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【ライブレポ・セトリスト】Creepy Nuts One Man Live「かつて天才だった俺たちへ」初日@日本武道館 2020.11.11

初の日本武道館公演 

 

「HIPHOPアーティストは数える程度しか武道館には立っていません」

 

日本武道館で行われたCreepy Nuts One Man Live「かつて天才だった俺たちへ」。

 

2日間行われるライブの初日で、R指定はこのようにMCで語っていた。

 

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思い返すと2000年代前半にKICK THE CAN CREWやRIP SLYMEのヒットによりHIPHOPブームは一時期あったとは思う。

 

彼らは一定の地位を築いて日本の音楽シーンに大きな爪痕を残したが、それでも〝ジャンルとしての〟ブームは一過性のものだった。

 

キックやリップのファンはHIPHOPが好きというよりも、好きなアーティストが偶然HIPHOPをやっていたという感覚の人も少なくはなかったかもしれない。彼らのヒット以降はHIPHOPは再びアンダーグラウンドなジャンルに戻った。

 

だからこそCreepy Nutsがコロナ禍で座席を減らしたとしても、日本武道館に2日間立ち、注釈指定席まで出してチケットを完売させたことには意味があることで、他のジャンルのアーティスト以上に物凄いことに思う。

 

しかし彼らは必要以上に特別なライブをやろうとはしなかった。

 

あくまで「いつものライブの延長戦」。演出は控えめだったしR指定のラップとDJ松永の鳴らす音によって勝負しているような感じ。

 

まるで「これからはHIPHOPアーティストが武道館でやることも当然になる」ということを遠回しに伝えているかのように。

 

普段と違うことといえば、序盤からDJ松永が泣きそうになって、ほとんど喋らなかったことぐらいだ。

 

 序盤

 

メインステージとアリーナの真ん中にセンターステージが設置されている武道館。定刻をすぎて客席の電気が消え暗くなりライブが始まった。

 

1曲目は『スポットライト』。センターステージからパフォーマンスを始める。コロナ禍のため客席から歓声を出すことはできない。その代わりいつも以上に盛大な拍手が贈られた。

 

スポットライト

スポットライト

  • Creepy Nuts
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

〈俺は今決して替えの効かない存在〉という歌い始めのリリックが、武道館のステージによって説得力が増す。

 

スポットライトを浴びながら360度動き周り、キレッキレのラップをするR指定。ステージの中心で世界一のDJプレイをするDJ松永。

 

今までの積み重ねがあった上での武道館公演なのだと実感する。

 

そして薄暗い会場で妖艶な雰囲気で『生業』『耳無し芳一Style』とドープな曲を連続で続ける。

 

まるで武道館がライブハウスやクラブに感じるような雰囲気を作り出し、ゆっくりとメインステージへと歩いていく2人。

 

耳無し芳一Style

耳無し芳一Style

  • Creepy Nuts
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

オープニング映像が流れると「武道館、行けますか!?」と叫んでから『ヘルレイサー』へ。

 

「やっぱ生が一番だよな!」という中盤の叫びで、歓声の代わりに腕を上げたり拍手をして答える観客。

 

観客が前半3曲はドープな曲でカマしていたが、ここからはアップテンポな楽曲で武道館全体を盛り上げて巻き込んだ。

 

「今日ばかりはCreepy Nutsが主役と言いたいところですが、本当の主役は集まってくださった皆さんです。やはり我々は助演男優賞です」と煽ってから『助演男優賞』を続ける。

 

助演男優賞

助演男優賞

  • Creepy Nuts
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

会場のすべてのスクリーンに2人のパフォーマンスの映像が流れる。その姿は時として主役を食ってしまっている。

 

途中で「歌え!」と煽るR指定。戸惑う観客。慌てて「心の中で歌え!」と付け加えるR指定。

 

コロナ禍だから制限があることを改めて感じてしまったが、声を出せないからこそファンはいつも以上に身体で盛り上がりや楽しんでいることを表現しているようだ。

 

『よふかしの歌』では砂嵐や時計の秒針やタイマーの映像が流れる中でパフォーマンス。

 

よふかしのうた

よふかしのうた

  • Creepy Nuts
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

曲の後半のDJ松永のDJプレイでは会場から拍手が沸き起こったりと、武道館でも1人も置いて行かずに盛り上げている。

 

