2018-02-24 アイドルネッサンスを見限ったソニーの大人を見返してやりたかった 音楽の紹介 アイドルネッサンス 売れなければ解散する 2018年2月24日。アイドルネッサンスというグループが解散する。 アイドルネッサンス運営より皆様への大切なお知らせ プロジェクト立ち上げから約4年半、初ライブより3年8ヶ月、皆様に支えられながら活動を続けてきましたアイドルネッサンスですが、昨年より継続的にメンバースタッフ間で、今後についての話し合いをして参りました。その結果、今後の可能性、スタッフ含めたチームとしての将来性など総合的に考え、2018年2月24日の横浜ベイホール公演をもって解散することに決定いたしました。 2014年5月のお披露目ライブからこれまで活動を続けることができましたのも、ひとえに応援してくださる皆様のおかげです。心より御礼申し上げます。 メンバーは、アイドルネッサンスでの経験を糧にそれぞれの道を進んで参ります。 ラストライブに向けて、メンバースタッフ一同、これまでと変わらず、皆様への感謝の気持ちを込めて活動をして参ります。 残りわずかな期間とはなりますが、皆様の温かい応援を、何卒よろしくお願いいたします。 2018年1月20日 株式会社 ソニー・ミュージックアーティスツ http://idolrenaissance.com ここまで正直に理由を話してくれることは誠意があるのかもしれない。つまり、予想していたよりも売れなかったから解散させるということだろう。理由としては残酷かもしれないが、ビジネスならば仕方がないのかもしれない。しかし、まだ学生で10代のメンバーの気持ちや、応援してきたファンの気持ちを考えると胸が痛む。 そして、見限るには早すぎるよなと思う。ももクロも売れるまでに結成から4年以上かかっているし、でんぱ組も結成から5年以上かかっている。むしろ、去年から新しい取り組みもしていたわけで、2018年が勝負の年で飛躍の年になったのではと思う。言葉を選ばずに言うと、見限った関係者の大人はセンスがないなと思う。 個人的にそう思う理由について説明しようと思う。 アイドルネッサンス Amazonで購入 楽天市場で購入 これだけできるアイドルがほかにどれだけいるのか ⇩画像をクリックで再生 『5センチメンタル』という楽曲。MVではメンバーのアカペラの歌唱から始まる楽曲。かと思いきや、全編アカペラだ。しかも、MVはカットなしの1本撮り。ハモリも綺麗にできており、メンバーそれぞれ歌が上手い。しかし、べらぼうに上手いわけではない。アイドルらしい不安定さや拙さも残した歌唱。アイドルだからできる歌唱でもあるが、どんなアイドルでもできるわけではない歌唱。 女性アイドルの音源は多くの音を重ねて派手にする場合が多い。ボーカルも加工していることが多い。その方がぱっと聴いたときに耳触りも良かったり、派手さにインパクトを感じて印象的に感じることが多いからだろう。 しかし、アイドルネッサンスの『5センチメンタル』のMVはアカペラなので音数は最小限。ボーカルも加工されていない。生々しいし、歌唱も一部不安定で危うい部分もある。一般的なアイドルの楽曲とは真逆のことをやっているのに、それらが逆にアイドル性を強めている。アイドルにしかできない魅力を生み出している。 作詞と作曲はBase Ball Bearのフロントマンである小出祐介。Base Ball Bearはロックバンドで、個性的なコード進行やバンドサウンドが魅力的だ。 神々LOOKS YOU Base Ball Bear ロック ¥250 provided courtesy of iTunes アイドルネッサンスに提供された楽曲は、小出祐介が自身のバンドで作る曲や歌詞とは違う魅力がある。自信のバンドとは作曲も作詞も方向性を少しだけ変えているように思う。小出祐介の作家性はアイドルネッサンスに楽曲提供をしたことで発揮されているようにも思うし、小出祐介から楽曲提供をされたからこそ、アイドルネッサンスが他のアイドルグループとは違う個性や魅力が生まれたのではと思う。 アイドルネッサンスとはどんなグループなのか アイドルネッサンスは2014年に結成されたアイドルグループで、「名曲ルネッサンス」というコンセプトで活動をしていた。過去の名曲をカバーし、アイドルの歌とダンスで表現するというコンセプト。2017年にはオリジナル曲も発表したものの、元々はカバー曲ばかりやっているグループだった。 批判されやすいコンセプトだったかもしれない。カバー曲の場合、どうしてもオリジナル曲と比べられるわけで。しかし、YouTubeのコメント欄を見るとカバー元のアーティストのファンからも受け入れられていたようにも思う。 カバーする楽曲はなかなか渋い選曲だった。例えば、TM NETWORKの『STILL LOVE HER(失われた風景)』のカバーは原曲に近い編曲で歌っているものの、それは原曲とは違う爽やかさや透明感を感じる楽曲になっている。その違った魅力が原曲のファンにも伝わり受け入れられていたように思う。 STILL LOVE HER (失われた風景) アイドルネッサンス J-Pop ¥250 provided courtesy of iTunes STILL LOVE HER (失われた風景) TM NETWORK ロック ¥250 provided courtesy of iTunes the pillowsの『Funny bunny』も違う魅力を感じるカバーになっている。原曲よりも軽めの編曲になっているが、それが爽やかで歌唱も楽曲のメッセージをまっすぐ伝えるような歌。アイドルの歌う応援歌になっている。 Funny Bunny アイドルネッサンス J-Pop ¥250 provided courtesy of iTunes Funny Bunny the pillows ロック ¥200 provided courtesy of iTunes カバー曲でもグループの魅力を出すことができていて、”アイドルソングではない名曲をカバーするグループ”として他にはない個性を出せていたとは思う。