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【ライブレポ・セットリスト】Slow LIVE'20 in Forum『Forget-me-not』( kitiri・藤原さくら・安藤裕子) @東京国際フォーラム ホールC 2020.9.25

Slow LIVE'20 in Forum『Forget-me-not』 

 

東京国際フォーラムホールCで『Slow LIVE'20 in Forum』というライブイベントが行われた。

 

kitriと藤原さくら、安藤裕子という実力派のアーティストが3組揃った対バンライブである。

 

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このライブは入場時から徹底した感染症対策を行っていた。

 

入場列は一定の距離を開けさせての入場。検温もアルコール消毒も入場時に行う。もちろんマスクは着用義務がある。

 

キャパは最大収容人数の半分以下に抑えられているし、両隣に人が座ることはないようになっている。出来る限り密を防ごうとしている。

 

これらの対策は他のライブでも行われている。むしろ現在はライブを行うならば必須事項としてやらなければならないことだ。

 

しかし『Slow LIVE'20』はそれに加えて、ライブ中でも出入り口のドアを全開にして換気を行っていた。周りに騒音が響かないようになった建物構造だからこそできる対策である。だからより安心してライブを楽しむことができた。

 

そしてなによりも、出演したアーティストの全組が素晴らしいライブを行なっていた。

 

全組がコロナ禍になって初めて人前でライブを行ったこともあり、気合も入っているように見えた。

 

kitri

 

赤いドレスを纏ったkitriの2人がゆっくりとステージに登場し、グランドピアノの前に座る。一瞬の間を空けてから、2人が連弾でピアノを弾き歌い出した。

 

1曲目は『人間プログラム』。

 

超絶技巧のピアノの連弾と2人の美しいハーモニー。刺激的な音と心地よい音色の組み合わせに鳥肌が立つ。

 

人間プログラム

人間プログラム

  • Kitri
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

「ピアノの連弾ユニットのkitriです。久々のライブですが一緒に楽しんでもらえたらと思います」と軽く挨拶し、Hinaがピアノから離れアコースティックギターを手に持つ。

 

『矛盾律』はMonaがピアノのを弾きHinaがギターを演奏。

 

歌声によるハーモニーだけでなく、ピアノとギターのハーモニーも魅力的な曲だ。たった2人で演奏しているのに音に厚みがあり迫力がある。ホールが似合う壮大な演奏だ。

 

再びHinaもピアノに戻り、ピアノの連弾による曲が続く。

 

繊細な演奏の『Lily』。美しく優しい音色とメロディの『さよなら、涙目』。

 

この2曲で会場は神秘的な空気で包まれた。kitriにしか創れないであろう空気感だ。

 

さよなら、涙目

さよなら、涙目

  • Kitri
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

国際フォーラムに立つのは初めてですが、お客さんとしては大橋トリオさんのライブを観に来たことがあります。その時に関係者の方に「kitriさんですよね。一緒に何かやりたいですね」と話しかけられて、今はその方と一緒に作品を作っています。だから自分たちにとってこの場所は聖地です

 

会場の国際フォーラムに対する思い入れを語り、配信リリースされたカバーアルバムから2曲演奏することを告げる。

 

赤い証明に照らされながらキャンディーズ『アン ドゥ トロワ』のカバーを切なく演奏。原曲の魅力をいかしつつも、kitriの個性で彩った演奏で届ける。

 

サカナクション『シーラカンスと僕』のカバーも、彼女たちにしかできない個性的な表現で披露した。

 

シーラカンスと僕

シーラカンスと僕

  • Kitri
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

原曲はバンドサウンドとダンスミュージックを融合させたロックバラードだが、kitriのバージョンは温かみのある優しいバラード。曲のメロディや歌詞の良さがより伝わるアレンジだ。

 

ラストは『羅針鳥』。

 

羅針鳥

羅針鳥

  • Kitri
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

ここからはじめまして あなたは羅針の鳥
ひたすら胸の中の音を頼りに飛んでいけ

(kitri / 羅針鳥)

 

この日の出演者でkitriは最も知名度が低い。キャリアも最も短い。会場に居た人でも他の出演者目当てで存在を知らなかった人もいるかもしれない。

 

しかし2人の音楽は会場の全ての人の心に届き、感動させたと思う。それぐらいに素晴らしいライブだった。

 

kitriの音楽は羅針鳥の歌詞のように、胸の中の音を頼りに飛んできたように感じた。自分もライブは初めて観たが、心の底から感動した。

 

ここからはじめまして。音源もこれから聴くし、またライブを観にいきます。

 

▪️kitri  セットリスト

1.人間プログラム
2.矛盾律
3.Lily
4.さよなら、涙目。
5.アン ドゥ トロワ
6.シーラカンスと僕
7.羅針鳥

 

