2019-07-23 ミュージシャン・バンドマンの政治や選挙についての発言に思うこと コラム・エッセイ 細美武士 TOSHI-LOW 細美武士のMC 音楽にはメッセージが込められている場合が多い。 そのメッセージに共感したり、不信感を感じることもある。音楽の心地よさだけでなく、そのメッセージに感動して音楽を好きになる場合も少なくはない。 それが政治的な思想や意味を持っている場合もある。音楽だけでなくライブでのMCやインタビューでも政治的なメッセージを発信することも多い。 ミュージシャンが政治について語ること。それには賛否両論ある。そのミュージシャンが右か左か。支持している政党はどこなのか。そういった情報で印象が変わる場合もある。 いつからだろうか。細美武士やTOSHI-LOWも政治的な発言をする機会が増えた。 それに対して疑問を感じたり不信を感じる人もいるかもしれない。自分も発言の全てに共感しているわけでもない。 2019年2月24日。普天間飛行場の代替施設を辺野古に作るため、埋め立てをするべきかの賛否を求めた沖縄県民投票が行われた日。 その日、細美武士とBRAHMANのTOSHI-LOWは東京でライブに出演していた。YOSHI ROCK FESTIVALというイベント。2人は同じステージで一緒に演奏し、2人ともMCで沖縄県民投票について言及していた。 今日は沖縄県民投票が行われている。個人的にはとても注目している。色々とややこしい問題や難しい問題があるのかもしれない。 ただ、俺は何度か辺野古に行った時に見た綺麗な海が忘れられない。あの綺麗な景色がなくなるのは嫌だなあと思う。 細美武士のMC。 甘い考えかもしれない。本人の感情が優先された発言。綺麗だから残したいという発言は子供っぽいかもしれない。 それでも、自分は細美武士の発言を聞いて、ミュージシャンが政治について発言する意味もあるのではと感じた。この日のライブでこの発言をしたことに必要性があるのだと感じた。 だから話し合おう この会場に集まっていたお客さんたちは、全員が細美武士やTOSHI-LOWと同じ意見ではなかったと思う。政治に全く興味がない人もいたと思う。 普天間基地の移転に賛成のやつとも友達になれる。俺は意見が違うやつとでも友達になれるぜ。だから、話し合おう これは最後の曲を演奏する前の細美武士のMC。この話をした後に空気が少し変わった。最後の曲はカバー曲だった。 演奏された曲はMONGOL800の「小さな恋の歌」。モンパチは沖縄出身のバンドだ。 小さな恋のうた MONGOL800 オルタナティブ ¥150 タイトルをクリックでダウンロード provided courtesy of iTunes 「小さな恋の歌」は政治的なメッセージが込められた曲ではない。沖縄のことを歌った曲でもない。ただ、この場にいる全員が沖縄出身の沖縄のことを愛しているバンドの代表曲ということは知っている。 細美武士とTOSHI-LOWのステージは弾き語りだった。2人のギターに合わせて、みんな歌った。 「小さな恋の歌」を歌っている時、みんなが沖縄のことを想っていたはずだ。価値観も思想も意見もバラバラな人たちが1つになっていた。 思想も意見も価値観も違う人たち。それでも「世の中が良くなって欲しい」という想いは同じだと思う。 俺は意見が違うやつとでも友達になれるぜ。だから、話し合おう 実際に話し合ったわけではない。しかし、音楽を通じて再度考えるきっかけにはなったと思う。音楽を通じて話し合ったとも言える。 ほとんどの政治問題には絶対的な正解があるわけではない。視点によってはどれもが正解であり間違いでもある。 君たちは馬鹿じゃない。自分で考えることができる頭を持っているはずだ TOSHI-LOWはこのように話していた。 全員の意見が一致することはないかもしれない。重要なことは自分の頭で考えることなのだ。話し合うことなのだ。 「政治」に関して苦手意識を持っている人もいるかもしれないが、難しく思う必要はない。