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【感想・レビュー・評価】UNISON SQUARE GARDENのトリビュートアルバムが流石すぎる件 『Thank you, ROCK BANDS! ~UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album~』

ベテランは流石すぎる

 

イズミカワソラというシンガーソングライターがいる。

 

めちゃくちゃ良いアーティストだと思う。実はこのアーティストについてあまり詳しくはない。ほとんど曲を知らない。それでも素晴らしい才能と実力を感じる。

 

「ガリレオのショーケース」という曲。

 

透き通った歌声が魅力的。演奏も素晴らしい。ピアノの音が印象的な編曲で心地よい。素晴らしい曲を書くシンガーソングライターだと思った。思った後、少し考えた。

 

これ、イズミカワソラの曲ではなかった。UNISON SQUARE GARDENの曲だ。これはユニゾンのカバー曲だ。

 

 

UNISON SQUARE GARDENの結成15周年を記念して製作されたトリビュートアルバム。

 

キャリアも知名度もバラバラの、様々なアーティストが参加しているトリビュートアルバム。参加者に共通していることは確かな実力と優れた才能があることだけ。

 

トリビュートアルバムだとわかって聴いていたはずなのに、イズミカワソラのオリジナル曲だと思ってしまうほどに個性的。一瞬で自身の世界観に引き込むような凄みがある。

 

2曲目はthe pillowsの『シューゲイザースピーカー』。完全にピロウズである。アウイエである。カバーでなくて新曲と言われても信じるレベルのアウイエだ。

 

キャリアが20年以上のイズミカワソラと結成30年目のthe pillows。ベテランの風格と実力で後輩の楽曲を自らの色に完全に染め上げた。

 

流石すぎる。

  

同期と後輩も流石すぎる

 

流石なカバーを行なっているのはユニゾンの先輩アーティストだけではない。同期や後輩もカバーとは思えないほどに自身の色にしてしまっている。流石だ。

 

2019年で結成15周年の9mm parabellum bullet。ユニゾンと同じく2004年に結成されたバンド。

 

9mmがカバーした曲は『徹頭徹尾夜な夜なドライブ』。

 

9mmはこの曲からユニゾンの存在を消してしまおうとしているのではないだろうか。そう思ってしまうほどに彼らの個性が大爆発している。演奏も歌い方も。メロディすら9mmぽい。曲を一度ぶち壊してから再構築したようなカバー。

 

 

 上の動画はトリビュートアルバム収録曲の視聴音源がまとめられた動画だ。どのアーティストも個性的で自身の表現方法でカバーし成功していることがわかると思う。

 

その中でも9mmは特に個性を爆発させている。ユニゾンに喧嘩売ってるのかと思うぐらいに自分の音楽をぶつけてきている。ユニゾンと9mmの間でのDiscommunication。流石すぎる。

 

 もう1組、特に個性が大爆発しているアーティストがいる。ユニゾンの原曲を粉々に粉砕して作曲したのではと思うぐらいに。

 

パスピエの『場違いハミングバード』だ。

 

完全にパスピエである。大胡田なつきの歌だけでもパスピエ色に染め上げてしまうわけだが、演奏でもパスピエの色に染め上げている。

 

編曲はパスピエの王道的な編曲。それでいて細かい部分にもこだわって編曲しているように思う。メンバーにキーボードがいることも生かし、ユニゾンにはできない方向性の編曲にしている。パスピエの魅力がフィーバーしている。

 

 流石すぎる。

 

ジャンルを変えるとか流石すぎる

 

 UNISON SQUARE GARDENはロックバンドだ。しかし、カバーするにあたってユニゾンのロックな部分をぶち壊して違うジャンルにしたアーティストもいる。

 

『蒙昧termination』を歌ったSKY-HIだ。

 

SKY-HIはヒップホップアーティスト。彼のやり方でユニゾンの楽曲を表現している。

 

原曲よりもダンサンブルなアレンジ。そして、いつものSKY-HIと同じようにラップもしている。きちんとユニゾンに対してリスペクトを持っているリリックで。

 

