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【ライブレポ・セットリスト】『THE PARADE』 SEKAINO OWARI / マキシマム ザ ホルモン / BiSH / Vaundy 2022年4月24日(日)

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幕張メッセにてSEKAI NO OWARIのデビュー10周年を記念したライブイベント『THE PARADE』が行われた。

 

セカオワだけでなくマキシマム ザ ホルモン、BiSH、Vaundyとファン層がバラバラではあるものの日本の音楽シーンを牽引する人気アーティストが集結したフェスでもあった。

 

そのためかセカオワファン以外も多い。しかも隣の会場ではアイドルマスターのライブが行われていた。会場周辺は様々な人たちで溢れてカオスである。しかしみんなが推しのライブを楽しみにしていることは共通しているので、多幸感に満ちた空気があったことも確かである。

 

 

Vaundy

 

1組目はVaundy。ビジョンに「Vaundy」という文字が出てきてSEが流れると、めちゃくちゃ大きな音の拍手が巻き起こった。会場のほとんどがセカオワファンだったと思うが、それでも今のVaundyは注目されていて求められているということだろう。

 

Vaundyとバンドメンバーが出てきて『不可抗力』のイントロが鳴った瞬間に、会場がどよめいた。思わず歓声が漏れてしまった人もいた。彼が飛躍したきっかけの楽曲でもあり代表曲の一つだからだ。

 

ビジョンには「Vaundy」という文字が映されているだけで、ステージの様子は一切映らない。約2万人が集まった会場でビジョンを使わないとは珍しい。そのため後ろの席からパフォーマンスはほとんど見えない。それでもヒット曲だらけかつハイレベルな歌唱力によって、後ろの方まで巻き込んで盛り上げている。

 

「踊れる?」と呟いてから始まった『踊り子』でも、やはりイントロが鳴った瞬間に会場がどよめいた。この楽曲も現在バズっている最中のヒット曲。みんなこの曲を求めていたのだ。

 

会場全体が心地よさそうに踊っている。さらに『napori』とヒット曲を続けるのだから、姿が見えるかどうかなんて関係なく、観客はみんな歌と演奏に惹きつけられてしまう。

 

めちゃくちゃデカい会場ですね。始まる前に客席を歩いてみたんですけど、デカすぎてビビりました。

 

今日の俺は見えません。米粒です。だから目を閉じてても大丈夫です。見えないと思って諦めてください(笑)

 

俺からもみんなが小さすぎて見えないです。だから今日は緊張しないって部分では良かった(笑)

 

でも大丈夫です。それでもめっちゃ楽しませるんで。

 

ビジョンを使わないことを開き直るVaundy。他のフェスでもライブを観たことがあるが、その時もビジョンは使っていなかった。正直なところ不親切に思うが、これが彼のこだわりでもあるのだろう。姿を大画面で見られたくないだけでなく、音楽だけで勝負できるという自負があるのかもしれない。

 

やはり見えなくても彼のライブは楽しめると実感したのは『恋風邪にのせて』が演奏された時だ。爽やかなサウンドとキャッチーなメロディによって、会場が一つになって盛り上がっている。その光景はワンマンライブかと思うほどだ。

 

個人的に特にグッと来た楽曲は『しわあわせ』だ。歪んだギターの音が鳴り響くと、スポットライトを浴びたVaundyの声量オバケな歌声が重なる。先程まで盛り上がっていた観客は、じっとステージに集中する。その空気感が凄すぎて鳥肌が立つ。後半になると演奏は壮大になり、歌声もさらに魂がこもった感情的なものになっていく。幕張メッセのスケールだからこその伝わる壮大な楽曲に感じた。

 

今日は素晴らしい先輩方が揃っていますが、全員倒すつもりで来ました。

 

俺のワンマンだと思って楽しんでください。

 

突然オラオラ系な発言をするVaundy。人当たりが良さそうな雰囲気なのに、心はヤンキーなのだろうか。

 

そんなオラオラは音楽にも昇華されている。『裸の勇者』では真赤な照明に包まれながら、クールに歌うVaundy。そこからの『東京フラッシュ』ではステージ脇まで移動して煽りながらオラオラな雰囲気を醸し出しながら歌っていた。

 

この楽曲ではステージに装飾された電球も点灯し、パフォーマンスを鮮やかに彩る。発言はオラオラ系なのに、華やかな楽曲で勝負するのもギャップがあって良い。

 

次が最後の曲です。また会いに来てくれますか?

