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【レビュー】Official髭男dismがカルピスCMソング『パラボラ』でまたバンドを進化させやがった(歌詞・感想)

髭男がまた名曲を作った

 

2020年もOfficial髭男dismの年になるのだと確信した。

 

『pretender』『宿命』が代表曲でアルバム代表作は『Travelar』であり続けると思っていた。つまり2019年が人気も曲のクオリティもピークに思っていた。

 

しかし、それは間違いだった。まだ人気は拡大しそうだ。まだ名曲を作り続けそうだ。新鮮さと衝撃を与える曲を出してヒットを繰り返しそうだ。

 

パラボラ

パラボラ

  • Official髭男dism
  • J-Pop
  • ¥255
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  • provided courtesy of iTunes

 

カルピスウォーター のCMソングになった新曲『パラボラ』で、また新しい髭男の音楽を聴かせてくれた。

 

新曲を出すごとにJ-POPのレベルを上げていった髭男

 

Official髭男dismはJ-POPを一段階レベルアップさせた。Aメロ→Bメロ→サビというJ-POPの雛形をなぞりながら、新しい価値観を作り出した。

 

J-POPはメロディ重視の曲が多く、それを引き立てるように音を多く重ねて華やかにするサウンドが多い。髭男はその価値観を変化させた。

 

メロディを大切にしつつも「リズム」を重視するサウンドでヒット曲を作ったのだ。音を重ねるのではなくリズムの心地よさによってメロディを引き立てたのだ。

 

 

『Pretender』はメロディが美しいミドルテンポの切ないラブソング。J-POPの定番的アレンジを当てはめるならば、ストリングスを入れて華やかにしたり多くの音を重ねて壮大な曲にすることが多い。しかしこの「定番アレンジ」を当てはめずにヒットさせた。

 

ストリングスを入れずに音は必要最小限にしている。ピアノはメロディを奏でるのではなくリズムを刻むように演奏している。ドラムは手数を少なくして音の隙間を作ることでノリを作り出している。リズムを重要視しているのだ。

 

それでも誰もが口ずさめるようなメロディに惹きつけられる。つまり「リズムを重要視することでメロディを引き立てる」という新しいJ-POPの定義を作ったのだ。

 

 

『宿命』ではその方向性がより顕著になっている。音の隙間が多く、それによってノリを作っている。それでも華やかに感じるしメロディの良さも引き立っている。高いテンションで盛り上げるのではなく、心地よいリズムで盛り上げる。

 

R&Bやソウルミュージックなどリズムが重要な音楽がメンバーのルーツだからかもしれない。ブラックミュージックのノリをバンドとしてJ-POPに落とし込んでいるのだ。

 

それはヒットを出した日本のバンドでは珍しい音楽性に思う。J-POPの再定義をしたとも言える。

 

2020年の第一弾シングル『I LOVE...』もその流れを汲んだ楽曲だ。

 

人気ドラマ『恋はつづくよどこまでも』の主題歌になったこともヒットの要因だが、本人たちが2019年にJ-POPを再定義したことが成功したからこそヒットにつながったと思う。『Pretender』を超えるヒットになりつつある。

 

そして新曲『パラボラ』に続くわけだが、この曲はまた新しいOfficial髭男ismを聴かせてくれる。本人たちが再定義したJ-POPの新しい価値観を、自ら更新している。

 

 

パラボラの凄さ

 

『パラボラ』はミドルテンポで美しいメロディの楽曲だ。アルペジオから始まる印象的なイントロ。リズムを重要視した演奏。しかし今までと違う部分もある。

 

リズムが独特なのだ。それを自然と受け入れられるような演奏に凄みを感じるのだ。

 

特にドラムのリズムが独特だ。シンプルなリズムと複雑なリズムを組み合わせている。リズムパターンがめまぐるしく変わる。

 

最初のイントロはシンプルなリズムから始まり6秒後にリズムパターンを変えてくる。

 

Aメロも手数は少ないものの独特なリズムパターンだ。そしてBメロでは歌うようにメロディを奏でるベースの音に隙間ができたタイミングでドラムを叩く。

 

