2020-04-26 【レビュー】YOASOBI(ヨアソビ)『夜に駆ける』はTikTokのおかげでバズった? レビュー YOASOBI 今までとは違うTikTokでのバズり方 TikTokがきっかけでバズった曲は多い。 去年から今年初めにかけてはHOWL BE QUIET『ラブフェチ』や岡崎体育『なにやってもあかんわ』がTikTokをきっかけにバズり若者を中心にヒットした。 最近はYOASOBI『夜に駆ける』がTikTokで多く使われている。この曲をTikTokをきっかけに多くの人に聴かれた楽曲の1つだ。 しかし今までTikTokでバズった楽曲とはバズり方が違う。 例えば『ラブフェチ』ならば〈歴代の元カレたちよ/あの子と出会うのが少し/早かったぐらいで 結局は/今 一緒にいるのは僕ですよ〉という歌詞に合わせ、TikTokで今の恋人を写真で紹介する動画でバズった。 ラブフェチ HOWL BE QUIET J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes 岡崎体育『なにやってもあかんわ』は曲に合わせて腹太鼓をする動画でバズった。 なにをやってもあかんわ 岡崎体育 J-Pop ¥255 provided courtesy of iTunes ユーザーが自分もやってみたいと思える動画や、簡単に真似ができる動画がバズりやすいのだ。 まずは動画がばずって、それの副産物として使われた楽曲が聴かれるという流れが多い。 しかしYOASOBI『夜に駆ける』はそれらの動画とは違うバズり方をしている。様々なタイプの動画でバズっているのだ。 TikTokでは定番の「踊ってみた動画」や「口パク動画」もある。「歌ってみた動画」や「演奏してみた動画」もある。MADムービーを合わせた投稿もあった。 『ラブフェチ』や『なにやってもあかんは』のように、バズった動画のパターンが1つに決まっていなき。複数の様々な手法でユーザーが投稿してバズったのだ。 なぜ複数の方法でバズったのだ そもそも『夜に駆ける』はYouTubeの方でも多くの再生数を稼いでいた。TikTokとYouTubeの両方で同時期にバズった。 2019年11月に結成したばかりの音楽ユニットだが、『夜を駆ける』は動画公開後1ヶ月で100万回再生を超えている。 コンポーザーのAyaseがボカロPとしても『ラストリゾート』などヒット曲を出していることもあり、人気ボカロPの新人プロジェクトとして最初から話題になっていたことも理由に思う。 しかしTikTokでバズったことは話題性だけが理由ではない。 コンポーザーAyaseはボカロPとして活動している。ボーカルの幾田りらはぷらそに所属している。ぷらそにかはYouTubeで毎週金曜日にカバー動画を投稿している音楽集団だ。 つまりYOASOBIはネット発のミュージシャンによる音楽ユニットなのだ。 そのためネット文化との相性が良く、TikTokの利用者層とも合致していたことで「踊ってみた動画」た「口パク動画」で使われることが多くなったのかもしれない。 ネットが普及したことで広まったMADムービーと合わせたTikTok動画が多いこともこれが理由だろう。 「演奏してみた」や「歌ってみた」もネット文化から生まれたものではある。しかしこの2つの投稿が多い理由は楽曲の持つ力が影響しているかと思う。 歌いたくなるし演奏したくなる楽曲 『夜に駆ける』は音作りが繊細でメロディもキャッチーで印象に残る。丁寧に作り込まれた楽曲に思う。 それに加えて「歌ったり演奏したい」と思ってしまう特徴がある。 曲のキーはそれほど高くない。音域も広くはない。リズムは4分の4拍子でシンプル。 ボカロPが作曲するとBPMが早くなったり歌のメロディを詰め込むことが多いがそれもない。BPM130程度でJ-POPに多い速さだ。 そのため歌いやすいし、ギターやピアノでの弾き語りもやりやすい。 ネット発の音楽ならば『ずっと真夜中でいいのに』や『ヨルシカ』も人気だ。しかしずとまよは音域が広くキーは高い。歌唱や演奏が難しい曲が多い。ヨルシカは早口が多いし独特なリズムの曲も多い。簡単には弾き語りができなそうだ。 YOASOBIはその部分が他のネット発の人気アーティストとは違うと思う。 ピアノのリフはシンプルながら美しいメロディで印象的に残る。そのため真似して弾きたいと思ってしまう。 YouTubeに投稿される「歌ってみた」や「演奏してみた」はプロも投稿していたりと上級者が多い。 しかしTikTokは上級者だけでなく初心者も気軽に投稿している。そのため多くのユーザーが気軽にTikTokに投稿したのだろう。 楽曲を使って自身の表現をしてみたいと思わせる力を『夜を駆ける』は持っているのだ。 知れば知るほど深みにハマる YOASOBIは『monogatary.com』という小説・イラスト投稿サイトで実施されていたコンテストで、ソニーミュージック賞の大賞に輝いた物語を楽曲化するというコンセプトで結成された。 小説と音楽が繋がっていて、MV映像も小説をイメージしたものになっている。小説を読みMVで映像を観ながら聴くことで、楽曲の魅力は倍増する仕組みになっている。 語弊があるかもしれないが、YOASOBIの楽曲は音楽だけでは未完成な作品とも言える。 もちろん音楽だけでも魅力的だからTikTokでも多くの投稿があり、YouTubeでも1000万回再生を超えたのだとは思う。 しかし聴くだけでは気づかない魅力が詰まった音楽でもあるのだ。 YOASOBIを知り興味を持ったら、曲を聴くだけでなく、他のエンターテインメントに自然と触れる仕掛けになっている。そして気づいていなかった部分に気づき、改めて感動する。そしてさらに深みにハマる。 小説を読んで、音楽を聴いて、映像を観て、様々なエンタメに触れながら時間をかけて楽しむことができる。 バズったきっかけはTikTokだとしてもファンが増えた理由は、音楽やそれに関連する映像や小説のおかげだ。 つまりYOASOBIの音楽は、家で引きこもって「夜遊び」を楽しむことに適しているのだ。 ↓YOASOBIの他の記事はこちら↓ 夜に駆ける 発売日: 2019/12/15 メディア: MP3 ダウンロード 夜に駆ける - Single YOASOBI J-Pop ¥255