2024-05-20 【ライブレポ・セットリスト】ZAZEN BOYS TOUR MATSURI SESSION 2024 at 水戸ライトハウス 2024年4月12日(土) ZAZEN BOYS ライブのレポート 「これほどまで客が詰め込まれるのか?」と思うほどに、水戸ライトハウスのフロアには観客が詰め込まれていた。自分が今まで観たZAZEN BOYSのライブで、最もフロアの人口密度が高かった。チケットはソールドアウトしていたとしても、ここまでの密度になることは珍しい。 おそらく最新アルバム『らんど』がバンド史上最高傑作に思うほどの名盤だったからだろう。それで今のZAZEN BOYSを生で観たい人が多く、需要に応えるためにキャパの限界ギリギリまでチケットを販売したのだと思う。 自分も最新アルバムに感動し興奮し、絶対にライブを観たいと思った。だが冷凍都市東京でのライブは都合がつかなく行けなかったので、水戸CITYまでやってきたのだ。自分と同じようなファンが複数いたからこその人口密度かもしれない。それだけ人が集まっているのだから熱気も凄まじい。腕をあげることも難しいほどにギュウギュウ詰めなフロアだったが、観客は大歓声でメンバーを迎え入れていた。 「マツリスタジオから茨城県水戸CITYに久方ぶりにやって参りました、ZAZEN BOYS!」と向井秀徳が挨拶してから演奏された最初の曲は『DANBIRA』。アルバムでも1曲目に収録されている楽曲だ。身体に響くほどのベースとドラムが印象的で、ギターのカッティングが心地よい。観客の興奮を最初から爆発させることはせず、焦らすようにじわじわとライブの空気を作っていく。 そして向井の癖の強い「1!2!3!4!」というカウントからインストバージョンの『Fender Terecaster』が演奏され、そこからメドレーのように『HIMITSU GIRL'S TOP SECRET』を続く。この流れで1曲目で焦らされた観客のボルテージは一気に最高潮に。 耳を劈くような音圧も凄まじいのだが、それ以上に演奏技術の高さで圧倒させている。観客は興奮しつつも集中しているし、キメ部分でも過剰に騒ぐこともなく音楽をしっかり聴いている。ZAZEN BOYSのファンは騒がしい音楽は好きでも、騒ぎたいわけではなく音楽を聴きたいのだろう。 とはいえキラーチューンが連覇されれば自然とテンションが上がって騒いでしまう。曲間なしで『RIFF MAN』へとなだれ込むと、大歓声が巻き起こる。激しく身体を揺らす観客もたくさんいるし、演奏もさらに熱を帯びていく。 演奏を終えて向井がアサヒスーパードライを飲むと、曲が演奏された時と同じぐらいの大歓声が巻き起こった。アサヒスーパードライを飲む向井に萌える変態がたくさんいるようだ。 久方ぶりに水戸CITYのみなさんとお会いできて嬉しいです。 早くも後半のブロックに入ってきました。そういった意味合いのある『バラクーダ』を聴いてください。 4曲しかやっていないのに「後半のブロック」と言い出す向井。ちなみにこの日のライブは24曲演奏された。だが観客は変態の集まりである。なぜか向井の言葉に歓声をあげていた。 どういった意味合いがあるのかはわからなかったが、続けて演奏された『バラクーダ』も当然ながら素晴らしかった。演奏だけでなくパフォーマンスも最高だ。向井はスタンドマイクになり、歌詞に出てくるピンクタイガーやアリゲーターの形をイメージしたであろう謎の動きをして、サビでは新しい学校のリーダーズ『オトナブルー』の首振りダンスを踊っていた。しかもキレッキレな動きで首振りダンスをする向井がクールだ。彼はダンサーの素質もあるのかもしれない。 ギターリフが印象的な『八方美人』やキャッチーなメロディが耳に残る『 チャイコフスキーでよろしく』など心地よい演奏の楽曲を続ける。首振りダンスのことを忘れるほどに素晴らしい演奏だ。 歌詞を引用して「1983年の思い出の歌」と紹介してから演奏された『ブルーサンダー』や『杉並の少年』も、ミドルテンポで心地よく聴かせる演奏である。最新アルバムを聴いても感じたが、今のZAZEN BOYSは歌やメロディをしっかり聴かせたいモードなのかもしれない。 だが過去の楽曲は激しくエモーショナルに演奏する。