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【食レポ】曽我部恵一がオーナーの『カレーの店・八月』に行った感想

ぼくらはきっと日曜日の朝にめまいがするようなカレーを食べる

 

晴れた日の朝には、カレーを食べに何処かへ行きたくなるような気分になったりする。

 

というわけで、住みたくなるような街に出てみた。

 

東京ウォーカー『住みたい街ランキング2019』で第8位になった下北沢である。

 

日曜日なのに電車は混雑していた。今日も満員電車は走る。一億二千七百六十万の空腹を切り裂いて。

 

行き先は下北沢のバス停の角曲がった坂道に店を構える『カレーの店 8月』。曽我部恵一がオーナーのカレー店だ。

 

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曽我部恵一はカレー愛に溢れているミュージシャンである。

 

2011年に発表した『がるそん』という曲は、静岡県静岡市葵区にあるカレー店『がるそん』がモデルになっている。

 

〈市役所前のカレー屋さん お店の中ではカーペンターズ〉というフレーズは実際に店に行かなければ出てこないだろう。彼は地方のカレー店を愛すほどのカレーマニアなのだ。

 

がるそん

がるそん

  • 曽我部恵一
  • J-Pop
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

ちなみに2005年に静岡SUNASHで行われた曽我部恵一withダブルオーテレサのライブでは、全然客が盛り上がらなかったので怒ってライブを6曲ほどで中断し、ステージ袖に引っ込むという事件があった。

 

その後は曽我部恵一は反省しステージに戻ってきた。そして1曲目からやり直すという、まさかの展開で観客を驚かせた。ファンも機嫌を損ねさせないようにと、人が変わったかのように大袈裟に盛り上がっていた。

 

こんなライブは最初で最後だろう。自分にとっても忘れられないライブになった。

 

静岡のことを嫌いになったかと思ったが、美味しいカレーのおかげで静岡を許してくれたのかもしれない。

 

カレーかけたよ さっき米に 気づかなかっただろう まばたきの瞬間だった

 

有名人がオーナーだからか、オープン後は話題になっていた。しかしカレー激戦区の下北沢。味が悪ければ淘汰される。

 

それも心配だったので「調子はどうだい?うまくいってるかい?」と思い、店に足を運んだ部分もある。

 

店の前には”若者たち”が並んでいた。どうやら曽我部恵一のファンではなさそう。

 

オーナーの知名度が理由ではなく、純粋に味を評価している人が多いのかもしれない。お客さんにはカップルもいる。カレーと恋愛が共にあればいい。

 

店舗運営は今んとこはまあそんな感じで上手くいってるようだ。それについては安心したが、繁盛店なので食事をするまでにそれなりの時間並んだ。

 

『24時のブルース』と『ベイビー・カム・ヒア組曲』を続けて聴くのと同じ程度の時間は過ぎたはずだ。

 

「もういいかい?」と思っていたら、ようやく案内される。店内は猫がいる恋人の部屋かと思うぐらいに、こじんまりとしてオシャレ。

 

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メニュー数は少なめ。

 

調理スペースが少ないことあって、メニューを厳選しているのだろう。今回は『海老カレー』を選んで見た。

 

曽我部恵一はエビ中『幸せの張り紙はいつも背中に』の編曲を担当している。アイドルとしては珍しくアナログレコーディングをするなど、音質にまでこだわった楽曲だ。

 

幸せの貼り紙はいつも背中に

幸せの貼り紙はいつも背中に

  • 私立恵比寿中学
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

エビ中のオタクは飲食店で海老を見つける注文する習性をもっている。エビ中のオタクは寿司屋では海老しか食べない。しかも曽我部恵一とエビが組み合わさったら『海老カレー』を注文せざるを得ないのだ。

 

注文をすると、すぐに時間が止まって調理が始まる。

 

しかしスローライダーかと思うぐらいに、ゆっくりと調理をする店員さん。

 

永い待ち時間がぼくをつかまえる。深い空腹にやられちまう。店員さんがマイペースなのは天気のせいさ。せいさ。せいさ。せいさ。

 

カレーの良い香りが薫る。ほろ苦い恋にも似ていて、味への期待が高まる。ぼくの心揺らすのは、溶けだしてくスパイスなのか。

 

他の席では先に注文が届いた女の子が、綺麗にたいらげていた。娘さんたち気をつけな。カレーの食べすぎにゃ。

 

 

カレーがやって来てぼくに囁くんだ 「ねぇ早く ねぇ早く食べなよ」って

 

見つめるとまぶすぎて目をつむってしまうほど、ずっとぼくが会いたかったカレーがやってきた。

 

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ご飯は黄色い。夢見るような米粒に色を付けてみたのだろう。

 

ご飯の上には真っ赤な太陽が少し笑ったような見た目の漬物も添えられている。

 

カレーはスープカレーに少しとろみがついたような感じ。海老の香りもルーから薫ってくる。

 

この香りが「いいね!」。トッピングもちょっときれいだね。

 

カレーとご飯を混ぜ合わせて口に運ぶ。崩れ落ちてもつれあって浮かんでは沈むような味と食感。深い余韻が残る味。

 

コクを感じるが、辛みは抑えられていて食べやすい。「辛すぎるのにはちょっと反対さ」というオーナーのこだわりを感じる。

 

あまりの美味しさに、何にも喋らずカレーと見つめ合う。それから先の味の感想は、Hey Hey Hey。

 

 

アレがコレになりながらカレーを食べます

 

食べ終わった後、濃いコーヒーを飲みたいと思った。しかし若者たちが外に並んでいたので、早めに店を出た。

 

数名の店員さんで店を運営しており、曽我部恵一は店にはいなかった。この日はライブの予定があったので当然だ。本業はミュージシャンなのだから。

 

しかし店舗に立つ曽我部恵一の姿も見てみたい。カレーを調理する曽我部恵一にも会いたい。Instagramを見る限り、店舗に顔を出すことも多いようだ。

 

だから『カレーの店 8月』に、また足を運ぼうと思う。味も素晴らしかったわけだし。

 

曽我部恵一にきっといつか逢える。その日まで、タベルヤ!エブリデイ。

 

店舗の住所

〒155-0031 東京都世田谷区北沢2丁目14−19 グラバービル 1F

 

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