他の物事と同じだ。自分の頭で考えることが大切なのだ。話し合うことが重要なのだ。 自分の頭で考えること 2019年7月21日。参院選が行われた。 SNSなどで様々な人が様々な意見を発信していた。支持する政党や候補者について。某政党へのヘイト。選挙へ行くことの重要性。などなど。選挙が終わった現在は結果について様々な意見や反応がある。 政治や選挙の発言をするミュージシャンやバンドマンも多かった。 好きなミュージシャンとは支持政党が違うファンもいたと思う。政治の話を聞きたくない人もいたと思う。それによってモヤモヤした人もいたかもしれない。自分は少しだけモヤモヤすることもあった。 様々な意見がある。様々な価値観がある。それが全て一致することはありえない。家族や恋人や友人とも。好きなミュージシャンやバンドマンとも。かといって無理に合わせる必要もない。 細美武士やTOSHI-LOWが辺野古移設に反対していたとしても、賛成しているファンがいてもかまわない。そこに自分の頭で考えた理由があるのならば。 忌野清志郎のファンが原発推進派でもかまわないと思う。「清志郎の音楽は最高だけど、俺は原発は必要だと思う」と考えるファンがいても問題ない。そこに自分の頭で考えた理由があるのならば。 参院選で好きなバンドマンが反安倍政権だったとしても、ファンは安倍政権を支持していても問題はない。自分の頭で考えた理由があるのならば。 それよりも「家族が〇〇を支持しているから」と流されて支持したり「ネットの意見では〇〇が多いから」と流される方が問題かもしれない。 それは自分自身が納得できる意見なのか。自分自身は正しいと思う内容なのか。よく吟味する必要がある。自分の頭で考えなければならない。周りと意見が違ってもかまわない。好きなバンドマンと真逆の考えでもかまわない。 思考を停止して流されるのならば、極論、いっそのこと選挙に行かないという選択をしても良いかもしれない。 その代わり、自分の頭で考えて、話し合おう。 なぜミュージシャンやバンドマンは政治的発言をするのか ミュージシャンは音楽だけやっていればいい。言いたいことがあるならば全て音楽で表現するべきだ。 このように言う人もいる。それは間違いだとは思わない。ファンも音楽を支持している人がほとんどのはずだから。場合によってはマイナスイメージを持たれてしまう政治発言はしない方がいい。 では、なぜミュージシャンやバンドマンは政治的発言や選挙について言及をするのだろうか。 それは、重要なことだからだ。無関心でいようとしても人生に関わってしまうのだ。直接的にも間接的にも。 残念ながら今の日本は未来を考えた時、政治に関して無関心でいることは危険かもしれない。危機感を持っている人がたくさんいる。 その中にミュージシャンやバンドマンも含まれているだけだ。ミュージシャンだって我々と同じ国民。 影響力がある人物が政治的発言をすることは問題があるかもしれない。著名人の意見に流されてしまう人もいる。誤った情報を流してしまった場合は取り返しがつかない。 しかし、それが世の中について考えるきっかけになる人が増えるかもしれない。「政治」について考えるのではない。「世の中」について考えるきっかけだ。君の好きなバンドマンは自分の意見を押し付けているのではなく、考えるきっかけを与えてくれているのだ。 俺は意見が違うやつとでも友達になれるぜ。だから、話し合おう 君たちは馬鹿じゃない。自分で考えることができる頭を持っているはずだ 細美武士とTOSHI-LOWの話。この後に歌われた「小さな恋の歌」。 これがミュージシャンやバンドマンが伝えたいメッセージなのだと思う。これは政治についてだけでなく、他の物事にも共通することかもしれない。 だから、自分の頭で考えよう。そして、話し合おう。これがきっと大切なことだ。 クナッパーツブッシュ――音楽と政治 作者: 奥波一秀 出版社/メーカー: みすず書房 発売日: 2001/05/26 メディア: 単行本 クリック: 4回