2025-04-06 【ライブレポ・セットリスト】椿屋四重奏2025 アンコールツアー『椿屋酔夢譚』at 豊洲PIT 2025年3月20日(木・祝) 椿屋四重奏 ライブのレポート 2011年1月11日。椿屋四重奏の解散が発表された。あまりにも突然で驚いた。しかも事後報告で解散ライブや解散ツアーなど、ファンがバンドにお別れをする機会はなかった。その理由が「最後まで現役のバンドでいたいから」ということだったのは納得だったしロックバンドとしてかっこいいとも思ったけれど、それでもショックだったし寂しかった。 だが奇跡は起こった。再び椿屋四重奏としてライブツアーが行われたのだ。2021年にオリジナルメンバーで中田裕二のライブのアンコールで限定的に演奏をしたり、2023年限りでフェスを含む4公演だけで特別に期間限定の再結成ライブは行っていたが、チケットは即完で観れた人は限られていた。しかも永続的にバンドを復活するわけではなく、期間限定。そこで観る機会を逃した自分は、椿屋四重奏のライブを観ることは不可能なのだと思っていた。 だから2025年に椿屋四重奏が”椿屋四重奏2025”という表記で復活しライブツアーを行うことが嬉しかった。今回も期間限定でツアーを持って再び解散してしまうものの、公演数は前回よりも増えて全国8公演。チケットも前回よりも取りやすくなったため、自分は約15年ぶりに椿屋四重奏のライブに参加することができた。 会場の豊洲PITは満員に埋め尽くされていて、現役で活動していた頃よりも会場が熱気で包まれているのではと思うほどだった。そんな空気で包まれる中、開演時間を過ぎて客席の照明が落とされると、メンバーが順番に1人ずつ登場する。やはり現役で活動していた頃よりもメンバーへの歓声は大きかった気がするし、最後に中田が登場した時の歓声は地割れするかと思うぐらいに大きかった。それほどにバンドの復活をみんな心待ちにしていたのだろう。 1曲目に演奏されたのは『ぬけがら』。中田がアコースティックギターを爪弾いて、丁寧に繊細に歌う。先ほどまで歓声をあげていた観客も息を呑むようにステージを見つめていた。一瞬で音楽によって空気を変えたことに鳥肌が立つ。そこから曲間なしで続く2曲目は『秋列車』。1stアルバム『深紅なる肖像』の曲順と同じセットリストだ。そんな彼らの原点を現在の椿屋四重奏として再構築し演奏する。その音は重厚で迫力が物凄い。 そこから畳がけるように『群青』を続けたりと、まるでデビュー直後の若手ロックバンドかと思うような衝動的で勢いのある演奏が続く。観客もそんな熱い演奏に鼓舞されて演奏に負けない声量で歓声をあげていたし、腕を挙げて飛び跳ねたりと最高の盛り上がりを作り出していた。『舌足らず』の疾走感ある演奏も最高だ。解散から再結成への感慨など様々な感情をロックによって吹っ飛ばして、ただただ音楽を楽しむ空間をバンドが作ってくれている。 4曲続けてから「世の中に20年以上シカトされ続けた、世紀の過小評価バンド椿屋四重奏です!」と自虐と自信の両方が混ざった挨拶をする中田。たしかに豊洲PITには3000人以上が集まっているが、もっと評価され人気が出るべきバンドだった。「君たちの怨念と俺たちの怨念をぶつけ合って極楽浄土へ行きましょう!」と独特な表現で2010年の突然の解散にショックを受けたファンに寄り添うような言葉を伝えてから演奏が再開。 序盤は勢いで盛り上げていたがここからは様々なタイプの楽曲で魅せていく。まずはミドルテンポの演奏が心地よい『硝子玉』。を妖艶なパフォーマンスで観客を酔わせる。色気がある音を奏でることが椿屋四重奏の強みのひとつだ。『lover』の轟音も迫力が物凄い。この楽曲も色気がある歌唱なのだが、音はオルタナティブでクールだ。どんな音楽だとしても軸はロックからブレない。 観客「武道館でやってーーーー!!!」 中田「今は豊洲でやってるんだけど(笑)」 観客から野次がいくつも飛んできていたが、それにもしっかりと対応していた。こうして椿屋四重奏を愛する人と再開できたことが嬉しいのだろうか。さらには「みんな女の目になっている。男性のお客さんも女の目になっている」と言ってCHAGE&ASKA『僕はこの瞳で嘘をつく』の〈女の瞳で僕を見つめている〉というフレーズをアカペラで歌う。とてもご機嫌なご様子だ。 「去年20周年ライブを東京と大阪で2本やったんですけど、それでは全国にいる亡霊が成仏できなかったようで(笑)だからちゃんと全国ツアーをして除霊しようと思いました。声の調子もすごく良いんです。椿屋四重奏は暗くて色っぽい曲だけじゃないんだよってことも今回のライブで伝えようと思います」と話してから演奏されたのは『I SHADOW』。