オトニッチ

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sora tob sakanaが解散することについて思うこと

音楽が良いアイドル

 

自分が女性アイドルに興味を持ったきっかけはBiSとでんぱ組.incだ。

 

王道アイドルへカウンターを喰らわせるようなキャラクターや音楽性で、小さな事務所からシーンに出てきことに面白さを感じた。それでいて音楽のクオリティが高いことも魅力的だった。

 

それから他のアイドルにもハマっていった。私立恵比寿中学のアイドルだからできる「なんでもありな音楽性」に惹かれ、欅坂46にはメジャーど真ん中で王道から外れた音楽やパフォーマンスで魅了する姿に刺激を受けた。メジャーや大手事務所でも面白いアイドルがいるのだと気づいた

 

それらのグループは「音楽が良い」と言われ、アイドルファン以外にも高く評価されている。いわゆる「楽曲派」とカテゴライズされているやつだ。

 

sora tob sakanaも「音楽が良い」「楽曲派アイドル」と言われ続けているグループである。それに対して異論はないし、音楽的に物凄いことをしていると思う。ファンからはオサカナという相性で親しまれているこのグループも自分は好きになった。

 

ただsora tob sakanaは自分が今まで聴いてきた「楽曲派アイドル」とは少し違うように感じている。

 

メンバーのことが記憶に残らなかった

 

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自分がsora tob sakanaを初めて観たのは2016年の2月。BELLRING少女ハートを目当てに行ったので、オサカナのことは曲も存在も知らなかった。そしてライブを観て衝撃を受けた。

 

あくまで個人的な感覚だが、自分はライブを観てもメンバーの印象は薄く、あまり記憶に残らなかった。もちろんメンバーに魅力を感じてファンになった人もいるとは思うが、それよりも楽曲の個性やクオリティの高さに衝撃を受けた。

 

楽曲派と呼ばれるアイドルは沢山いるが、それでも音楽以外の魅力を加えた上で評価されていたと思う。

 

例えばBiSは過激なプロモーションやパフォーマンスもあったから話題になったし、でんぱ組もメンバーのキャラクターやコンセプトの面白さで支持されている部分がある。エビ中は奇想天外なことをやっているユーモアも魅力だった。欅坂46は平手友梨奈の存在感のインパクトが強かった。

  

sora tob sakanaはそれらとは違うように思う。

 

失礼ながら初見ではメンバーのことは印象に残らなかった。コンセプトに面白さは感じなかった。ただただ曲がめちゃくちゃ良いと思った。ポップなメロディなのにバックの演奏は他のアイドルソングでは聴くことがないような音色に聴こえる。それに衝撃を受けた。

 

メンバーのことは印象に残らなかったが、このグループだから成立している音楽にも聴こえる。それが不思議でもあった。まるで魅力的な新人バンドを観た時と同じ感覚になった。

 

これが本当の意味で「楽曲派アイドル」だと思った。

 

 

自分が衝撃を受けた曲と衝撃を受けたライブ

 

曲の良さや音の良さには徹底的にこだわっているのだと思う。

 

YouTubeにはバンドメンバーがオサカナの楽曲を演奏する動画がある。そこにはメンバーの歌声はない。それでも1つの曲として成立している。もともと歌がないインスト曲だと思ってしまうほどの完成度だ。

 

 

だからよりメンバーの魅力やアイドルとしての面白さよりも楽曲の凄さに惹かれて行った。メンバーがまだ幼く経験も少ないから楽曲の方が目立っていたのかもしれないが、楽曲と演奏のインパクトがものすごく強い。

 

音楽へのこだわりだけでなく、ライブの演出や魅せ方にもこだわっていた。

 

定期公演やワンマン公演ではVJを必ず入れていたし、フェスでもVJを入れることは多かった。他のアイドルとは違う圧倒的な演出で魅せるライブをやっていた。バンドやシンガーソングライターとの対バンも多かったが、それも音楽やライブ演出の凄みが影響していうと思う。

 

 

特に『広告の街』をライブで化ける曲だ。

 

楽曲自体もインパクトが強いが、VJと組み合わさると魅力が増大する。メンバーの歌唱やダンスも良いとは思うが、やはり楽曲の魅力や演出の凄さに感動してしまう。

 

ただ2018年にメジャーデビューしてから少しづつ変わってきた。メンバーの魅力を感じるようになった。

 

かつては楽曲が主役のグループで演出が主役のライブだったように思う。アイドル自体が脇役に感じることも多かった。しかしメンバーが主役になってきた。楽曲も演出もメンバーも全てが主役で魅力的なグループに進化してきたように感じる。

 

 

2019年のライブ映像を観ると演出の凄みだけでなく、メンバーのパフォーマンスにも惹き込まれてしまう。それは以前のライブでは感じなかった。メンバーの表現力は見違えるほどに進化している。確実に成長している。

 

「楽曲派アイドル」として魅力的だったsora tob sakanaは「アイドル」としても魅力的で

「音楽」としても魅力的な唯一無二のグループになった。まだまだ進化しそうな予感があった。

 

だから解散してしまうことは残念に思う。

 

 

9月で解散するsora tob sakana

 