 

俺は待つことは嫌いなんで、追いかけてきて会いに来てください。

 

やはりオラオラ系な発言をするVaundy。まるでLDH所属アーティストのようだ。

 

そして『花占い』でオラオラと盛り上げていく。オラオラしているのに歌詞はラブソングなのも良い。彼のオラオラに連られてか、客席の盛り上がりも加速していく。最後の曲だからと、観客も全力なのだろう。観客もオラオラしている。

 

最高の演奏に賞賛の拍手を贈る観客。しかしVaundyは再びオラオラなドS発言をする。「今のが最後なわけないだろ?」と言って、さらに曲を続けたのだ。まさかの大嘘である。

 

しかし1曲でも多く聴きたい観客は、彼のドSオラオラ発言に歓喜した。正真正銘最後の曲である『怪獣の歌』では、他の楽曲以上に盛り上がっている。会場全体が拳を上げて楽しんでいる。

 

Vaundyもそんな客席を見て興奮したのだろう。「行けんのか?行けるだろ!」とオラオラと煽っていた。この日一番のオラオラを見せつけている。

 

演奏を終えると「Vaundyでした」と一言だけ告げて去っていった。最後はオラオラしていなかった。やるせない夢が覚めてしまったのだろうか。

 

■セットリスト

1.不可幸力
2.踊り子
3.napori
4.恋風邪にのせて
5.しわあわせ
6.裸の勇者
7.東京フラッシュ
8.花占い
9.怪獣の花唄

 

 

マキシマム ザ ホルモン

 

始まる前からマキシマムザホルモンにしか作れない空気で会場が満ちていた。サウンドチェックの時点で「他とは違う」と感じる音圧と迫力だったからだ。曲を演奏しているわけでもないのに、音作りだけで「ホルモンだ」とわかってしまう個性がある。

 

だからかSEが流れた瞬間から手拍子の音が大きく熱気が凄かった。そんな熱気に応えるように轟音とも感じるサウンドを1曲目の『シミ』から鳴らしていた。

 

この日はセカオワファンがほとんどで、ホルモンのライブは初体験の人も多そうだった。だからか重低音がすごいサウンドと激しすぎる演奏に驚いている人もいるようだった。

 

しかしダイスケはんが「拳を突き上げろ!」と煽ってから始まった『握れっっっっっっっっ!!』では、会場全体が拳を上げたりヘドバンしたりと盛り上がっている。だんだんと彼らの音楽の魅力が観客に伝わっていく様子を感じた。

 

ナヲ「みんな私たちにビックリしてない!?ビックリしないでーーー!」

ダイスケはん「みんな隣の会場と間違えてきたからビックリしてるんかな?」

ナヲ「我々がアイドルマスターです♡ポップな楽曲を2曲続けてお届けしました♡」

 

セカオワファンの反応を見た感想を話すナヲとダイスケはん。この日は隣の会場でアイドルマスターのライブが行われていたからか、自らをアイマスだと名乗るナヲ。信じているセカオワファンがいないか心配である。

 

ナヲ「私たちを今日のメンツで浮いてると思ってるでしょ?大丈夫です。わたしたちアイマスが一番そう思っています。でもセカオワは友だちんこですからね!Saoriちゃんとは乳首相撲もやったことあります!」

 

本来のアイマスは絶対に「友だちんこ」とは言わないし、乳首相撲もやらない。

 

最終的には「3度の飯より飯が好き!マキシマム ザ ホルモンです!」と挨拶し、アイマスではないことを自供していた。

 

ゴリゴリのロックサウンドから打ち込みの音にに合わせてナヲがアイマスのように踊る流れになる『『Maximum the hormone ll~これからの麺カタコッテリの話をしよう~』で、さらに盛り上げていく。これはホルモン的なプログレッシブロックだ。

 

ビジョンにはメンバーのリアルタイムの映像にポップでキュートなエフェクトがかけられていた。その映像はアイマスのようにかわいらしい。

 

