オトニッチ

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Billie Eilishが『bad guy』をライブで歌ってる時の客がうるさい

『bad guy』の時に客がうるさい

 

 

記事タイトルの通りである。『bad guy』で客がうるさいのだ。

 

ビリー・アイリッシュが客席にマイクを向けている部分はある。そこを歌うのならば理解できる。しかし最初から最後まで客が大声で歌っているのだ。ビリーの歌声をかき消すほどの大きさで。

 

ライブで歌いたくなる気持ちはわかる。客の歌声によってより感動的になることも多い。

 

例えばColdplay『Viva La Vida』は客の大合唱により感動的な曲になる。ポール・マッカートニーの『Hey Jude』もそうだ。あれは客も歌うべきだ。

 

しかし『bud guy』はそれらの曲とはタイプが違うように思う。『Viva La Vida』はアリーナやスタジアムが似合う壮大な曲だ。『Hey Jude』は多幸感溢れた楽曲だ。それに対して『bad guy』は小さなライブハウスやクラブが似合いそうな曲に思う。

 

むしろじっくり聴くべき曲に思う。歌詞も合唱するような内容でもない。「胸板」が出てくる歌詞を合唱していることを不思議に思う。

 

歌詞の和訳・意訳

 

真っ白のシャツが赤く染まる 鼻血も出てる

眠ているあなたはひっそりと爪先立ち

ひっそりと近づいてくる

あなたは犯罪者のよう

あなたにひざまづいたせいで私の両膝に痣ができる

感謝もお願いもしないで

私はやりたい時にやりたいことをする

私の魂?超ひねくれてるよ

 
あなたはタフな男

本当にタフな男みたい

全然満足できない男

胸板が厚い男

私は悪いタイプの人間

あなたのママを悲しませるタイプ

あなたの彼女を怒らせるタイプ

あなたのパパを誘惑しちゃうタイプ

私は悪い奴だから

 

ダー!

 

主導権を握ってるあなが好き

本当はそうじゃないとあなたが気づいていても

私のことを所有してよ

あなたのペットになってあげる

私のママは私と一緒に歌うのが好きなの

でもこの曲は歌わないだろうけど

もし彼女がこの歌詞を読んだら

この男を哀れむことはわかっている

  

あなたはタフな男

本当にタフな男みたい

全然満足できない男

胸板が厚い男

私は悪いタイプの人間

あなたのママを悲しませるタイプ

あなたの彼女を怒らせるタイプ

あなたのパパを誘惑しちゃうタイプ

私は悪い奴だから

 

ダー!

 

怒っているあなたが好きなの

あなたは一人になったら嬉しいでしょう

あなたの彼女は私を怖がってるの?

つまり、彼女が何を見たかは知らないけど

多分、私があなたの香水を着けてるからかな

 

私は悪い奴だよ

 

 

上記は『bad guy』の和訳(意訳)だ。なかなかにシュールな内容である。大雑把に説明すると「あなたは胸板が厚い男で私は悪い奴」という内容だ。

 

この歌詞をみんな歌う。数千人から数万人の客が合唱する。ちなみにビリーが客にマイクを向けることが多い箇所は「あなたは胸板が厚い男で私は悪い奴」の部分である。

 

『Hey Jude』を歌う時と同じテンションで胸板の厚い男について数万人が合唱する。胸板の厚い男がアンセムになっている。

 

それが不思議なのだ。なぜ胸板が厚い男について合唱するのかと。自分は9月の来日公演に行く予定だが、自分は胸板について合唱するよりも、胸板について歌うビリーの歌声を聴きたい。

 

そう思っていた。そう思っていたのに、少しづつ自分の感覚が変わっていた。

 

いつの間にかMVを観るよりも音源を聴くよりも、ライブ映像ばかり観るようになってしまった。合唱する客の映像も含めて楽しむようになっていた。自分の胸板も厚くしたいと思い始めた。

 

それはなぜだろうか。

 

 

みんなの歌になった『bad guy』

 

