2025-04-12 【ライブレポ・セットリスト】GRAPEVINE『SPRING TOUR Extra Show』at LINE CUBE SHIBUYA 2025年3月22日(土) GRAPEVINE ライブのレポート アルバムのリリースツアーでもないし、事前にコンセプトが発表されていたわけでもないのに、今回のGRAPEVINEのライブツアーは演奏される曲の予想をしやすかった。 25年前にリリースされたアルバム『Here』のジャケットと同じ場所の写真と収録曲『南行き』の英訳かつ当時のリリースツアータイトルである“SouthBound”という文字がプリントされたTシャツが、ツアーグッズにラインナップされていたからだ。これは『Here』の収録曲をやるという匂わせではないか。 そんな匂いを感じ取った自分は埼玉から渋谷へと向かう南行きの電車に乗って、ライブが行われるLINECUBESHIBUYAにやってきた。 開演時間を過ぎ客席の電気が落とされると、SEも使わずに観客の拍手だけが響く中に登場したメンバー。1曲目は『SEX』。赤や青や紫の妖艶な照明に包まれながら、ゆったりとしたリズムでしっかりとロックを鳴らす。田中和将の色気ある歌声も良い。 じわりと世界観を作りながらライブを進めるかと思いきや、2曲目は『Ready to get started?』。「こんにちは渋谷!アユレディ!渋谷!」と田中が煽ってから爽やかで疾走感ある演奏が奏でられると、会場の空気は明るくも熱い空間へ変化する。ライブ開始の高揚感をさらに高めてくれる選曲だ。 そこから亀井亨がライブオリジナルのフレーズでドラムを叩いてから『新しい果実』が続く。果実をイメージしたかのようなカラフルで美しい照明とギャップのある重厚なサウンドを鳴らす演奏に圧倒させられてしまう。この楽曲はリリース以降ライブで多く披露されているが、毎回進化しているから驚きだ。 さらに『雀の子』のGRAPEVINEの演奏力の高さを見せつけるかのような楽曲が続く。この楽曲もライブの都度進化を感じる。今のGRAPEVINEの強みが最も伝わるのが、このような楽曲だとも思う。田中は中盤に「おどれ♪どれ♪どれ♪」と言いながらマヌケな動きのダンスを踊っていて可愛かった。そそれはそれでギャップがあって良い。 客席からの歓声と盛大な拍手に、何度も揉み手をしながら客席を見渡し「ありがとうございます!」と言う田中。選挙期間中の政治家よりも謙虚である。そして今年最初のツアーだからと「あけましておめでとうございます!」と元気よく年始の挨拶をする。選挙期間中の政治家よりも礼儀正しい。 「追加公演なので最終日みたいな気持ちでやります。座るもよし。立つもよし。寝るもよし。大好きな人を想うもよし。嫌いな人をおもうもよし。どうぞ自由に」と独特な挨拶をしてから演奏が再開。 バンドの短いセッションを挟んでから演奏されたのは『ナポリを見て死ね』。25年前のアルバム『Here』からの選曲だ。重厚で貫禄を感じるサウンドは今のGRAPEVINEの魅力を感じるが、それでも若々しさを感じるのは25年前の楽曲だからだろうか。 シンセサイザーの音から始まった『ポートレート』も『Here』からの選曲だ。音源に忠実な演奏でゆったりとしたリズムとメロディアスな歌が印象的で心地よい。 これまた『Here』からの選曲だった『リトル・ガール・トリートメント』での田中の伸びやかな歌声は、若手の頃の音源に負けないぐらいに若々しい。それでも西川弘剛のギターソロには貫禄を感じたりと、今のバンドだからこその凄みも感じる。過去の名曲を続け様に演奏することで、今のバンドの凄さが伝わってくる感じだ。 『想うということ』の壮大なサウンドは、今のバンドが演奏した方が魅力が増しているようにも思う。この迫力を余裕を持ってしっかり伝えるかのように演奏する姿に痺れてしまう。 西川が音を確かめるようにギターでアドリブのフレーズを弾いてから始まったのは『南行き』。爽やかなサウンドを鳴らすバンドと、楽しそうに歌う田中。アウトロの音源よりも長めなセッションも、メンバーは楽しそうに演奏している。