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【ライブレポ・感想・セットリスト】スピッツ『SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020 “MIKKE”』@2020.1.19 大阪城ホール

ほのぼの

 

スピッツのライブでは穏やかな気持ちになることが多い。特にMCを聴いている時、そんな気持ちになる。

 

「みなさん、腰とか膝は大丈夫ですか?無理しないでくださいね。メンバーも腰や膝は大丈夫かな?」

 

バンドのフロントマンがファンやメンバーに気を使いつつ、ほのぼのと進行していくMC。こんなMCをするロックボーカリストは草野マサムネだけかもしれない。

 

そんなMCを他のメンバーも受け入れている。むしろ他のメンバーもほのぼのとしたトークをする。それをファンは笑顔で見守る。

 

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これは2020年1月19日に行われた『SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020 “MIKKE”』の大阪城ホールで行われたライブでのMCだ。いつも通りのスピッツに安心した。スピッツはいつもほのぼのとしたMCをする。

 

スピッツはワンマンでもイベントでもフェスでも同じように、フロアもほのぼのとしていて、温かい雰囲気になっている。

 

でも不思議なのだ。

 

ライブが終わる頃には「ロックバンドとしてのカッコよさ」に魅了されている。ほっこりとした気持ちになりつつも、終演後はいつも「めちゃくちゃカッコよかった!」と思ってしまう。

 

スピッツって、不思議なバンドだ。

 

 

カッコつける必要がない

 

ロックバンドとしてのカッコよさは1曲目からあった。1曲目に披露された『見っけ』からロックバンドとして骨太な演奏を聴かせてくれた。

 

見っけ

見っけ

  • スピッツ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

THE WHOなどのクラシックロックを感じる演奏にシンセサイザーの音が重なる独特な曲。しかしクラシックロックを再現しているわけではない。メンバーの個性も加わった演奏だ。

 

サポートメンバーのクージーを含めた5人の音が合わさった瞬間、一瞬で「ロックバンド・スピッツ」にしか作れない音になる。

 

音源よりもずっしりとした重みのある音。CD以上に安定しているボーカル。30年以上続けてきたロックバンドの凄みを感じる。

 

湧き上がるような盛り上がり方はしない。しかしロックバンドのカッコよさでジワジワと痺れさせるような曲。

 

『はぐれ狼』『エスカルゴ』と歪んだギターも目立つ気持ちの良いロックチューンを連投する。涼しい顔して演奏しているが、鳴っている音は音源よりもゴリゴリなバンドサウンド。

 

エスカルゴ

エスカルゴ

  • スピッツ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

『チェリー』や『空も飛べるはず』などのイメージが強いためか、上質なポップスを鳴らすバンドだと思われているスピッツ。それは間違いではないが、ロックチューンもたくさんある。

 

そのような曲はライブ全編に散りばめられていた。

 

中盤には『放浪カモメはどこまでも』『点と点』と歪んだギターサウンドが魅力的な曲とアップテンポの楽曲を並べている。

 

点と点

点と点

  • スピッツ
  • J-Pop
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

後半には気性の荒いファンがいるとすればモッシュやダイブが起こっても不思議ではない『8823』や、マサムネがハンドマイクで歌う『俺のすべて』が演奏された。

 

俺のすべて

俺のすべて

  • スピッツ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

スピッツは曲中に煽ったりしない。その代わり音楽だけでオーディエンスのテンションを上げてくれる。

 

カッコつけたパフォーマンスはせず、音だけでロックバンドであることを伝える。その姿が最高にロックなのだ。

 

そういえば客を煽って盛り上げようとするMCも少しだけあった。

 

 

煽りが苦手なだけかもしれない。

 

 

ファンは新曲を求めている

 

スピッツは2020年で結成33年目を迎える。大御所バンドと呼んでも過言ではないし、ヒット曲をたくさん生み出した日本を代表するバンド。

 

過去のヒット曲を満載にしたセットリストでライブを行うベテランバンドもいる。

 

そのようなライブが悪いとは思わない。代表曲やヒット曲をやってくれることは、基本的には嬉しい。

 

しかしスピッツはライブで代表曲やシングル曲を多く演奏するわけではない。

 

今回のライブでも『ロビンソン』や『渚』など過去のヒット曲も演奏されてはいるが、基本的には最新アルバムの楽曲が中心。それに過去のアルバムから満遍なく選曲されてセットリストが作られている。

 

