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ユニコーン『ミレー』を聴けばパクリとオマージュの違いを理解できる

ユニコーンは楽曲制作において、様々な名曲のオマージュや引用を頻繁に行なっている。

 

例えば『ペケペケ』はT.Rex『Tame My Tiger』のイントロをオマージュしているし、『オレンジジュース』はRediohead『Sit Down Stand Up』を空耳アワー的なユーモアを持って引用している。

 

『PTA~光のネットワーク』なんて、小室哲哉のサウンドを忠実に再現している。それはオマージュされたTM NETWORKのファンにも、受け入れられ楽しまれていた。

 

他にもこのような楽曲は多い。その数は他のバンドとは比べ物にならないほどだ。

 

かといってそれを不快に思わない。むしろそれがユニコーンを聴く上での、楽しみの1つになっている。

 

それはなぜかというと、ギャグではなくユーモアであり、パクリではなくパロディでありオマージュだからだ。そしてネタ元がわかりやすいのに、不思議とバンドの個性を強く感じるからだ。

 

新曲の『ミレー』にも、そんなユニコーンの個性がつまっている。

 

 

 

ピアノとホーン隊の演奏は、聴いているだけで楽しくなる。50年代リバイバルなサウンドを2021年にやることで、新鮮で最新の音楽へと昇華されている。ABEDONのシャウトもクールで最高だ。

 

ボーカルはABEDONだが、作詞作曲は奥田民生。楽曲のイメージに合わせ、ボーカリストを自由に変えられることも彼らの強みだ。

 

そしてやはりこの曲もMVを含め、ロック史に残る偉大なミュージシャンをオマージュしている。

 

 

リトル・リチャードだ。この映像をそっくりそのままオマージュしている。シャウトやピアノの音色など、サウンドや演奏も意識している。

 

彼は1950年代から活躍しロックンロールを拡め、ロックンロールのカッコよさを伝えたミュージシャンだ。

 

プレイスタイルは個性的である。激しく叩くように弾くピアノの奏法は今でも刺激的だし、感情的にシャウトする歌唱方法は、ロックボーカリストのパブリックイメージを作ったといえる。

 

彼がいなければ世界の音楽シーンは、全く違うものになっていたかもしれない。

 

人種差別が今以上に強い時代も、白人の前でステージに立っていた黒人のリトル・リチャード。差別によってホテルに泊めてもらうことができず、車中泊をしながらツアーを回ったこともある。

 

アメリカの南部で人種隔離政策のジムクロウ法が施行されていた時期も、白人と黒人の両者を客として招きコンサートを開催した。

 

また同性愛者であることを公言し、化粧をしてステージに立っていた。当時は今以上にLGBTへの理解がなかった。勇気がいる行動だったと思う。彼は音楽と自身の影響力で、様々な差別を無くそうとしていた。

 

 

リトル・リチャードは、2020年5月9日に87歳で亡くなった。

 

音楽業界を飛び越え、社会全体に影響をもたらすミュージシャンだった。ロックンロールによって「何が正しいか」を証明しようとした、偉大な人物だった。

 

そういえば奥田民生は過去にリトル・リチャードの『Tutti Frutti』を、「ルーツの1つ」としてライブでカバーをしたことがある。

 

自身の音楽人生を決定づけた45曲を選ぶ企画では、『Lucille』を選んでいる。(「自分のお葬式にかけたいです」奥田民生が選ぶ「不滅の名盤 」×「MUSIC SOUP -45r.p.m.-」 )

 

『ミレー』はユニコーンなりの追悼であり、奥田民生なりの感謝の表現かもしれない。

 

ロックミュージシャンの後輩として、言葉ではなく音楽で、敬意と感謝を表現し表明している。オマージュをすることでリトル・リチャードの偉大さを、自身のファンや下の世代に伝えている。

 

引用元へのリスペクトを大前提に制作し、音楽を愛し楽しみながら演奏していることが楽曲から伝わってくる。これがユニコーンの音楽を「パクリ」と思えない理由だ。

 

オマージュした上で、自分たちにしかできない表現を加えている。今でも新しい音楽を作り続けて、音楽シーンを盛り上げている。その結果として彼ら自身も、多くの後輩に大きな影響を与えている。

 

例えばフジファブリックの志村正彦や、マカロニえんぴつのはっとり。

 

彼らは音楽的な部分だけでなく、ロックミュージシャンとしてのスタンスも影響を受けている。二組の楽曲に愛を持ったオマージュが多いことも、ユニコーンの影響かもしれない。

 

GLAYもユニコーンと同じように、愛を感じるオマージュ楽曲を今年リリースした。

 

青春は残酷だ

青春は残酷だ

  • GLAY
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

『青春は残酷だ』という楽曲のイントロで、マイケル・ジャクソン『Black or White』のリフを引用している。おそらく偶然ではなく確信犯であり、あえてリスナーに気づかせようとしている。

 

この楽曲は6月25日に配信リリースされた。マイケル・ジャクソンの命日である。そんな文脈がある。

 

GLAYなりのリスペクトと追悼の表明なのだろう。言葉ではなく音楽で想いを表現したのだろう。オマージュには対象への愛と文脈が不可欠だ。それを改めて教えてくれた。

 

「パクリとオマージュの違いは何か?」という議論は度々行われるが、なかなか明確な答えが出ない。人それぞれ価値観も考え方も違うのだから、仕方がない。

 

しかし自分はその答えが、ユニコーン『ミレー』とGLAY『青春は残酷だ』に詰まっていると思う。二組が音楽で答えを教えてくれた気がする。

 

だから「オマージュとは何か?」を知りたければ、この曲を聴いてミレー。

 

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