗って、遠くの誰かに音楽が届いた瞬間のアーティストの気持ちだ。 THE ラブ人間はライブを大切にしているバンドだ。しかし、大切にしているものはライブだけではない。 THE ラブ人間のCDを聴くと、驚くことがある。音作りは丁寧だし演奏も上手い。編曲も聴きやすいキャッチーさを残しつつも凝っている。音源はライブよりも落ち着いている音だ。それでも心が揺さぶられる。熱い気持ちになる。きっと1曲1曲全てにライブと同じように魂を込めているからだろう。 THE ラブ人間はCDやレコードなどの音源も大切に想っている。いや、「音楽」を大切に想っている。だからこその「ライブがすべてじゃない」という言葉が出たのだと思う。 そして、大切にしていることは「音楽」だけではないと感じる。 THE ラブ人間が最も大切にしているものとは 東京でほ毎日様々な場所で、様々なアーティストがライブを行っている。 東京近郊に住んでいる音楽好きならば、気軽にライブに行くことができる最高の環境だ。ライブで音楽を聴く時間がCDを聴く時間よりも長い人もいるかもしれない。 しかし、地方に住んでいる人にとってはライブは特別なもので、大きなイベント。 好きなアーティストが自分の住んでいる地域に来ることは年に1回あるかないか。気軽に大都市へ行けるわけではないし、金銭的にも時間的にもライブへ行くことが難しい人もいる。 若い学生も気軽にライブにいけるわけではない。お小遣いやバイト代をやりくりし、1回のライブにお金と時間をかけて行っている人もいるはずだ。 そのような人にとって「レコードで会いましょう。ライブが全てじゃねえ」という言葉は救いになったのではと思う。 生で最高の演奏とパフォーマンスすることで、ライブの素晴らしさをフロアに伝えた。そして、MCで音源の大切さを伝えた。そして、ライブに来れないとしても大好きなバンドには会えることを伝えた。 ライブ会場にはたくさんの人が来ている。その全ての人をTHE ラブ人間は大切にしているのだと思う。全ての人を大切にしているからこそ、ライブに普段来れない人も救う言葉を発したのだも感じる。 THE ラブ人間が最も大切にしているものは「人」なのだ。 毎日好きなアーティストに出会える 自分は高校卒業まで地方の田舎に住んでいた。 有名なアーティストや人気バンドは、ツアーで自分の街にも来てくれることもある。しかし、東京のインディーズバンドがライブに来てくれることなんて滅多にない。 お金のない学生だった自分は東京までライブを観に行く時間もお金もなかった。ライブに行けず、CDだけを繰り返し聴き続けたアーティストもたくさんいる。 たくさんの大好きなバンドが、ライブに行くことができずに解散した。 インディーズバンドなんて儲かっているところの方が少ない。メジャーアーティストだって人気がなければ活動を続けられない。夢だけでは活動を続けることはできないのだと思う。他にも音楽生の違いなど様々な理由で活動を止めてしまうアーティストもいる。 自分はナンバーガールもミッシェルガンエレファントもライブを観ることができなかった。大好きなバンドだったのに。 地元に来ても中学生のお小遣いではチケットなんて買えるわけがなかった。会いたくても会えなかったバンドがたくさんいた。 でも、実際は毎日のように会えていたんだ。 学生時代から毎日音楽を聴いていた。そして、その音楽に毎日感動していた。ライブだけでなく、音源にもアーティストの魂は込められている。想いを感じることができる。ライブには行けなかったけど、自分はナンバガにもミッシェルにも会っていた。 「ライブに来れなければレコードで会いましょう。ライブが全てじゃねえ」 この言葉を聴いた時、CDやラジオを聴き続けた中学時代や高校時代を思い出した。ライブに行けず後悔したことや悔しい思いをしたこともある。そんな子どもの頃の自分が、この一言で救われた気がした。 今の自分は首都圏に簡単に行ける場所に住んでいる。 社会人として働き、それなりに自由にできるお金もある。だからライブにも頻繁に行く。ライブで聴く音楽は最高だと思っている。中学生の自分や高校生の自分が羨ましがるぐらいにライブを楽しんでいる。 でも、ライブが全てではない。音楽の楽しみ方はライブだけでもないし、音源だけでもない。アーティストに出会える場所もライブだけではないのだ。 レコードで、CDで、ラジオで、iTunesで、Spotifyで、街中のお店のBGMもそうだ。どんな場所でも音楽が鳴っていれば、好きなアーティストにもかっこいいバンドにも会える。例えば今日もTHE ラブ人間に会いたくなったら、レコードに針を落とせばいいだけだ。 さて、今日はどのレコードを聴いて、誰に会おうかな? これはもう青春じゃないか THEラブ人間 FlyingStar 2017-01-16 Amazon 楽天市場