それはSKY-HIにしかできない方法でのカバー。SKY-HIのオリジナル曲でも聴けないタイプの楽曲でもあり、今作で最もカバーする意義があったように思う。

 

流石すぎる。

 

 堂島孝平の『シュガーソングとビターステップ』もユニゾンの代表曲を新しい解釈でカバーしている。

 

編曲は落ち着いていてお洒落。熱いロックバンドの楽曲をオシャレなシティポップに変化させている。

 

この楽曲は元々がキャッチーなメロディと軽快なリズムが印象的な楽曲ではある。その部分を前面に出し、原曲よりもポップな楽曲に仕上げている。

 

それによって堂島孝平の魅力を伝えるだけでなく、ユニゾンのポップスとしての魅力も引き出している。

 

流石すぎる。

 

UNISON SQUARE GARDENは流石すぎる

  

このトリビュートアルバムは2枚組だ。1枚は他のアーティストがカバーした『トリビュート盤』。もう1枚はUNISON SQUARE GARDENがトリビュート盤の収録曲をスタジオライブで全曲セルフカバーした『聴き比べ盤』。

 

過去に発売されたトリビュートアルバムでこのような企画をしたアーティストはいなかったと思う。しかし、この企画によってよりUNISON SQUARE GARDENの楽曲の魅力が伝わる。

 

 原曲はどのような楽曲なのか、カバーするにあたってどのように変化したのかを聴き比べることで、より楽曲を楽しむことができる。

 

きっと『聴き比べ盤』を聴いた人が誰もが感じると思う。

 

「UNISON SQUARE GARDEN、流石すぎる」と。

 


  

『聴き比べ盤』は一発録りのライブ演奏。それなのに演奏が上手すぎる。過去のスタジオ録音の作品と遜色がないどころかさらに良くなっている。 15年間の重みを感じるような貫禄も感じる演奏。勢いだけでなく繊細さも兼ね備えた演奏。

 

改めてユニゾンの楽曲を本人達の演奏で聴くことでバンドの個性を強く感じる。曲も演奏も歌も個性的。一癖も二癖もある。真似しようと思っても真似できない。気軽にカバーしても本家には絶対に勝てない。

 

トリビュートに参加したアーティストは本気で良いものを作ろうとこだわっている。ユニゾンの楽曲の魅力を自身の音楽性やスタンスに落とし込み、再構築して素晴らしいカバーをしている。

 

参加アーティストの個性が詰まっている。カバー曲なのに参加アーティストの魅力が最大限に伝わる。流石である。

 

『トリビュート盤』と『聴き比べ盤』の2枚を聴くことで、UNISON SQUARE GARDENの魅力と参加アーティストの魅力の両者の魅力が最大限に伝わる仕組みになっている。流石の仕組みになっている。

 

そして、UNISON SQUARE GARDENの楽曲の素晴らしさに感心する。

 

「流石すぎる」と。

 

一流のアーティストや演奏の上手いバンドがカバーしても、楽曲自体が良いものでなければいい作品にはならない。一流のアーティストが形にすればそれなりの作品にはなるとは思う。しかし、名曲にはならない。

 

トリビュートアルバムでは様々なアーティストが様々な方法でカバーしている。それなのに、どれもが名曲になっている。いや、名曲になっているのではなく、もともとが名曲なのだ。それを再確認させてくれたのだ。

 

ユニゾンは15年間素晴らしい楽曲を創り続けてきた。それをユニゾン以外のアーティストがカバーすることで、改めて「良い楽曲ばかりのバンド」であることを証明した。流石である。

 

ここまで読んだ人は流石に全曲を聴きたくなってきたと思う。『トリビュート盤』も『聴き比べ盤』の両方とも。

 

ぜひともCDを購入してほしい。ダウンロード販売やストリーミング配信もまだされていないのだ。しかし、CDを買う価値がある作品だと思う。初回盤にはスタジオライブのライブ映像Blu-rayも付属している。お得である。

 

これは流石に、買うよね?

 

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