今度はハンドマイクになってステージを練り歩きながら煽りつつ歌う中田。自然と手拍子を観客が鳴らしたりと、いっきにパッと華やかな空気になる。 そんな空気の中で『いばらのみち』が始まると、ここまでで1番の大歓声が会場に響いた。代表曲のひとつということで、期待していたファンも多いのだろう。こちらも間奏で手拍子が鳴らされたりと盛り上がりも最高だ。 今回のライブで初参加となった高野勲のオシャレな音色のキーボードから始まった『LOVE 2 HATE』。も観客が楽しそうに手拍子を鳴らす。中田も相変わらず楽しそうでハンドマイクで飛び跳ねながら歌っていた。中田がサビ前に「カモン!」とキザな感じに煽ると観客がサビで飛び跳ねる。このように椿屋四重奏のライブで一体感ある盛り上がりを体験できていることが嬉しい。〈なかなかお目にかかれないよ こんなカッコいいバンドには〉と歌詞を変えていたことも印象的だ。 中田がアコースティックギターを爪弾きスポットライトを浴びながら始まった『シンデレラ』では、その重厚な演奏に聴き入ってしまう。個人的に特に好きな楽曲のひとつなので再びライブで聴けたことが嬉しい。サポートギターのカトウタロウのギターから始まった『アンブレラ』も壮大で感動的な演奏にグッとくる。中田の歌声はロックバラードと特に相性が良いのだ。それを再認識させられた。高野のピアノから始まるアレンジになった『紫陽花」も同様に素晴らしかった。スタンドマイクで歌う中田の色気には吸い込まれるような気持ちになったし、何よりも本人が「喉の調子が良い」と序盤のMCで言っていた通りに素晴らしい歌声だった。 ここでメンバー紹介がされた。カトウのことを「髪型は隅田川で顔はかぐや姫」と紹介したり、高野勲を「名古屋の酒場に異常に詳しい」と紹介したりと、紹介方法も独特だった。隅倉弘至のことを「日本のロック界を支えるベーシストと紹介して照れさせるのも面白い。当の中田はドラムの小寺良太の呼びかけで観客に「ゆうじー!!!」と叫ばせて返事をするという、ヒーローショーかのような紹介をされていた。 「このツアーで1番歌いたかった。1番好きな曲です」と言ってから演奏されたのは『NIGHTLIFE』。バンドの中では異質な方向性の楽曲ではなるが、それでも色気はやはりあってバンドの個性も詰まっている。1番好きな曲と豪語するだけあって中田も楽しそうで、ハンドマイクで歩きながら手を挙げて気持ちよ粗相に歌っていた。そこから続く『red blues』では「これぞ椿屋四重奏」と言いたくなるような色気がムンムンな歌と演奏で魅せたりと、音楽の中でギャップを見せてくれる。 「こんな明るい曲もあります!」と言ってから演奏された『CRAZY ABOUT YOU』でも、ポップで華やかなサウンドでギャップを見せつえる。途中でステージ裏から中田が花束を持ってきて〈花束を振り回しながら〉という歌詞の部分で実際に花束を振り回して客席に投げたりと、パフォーマンスも楽しくて最高だ。 そんなパフォーマンスの後に美しいメロディが印象的なロックバラード『マテリアル』が続くから、より楽曲それぞれの個性が引き立ち、より胸にダイレクトに響く。中盤のカトウによるギターソロは特に情熱的で素晴らしかった。 中田「豊洲PITは三千人キャパが即完だったらしいです。こんなにファン、いたっけ?」 小寺「昔よりもファンが増えてる気がする(笑)」 改めて満員の観客に感動し感謝を告げるメンバー。それほどに豊洲PITのステージからの景色は圧巻なのかもしれない。 「足腰大丈夫?」と中田が観客を気遣ってから演奏されたのは『螺旋階段』。いっきにテンションが上がるロックナンバーで、中田が足腰を心配することも納得の盛り上がりになっている。ここから後半戦ということなのだろう。まだまだ畳み掛けるように曲が続く。特に盛り上がりが凄まじかったのは『恋わずらい』だ。始まった瞬間に歌も演奏もかき消すぐらいに大きな歓声が響いたし、この曲が演奏されている時は会場の気温までも上昇したかのような気がするほどに盛り上がっていた。 イントロで「東京!」と煽っていた『幻惑』や曲名を叫んでから始まった『空中分解』とかつてのライブ定番曲かつ特に盛り上がるロックナンバーを立て続けに続ける。その盛り上がりは15年前と変わらないし、むしろ15年前よりも凄いようにも感じた。活動していない間にも音楽活動を続けているメンバーがいたり、強靭なサポートがついていることで、活動していなかったのにバンドとして進化しているようにすら思う。 今回のツアーでは全国で待っている皆さんのところへ行って、往年の名曲を披露してきました。