「続いてお届けするのはZAZEN BOYSの曲で天狗」と向井が告げてからの『天狗』では、再び激しく勢いある演奏になった。天狗の顔の色をイメージしたかのような赤い照明演出も良い。 そこから癖のある向井のカウントから『This is NORANEKO』へ。こちらもキレッキレで勢いある演奏で、観客は歓声をあげたりと身体を揺らしたりとハイテンションで盛り上がっている。向井はハイテンションな観客を見て嬉しくなってしまったのか「マツリスタジオin水戸CITY!」と言って、笹塚から水戸へとマツリスタジオを移転させる発言をしていた。 ポエトリーリーディング風の歌唱から始まる『SHI・GE・KI』での、ミニマムな演奏からバンドの重厚なサウンドへと変化する段丘ある演奏も良い。向井も観客と同じぐらいにテンションが上がって来たようで「 どどどどどどどどいつもこいつも同じ!だだだだだだどいつも同じ!どどどどど!」とスキャットマン・ジョンのようなアレンジで歌唱していた。 向井「ザゼンボーイズからやって参りました、マツリスタジオ......」 観客「??????」 向井「ザゼンスタジオからやって参りました、マツリボーイズ!」 観客「??????」 向井「マツリスタジオからやって参りました、ザゼンボーイズ!!!」 観客「ふぉおおおお!!!」 間違えたのか冗談なのか、どっちなのか判別が難しい発言をする向井。だが結果的に観客はさらにテンションが爆上がりしていた。 そんな観客のテンションは『COLD BEAT』でさらに爆発する。松下敦のドラムソロやMIYAのベースソロなどの凄まじさを生で聴けば、興奮するのも当然だ。向井も観客と同様に興奮している。興奮しすぎて「 びっびびびっびーー!」と何度も叫んでいた。 このまま曲が終わるかと思いきや『COLD BEAT』の演奏に合わせて『泥沼』の歌詞をうたい始める向井。そして「うーちゃっちゃ♪うーちゃっちゃ♪」と可愛らしく手拍子をすると、その手拍子のリズムに合わせるように演奏が変化し『泥沼』が始まる。メドレーと言うよりも1曲に合成させたかのようなライブアレンジだ。 かと思えば「ど、ろ、ぬ、まああああ!!」と向井が叫ぶことを合図に、再び『 COLD BEAT』へと戻る。そんな演奏にフロアはこの日一番と言えるほどに湧き上がる。こんな凄まじい演奏やアレンジを生で演奏するのだから、ZAZEN BOYSの音楽を生で聴いた者は泥沼にハマるかのように惹き込まれてしまうのだ。 「ボールいっぱいのポテサラが食いてええ!」と向井が叫び『ポテトサラダ』へとなだれ込んだりと、まだまだ熱い演奏は続く。向井は再び曲中に『オトナブルー』を踊っていた。やはり新しい学校のリーダーズのファンなのだろうか。 『はあとぶれいく』でも楽しそうに『オトナブルー』を踊る向井。途中でハンドマイクになダダかと思えば、ほっぺたにてを当てながら歌ったり、目を手で隠しながら歌ったりと、かわいい姿も見せてくれた。 「ザゼンスタジオからやって参りました、マツリボーイズ」と改めて挨拶する向井。マツリボーイズという名前が気に入ったのだろうか。だがマツリボーイズと名乗っているのに 『黄泉の国』では、祭りの楽しさよりもロックのカッコよさを伝える演奏をする。音源での複雑な演奏も見事に再現していた。 とはいえマツリボーイズの名に相応しい楽曲も披露していた。『Honnoji』がそれだ。音源とは違う祭囃子のようなリズムをドラムが叩き、それに合わせて向井が歌う。ギターもベースも最小限しか弾いておらず、音源とは全く違うアレンジだ。 向井は「だんだんだだん♪だんだんだだん♪」と楽しそうに叫び、MIYAが向井の叫びに合わせて手拍子を煽るものの、複雑すぎるリズムだからか観客の手拍子は揃わない。そんなリズムをブレることなく演奏するバンドは、やはり飛んでもない技術を持っているのだと改めて思う。 ここまでZAZEN BOYSの曲しかやっていないにも関わらず「続いてはZAZEN BOYSの曲をやります」と、この日初めてZAZEN BOYSの曲をやったかのような説明をする向井。さらには「 歌詞もZAZEN BOYSです」と説明する。この日に演奏された曲は全てZAZEN BOYSの曲だというのに。 