2018-02-23 くるりの新曲『その線は水平線』が変だ【感想・レビュー】 コラム・エッセイ くるり 最近は活動がスローペースなくるり キャリアを重ねると活動がスローペースになるバンドって多い。そりゃあ若い時と同じペースで活動するには体力も必要だし難しいのかもしれない。くるりもだんだんと活動が年々少なくなってきたと思う。 新曲はリリースしている。しかしライブの本数は年々少なくなっている。2017年のライブ本数は20本以下だし、オリジナルアルバムは約4年間リリースもしていない。各自のソロ活動はあったがバンドとしては停滞した活動。もっと活動しろ。 そして、2018年、活動が活発になるのかはわからない。それでも「別にいいか!」と思ったりする。活動しないなら新曲を聴き続けるから。 くるりの新曲の『その線は水平線』がそう思わせるぐらいにすごい。何度聴いても飽きない。めっちゃ良いの。自分の音楽の好みのツボを100回ぐらい連打してくる感じ。 この曲、シンプルなようで全然シンプルじゃないし、ここ数年のくるりの楽曲で最も変な曲かもしれない。だから、聴いてくれ。このブログも読んでくれ。 その線は水平線(10,000枚生産限定盤) くるり ビクターエンタテインメント 2018-02-21 Amazonで購入 楽天市場で購入 すごいぞ。くるり くるりはずっと凄かったんですよ。何が特にすごいかと言うと、その音楽性の幅と編曲の凝り方だと思う。例えば、この2曲、同じバンドの曲だからね。 青い空 くるり オルタナティブ ¥250 タイトルをクリックでダウンロード provided courtesy of iTunes ジュビリー くるり オルタナティブ ¥250 タイトルをクリックでダウンロード provided courtesy of iTunes ここ数年はクラシックや現代音楽に傾倒しているように思う。フロントマンの岸田繁は2017年にはソロで京都市交響楽団のために交響曲を書き下ろしている。 岸田繁「交響曲第一番」初演 指揮:広上淳一 演奏:京都市交響楽団 作曲:岸田繁(くるり) ビクターエンタテインメント 2017-05-24 Amazonで購入 楽天市場で購入 その影響もあってか2017年にリリース『How Can I Do?』はその影響も受けているような楽曲だった。かなり作り込まれた楽曲。この曲もすごい。 How Can I Do? くるり オルタナティブ ¥250 タイトルをクリックでダウンロード provided courtesy of iTunes 現代音楽を取り入れつつも、ポップスとして完成度がめちゃくちゃ高い作品。でも、突き刺さるようなギターのくるりを久々に聴きたいと思いってもいる。ギターロックのくるりに飢えている。いつロックな音を鳴らすくるりを聴かせてくれるんだと、焦らしに焦らされ続けていたわけです。 そして、ようやく焦らすのを止めてくれたのです。ここまで焦らすとか、すごいぞくるり。 なぜこの曲がシングルなのか とりあえず聴いてみてほしい。新曲の『その線は水平線』 ⇩クリックで再生 どうだろう?地味でしょ?そうなんだよ。地味なんだよ。でも、最後まで聴いて。ブログも最後まで読んで。 でも、地味と一言で片づけられるような曲ではない。この曲には初期の”バンド”の音を大切にしていたくるりの音”と、”様々な音楽を吸収して進化してきたくるりの音”が絶妙なバランスで組み合わさっているように思う。これが自分の求めていた「ロックチーム・くるり」の音なのです。 サビだけを少し聴いただけではこの曲の魅力は伝わらないかもしれない。しかし、最初から最後まで通しで聴くと、演奏も歌も、染み入るように響いてくる。じわじわと曲の魅力を感じ、曲の世界観に引きずり込まれるような感覚。 くるりでなければ作ることができない楽曲であり、くるりでなければ表現できない世界観に思う。くるりの魅力が最初から最後まで盛り込まれている。だから シングル曲として選ばれたのかもしれない。 この曲の魅力をもう少し具体的に語らせてくれ。 泥臭いくるりとおしゃれなくるりのハイブリッド 『その線は水平線』はグランジロックを感じるような歪んだギターから始まり、それが最初から最後まで印象的に弾かれている。歪んだギターにも関わらず曲はスローテンポ。BPM100ぐらいだと思う。シンプルなドラムとメロディを奏でるように弾くベース。そしてけだるそうなボーカル。 楽器の音がきれいに録音されている。ミックスも良いのだと思う。バンドの音として生々しさを感じる。そして、スローテンポで染み入るような歌と演奏。 曲が進むにつれて音は重なっていく。トランペットやオルガンの音など。MIDI打ち込みサンプル、多層ハーモニーヴォーカルや、インド楽器なども使われているらしい。2番以降はコーラスも入ってくる。それらの音は最近のくるりの楽曲でも使用されている音で、”おしゃれさ”を感じさせるような音だ。ギターも複数重ねられていると思う。 音が重ねられたからと言っても、それは盛り上げるためではないと思う。音が重なることでよりじわじわと染み入る演奏になっていると思う。そして1番の泥臭さや生々しさを感じる演奏に、それらの音が重なることで”くるりにしか出せない音”になっている。 『その線は水平線』は変だ この曲、歪んだギターの音が印象的な楽曲で、ここ最近のくるりの楽曲としてはシンプルなロックナンバーだと思われがちだと思う。最近のくるりは複雑な構成の楽曲であったり、かなり計算された編曲がされた楽曲が多かっただけに。 しかし、この楽曲は様々な楽器が取り入れられている。実は複雑な構成になっている。歌のメロディも淡々としているようで、1番と2番では少しだけメロディが違ったりと工夫もされている。それらは注意して聴かなければ気づかない部分でもある。 実は全然シンプルではないのだ。様々な工夫がされた作りこまれた楽曲だ。それにも関わらず、シンプルなロックナンバーだと思わせてしまう。ある意味、変な曲なんでんすよ。”複雑で作りこまれた楽曲”と評価されても良いのに、シンプルな曲に感じて聴き入ってしまう。 難しいことを行っているのにシンプルに感じさせるって、音楽に限らずどんなことでも最も難しいことに思う。シンプルに感じるから聴いていて疲れないけども、様々な工夫がされているから飽きることがない。この、少し変だけどすごいことをやっていて、心に染み入るような歌と演奏をする。これがくるりの音楽の魅力でくるりにしか出せない音なのだと思う。 つまり、この曲の感想をまとめると、「すごいぞ。くるり」です。 その線は水平線(10,000枚生産限定盤) くるり ビクターエンタテインメント 2018-02-21 Amazonで購入 楽天市場で購入