<寺口夏花>
sora tob sakanaを応援してくださっている皆さんへ

この度私達sora tob sakanaは解散することになりました。
中学生を卒業する頃から、20歳になったら将来のことをもう1度考え直そうと考えていました。
そして20歳になる今、改めて今の生活を見つめ直してみました。

楽しかったことももちろんありますが、そうでないこともたくさんありました。
最近は今まで楽しいと思えていたことを辛いと思うこと、自分は人前に出るのが向いてないなと思うことがだんだん増えてきたように感じます。

皆で将来を考えて、この決断をしました。
6年間で学んだこと楽しかったこと、この先もきっと忘れないと思います。

もし良かったら、最後まで応援よろしくお願いします。


<神﨑風花>
突然のことで驚いたと思います。
正直自分も6年間続けてきた事に終わりが来ることに実感がまだ湧いていません。

解散が決まって何を伝えるべきなのかと考えましたが、何より皆さんへの感謝の気持ちを1番に伝えたいです。
本当にいつも応援してくださりありがとうございます。
時には全て放り出したくなる事もありましたが、それでも頑張ろうと思えたのは紛れもなく皆さんの応援があったからです。

解散後は、良い区切りとして一度リセットし、自分が本当にしたい事をじっくり考えようと思います。
今は、解散まで沢山の方にsora tob sakanaの音楽を届けていきたいです!


<山崎愛>
いつもあたたかい応援ありがとうございます。
突然の発表となりましたが、sora tob sakanaは解散することになりました。

メンバーや、サカナに関わってくれた沢山の大人の方々、こんな自分をどんな時もあたたかく応援してくれたファンの皆さんのおかげでここまで頑張れたと思います。
sora tob sakanaに加入してからの約5年間は長いようで短くて、やっぱり短かったです。
この約5年間はすごく色々なことがあり濃厚でした。
色々な方と関わりができて、知らないことを沢山知れて、普通だったらできない特別なことを沢山させて頂きました。全て私の貴重な財産です。

皆さん本当にありがとうございます。
最後までよろしくお願い致します。


<音楽プロデューサー 照井順政>
いつもsora tob sakanaを応援してくださってありがとうございます。
2020年9月6日、sora tob sakanaは解散することとなりました。

僕が彼女達の音楽プロデューサーとして活動を始めた時、彼女達はまだ小・中学生でした。
出会った頃の彼女達は、幼い頃から芸能界で活動しているとは思えないほど(していたからなのかもしれませんが)大人に媚びることはせず、安易に触れることを許さない聖域の様な精神の場所を持っているように感じました。

芸能界、アイドルといったものに全く関心がなかった僕がここまで真剣に取り組んでこられたのは、そんな彼女達の気高さへの憧れ、それに少しでも近づきたいという気持ちがあったからだと思います。

長い活動の中で他者への想像力を培った彼女達が、誰にも触れさせなかった聖域をしなやかに解放していく様を感動しながら、少し寂しいような、少し自慢したいような気持ちで見ています。

メンバーはもちろん、sora tob sakanaに関わってくださった全ての人達の中に、この先に繋がる何かを残せるよう全力を尽くしますので、最後までよろしくお願い致します。

(引用:sora tob sakanaの活動に関するお知らせ )

 

 

2020年5月22日。sora tob sakanaが9月6日のライブをもって解散することを発表した。

 

理由について深くは語られてはいないが、きっと様々な理由があって、メンバーと関係者でしっかりと話し合って決めたのだと思う。

 

ファンとしては寂しいし悔しい。まだまだこれからのグループだと思っていた。最近は関ジャムでも紹介されて注目を集めたばかりだ。ここで解散してしまうのはもったいないと思う。

 

ただメンバーと関係者が決めた決断ならばそれについては仕方がない。その決断を支持したい。

 

自分が最初にライブ観たときは曲が最高で演出も素晴らしくて、メンバーは誰でもいいとすら思っていた。それがいつの間にかメンバーの替えが効かないグループになっていた。より魅力的なグループになっていた。

 

だからこそメンバーチェンジではなく解散を選んだのかもしれない。活動初期ならばメンバーを全員入れ替えて続けていたと思う。それができないほどに「このメンバーでないと」成立しないグループに進化したのだ。

 

 

自分が最後にライブを観たのは2月8日の主宰フェスの『天体の音楽会Vol.3』だ。

 

その映像がYouTubeの公式チャンネルにアップロードされている。良いライブだった。最後に演奏された『Lighthouse』は特に最高だった。めちゃくちゃ楽しかった。曲も演出もメンバーのパフォーマンスも素晴らしかった。

 

9月の解散に向けて全国ツアーを行うが、開催できるかもわからない。今はライブが無事に開催できることを祈るしかない。できればライブ会場で最後の姿を見届けたい。またオサカナちゃんたちが楽しそうに歌い踊る姿をライブで観たい。

 

『透明の怪物』という曲がある。自分が特に好きな曲の1つだ。そこでは下記のように歌われている。

 

古い日記 めくり返せば
君の足跡が残っている
あの日確かにここで過ごした
君の気配だけが 息をしている

 

このフレーズが胸に染みる。解散してしまっても、曲を再生すれば、きっとsora tob sakanaの気配が息をしてくれるはずだ。

 

透明な怪物

透明な怪物

  • sora tob sakana
  • J-Pop
  • ¥204
  • provided courtesy of iTunes

 

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