藤原さくら

 

キーボードに別所和洋を招いた2人編成の藤原さくら。

 

お辞儀をして椅子に座り、エレキギターを手に持ち、丁寧な演奏でギターを奏で始める。

 

1曲目は新曲の『Waver』。

 

音数を控えあ繊細な演奏で、観客を音に集中させ、少しづつ自分たちの空気を創っていく。一瞬で音に包み込まれるような心地よい空間になる。

 

Waver

Waver

  • 藤原さくら
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

藤原さくらは表には出さないものの、いつもよりもテンションが高いらしい。

 

マイペースでシュールで穏やかなMCはいつも通りだが、「今年になって初めて人前でライブができたので、夢のような気分でとても嬉しいです」と語る。

 

「新しい曲も昔の曲も色々とやろうと思います」と言ってから「1、2、3、4」とカウントして『Twilight』を演奏。

 

Twilight

Twilight

  • 藤原さくら
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

音源では華やかなホーンの演奏が印象的な曲だが、今回はピアノの音が前面に出てきる。テンポを落としてじっくりと聴かせるアレンジになっていた。

 

そして『Time Flies』『Give me a break』とクールな楽曲を続ける。

 

ガットギターの音が心地よい。藤原さくらの音楽性は幅広いのだ。カッコ良さとやさしさを兼ね備えている。

 

MCではキーボードの別所和洋が「今日までに何度も客前でライブをやっていて、今週だけで3本あった」と話す。

 

それに対して「わたしの今日の感動とは温度差があるんですね」と話す藤原さくら。それに対して会場から穏やかな笑いが起こる。

 

しかし曲が始まればミュージシャンとして一流の姿を見せてくれる。

 

「夏の終わりに描いた曲です」と紹介しから『赤』を披露。

 

音源よりもテンポを大きく落とした演奏に艶のある歌声が重なる。曲名や歌詞に合わせるように赤い照明がステージを照らした。

 

赤

  • 藤原さくら
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

音で酔ようような気持ちの良い余韻。それを残したまま『The Moon』へ。

 

去年行われたツアーでは藤原さくらはキーボードを演奏していた楽曲だが、今回はエレキギター。原曲は壮大なアレンジだが、今回は二人でしっとりと聴かせる。

 

切ないメロディと歌詞が印象的な『クラクション』もしっとりと演奏した。

 

ガットギターとキーボードの優しい音色が心地よい。音源以上に歌詞の言葉が胸に沁みる。

 

クラクション

クラクション

  • 藤原さくら
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

「安藤裕子さんは以前いっしょにお食事する気概があったんですけど、とても良い方でまた会えて共演できたことが嬉しいです。kitiriさんは自分の姉からだいぶ前に教えてもらって、ずっと聴いていたので、ライブを観れて感激しました」

 

MCで共演したアーティストについて語り最後にスピッツ『春の歌』をカバー。

 

「今日はみなさんを寝かせに行くような暗い曲が多かったので、最後は明るい曲を」と言っていた通りに、優しく包み込むような柔らかな演奏。一瞬で雰囲気を明るくするような歌声。

 

2人という少人数でもホールに似合う演奏をするために、工夫がされ尽くした素晴らしいライブだった。

 

▪️藤原さくら   セットリスト

1.Waver
2.Twilight
3.Time Flies
4.Give me a break
5.赤
6.The Moon
7.クラクション
8.春の歌

 

↓藤原さくらの他の記事はこちら↓

 

 安藤裕子

 

ステージに出てきたものの落ち着かない様子の安藤裕子。椅子の位置を調整したりと挙動不審。久々のライブに緊張し興奮しているようだ。

 

「人前に立つのが半年ぶりなんですよ。みんなマスクをしてステージを観てて、次の時代にきたんだなって思いますよ。以前はこの曲を歌う時は、帰り道に足を踏まれた人に恋でもしてくださいと言っていたんですが、今は人と近づけないですね」

 

座ってから一呼吸して語り、1曲目に『箱庭』を歌う。

 

イベントのトリに相応しい、伸びやかで圧倒的な声量の歌声。それを支えるキーボードの皆川真人とベースのshigekuni。演奏陣も一流だ。

 

箱庭

箱庭

  • 安藤裕子
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

椅子から立ち上がり歌ったのは初期の名曲『TEXAS』。

 

音を体でとらえるように独特なダンスを踊りながら歌う。すると観客から自然と手拍子が起こる。

 

それを見て笑顔になる安藤裕子。音楽によって人の心を揺れ動かし、音楽によって心がひとつになる。

 

TEXAS

TEXAS

  • 安藤裕子
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

「今日はアコースティックで落ち着いたライブをやるはずなのに、盛り上げてしまった。これはいけない」と独特なMCをしてまた椅子に座る。

 