貴方解剖純愛歌〜死ね〜

貴方解剖純愛歌〜死ね〜

  • あいみょん
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

ねえ?どうしてそばに来てくれないの

死ね。私を好きじゃないのならば

(あいみょん / 貴方解剖純愛歌 〜死ね〜)

 

あいみょんに『貴方解剖純愛歌 〜死ね〜』という曲がある。あいみょんのデビューシングルだ。歌詞には腕を切り落としたり目をくり抜いたり心臓をえぐり取る表現がある。

 

聴く人を選ぶような歌詞だ。ドン引きする人もいるであろう内容だ。みんなで合唱するような歌詞ではない。

 

しかしライブではサビで客も合唱する。あいみょんもマイクから離れて客を歌うように煽る。アリーナや音楽フェスでは数万人が「死ね」と叫ぶ。自分が行ったライブでもみんな歌っていた。自分も歌っていた。

 

あいみょんは合唱させるつもりで作ったわけではないと思う。

 

アーティストとして評価され人気が出た結果、『貴方解剖純愛歌』が多くの人の心を掴み、合唱する曲になったのだ。マニアックでマイノリティな内容の歌詞だとしても、リスナーが「自分の歌だ」と思い共感し好きになったのだ。好きな音楽だから歌えるし、歌いたくなるのだ。

 

最初から客に歌わせる目的で作った曲があるとしたら、それは客に媚びを売ったつまらない曲かもしれない。

 

アーティストが媚びずに自身の表現を最大限に発揮した曲こそ魅力的な音楽に思う。そして本気で好きになった曲だからこそ全力で応えて歌う。

 

『bad guy』もそれなのだ。

 

だからビリー・アイリッシュは世界中で評価されるアーティストになり、世界中の人の心を動かしたのだ。特に『bad guy』は多くの人にとて大切な曲になった。そして世界中の人が「胸板の厚い男」について合唱するようになったのだ。

 

気づけばライブ映像に映る熱唱する客の姿を見て、心を動かされるようになった。自分もライブでビリーと一緒に熱唱したいと思うようになった。思う存分みんなで胸板について歌い、胸板について語りたいと思う。

 

しかしだ。『bad guy』には客に歌って欲しくないフレーズが一つだけある。

 

 

ダー!

 

 〈ダー〉というフレーズだ。このフレーズだけは客に歌ってほしくない。

 

ビリーが「ダー!」と言うところを生で聴きたい。いわゆる決め台詞だからだ。最大の見せ場が「ダー!」なのだ。柏木ひなたの「道連れしちゃうぞ🧡」みたいなものだ。

 

 

そういえばBUMP OF CHICKENのライブでがっかりしたことがある。

 

ライブ全体としては素晴らしかったが『天体観測』の時に 「オーイエヘイアハン」を客に歌わせたのだ。それが残念だった。

 

あれも決め台詞である。藤原基央の「オーイエヘイアハン」を聴きたかった。一般人の「オーイエヘイアハン」に興味はない。価値はない。

 

つまり一般人の「ダー!」にも価値はないということだ。ビリーの「ダー!」だから価値があるのだ。

 

複数のライブ映像を確認したが「ダー!」の部分は客が歌っていない映像が多かった。ファンも「ダー!」はビリーが言うべきだと思っているのだろうか。

 

しかしビリーが自ら客に「ダー!」を言わせようとしたライブもあった。

 

 

あろうことかビリーが自ら「ダー!」の部分で客にマイクを向けたのだ。

 

ビリー以外で「ダー!」を言うことを許されている人間はアントニオ猪木だけだ。そこをビリーは理解してほしい。あなたが言う「ダー!」には大きな価値があるのだと知ってほしい。

 

ところで他のファンは「ダー!」についてどのように思っているのだろうか。「ダー!」に重要な価値を見出しているのは自分と猪木だけなのだろうか。気になってきた。

 

ビリーにとっては些細な問題で、客が「ダー!」を言うことを許容している可能性もある。だって「ダー!」で客にマイクを向けることもあるのだから。

 

もしかしたらビリーにとってはライブで熱唱する客よりも、細かいことに文句を言うファンの方がうるさい存在なのかも知れない。

 

変な文句を言う自分はまさにbad guy。

 

ダー!