そして曲間なしでドラゴンボールの劇中かであった『F』を続ける。こちらはアイマスの匂いを一切感じないゴリゴリのロックである。みんなヘドバンして暴れるように楽しんでいる。この楽曲ではフリーザのシルエットを使った映像も挟んでいた。ライブハウスを主戦場とするばんどではあるが、大箱でのライブでは演出にも凝っているのだ。

 

ダイスケはん「セカオワは普段はあまり対バンをしないらしいんですよ。でも10年ぐらい前に俺らの対バンツアーのゲストに呼んで出てもらって、その時の俺らのライブ中に客席を見たら、DJ LOVEくんが仮の姿でお客さんと一緒にモッシュやダイブしてたんよ。俺らはLOVEくんの仮の姿を知ってるから!」

 

その後DJ LOVEの仮の姿をビジョンに写そうとするものの、なぜかX JAPANの再結成ライブに行った時にWOWWOWの生放送に映り込んだダイスケはんの写真が大きく映された。

 

やはりホルモンは大箱でのライブ演出が凝っている。音楽以外の部分にも謎に力を入れている。

 

とはいえ彼らの本質は4人の演奏の凄さだ。ギターのアルペジオのイントロが鳴った瞬間に拍手が巻き起こった『ぶっ生き返す』では、再び最高のロックサウンドを響かせる。

 

その勢いのまま『絶望ビリー』を畳みがけた。熱気を上昇させた。ヘドバンをする観客がどんどん増えている。

 

セカオワのスターライトパレードがすごく好きなんですよ。

 

それで昔Zepp Tokyoにライブを観に行った時に偶然隣の席が細美武士さんでだったんで、それで「なんでいるんですか?」って聞いたら、細美さんも「俺、スターライトパレードがめちゃくちゃ好きなんだよ!」て言っていて。そこから開演までセカオワの魅力について語り合いました。

 

ライブが始まったら1曲目が『スターライトパレード』で、細美さんが満面の笑みで「いきなりかよー!」ってデカい声で言って喜んでいました。

 

この場所にいない細美武士とのエピソードを語るダイスケはん。細美武士への好感度が上がるセカオワファン。

 

『恋のスイート糞メリケン』では演奏に合わせ、観客はスマホのライトを付けて会場を美しく彩っていた。アルペジオに合わせて歌うナヲの歌声はアイマスのようにキュートである。

 

そんな景色を見て「もうみんなも友だちんこだね♡」と言って喜ぶナヲ。

 

そして「初めて観た人は、 名前だけでも覚えてください!MAN WITH A MISSIONです!」と元気よく挨拶した。

 

これも嘘である。彼らはマキシマム ザ ホルモンだ。アイマスでもマンウィズでもない。

 

4月になって新しい環境になった人も多いだろうけど、思い通りにいかないこと多いじゃん。戻りたいって思うこともあるでしょ。

 

でもそんなこと言ったてしょうがないじゃん。それでも楽しく生きるために、音楽はあるんじゃないんですか!?

 

だから今日は思いっきり楽しんで帰ってください!

 

ふざけたことを言い続けていても、ロックバンドとして芯は通っている。だから本気の想いは真面目に本気で伝えてくれる。

 

そのギャップがあるからこそ、マキシマム ザ ホルモンは音楽だけでなく言葉も胸に刺さるバンドなのだ。

 

最後に演奏されたのは『恋のスペルマ』。この曲をやる頃には、セカオワファンもすっかりホルモンの音楽に魅了されていた。他のフェスやホルモンのワンマンと変わらない盛り上がりになっていた。

 

今回のイベントは出演者の音楽性もファン層もバラバラだ。特にホルモンとセカオワはファン層が違う2組だと思う。

 

それでもカッコいいバンドの演奏には誰もが魅了されるし、普段は聴かない音楽だとしても素晴らしさは伝わるのだ。

 

というわけで、マキシマム ザ ホルモンとアイドルマスターの対バンも実現して欲しい。

 

■セットリスト

1.シミ
2.握れっっっっっっっっ!!
3.Maximum the hormone ll~これからの麺カタコッテリの話をしよう~
4.「F」
5.ぶっ生き返す
6.絶望ビリー
7.恋のスイート糞メリケン
8.包丁・ハサミ・カッター・ナイフ・ドス・キリ
9.恋のスペルマ

