オトニッチ

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ELLEGARDENを特別扱いすることを止めたい

2018年2月24日。新木場スタジオコーストでYOSHI ROCK FESTIVALというライブイベントが開催された。

 

そのイベントに細美武士がソロ名義の弾き語りで出演していた。TOSHI-LOWも出演していたので当然ながら一緒にステージに立ち、ずっとイチャついていたことを覚えている。

 

細美武士のステージで特に印象的だった場面がある。「もうこのバンドを、特別扱いしなくてもいいかもな」と細美武士がつぶやくように言ってから、ELLEGARDEN『金星』を歌った時だ。その演奏は素晴らしくて、観客も一緒に歌っていて、最高の空間だった。

 

でもその時の自分は思った。ELLEGARDENは特別扱いされるべきバンドだと。

 

2008年の活動休止から10年間、復活を待ち望むファンが数え切れないほどいた。10年後の2018年に復活したものの、ワンマンライブのチケットは宝くじを当てることと同じぐらいに取れない。簡単にはライブに行くことができないし、10年間ずっと生で聴くことができなかった、特別なバンドなのだ。

 

そもそも10代の自分の心を鷲掴みし、何度も胸を震わせて、興奮と感動を与えてくれたバンドが、自分にとって特別でないはずがない。特別すぎるぐらいに特別なバンドだ。

 

でも細美武士の言葉の真意は、それとは違うのかもしれない。冷静に考えて気づいた。「特別扱いのバンド」と「特別なバンド」は違うのだと。

 

ELLEGARDENは現役のロックバンドだ。復活後は何度もライブを行っている。細美武士にとってMONOEYESやthe HIATUSも大切だと思う。

 

活動休止していたた頃のELLEGARDENは、良くも悪くも特別扱いせざるを得なかった。それが現役のロックバンドに戻ったことで、他のバンドと同じ扱いに戻った。MONOEYESやthe HIATUSと同じように、現役のロックバンドだし、どれもが大切で平等だ。それが細美武士の伝えかった真意ではないだろうか。

 

むしろ今の細美武士はELLEGARDENではなく、TOSHI-LOWを特別扱いしている。たぶんヴェルタースオリジナルをお互いに贈りあっていると思う。

 

ELLEGARDENは2022年、16年振りにオリジナルアルバムをリリースした。タイトルは『The End of Yesterday』。過去の焼き増しではなく、今のELLEGARDENの音を鳴らしているような作品だ。活動休止していたのに、確実に進化と変化をしていることが伝わる内容である。

 

活動再開後の活動ペースはスローだった。時折ライブが行われるぐらいで、メンバーそれぞれのメイン活動は他にあった。活動量は活動休止前と比べると、かなり少なかったと思う。

 

それが新曲も発表しツアーの本数や音楽フェスへの出演本数も増えた。だんだんと「伝説のバンドが復活した」という空気感は薄まり、フェスに出演すれば注目を集めはするものの「特別扱い」はされなくなった気がする。

 

今のELLEGARDENは伝説のバンドではなく、かつて一世を風靡した懐メロバンドでもなく、現役のロックバンドなのだ。細美武士の「もうこのバンドを、特別扱いしなくてもいいかな」と言ってしまうほどに、ELLEGARDENが当たり前に活動する現役のロックバンドに戻ったのだろう。

 

自分にとってELLEGARDENが特別なバンドであることは変わりない。同じように特別なバンドとして愛しているファンがたくさんいると思う。そんな特別なバンドが特別扱いされず、当たり前に存在し活動してくれることは、めちゃくちゃ最高なことだ。特別な存在が日常に存在するなんて、素晴らしすぎるではないか。

 

8月17日。ELLEGARDENはZOZOマリンスタジアムでワンマンライブを行う。自分は16年振りに彼らのワンマンライブを、そこで観ることができる。特別にチケットが取れない人気であることは変わりないが、なんとかチケットを取る事ができたのだ。

 

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こうして当たり前にワンマンライブを観れるのだから、自分もELLEGARDENを特別扱いすることは止めたい。いつものように星がふる夜に、4人はいつものように演奏するのだろうから。

 

今日は特別なバンドを特別扱いせずに観れる喜びを、しっかりと噛み締めたい。