そして『みなさんお金は好きですか?」と全員がYESと答えるであろう質問をし、全員に手を上げさせる。そのまま『紙様」を披露。どんどん熱気を帯びる武道館。

 

R指定 「声を出せない状況なのに俺はアホやから、『助演男優賞』でいつもみたいにコールアンドレスポンスを求めてしまった。オーイエイ!!!」

 

客席「」

 

DJ松永「返ってくるわけがない。規制の壁を破れるのかお客さんを試しているのかと思った」

 

R指定「だから慌てて、心の声は聞こえてますとか意味不明なことを言ってしまった。全然聞こえてないのに」

 

「感慨に浸ると色々と喋ってしまうな」とR指定は言っていたが、DJ松永は感慨に浸り過ぎて涙目なので、あまり喋らない。

 

MCを終えてパフォーマンスを再開。紫の照明に照らされながら『阿婆擦れ』を妖艶にパフォーマンス。そしてミドルテンポなドラックが心地よい『オトナ』と続ける。

 

オトナ

オトナ

  • Creepy Nuts
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

曲もトークも始まらず、無音の時間がしばらく続く。そしてR指定が息を吸ってから丁寧に『日曜日よりの使者』を歌い始めた。

 

1フレーズ歌うごとに会場から拍手が巻き起こる。明るい照明に照らされながら、ゆっくりと花道を歩きながら歌いラップするR指定。

 

日曜日よりの使者

日曜日よりの使者

  • Creepy Nuts & 菅田 将暉
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

またもや「歌え!」と煽ってしまう。今度も心の声は聞こえているのだろうか。そんなR指定や客席を感慨深そうに涙目で眺めるDJ松永。

 

『サントラ』では声を張り上げ肩を震わせ、叫ぶように歌うR指定。涙目のDJ松永。

 

それに応えるように腕を上げる客席。照明は赤、青、黄、緑と鮮やかにステージを彩る。

 

サントラ

サントラ

  • Creepy Nuts & 菅田 将暉
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

その姿は武道館規模が似合う、最高で最強のHIPHOPアーティストに思えた。

 

 

後半

 

MCで涙目で泣く直前のDJ松永がスクリーンに映るせいで、温かな笑いに包まれる武道館。

 

R指定「自分たちが始めた頃は、こんなに多くの人に支えられるとは思っていなかったです。武道館に立てるとも思わなかったです。・・・・・・え?お前泣いてるの?」

 

DJ松永「泣いてねーし。全神経を集中して全力で堪えてるから。しずくが溢れたら泣いたと言ってください」

 

R指定「HIPHOPアーティストは最後まで堪えなきゃあかん。般若さんでもアンコールの最後まだ堪えてた。昨日の夜中オールナイトニッポンで喋りまくってたくせに、こいつ全然今日は喋らん!」

 

DJ松永「」

 

R指定「俺たちが結成して初めて作った曲をやります。・・・・・・こいつw喋らへんwヤバイw」

 

DJ涙目「」

 

DJ松永がシラフで涙目になった状態で『シラフで酔狂』が始まる。

 

シラフで酔狂

シラフで酔狂

  • Creepy Nuts (R指定 & DJ松永)
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

結成当初の曲でPCで宅録して作られた楽曲。それが武道館を埋め尽くした観客に受け入れられ、盛り上がっている。

 

『たりないふたり』と『たりないふたり(さよならver)』を曲間なしでメドレーのように繋げて披露。

 

そして『合法的トビ方ノススメ』で盛り上がりをピークに持っていく。

 

合法的トビ方ノススメ

合法的トビ方ノススメ

  • Creepy Nuts
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

「武道館改築工事後、一番高くジャンプしてくれ!」「次は両手をあげてくれ」と煽りまくるR指定。そして涙目のDJ松永。

 

そきてDJ松永のソロアルバムの楽曲の収録曲で、R指定がゲストとして参加していたアルバムの収録曲である『トレンチコートマフィア』を続ける。DJ松永の涙腺をさらに刺激する。

 

『使えない奴ら』ではサビで客席全体が手を振って多幸感に満たされた雰囲気になった。曲終わりで丁寧に頭を下げるR指定が印象的だった。

 