しかし、それが”売上”果に結びついていたかというと、厳しい部分があったのかもしれない。昔の曲だとしても、音楽ファンには知名度のある曲ばかり。カバーならばオリジナルを聴こうと思う人が多かったのかもしれない。 2017年、コンセプトを壊した 2017年、アイドルネッサンスはオリジナル曲を発表した。それはカバー曲を歌って踊り表現する「名曲ルネッサンス」というグループのコンセプトを崩すことにもなる挑戦でもあったと思う。この挑戦がグループとしてのターニングポイントだったのかもしれない。 オリジナル曲は4曲。すべてBase Ball Bearのフロントマンである小出祐介が書き下ろし、ミニアルバムとして発売された。この取り組みはグループの評価を上げるためにも、メンバーの成長としても良い取り組みだったと思う。 アイドルネッサンスは多くのアーティストの様々なジャンルの名曲をカバーしてきた。その中にはグループに合う楽曲も合わない楽曲もあったと思う。その経験により、どのような方向性の楽曲をオリジナル曲として作るべきかが見えてきたのだろう。そのためか、小出祐介はアイドルネッサンスが歌うからこそ輝くような楽曲を作り提供した。 特に『前髪』という曲はアイドルネッサンスの魅力をより引き立て、アイドルネッサンスが歌うからこそ魅力的に感じる楽曲になっているように思う。 ⇩画像をクリックで再生 ノスタルジックで切ないメロディ。ここぞというときに来るハモリと、後半に連れて音数が増えていき、それが切なさを加速させる。思春期の子が感じるような繊細な感情や風景描写が詩的で丁寧に書かれている歌詞。名曲を再構築するのではなく、名曲を1から作り上げた。 しかし、初のオリジナル曲を収録したミニアルバムは売れなかった。オリコン30位。 グループのコンセプトを壊して取り組んだ挑戦は、楽曲としては音楽ファンにも評価されても、商業的に成功したとは言えなかったのだろう。 もしかしたら、これが「将来性がない」と会社に評価され、解散させられるきっかけの1つだったのかもしれない。 見限るには早かったのでは? 1月20日。アイドルネッサンスは公式サイトで解散を発表した。公式サイトにその経緯や理由も書かれているが、一言で解散理由をまとめると「売れなかったから」。商売として成り立っていなかったのならば仕方がないことかもしれない。活動していた4年間でそれなりにグループに投資もしたのだと思う。 しかし、見限るには早すぎなのではと思う。まだグループの存在を知らない人もたくさんいるし、魅力に気付いていない人もたくさんいるはずだ。 2月11日に放送された『関ジャム』という番組でアイドルネッサンスが紹介された。『音楽プロデューサーがゲストにおすすめの曲を紹介する』という企画で『前髪』が紹介された。紹介されたといっても、大々的に取り上げられたわけでもない。紹介されていた時間は2分程度だし、日曜深夜の番組だ。 それでも反響は大きかった。Twitterではトレンド入りしていたし、YouTubeの再生数は2倍になった。ツイートやYouTubeのコメントを見ると、放送でアイドルネッサンスの存在を知った人も多かったようだ。そして、解散が決まっていることを知り、残念に思っている人も少なくはなかったようだ。 深夜番組で少し紹介されただけでも、反響は小さくなかった。 もっとテレビに出ていたら状況は違ったかもしれない。 ラジオでももっと流れていれば状況は違ったかもしれない。 もっと知ってもらう機会があれば状況は違ったかもしれない。 違う宣伝方法をしていたら状況は変わったかもしれない。 まだ伸びしろもあって、個性も魅力もあったグループが終わってしまうことは残念だ。悲しい。 見限った人を見返してやりたかった 自分はアイドルネッサンスのファンと言うわけではなかった。名前や活動は知っていた程度。それがオリジナル曲が関ジャムで紹介され興味を持った。実はメンバーの名前と顔もまだ一致していない。それでもグループや楽曲に魅力を感じ、こんな長文ブログを書いている。 知るきっかけさえあれば、まだまだ好きになってくれる人はたくさんいたと思う。今ではどうすることもできないが、それが悔しい。自分自身、もっと早く魅力に気づけなかったことも悔しい。売れるには運やタイミングも大切だと思う。しかし、関ジャムの反響や音楽的評価を見ると、その運をつかむタイミングはこれから来る可能性もあったのではとも思う。 アイドルネッサンスを見限って解散させた人たちを見返してやりたかった。それは今では無理なことだし、何かのきっかけで過去の作品が売れたとして、見返すことができたとしても解散の事実は変わらない。でも、せめてあと1年猶予をくれたとしたら、いや、せめて半年でも猶予をくれたとしたら、今とは全然違う未来だったような気もする。メンバーも関係者も笑顔で続けられて、もっと多くの人に音楽が届いていたような気もする。 上の動画は3年半前、初めて自分たちが歌い踊っているMVを観たメンバーの動画。この動画で泣きながら喜んでいるメンバーたちは、解散する今、どんな気持ちなのだろう。想像すると胸が痛む。報われて欲しかったなと思う。せめて最後のライブをみんな笑顔でやれて、グループが終わってしまっても幸せでいてくれたらなと思う。 アイドルネッサンスは解散してしまうけども、その存在や残した楽曲が消えることはない。これから知る人もいるかもしれない。カバー曲もオリジナル曲も素晴らしい作品を残していると思う。それが今後も聴かれ続けたらなと思う。 前髪がゆれる アイドルネッサンス T-Palette Records 2017-08-08 Amazonで購入 楽天市場で購入 アワー・ソングス アイドルネッサンス T-Palette Records 2016-03-22 Amazonで購入 楽天市場で購入