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DISH//北村匠海の歌う『猫』が素晴らしくて感動した(感想・レビュー・評価)

DISH//の『猫』が素晴らしい

 

シングル曲でもアルバムのリードトラックでもなくとも、評価され知名度や人気が高まる曲もある。

 

SMAPの『オレンジ』や荒井由実の『ひこうき雲』もカップリング曲。DREAMS COME TRUE『うれしい!たのしい!大好き!』もカップリング曲だった。

 

どれもファン以外にも評価され代表曲になっている。多くの人の胸に響く名曲だからこそ「ファンのみが知る隠れた名曲」の枠を超えたのだと思う。

 

2017年に発表されたDISH//の『猫』はシングル『僕たちがやりました』のカップリング曲だ。この曲も「カップリング曲なのに代表曲になりつつある曲」だと思う。

 

猫

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作詞作曲はあいみょん。しかし当時のあいみょんはヒット曲もない駆け出しのシンガーソングライター。『君はロックを聴かない』がリリースされたばかりの頃で、楽曲提供はあまり話題にならなかった。

 

しかし少しづつ楽曲の魅力がファン以外にも伝わっていったように思う。あいみょんの知名度が上昇したり、ライブでセルフカバーされたことがきっかけでもあるかもしれない。

 

猫 (Live at 上野恩賜公園 野外ステージ、2018.10.7)

猫 (Live at 上野恩賜公園 野外ステージ、2018.10.7)

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しかし「楽曲の力」が大きな理由だ。先日YouTubeで公開されたアコースティックアレンジでの『猫』を聴いてそう感じた。

 

 

『THE FIRST TAKE』というアーティストが一発録りの演奏を披露するYouTubeチャンネルで、アコースティックアレンジの『猫』の歌唱動画が公開された。

 

 

シンプルなアコースティックアレンジになったことで、メロディの良さをより感じるようになった。歌詞の意味や想いもダイレクトに伝わるようになる。改めて素晴らしい楽曲だと思う

 

しかし聴いていて感じたことは、楽曲の魅力だけではない。

 

北村匠海のボーカリストとしての凄みを感じたのだ。それにも驚いた。

 

俳優として評価されている北村匠海

 

 DISH//のボーカリストとして活動している北村匠海だが、多くの人は”俳優”として認識しているように思う。多くの映画やドラマに出演している売れっ子俳優だ。

 

様々な役柄をこなせる俳優だと思う。特に憂いのある演技や影があるキャラクターを演じさせれば、若手俳優としてはトップクラスの実力だ。

 

しかし俳優としての知名度と比べると、バンド活動のことはあまり知られていない。ボーカリストとしてもあまり評価されていないように思う。

 

もう二度と

もう二度と

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 主演映画『サヨナラまでの30分』では劇中で歌っていた。この映画で彼の歌声の魅力に気づいた人もいるとは思う。自分はDISH//のことも北村匠海のことも以前から知っていたが、彼のボーカリストとしての魅力や実力を知らなかった。この映画で知ることができた。

 

しかし映画公開時からさらにボーカリストとして進化している。『サヨナラまでの30分』で彼の歌声に心が動いた人もTHE FIRST TAKEの『猫』を聴いて驚き感動すると思う。表現力の物凄さを感じるはずだ。

 

 

俳優としての経験が活かされている

 

DISH//は自分たちで作詞作曲している曲は少ない。基本的には楽曲提供を受けている。

 

自身がアーティストとして活動している楽曲提供者も多い。あいみょんだけでなく氣志團やORAANGE RANGEのNAOTO、OKAMOTO'S、UNISON SQUARE GARDENの田淵智也など癖の強いアーティストが楽曲提供している。

 

つまりカラオケ感覚で歌っていては楽曲提供者に負けてしまう。作詞作曲した本人が歌った方が良いと思われてしまう。演奏だって同じだ。コピーバンド感覚で演奏されても心が動かされることはない。

 

しかしTHE FIRST TAKEの『猫』は完全にDISH//が歌い演奏するべき曲になっていた。語弊があるかもしれないが、作詞作曲したあいみょんにも負けていない。

 

北村匠海の俳優としての経験が、歌唱にも活かされているように思うのだ。

 

歌詞の世界に入り込んで歌っている。自分で書いた歌詞でもないのに、自分の想いや体験を歌っているように聴こえてくる。だから聴き入ってしまう。感動してしまう。

 

それは演技をすることと同じなのかもしれない。演技の経験を歌に活かしているのかもしれない。

 

映画やドラマで俳優の演技に感動する理由は、役柄の人格や役柄の想っていることにリアルを感じた時だ。北村匠海が俳優として演技している時にもリアルを感じる。そして『猫』を歌っている時の北村匠海にもリアルを感じる。

 