スピッツのライブは代表曲やヒット曲が盛り上がるわけではない。新曲も過去のヒット曲も同じように受け入れられ、同じように盛り上がっている。

 

ファンは新曲を聴けることを楽しみにしているのだ。スピッツも新曲を最も届けようとしているようにも思う。なによりも魅力的な新曲が揃っているから、ベテランだとしても新曲を求められるのだ。

 

まがった僕のしっぽ

まがった僕のしっぽ

  • スピッツ
  • ロック
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 草野マサムネは手癖で曲を作ったとしても、良い曲が作れると思う。スピッツとして手癖で演奏してもカッコいい演奏になると思う。

 

キャリアも経験も実績もあるのだから、気楽に制作し演奏しても良い音楽になると思う。

 

しかしスピッツは新しいことへの挑戦を続けている。

 

『まがった僕のしっぽ』は途中で大きく展開が変化する楽曲。このようなタイプの楽曲は今までなかった。

 

ライブでの演奏が難しい曲だと思う。それでも涼しい顔をして演奏をするスピッツ。改めて演奏の上手さを実感する。進化したスピッツの姿を感じる。

 

このバンド、まだまだロック大陸の物語を進めようとしている。30年以上活動しているのに、ロックの初期衝動をまだ持っている。

 

過去の曲を聴いて「懐かしい」と思ったりするのではなく「新しい曲が良い」と思わせるライブで魅せてくれる。スピッツは今でも新しい刺激を与えてくれる。

 

 

自分がスピッツのライブが好きな理由

 

スピッツはロックバンドだ。しかし音楽性は幅広い。

 

ロックでカッコいいスピッツが好きだ。でもロックかどうかは別として、純粋に良い曲を演奏し歌ってくれるから大好きだ。

 

 『優しいあの子』や『楓』や『プール』の演奏は優しかった。穏やかで落ち着く歌声だった。

 

楓

  • スピッツ
  • ロック
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

 

 ロックバンドとして音楽でブチあげることもスピッツはできる。でもゆっくりと胸に沁みいるような、切なくて優しい音楽も届けてくれる。泣きそうになる。それもスピッツの強みで魅力とも思う。、

 

その演奏はロックバンドの演奏とは少しだけ違うかもしれないが、スピッツだからこそ鳴らせる音楽にも思う。

 

スピッツはインタビューやMCで、ロックであることへのこだわりを語ることも多い。MCはゆるいがロックについての発言は一貫している。

 

でもそれ以上に「スピッツとしての良い音楽」を演奏することを目的としているようにも思う。

 

「音楽が好きというよりもバンドが好き」

 

草野マサムネはロッキングオンジャパン2019年11月号のインタビューで、このように語っていた。

 

スピッツのことが大切で大好きなのだと思った。それはマサムネだけでなく、他のメンバーも同じだと思う。

 

33年間メンバーチェンジもなく続けている。サポートメンバーのクージーだってスピッツに参加してから22年目だ。きっとスピッツがみんな大好きだからかわらず続けているのだ。

 

ロックかどうかよりも、スピッツとして最高の演奏をすることが重要なのかもしれない。だから今でも妥協せずに新しいことに挑戦し、バンドを心の底から楽しんでいるのかもしれない。

 

それを観て聴いて、ファンである自分はスピッツの音楽に感動する。

 

自分はスピッツのライブが大好きだ。

 

その理由はメンバー自身がスピッツのことが大好きだという想いが演奏に現れていて、それをファンとして生で受け取った時に、音源を聴いた時以上に感動するからだ。

 

そしてライブを観る都度、スピッツの新しい魅力を”見っけ”ることができるからだ。

 

SPITZ JAMBOREE TOUR 2019-2020 “MIKKE”』@2020.1.19 大阪城ホール

■セットリスト 

1.見っけ

2.はぐれ狼

3.エスカルゴ

4.けもの道

5.小さな生き物

6.遥か

7.快速

8.放浪カモメはどこまでも

9.点と点

10.ラジオデイズ

11.優しいあの子

12.ヒビスクス

13.プール

14.まがった僕のしっぽ

15.青い車

16.YM71D

17.ロビンソン

18.ありがとさん

19.楓

20.渚

21.8823

22.俺のすべて

23.春の歌

EN1.醒めない

EN2.桃

EN3.ヤマブキ

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  • アーティスト:スピッツ
  • 出版社/メーカー: Universal Music =music=
  • 発売日: 2019/10/09
  • メディア: CD