サビの最初は手数を抑えつつも複雑。しかしその後はシンプルなリズムで盛り上げる。

 

シンプルなリズムは2番のAメロも続く。1番のAメロBメロは独特なリズムで惹きつけていたが、2番は心地よさを生み出すリズムを奏でている。

 

かと思えばBメロではリズムパターンを数秒間変化させて中だるみを防ぐ。その後はまたシンプルなリズムに戻る。2番が終わるとまたリズムを変化させる。またサビになるとシンプルなリズムの心地よい演奏になる。

 

髭男はリズムを大切にしている曲が多い。しかし大きくリズムパターンを変化させることは少ない。

 

一定のリズムで心地よく聴かせることで、リズムの心地よさを表現していた。それによってメロディの良さも引き立たせていた。

 

しかし『パラボラ』は複雑で変化をするリズム。リズムを重要視していることは変わらないが、表現方法が以前と違う。それでもメロディの良さも引き立っているし、J-POPとして成立している。

 

髭男が新しく作ったJ-POPの定義をさらに進化させているのだ。

 

 

歌詞

 

ダンボールだらけから幕開けた日々は
想像よりも少しだけ忙しく過ぎていってる

 

片づくことを知らないこの部屋はなんだか
他の誰かの暮らしから借りてきたみたいだ

 

まっさらなノートの上
一文字目を書き出すようにして
期待感と不安感が混ざったインクに浸した心で

 

互い違いに歩き出した僕の両足は
どんな未来のアスファルト踏みしめていくんだろう

 

靴底を擦り減らしてドアの向こう側
まだ遠くて不確かでぼやけてる理想像も
追い越すような軌跡を描いてみせるよ
いつかきっと いつかきっと

 

思い違いだらけのメチャクチャな過去を
振り返るたび未熟さにむず痒くなるけど

 

定規で書いたような将来の雛形を知らぬ強さに
何故だか僕らは不可思議に救われたりする

 

暗いへやに鳴り響いた誰かの鼻歌
声ですぐにわかったよずっとここにいたんだろ

 

君が僕に歌い継いだいつかのララルラ
胸ポケットで密かに呼吸をしている夢ならば
必ず僕がちゃんと叶えておくよ
固い誓いを 今たてよう

 

互い違いに歩き出した僕の両足は
どんな未来のアスファルト踏みしめていくんだろう

 

靴底を擦り減らしてドアの向こう側
まだ遠くて不確かでぼやけてる理想像も
追い越すような軌跡を描いていけるよ

 

そして遥か先をゆく
どっかの僕が迷わないように
眩い光放ってみせるよ
いつかきっと いつかきっと

 

 

歌詞もリズムや心地よさを重要視している。

 

語尾の母音を揃えているのだ。韻を踏むことでリズムの心地よさと耳障りの良さを表現しているのだ。

 

まっさらなノートのう
一文字目を書き出すようにし
期待感と不安感が混ざったインクに浸した心

 

いに僕の両あ
どん未来アスファル踏みしめていくんだ

(Official髭男dism / パラボラ)

 

Bメロとサビでは「え(e)」「い(i)」「あ(a)」「お(o)」の母音で韻を踏むように歌詞が作られている。それによって心地よいノリが生まれる。それがドラムやベースの鳴らすリズムと重なることで、心地よさが倍増するのだ。

 

君とのラブストーリー それはいつも通り

いざ始まれ 一人芝居

グッバ 君の運命の人は僕じゃな

辛いけど否めな でも離れ難いのさ

その髪に触れただけで 痛いや いやでも 甘いな いや いや

(Official髭男dism / Pretender)

 

この仕掛けは『Pretender』でも使われていた。意識的にノリの良いリズムを作るため計算されている。

 

つまり過去の自分たちの音楽性の軸はぶらさずに制作しているということだ。しかも表現方法を変化させふことで音楽性の幅を広げ、バンドとして進化さしている。

 

『パラボラ』がカルピスのCMで流れてきたら「カラダにピース」よりも「ラブとピース」と言いたくなってしまう。そんな髭男の凄みを感じる新しい名曲だ。

  

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