使えない奴ら

使えない奴ら

  • R-指定
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

この曲はR指定のソロアルバムに収録されており、DJ松永がゲスト参加した楽曲でもある。こちらも初期のナンバー。DJ松永の涙腺は大丈夫だろうか。

 

日本武道館に立てたHIPHOPアーティストは少ないです。それでも川崎クラブチッタや恵比寿リキッドルームと同じように、HIPHOPアーティストの念がこもっていると思います。いろいろな苦労や挫折や想いがこもっていて、他のジャンルのアーティストとは違う意味があります。

 

自分たちが世間に注目されたのは『フリースタイルダンジョン』がきっかけだと思います。だけど『フリースタイルダンジョン』の放送に最初は良い気分ではなかったです。テレビで伝わるわけがないと思って。でもZeebraさんの頼みだったし、一緒にやるラッパーも素晴らしいメンツだったので引き受けました。

 

変な伝わり方するなら自分がしっかり伝えようと思いました。そしてHIPHOPは以前よりも市民権を得たと思います。

 

ここまでの歩みや自分たちが飛躍したきっかけについて、語るR指定。それを静かに真剣に聴く客席。ファンは時折拍手を贈っている。

 

R指定「般若さんや漢さんがテレビに出る姿を想像できてました?松永さん?

 

DJ松永「」

 

R指定「これでも泣きそうになるんか?明日は俺の2倍喋れよな!」

 

DJ松永「」※涙目で無言で頷く

 

そして『未来予想図』へ。

 

未来予想図

未来予想図

  • Creepy Nuts
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

『フリースタイルダンジョン』が流行ったことについて感じた不安や期待について音楽にした楽曲である。

 

一言一言を噛みしめるようにラップしているR指定。噛み締めすぎて涙目なDJ松永。

 

『朝焼け』ではオレンジの照明に照らされながら、花道の階段に座って優しくラップしていた。そのまま『Dr,フランケンシュタイン』をしっとりとした表現で届ける。

 

朝焼け

朝焼け

  • Creepy Nuts
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

切ない余韻が残る会場。DJ松永の涙腺が心配になった。

 

しかしカメラも気を使って彼を映す回数や時間が減った。スクリーンに映る回数も減ったので、表情は確認できなくなった。

 

HIPHOPは文化という考え、音楽という考え、エンターテイメントという考え、様々な考えがあると思います。俺にとっては自分と向き合う手段でセラピーみたいなものです。

 

色々としんどいことがあるとは思いますけれど、それを音に乗せることで開き直って生きていきたいです。そんな気持ちを皆さんと共有したいです。次が最後の曲です。

 

R指定が語ってから披露されたのは最新EPのリード曲で、今回のライブタイトルにもなっている『かつて天才だった俺たちへ』。

 

かつて天才だった俺たちへ

かつて天才だった俺たちへ

  • Creepy Nuts
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

会場にいる一人ひとりに語りかけるようにラップをするR指定。たぶん涙目のDJ松永。腕をあげている観客。

 

きっとここにはしんどい思いをしてきた人や、様々な悩みを持っていたり挫折をした人もいると思う。

 

それでもCreepy Nutsが音楽にすることで、一緒に気持ちを共有して開き直ることができた。

 

そしてDJ松永と同じように感動で涙目になっている自分もいる。涙までも共有した。

 

 

アンコール

 

アンコールの拍手が鳴り響く武道館。いつものライブよりも長時間待たされている気がする。

 

DJ松永が泣き止むのをまっているのだろうか。

 

拍手だけでなくスマホのライトを使ってステージを照らしているファンもいる。美しい景色だ。

 

しかし再登場した2人はその景色を「なんか幻想的ですねー」とサラッと受け流す。

 

他のアーティストならば、ファンの想いに感動する場面なのに。DJ松永、ここが泣く場面だろ。

 

「おっさん2人が黙って歩いていたら絵がもたないですから」と言って、喋りながらセンターステージへ歩いていく。どうやらアンコールは全曲センターステージで行うようだ。

 

R指定「お客さんの表情とか見えたらやっぱ感動するんよね」

 

DJ松永「」

 

R指定「この程度の話でも泣きそうになるんか?」

 

DJ松永「もう大丈夫。でも明日はR指定の声をモニターから切ってください。聴こえちゃうと良い歌詞だなって思って泣いちゃうんで」

 