 

 

BiSH

 

「わたしたちもみんなをめちゃくちゃ温めていきます!」とチッチが宣言してからライブを始めたBiSH。

 

1曲目は『BiSH-星が瞬く夜に-』。やはりセカオワファンが多いので、普段と比べるとアウェイ気味ではある。

 

しかしステージを動き回り煽りながら歌うBiSHに引っ張られて、客席もどんどん盛り上がっていった。彼女達の熱気によって、1曲目にしてホームと言える空気に変えてしまったのだ。サビでは客席全体が振りコピして楽しんでいる。その景色は圧巻だし感動的だ。

 

アイナが「よろしくおねがいします。BiSHです」と穏やかな表情でおしとやかに挨拶してから始まった『DEADMAN』には驚いた。

 

「楽器を持たないパンクバンド」という肩書きに相応しいパンクナンバーと、挨拶のまったりした雰囲気にギャップがあったからだ。しかしそのギャップがあるからこそ、痺れるほどにカッコよく感じる。突然目が鋭くなりシャウトしたアイナの表情も鳥肌が立つほどにカッコイイ。

 

グループの中でも特に実験的なサウンドと個性的なダンスの『遂に死』を続けることからも、この日のBiSHが攻めたセトリで勝負していることがわかる。観客に媚びることなく、自らの凄みを見せつけようとする姿勢が最高だ。

 

さらに重低音響くゴリゴリのロックである『in case…』を披露し、媚びることなくパフォーマンスの魅力で観客を引きつける。観客も温まってきたようだ。知名度が低いアルバム楽曲だが、手拍子を鳴らしたりと楽しんでいる。

 

「上がっていけ!」とシャウトするアイナの煽りから『MONSTER』へと雪崩れ込み、その熱気をさらに上昇させていく。メンバーと同じようにヘドバンする客席も景色は圧巻だ。

 

この楽曲はアイナだけでなく他のメンバーもシャウトしながら歌っている。ハシヤスメは「全員バカになろうぜ!」と間奏で煽っていた。一部のメンバーばかり注目されがちだが、BiSHは6人全員でライブを作っているのだ。

 

MCではセカオワのメンバーがBiSHのライブ映像を観てライブの予習をしてくれていたというエピソードを話していた。セカオワもBiSHも今回の共演を喜んでいるようだ。

 

「この言葉を素直に言える世の中であってほしいです」とチッチが語ってから、新曲『ごめんね』をライブで初披露した。

 

ここまでゴリゴリのロックサウンドを畳みがけていたが、この楽曲はミドルテンポで美しいメロディとメッセージ性のある歌詞が魅力の楽曲である。メンバーも丁寧かつ魂をこめた感情的なボーカルで楽曲を届けていた。

 

『プロミスザスター』でも、彼女たちの魂を感じるボーカルに魅了される。

 

グループの人気が上昇し始めた直後の楽曲だが、経験を詰んだ今のBiSHが歌うとより歌声が胸に響く。メンバーが中心に集まり、そこにスポットライトが当たってイントロが鳴った瞬間、客席から拍手が聞こえた。観客も知っている人が多いBiSHの代表曲の1つということだろう。

 

ギタリストがコードを一回鳴らしてから始まった『STAR』も、魂をこめた感情的な歌声が引き立つ楽曲だ。

 

BiSHのエモーショナルな歌声は、ミドルテンポのロック楽曲こそ映えると思う。このような楽曲をBiSHが歌うと、魂が揺さぶられて泣きそうになってしまう。

 

終わりという言葉は悲しいものに思われがちですが、SEKAI NO OWARIさんの音楽を聴いていると、終わりなのに光を感じます。終わりがあるから始まりもあるんだと思うと、終わりも希望なのかとも思います。

 

もうすぐBiSHのライブは終わります。でも、このライブをきっかけに、何かが始まるような希望を受け取ってもらえたらと思います。

 

モモコのMCから続いたのは『FINAL SHiTS』。〈いつか終わりはきちゃうから 後悔しないように〉という歌詞から始まる楽曲だ。

 