でも、本当に、流行に乗れなかったバンドだったなと思います(笑) でも音楽に対しては真摯にやってきました。人の人生を歌いたいと思ってやってきたんですけど、こうしてみんなが感動してくれている姿を見て、やってきたことは間違っていなかったと思います。 旅は終わりまたバンドは解散しますが、音楽を辞めるわけではないです。これからも音楽は続けます。よろしくお願いします。 改めて今回の再結成やツアーについて語る中田。そして「この曲があったからこそ、椿屋四重奏はあったんだと思います」と語ってから、最後に『不時着』が演奏された。中田の弾き語りから始まり、そこからバンドの演奏が重なり壮大な演奏になっていく。中田は噛み締めるように歌っているように聴こえたし、バンドの演奏も終わることを名残惜しんでいるかのように丁寧に確かめるように音を鳴らしているように聴こえた。 「ありがとう!椿屋四重奏2025でした!」と中田が挨拶をしてメンバーがステージを後にすると、盛大な拍手が長い時間響き続けた。その拍手は自然とアンコールの拍手へと変化していく。 アンコールに応えて出てきたかと思えば、登場したのは小寺1人だけ。温かな拍手を1人で浴びてニヤニヤする小出。そして「ツアーを回って椿屋四重奏にこんなにファンがいたことに驚いきました(笑)でも椿屋四重奏のことが1番好きなのは俺なんで!これからも中田裕二を褒め称えていこうぜ!」と挨拶をする。その言葉からは解散したとしてもバンドのことを心の底から愛していることが伝わってくる。 メンバーが再び勢揃いすると、改めて「本当にありがとうございます」と話す中田。今日は感謝を述べる回数が多いことが印象的だ。そして『小春日和』を温かくて心地よいサウンドで鳴らす。3月という曲のシチュエーションとマッチする季節に聴けたことが嬉しい。 人生はずっと辛いとか悲しいとかもないです。ですが、この楽しい時間もそろそろ終わります。ちょっと、泣いてる人いるじゃん(笑) バンドは解散しますが、それぞれ活動はしていきます。本当に素晴らしい旅でした。次の曲で宴は終わりです。それぞれの場所で、それぞれの生活を大切にしてください。 最後はこの曲で締めます。また会いましょう! 解散とはいえ希望を感じる言葉を明るい喋り方で伝えてから、最後の曲が始まる。 ラストはかつてのライブでも最後に演奏されることが多かった『君無しじゃいられない』。観客と一緒に曲名を叫んでから演奏が始まった。リフに合わせて観客は手拍子を鳴らし、中田はハンドマイクで客席全体を眺めるように歌う。サビでは観客も一緒に歌う。これで終わりだしもう二度と椿屋四重奏を観れない可能性もあるのに、会場は多幸感で満ちていた。バンドの終わりが明るくても良いじゃないか。そんなことを思う空気感だ。 最高のライブを終えてメンバー全員で手を繋ぎお辞儀をし、記念撮影をしてライブは終演した。そして椿屋四重奏は再び解散した。まるで普段のライブと同じように、良い意味であっさりと終わった。 椿屋四重奏は解散ツアーを行わなかった。突然いなくなってしまった。だからやりきれない想いを持っているファンもいたと思う。今回期間限定とはいえ再結成しツアーを回ったことは、そんなファンの想いを成仏させるためだったのかもしれない。これが解散ツアーの代わりだったのかもしれない。 序盤のMCで冗談めかして「全国にいる亡霊が成仏できなかったようで(笑)だからちゃんと全国ツアーをして除霊しようと思いました」と語っていたが、それは本音も入った言葉だったのかもしれない。これで全国の椿屋四重奏ファンの亡霊もたくさん成仏したと思う。 でも成仏したとしてもお盆に先祖が帰ってくるように、椿屋四重奏ファンの亡霊が蘇る時があるかもしれない。そんな時にためにまた気が向いたら再結成してほしい。後半に中田が「また会いましょう」と言っていたので、それは不可能ではない気がする。 ■ 椿屋四重奏2025 アンコールツアー『椿屋酔夢譚』at 豊洲PIT 2025年3月20日(木・祝) セットリスト 1.ぬけがら2.終列車3.群青4.舌足らず 5.硝子玉6.LOVER7.I SHADOW8.いばらのみち9.LOVE 2 HATE10.シンデレラ11.アンブレラ12.紫陽花13.NIGHTLIFE14.red blues15.CRAZY ABOUT YOU16.マテリアル17.螺旋階段18.恋わずらい19.幻惑20.空中分解21.不時着 アンコール22.小春日和23.君無しじゃいられない 椿屋四重奏 BEST MATERIALS(DVD付き初回限定盤) CD+DVD 国内正規品 ノーブランド品 Amazon