R指定「相方にそう言われると嬉しいな(笑)」

 

アンコールでイチャつく2人。

 

イチャイチャしたまま観客からお題を貰って、お題を含んだフリースタイルを行う『聖徳太子フリースタイルラップ』へ。

 

いつもは挙手制で会場にいる人からお題を口頭で聞いていくが、今はコロナ禍で声出しが禁止。

 

今回は入場時に入口に置いてあった箱に、お題を書いた紙を入れてもらい、その箱からくじを引くように選んでフリースタイルをやる仕組みになっていた。

 

お題と共にフリースタイルをやって欲しい理由も観客が記載する仕組み。理由も含めて様々でカオス。

 

1.離婚→某有名ラッパーが最近離婚したから

2.プリンタルト→どうせ選ばれないから適当

3.星野源→昨日オールナイトニッポンに出てきたから

4.イグナッツ→DJ松永が出演しているテレビ番組だから

5.はくろう→R指定が出てるドラマでの妻夫木聡の役名

6.パンツください→R指定のパンツが欲しいから

7.太った野良猫→近所の太った野良猫が可愛いから

 

7つのお題が選ばれ、見事にフリースタイルを成功させた。

 

特に<プリンタルト 不倫はダメよ フリースタイルダンジョン>という韻の踏み方は流石だった。某有名ラッパーは反省して、離婚しても家族を「Make you happy」して欲しい。

 

そして世界一に輝いたDJ松永の、ターンテーブルを使ったルーティンプレイで会場をさらに温める。

 

センターステージが少しづつ上昇し、高い位置からプレイをした。カッコ良さとシュールな面白さが同居する演出。DJ松永はもう涙目ではなかった。

 

そして新曲『Bad Oranges』をパフォーマンス。

 

最初から手拍子が鳴り響く武道館。初披露なのに今後キラーチューンになふことを期待してしまう盛り上がりだ。

 

「最後の曲です。またライブで会いましょう」

 

そう言って始まったのは『グレートジャーニー』。客席の電気も付いて、会場全体が明るくなる。

 

グレートジャーニー

グレートジャーニー

  • Creepy Nuts
  • ヒップホップ/ラップ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

「2階席の方は暗くて顔が見えない」と2人は途中のMCで話したいたが、これならば会場にいる全員の顔が見えるはずだ。涙目のファンがいることもバレてしまう。

 

『フリースタイルダンジョン』によって良くも悪くもHIPHOPはお互いにディスりあうイメージがついてしまったかもしれない。

 

しかしそれが全てではないし、HIPHOPは人に元気を与えてくれたり、笑顔にさせてくれる音楽でもある。

 

Creepy NutsのHIPHOPによって、武道館が多幸感に満たされたことと、DJ松永が涙目になったことが、何よりの証拠だ。

 

涙目でもありがてえと思う大歓迎なライブだったねえ。上手く韻を踏めねえ。俺も涙目。

 

最高の感動をありがとう。

 

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 ■Creepy Nuts One Man Live「かつて天才だった俺たちへ」@日本武道館 2020.11.11

セットリスト

 1.スポットライト
 2.生業
 3.耳なし芳一Style
 4.ヘルレイサー
 5.助演男優賞
 6.よふかしの歌
 7.紙様
 8阿婆擦れ
 9.オトナ
10.日曜日よりの使者
11.サントラ
12.シラフで酔狂
13.たりないふたり
14.たりないふたり(さよならver)
15.合法的トビ方のススメ
16.トレンチコートマフィア
17.使えない奴ら
18.未来予想図
19.朝焼け
20.Dr,フランケンシュタイン
21.かつて天才だった俺たちへ

 

EN1.聖徳太子フリースタイルラップ ※お題→1.離婚 2.プリンタルト 3.星野源 4.太った猫 5.イグナッツ 6.パンツください 7.伯朗
EN2.DJ松永のターンテーブル・ルーティン・プレイ
EN3.Bad Oranges ※新曲
EN4.グレートジャーニー

 

かつて天才だった俺たちへ (ラジオ盤) (特典なし)

かつて天才だった俺たちへ (ラジオ盤) (特典なし)

  • アーティスト:Creepy Nuts
  • 発売日: 2020/08/26
  • メディア: CD