この曲を演奏している時は、まるで25年前に戻ったかのようにバンドの姿が若く見えた。音楽によってタイムスリップしたような不思議な感覚になった。 『Here』の収録曲を4曲続けて演奏し、ここでMCへ。過去の名曲も良いのだが、やはりバンドとしては新曲もアピールしたいらしい。なぜが力強く「あのね!!!」と言ってから5月に最新アルバム『あのみちから遠くはなれて』をリリースすることを伝える田中。 そしてアルバムの略称である「アミーチー」という言葉で、観客とコールアンドレスポンスを始めた。曲中でコールアンドレスポンスなんてしないバンドだし、煽って盛り上げることも少ないのに、MCでは盛り上げようとする。 次に演奏れたのは『天使ちゃん』。最新アルバムの収録曲だ。映画『ベルリン・天使の詩』をオマージュしたであろう歌詞とスタンドマイクで歌いつつハーモニカも演奏する田中の姿が印象的なブルースだ。ライブで初めて聴いたが、ハーモニカを吹くパフォーマンスも含めてライブばえする楽曲に思った。 続けて演奏された『こぼれる』もライブ映えする楽曲だ。いや、音源とライブとでは別物に感じるほどにライブで進化した楽曲とも言える。 音源は終始落ち着いた演奏だが、ライブではシューゲイザーかのような轟音になり、そんな演奏が音源よりも長尺になる。ステージ上のミラーボールが会場一面に星を散らばらせるような光を放っている景色も壮大で引き込まれる。GRAPEVINEはこのようにライブで大きく化ける曲が多い。 そんな圧巻の演奏の衝撃的な余韻が残る中、今度は『ジュブナイル』を疾走感ある演奏で続け、再び観客のボルテージは一気に最高潮に。さらに「南部の男になってくれ!」というお馴染みの煽りから『B.D.S.』を続け、こちらでは迫力あるバンドサウンドでしっかりと聴かせる。高野勲のピアノの音色を合図に音源よりも長くてクールなジャムセッションが始まったりと、ライブだからこその魅力もあって最高だ。 心地よいミドルテンポの演奏と美しいメロディが印象的な『Loss (Angels)』では、薄暗い照明の中でしっかりと音楽を聴かせる。盛り上げるだけでなく様々な音楽で楽しませてくれる。 「あのね!!!」と力強く言ってから「アミーチーのツアーがあります」と話す田中。そうとう新作が気に入っているようで、再び最新アルバムの宣伝とそのツアーが行われることを伝える。しかしツアー日程は思い出せないようで「ツアー日程は言いません。忘れました」と話す。 「他の のバンドは盛り上がってますか!とか言うと思いますけど、なんでみんないちいち言うんですかね?我々はそんなことを言いません。でもその代わりにあと60京曲やります」と、この後に天文学的曲数を披露することを伝えて演奏が再開。実際はこの後の曲数は6曲だった。 田中が忍者のイラストが描かれた扇子を取り出し、舞妓のようなステップを踏むシュールな動きをしてから演奏されたのは『NINJA POP CITY』。最新アルバムに収録される楽曲だ。疾走感あるロックナンバーで会場を温める。ここ最近のGRAPEVINEはベテランの域に達したはずなのに、心做しか演奏やサウンドが若返っている。それはバンドの調子が絶好調である事を示すひとつの指標になっている気がする。 「渋谷のアモーレたちよ!アモーレ!アモーレ!」と会場の観客全員を田中のアモーレにしてから演奏されたのは『実はもう熟れ』。ダンスミュージックに影響を受けたであろう演奏で観客を踊らせる。感想で「アモーレ!アミーチー!よろしくー!」とまたもや宣伝をする田中。 そこから少しの間を空けてから演奏されたのは『25』。個人的にはまさかの選曲だった。激しく衝動的な演奏で、田中も時折叫ぶように歌っていた。途中でハーモニカを吹いたりとアレンジが施されているのも良い。2ndアルバム『Lifetime』からの選曲だが、今のGRAPEVINEとして進化させて披露している。 続く『白日』も2ndアルバムからの選曲だ。こちらも衝動的な演奏で聴かせる。今のGRAPEVINEも若手に負けない勢いで演奏ができる。