しかし「俳優として」歌っているわけではない。歌っている時には「北村匠海の歌」としてリアルを感じる。つまり作品に真剣に向き合う姿勢と自分のものとして解釈する力を持っているということだ。

 

演技をするときは「北村匠海から違う人格になることで」作品に入り込んでいるが、歌うときは「北村匠海という人格として」作品に入り込んでいるのだ。

 

 

あいみょんは北村匠海の魅力を最初から理解していた

 

北村匠海の表現力は歌っている姿を観ればわかる。歌い始めた瞬間に表情が変わる。その表情と少し抑えつつ優しく歌うボーカルに惹き込まれる。

 

AメロとBメロとサビで顔の表情が違う。もちろん歌い方も変化させている。言葉を大切にしながら歌ってる。

 

1番のAメロで〈明日ってウザいほど来るよな〉と歌う時の感情の込め方。Bメロで少しづつ感情を強めていく様子。2番のサビと最後のサビで感情を爆発させて少しかすれた声で歌う感じ。ピアノの伴奏だけで歌う後半のサビでは優しく透き通った声になる。

 

その表現方法全てに惹き込まれる。もともとの声が良いこともあるが、自身の声の使い方を完璧に理解し実践している。

 

ボーカリストとしての技術力もある。

 

声量もあるし音を外すこともない。高い声もしっかり出ている。表現したいものがあっても技術がなければ思い通りの表現はできない。北村匠海は技術力もあるので、自分の表現ができているとも言える。

 

ず、はじめに。
DISH//のみんなありがとう。
仕上がった音源を聴いたとき、純粋にこの曲を作ってよかったと心から思いました。
確実にDISH//のあらたな一面を目撃したと思います、本当に。最高です。
匠海くんの歌声は、少年と男性の狭間にある、くすぐったい青春の声やと思いました。
これからきっとまたいろんな表情の歌声、「猫」を聴かせてくれる気がしてます。

(DISH//、ニューシングルにあいみょん参加。「匠海くんの歌声はくすぐったい青春の声やと思いました」 )

 

 これは『猫』が発表された当初のあいみょんのコメントだ。最初から北村匠海のボーカリストとしての魅力を理解していたのだと思った。

 

〈くすぐったい青春の声〉という表現に納得する。北村匠海の感情のこもった歌声は「青春の声」だから胸を締め付けてくるのかもしれない。青春のような儚さを表現できるボーカリストということなのだろう。

 

〈いろんな表情の歌声、「猫」を聴かせてくれる気がしてます。〉というコメントからしても北村匠海がさらに表現力を増していくことを予想していたのだろう。

 

CD音源と今回の一発録り歌声を聴いても表現方法も表現力のレベルも違う。楽曲提供者がグループのことを理解した上で提供したからこそ『猫』は名曲として受け入れられているのだ。

 

DISH//で凄いのは北村匠海だけではない

 

うちのバンドのメンバーもアコースティックバージョンで良い音録ってくれたので、それに乗せて僕が楽しんでればいいかなと思います

 

北村匠海はこのようにコメントしてから『猫』を歌った。

 

DISH//は四人組のバンドだ。北村匠海が俳優として成功したことで目立ってはいるが、彼のワンマンバンドではない。それは演奏を聴けばわかる。

 

アコースティックアレンジの場合は演奏力がより重要になる。下手な演奏はすぐにバレる。しかしDISH//の演奏は上手いし表現力も豊かだ。優しくも力強い演奏だ。

 

メンバー同士で信頼し合っているのだと思う。だから北村匠海もソロで動画に出てもメンバーに言及をしてリスペクトを込めた想いを語ったのだろう。彼が100%の力で最高の表現で歌えたことも、このメンバーだからではないだろうか。

 

 

バンドのライブ映像を観れば、バンドの底力はより感じる。 

 

 抑えるべき部分は抑えて演奏し、盛り上げるべき部分はしっかり迫力ある演奏をする。スローテンポの曲は息を合わせることが難しい。しかし呼吸を合わせるような演奏で歌を支えている。

 

凄腕のスタジオミュージシャンを集めても創ることができない空気感。長年共に活動しているからこそ創ることができる、呼吸を合わせた演奏。

 

北村匠海の歌声だけでなく、バンドの演奏も素晴らしいのだ。このメンバーだから歌声がより映えているとも言える。

 

北村匠海は俳優としても魅力的だが、ボーカリストとしても魅力的だ。それをもっと多くの人に知ってほしい。そしてDISH//は北村匠海だけでなく他のメンバーも素晴らしいミュージシャンだ。それも多くの人に知ってほしい。

 

もう少しだけDISH//が評価されるとしたら、僕はまた、幸せで。

 

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  • アーティスト:DISH//
  • 発売日: 2019/04/03
  • メディア: CD