そんな歌詞とモモコの言葉に応えるように、観客はみんな後悔ないように全力で楽しんでいると思った。Aメロから大きな手拍子が鳴り響いていたのだから、それは間違いではないはずだ。

 

チッチが曲名をつぶやいてから始まった『オーケストラ』は特に感動的だった。

 

代表曲の1つでありグループの存在を知らしめた楽曲の1つ。美しいメロディと疾走感ある演奏とエモーショナルな歌声が重なる。そんなサウンドが幕張メッセだとより壮大に響いた瞬間に、会場全体が楽曲とパフォーマンスに吸い込まれるように集中しているのが伝わってきた。

 

ラストは『beautifulさ』。会場全体が一緒に振りコピをして盛り上がっている。アルバム楽曲であり一般知名度は低いかもしれない。それでも楽曲とパフォーマンスの魅力によって会場全体を巻き込んでしまった。きっと〈どんなとげとげな日でも 息してれば明日は来るんだし〉という歌詞は、多くの人に希望を与えたはずだ。

 

アウェイな雰囲気をロックサウンドで圧倒させホームにした前半。そこから感動的な楽曲により希望を与えた後半。11曲でBiSHの魅力を遺憾無く見せつけるようなライブだった。

 

■セットリスト

1.BiSH-星が瞬く夜に-
2.DEADMAN
3.遂に死
4.in case…
5.MONSTERS
6.ごめんね
7.プロミスザスター
8.STAR
9.FINAL SHiTS
10.オーケストラ
11.beautifulさ

 

 

SEKAI NO OWARI

 

始まった瞬間から会場の空気が違う。期待が爆発させたような熱気が会場が暗くなった瞬間から満ち始めた。そして〈Welome to the starlight parade〉というエフェクトのかかった声とイントロが流れると、「この日一番では?」と感じるほどの盛大な拍手が巻き起こった。

 

そしてメンバーが登場し「こんばんは!SEKAI NO OWARIです!」とNakajinが挨拶しただけでも物凄い大きさの拍手が巻き起こる。セカオワの主催フェスということもあってか、ワンマンの熱気とフェスの高揚感が組み合わさったような盛り上がりだ。いつも以上にフロアが熱い。

 

中盤のサビでは「心の中で一緒に歌いましょう!」とFukaseが言ってマイクを客席に向けた。当然だが客席から声は聴こえない。その代わりスマホライトを付けて観客は応えていた。1曲目から多幸感に満ちた空気で最高だ。

 

しかし2曲目の『Death Disco』で空気を一変させる。

 

いくつもの緑の照明が線の形になり、垂直にステージを上から下へと照らす。 その光に囲まれるようにクールなダンスナンバーを演奏するメンバー。

 

そのサウンドとパフォーマンスもクールだ。演出もカッコいい。彼らはポップでキュートな音楽だけをやっているわけではない。様々な音楽を取り込んで、セカオワのフィルターを通したポップスにしてしまうのだ。

 

前半で最も会場が1つになったのは『虹色の戦争』だ。

 

「1.2.3.4」というカウントの後に会場がどよめいていたことが印象的だった。そこから観客の手拍子が演奏に負けない大きさで響く。それをさらに煽るように、Fukaseはステージを動き回り歌う。カラフルな照明も見ていて楽しい。

 

そんな盛り上がりを『Dropout』を続ける。幕張メッセがダンスホールになったような盛り上がりで、地面が揺れるほどに観客は飛び跳ねていた。

 

「真夏のマレーシアでライブをやった時が、今までで一番暑かったんですけど、今日はそれを超える暑さです」と話すnakajin。「風呂に入ったみたいにビショビショなんだけど」とFukaseは笑う。それぐらいに熱気で会場が満ちているのだ。

 

nakajin「スターライトパレードの時にライトをつけてくれて綺麗で嬉しかったです。今日は細美さんがいるかはわからないですけど、いたら喜んでくれていたでしょうか(笑)」

Fukase「ていうかスターライトパレードはやる時はだいたい1曲目だからね」

 

ホルモンのMCがあったからか、細美武士について言及するセカオワ。この場に居ないのに話題をかっさらう細美武士は偉大である。

 

対バンライブは久しぶりなので興奮気味です。フェスも2019年に出演して以来ですからね。

 