若手時代の曲を今演奏するからこそ貫禄を感じることもあるのだ。 そんな演奏の後にずっしりと重いサウンドの『Gifted』で圧倒させる展開も良い。特にサビの歌声と演奏の迫力は凄まじい。この楽曲もリリース以降はライブで演奏されることが多いが、何度生で聴いても鳥肌が立ってしまう。 圧巻の演奏の余韻で観客が身動き出来ない程の余韻を感じる中、最後に演奏されたのは『here』。25年前にリリースされたアルバム『Here』のタイトル曲だ。壮大なロックサウンドを響かせ、田中は後半には叫ぶように感情的に歌う。ここまで感情をむき出しに歌う姿は珍しい。だからこそグッときたし感動した。 アンコールでは「3rdアルバムがリリースされてから今年で25周年ということで、そこから多めに選曲させてもらいました」と『Here』の曲を多く演奏した理由を伝えていた。今後のツアーでもアルバムの周年ごとに多めにそのアルバムから選曲してくれるのだろうか。 田中に「アミーチーツアーの日程を金戸さんが教えてくれます!」と言われ、情報伝達を任せられた金戸覚。しかし「初日は神戸。場所は忘れました。次が清水のどこかです」と曖昧に紹介していた。「裏ではすらすらと言えてたのに!」と田中にいじられていた。 アンコール1曲目は『棘に毒』。安定した演奏で心地よく聴かせてくれた。演奏後に「ずっとずっと前の曲でした」と言っていたが、この日多めに演奏された『Here』の曲よりも新しい。適当な発言である。 続けて演奏されたのは『Here』からの選曲で『羽根』。伸びやかな歌声が印象的で、その歌声はリリース当時よりも力強くなっていると感じるほどだ。そこからの『Reverb』は田中ぎ感情的な表現で歌い始めた瞬間に空気が変わった。ロックバンドだから作り出せるヒリヒリした空気と迫力で観客を魅了する。 「どうもありがとーーー!」アミーチーよろしくーーー!」とロングトーンで叫ぶように田中が挨拶してから、最後に『Arma』が演奏された。個人的に今のGRAPEVINEのテーマソングだと思っている楽曲だ。 25年前のアルバムを多くライブでやりつつも新作の宣伝や近年の曲でもしっかり盛り上げるGRAPEVINEは、まさに〈物語は終わりじゃないさ 先はまだ長そうだ〉というこの曲のサビの歌詞を体現しているようだし、これからもバンドは続くという意思表明にも感じた。 最後に田中ぎ改めて「アミーチーよろしくーーー!渋谷また来るぜーーー!」と元気よく挨拶して、メンバーはステージを後にした。やはりこれからの活動の宣伝に重きを置いていた。 今回のライブのように、過去の名曲を生でたくさん聴けることは嬉しい。でもそれと同じぐらいに、今のGRAPEVINEの音楽を、新しい曲を、もっと聴きたいとも思う。それぐらいに今のGRAPEVINEは絶好調に感じる。 むしろ過去の名曲を演奏することで今のバンドの凄さが滲み出るし、観客の突き抜ける身体が胸を弾ませるようなライブだった。 ◾️GRAPEVINE『SPRING TOUR Extra Show』at LINE CUBE SHIBUYA 2025年3月22日(土)セットリスト 01. SEX 02. Ready to get started? 03. ねずみ浄土 04. 雀の子 05. ナポリを見て死ね 06. ポートレート 07. リトル・ガール・トリートメント 08. 想うということ 09. 南行き 10. 天使ちゃん 11. こぼれる 12. ジュブナイル 13. B.D.S. 14. Loss (Angels) 15. NINJA POP CITY 16. 実はもう熟れ 17. 25 18. 白日 19. Gifted 20. here アンコール 21. 棘に毒 22. 羽根 23. Reverb 24. Arma 【Amazon.co.jp限定】あのみちから遠くはなれて [初回限定盤] [CD + DVD](Amazon.co.jp限定特典 : メガジャケ 付) アーティスト:GRAPEVINE ビクターエンタテインメント Amazon