「水戸CITYのウィークエンドに相応しい曲をやります」という言葉から人力でダンスミュージックを演奏しているかのような『Weekend』が披露されると、観客は自然と手拍子を鳴らし身体を揺らす。中盤で向井が「ミラーボール、回転!」と言ってから天井のミラーボールが回った景色は美しかった。 向井が「いしやーきいも♪やーきいもー♪」と歌唱中に言って焼き芋を売り込む姿が印象的な『YAKIIMO』や、ベースの音が要と言えるほど身体に響く演奏だった『 破裂音の朝』を続け様々な方向性で観客を楽しませ、ライブも後半へ。 メンバー全員で「1、2、3、4!」と声を合わせカウントしてから始まったのは『乱土』。再びの激しい演奏で、観客は湧き上がるように盛り上がっていた。 そこからメドレーのように曲間なしで『 胸焼けうどんの作り方』が続く。向井が「でぃす!かうーーん!てっっっとっっ!びやぁぁああ!」と音源よりもクセの強い節回しで歌うと、この日一番と言える大きさの歓声がフロアから湧き上がった。歌詞もアレンジされていて「ナマズの頭」と「ナマズのアキレス腱」が胸焼けうどんの材料に加えられていた。胸焼けうどんの調理は材料集めからしても困難だ。 胸焼けしそうなほど濃い演奏を終え、ステージを去るメンバー。だが水戸CITYには変態が集まっているようだ。観客は胸焼けしてもなおアンコールを求め拍手をしている。 それに応えて再び登場したZAZEN BOYS。今度は「マツリスタジオからやって参りました、ZAZEN BOYS」と正しく挨拶する向井。アンコールの1曲目は『永遠少女』。丁寧に語るような歌唱で、演奏も歌の魅力をしっかり伝えるように支えるような音を鳴らしていた。最新アルバムはメロディアスな楽曲が多いが、この曲は特にそんなアルバムを象徴するような美しいメロディだ。 「水戸CITYの貴様に伝えたい」と言ってから向井の弾き語りから始まったのは『KIMOCHI』。これが最後の曲だ。観客は自然と手拍子を鳴らしたりと、ハッピーな空間が出来上がっている。ZAZEN BOYSのライブでこのような空気になることは、以前ならばなかったと思う。 演奏が終わったかと思いきや、向井がアカペラで「ケーアイ♪エムオー♪シーエッチ♪アイ♪」と『KIMOCHI』の綴りを歌い始めた。観客は自然と手拍子を鳴らしながら、一緒に 「ケーアイ♪エムオー♪シーエッチ♪アイ♪」と歌う。まるで『 We Are The World』が歌われているかのような、多幸感に満ちた大合唱によって感動的な空気が創られていく。ZAZEN BOYSのライブなのに。 観客の大合唱が響く中、静かにステージを後にするメンバー。向井も満足気な表情をしながらステージから去っていった。だが合唱を終わらせずに去ってしまったので、観客は歌い終わるタイミングを逃してしまった。「どうすればいいの?」と不穏な空気が流れつつも、ステージに誰もいないのに合唱を続ける観客。感動的な空気はシュールでカオスな空気へと変化してしまった。 混乱しつつも歌い続ける観客に助け舟を出すかのように、客席の電気が点灯しライブの終了くを告げた。最高のライブを観たはずなのに「ようやく終わった」という安堵感にも似た笑い声と歓声があがる客席。 だがバンドと観客は謎の大合唱をしたことによって、意味のわからん言葉で意思の疎通は計れたと思う。 ■ZAZEN BOYS TOUR MATSURI SESSION 2024 at 水戸ライトハウス 2024年4月12日(土) セットリスト 1.DANBIRA 2.Fender Terecaster 3.HIMITSU GIRL'S TOP SECRET 4.RIFF MAN 5.バラクーダ 6.八方美人 7.チャイコフスキーでよろしく 8.ブルーサンダー 9.杉並の少年 10.天狗 11.This is NORANEKO 12.SI・GE・KI 13.COLD BEAT〜泥沼〜COLD BEAT 14.ポテトサラダ 15.はあとぶれいく 16.黄泉の国 17.Honnoji 18.Weekend 19.YAKIIMO 20.破裂音の朝 21.乱土 22.胸焼けうどんの作り方 アンコール 23.永遠少女 24.KIMOCHI