また一呼吸して歌い始める。最新アルバムのリード曲『曇り空に君が消えた』だ。美しいメロディを繊細に表現し歌い演奏する。

 

「歌い手というものは、新しい作品を創ると新曲ばかり歌いたくなる。でもお客さんは往年の懐かしい名曲を聴きたくなる。そういうジレンマがありますが、今日は申し訳ありませんが、新曲をまた歌おうと思います」

 

対バンライブやイベントでは人気曲や代表曲を歌うことが定石ではある。しかし安藤裕子は今の自分が歌いたい曲をやると宣言した。

 

それに対して客席から盛大な拍手が贈られる。

 

みんな往年の名曲だけでなく、今の安藤裕子の音楽を求めているのだ。むしろ新曲を聴きたがっている。そう思わせるだけの魅力がある歌声なのだ。

 

そしてレコーディングもされていない未発表曲『少女小咄』を披露。優しいピアノの音と切ない歌のメロディが印象的な曲だ。

 

そして唐突にカバー曲が披露される。キリンジ『エイリアン』だ。

 

安藤裕子のエッセンスも取り入れつつも、原曲の魅力を崩さないようなアレンジと表現。堀込泰行以外で歌いこなせたボーカリストを初めて見た。

 

エイリアンズ

エイリアンズ

  • KIRINJI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

「次が最後の曲です。久々に人前で歌えて嬉しかったです。皆様も足元が悪い中きてくださりありがとうございました」

 

丁寧に挨拶をして最後に『1日の終わり』を歌った。

 

立ち上がり全身で歌を表現している。後半に進むにつれ、少しづつ演奏が盛り上がっている。少しづつ曲の世界観に引きずり込まれ、最終的には鳥肌が立つほどに圧倒させられる。

 

一日の終わりに

一日の終わりに

  • 安藤裕子
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

曲が終わり一瞬の静寂。それほど全員が息を飲んで音楽を聴いていた。

 

「ありがとうございました」という挨拶がされた瞬間に、この日一番大きな拍手が巻き起こった。この日は着席して観るライブだったが、立ち上がって拍手をする人もいた。

 

拍手は鳴り止まず、自然とアンコールを求める拍手になっていた。

 

「お客さんの前で歌うと、知恵熱というか、興奮してしまいますね。ちょっとクールダウンします」

 

そう言って披露されたのは『バロメッツ』。

 

腕を動かしリズムを取りながら歌っている。ポップで明るい楽曲。安藤裕子もバンドメンバーもお客さんも、みんなリラックスして穏やかに音楽を楽しんでいる。

 

バロメッツ

バロメッツ

  • 安藤裕子
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

「新曲と『問うてる』のどっちを歌おうか悩んで、裏で関係者の人にどっちの方がいいか聞いたら、どっちもやっていいですよと言われたので両方やります」

 

そう言って製作途中の新曲『泡の起源』を披露した。

 

歌詞を見ながら真剣に歌っている。幻想的な雰囲気の楽曲だが、後半に進むにつれ温かみが増す楽曲。音源になったらどのような楽曲になるのかが楽しみだ。

 

「口は開けたらダメですが、鼻でハミングするのは良いみたいですよ」

 

ラストは『問うてる』。自然と手拍子が巻き起こる。立ち上がりステージを動き回り歌う安藤裕子。

 

問うてる

問うてる

  • 安藤裕子
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

後半のコーラス部分では観客も言われた通りにマスクをして口を閉じて、ハミングで演奏に参加する。

 

生のライブだからこそのステージと客席との一体感。ライブは演者だけでなく、観客も居るからこそ成立するのだと改めて感じる。

 

「色々と不安な世の中ですが、みなさん、楽しんで生きてください」

 

ステージから去る時の、最後の言葉。これはコロナ禍でなければ出てこない言葉だと思う。

 

ライブは様々な工夫がされて、感染症対策を徹底して行われていた。演者が全組アコースティック編成でパフォーマンスしたことも、騒ぐ客を出さないための対策だと思う。

 

今まで通りにライブを行うことは、まだまだ難しい。

 

その中でも工夫してライブを行ってくれたし、ライブの時間はコロナ禍になる前と同様に、夢のような時間で最高だった。どんな状況でも音楽は止まらないのだ。

 

 この状況下でも徹底した対策をして、最高のライブを成立させてくれたアーティストと関係者に感謝。

 

▪️安藤裕子 セットリスト

1.箱庭
2.TEXAS
3.曇り空に君が消えた
4.少女小咄 ※新曲
5.エイリアンズ ※キリンジのカバー
6.1日の終わりに

EN1.バロメッツ
EN2.泡の起源 ※新曲
EN3.問うてる