本当はデビュー10周年の2020年にこの記念イベントをやる予定だったんです。でもコロナの影響で予定の延期が続いていて、ようやく開催することができました。

 

今回のライブについて感慨深そうに語るnakajin。メンバーにとっても待望の公演なのだろう。

 

『THE PARADE』への想いを伝えてから披露されたのは『RAIN』。優しいメロディが印象的なバラードだ。

 

ここまでひたすらに盛り上げてきたが、しっとりと確実に聴かせる演奏をするメンバー。先程まで飛び跳ねたりと騒いでた観客も静かに聴き入る。

 

『バードマン』ではゆったりとしたリズムに合わせた手拍子が鳴り響き多幸感に満ちた空間が作られ、新曲『Habit』ではクールなパフォーマンスと照明演出で魅せていた。ワンマンと比べると短いライブ時間ではある。それでもセカオワの幅広い音楽性をこれでもかと見せつけていた。

 

特に演出へのこだわりを感じたのは『Monsoon Night』だ。この楽曲では派手な照明で盛り上げるだけでなく、ステージ上に炎が吹き出ていた。そんな演出にもテンションが上がった観客は、さらに手拍子の音を大きくしたり飛び跳ねたりと盛り上がっている。

 

nakajinは「炎まで出てくる熱いステージをありがとうございます(笑)」と苦笑していた。前半には過去一番暑いと言っていたが、ライブ後半で会場の温度をさらに上昇させたようだ。

 

そんな暑すぎる熱気を音楽で抑え込むセカオワ。次に演奏された『silent』は切ないメロディが特徴の冬の歌だ。熱気で満ちているだけが良いライブではない。しっかりと聴かせて感動させることも大切だ。

 

演出も盛り上げるよりも魅せるような内容になっていた。雪が降る様子を表現するように、白い照明が上から下へと降りていく照明は美しい。感動的な空気に包まれていた。

 

ラストは『炎と森のカーニバル』。やはり最後は盛り上がってライブを終わらせたいのだろう。Fukaseは隅々まで移動して煽っていたし、観客も思いっきり飛び跳ねたり手拍子したりと楽しそうだ。まさにカーニバルと言える最高の盛り上がりでライブ本編は終了した。

 

アンコールではこの日出演した全アーティストを呼び込んで記念撮影を行なった。その時もホルモンのメンバーは自由奔放である。ダイスケはんはVaundyのコスプレをして、ナヲは動物の被り物をして「私はBiSHです!」」と言い張るナヲ。巻き込まれた後輩二組は苦笑いして受け入れるしかない。

 

 

「最後、みんなでジャンプしましょう!」とFukaseが笑顔で告げてから始まったのは『Dragon Night』。この日一番大きい手拍子が鳴り響き、「飛べ!」という煽りがされればこの日一番高く観客はジャンプしていた。

 

ひたすらに楽しい楽曲ではある。しかし海の向こうで争いが行われている今のご時世では、この楽曲の歌詞が特別な意味を持って胸に響く。音楽はただ楽しませるための娯楽ではなく、人々に考えさせ想わせるきっかけを与えるものでもある。不要不急ではなく必要なものなのだ。そんなことをライブによってセカオワが教えてくれた。

 

今回のイベントはセカオワのデビュー10周年を記念して行われたものだ。しかし毎年開催してほしいと思うほどに素晴らしいイベントだった。世代もファン層もジャンルもバラバラだが、今の日本の音楽シーンを牽引するアーティストだけが揃ったライブでもあり、それが一同に集まることで新しい音楽と出会える場にもなっていた。今のセカオワならば違うジャンルのアーティストを出会わせる、上の世代と下の世代を繋げる役割も担えるのではないだろうか。そんなことを期待してしまう。

 

とりあえず次回開催するときは、出演していないのに話題をかっさらった細美武士を呼んでほしい。その時のセカオワも『スターライトパレード』でライブを始めてほしい。

 

■セットリスト

1.スターライトパレード
2.Death Disco
3.虹色の戦争
4.Dropout
5.ANTI-HERO
6.RAIN
7.バードマン
8.Habit
9.Monsoon Night
10.silent
11.炎と森のカーニバル

EN1.Dragon Night