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【ライブレポ・セットリスト】東京初期衝動 『東京初期衝動の新春・あさか修行ツアー』 @渋谷 WWW X 2021.3.7

東京初期衝動の新春・あさか修行ツアー 

 

「飛沫が飛ぶので大声を出したり声援を送らないで下さい。メンバーが歌うように要求してくるかもしれませんが従わないで下さい」

 

東京初期衝動のワンマンライブの開演前。プロモーターで今回のライブの主催会社であるATフィールドの青木社長がステージに出てきて、ライブの注意事項を来場者に伝えていた。上記はその時の言葉である。

 

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コロナ禍でのライブ。緊急事態宣言も発令されている。ステージ上から歌うように煽ることは許されない情勢。だからこんなアナウンスは前代未聞だ。

 

おそらく冗談半分でユーモアを交えて話していたのだと思う。東京初期衝動がルールやマナーを破る非常識なバンドと言いたいわけでもないはずだ。

 

しかし東京初期衝動は何が起こっても不思議ではないライブをやる。予測が不可能なぐらいの勢いと熱量がある。ある意味では前代未聞なパフォーマンスをする。

 

常に感情を爆発させるようなパフォーマンスをして、常にファンの感情を爆発させるようなライブをやるのだ。何回も初期衝動を感じるライブをやるのだ。

 

だから開演前のアナウンスは「めちゃくちゃ凄い熱量で感情を揺さぶってくると思うけれど、なんとかファンは理性を保ってくれ」という”お願い”に近いのだ。

 

 前半

 

ライブが始まっるとすぐに衝動に溢れた演奏で、一瞬でフロアの熱気を最高潮にする。

 

1曲目は『再生ボタン』。

 

再生ボタン

再生ボタン

  • 東京初期衝動
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

4人の生演奏によって音楽が再生される。爆音でうるさくて最高な音楽。その勢いを保ったまま『BABY DON'T CRY』へと繋げていく。

 

〈黒髪少女のエピフォンのギターは今も響いてる〉というフレーズが〈ギブソンのギター〉に変更されていた。少しだけハイブランドのギターになった。

 

BABY DON'T CRY

BABY DON'T CRY

  • 東京初期衝動
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

そして『ウチのカレピに手を出すな』へと続け、さらに衝動的な演奏をフロアに叩きつける。

 

ファンも一緒に歌いたくなるであろう楽曲たち。ファンも一緒に歌いたくなるような演奏。だけど全員がギリギリで理性を保って腕をあげて盛り上がっている。

 

ロックとは自分勝手に騒いでやりたい放題やることではない。「自分の居場所を自分で守る」ことだ。ライブハウスという居場所を守るためにファンも必死なのだ。

 

ボーカルのしーなちゃんがギターを置いてハンドマイクになる。そして『高円寺ブス集合』をステージを動き回って歌う。

 

高円寺ブス集合

高円寺ブス集合

  • 東京初期衝動
  • J-Pop
  • ¥255
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前半の3曲でフロアの熱気は最高潮になったと思っていた。それは間違いだった。この曲でさらに激しくフロアが盛り上がった。

 

もちろん床に貼られたテープからは動かずに、自分のテリトリーを守って楽しんではいる。今までは合唱が発生していた部分も誰も歌わない。ルールもマナーも全員がしっかりと守る。それでも熱気が伝わるぐらいに盛り上がっていた。それでも熱気が生まれるような演奏をバンドがしていた。

 

そして『黒ギャルのケツは煮卵に似てる』ではフロアからクラップが巻き起こる。しーなちゃんも「アゲアゲアゲアゲ!」と言ってフロアを煽る。バンドとファンとの間で一体感がどんどん高まっていく。

 

しかし東京初期衝動はこれだけ勢いがある演奏なのに、勢いだけで押し切るわけではない。それが魅力の一つである。

 

続く『愛のむきだし』は各自の繊細な演奏の重なり方が印象的な楽曲。これまでとは違う演奏の凄みで聴かせる。

 

そして切ないロックバラード『中央線』と甘酸っぱいメロディが胸に沁みる『STAND BY ME』と続ける。

 

STAND BY ME

STAND BY ME

  • 東京初期衝動
  • J-Pop
  • ¥255
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東京初期衝動はパンクバンドだと思う。いつ聴いても初期衝動を感じるし、物凄い熱量で圧倒してくる。しかし彼女たちの軸は「良い曲と良い歌」だと思う。どれだけ激しくてもメロディは美しいし、歌声は優しい。

 

そんな魅力がこの2曲からは特に感じる。東京初期衝動の音楽は胸を熱くさせてくれるだけでなく、優しく包み込んでもくれる。

 

 

後半

 

聴き慣れない曲が流れてくる。新曲だ。彼女たちの強みを活かしたような疾走感あるロックナンバー。叫ぶように歌う姿も印象的だ。

 

その疾走感を止めないように、ほぼ曲間なしで『流星』の演奏へと繋げる。こちらも疾走感ある演奏と切ないメロディが印象的な楽曲。

 

流星

流星

  • 東京初期衝動
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しかしその次の楽曲は怪しげなサウンドでダウナーな雰囲気の楽曲。これも新曲だ。今までの東京初期衝動にはなかったタイプだ。

 

新ベーシストのあさかが加入したことも影響しているのだろうか。バンドは音楽性の幅が広がっているし、演奏もレベルアップしている。

 

そういえば会場のあちらこちらに新曲の歌詞が貼られていた。これは新曲を演奏することへの伏線だったようだ。

 

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 そんなバンドの進化と楽曲の余韻に酔いしれていると、その余韻をぶち壊すように、パンクナンバーの『兆楽』が始まる。演奏も歌詞もパンク。過激で激しくて最高。

 

このバンドは進化したとしても、やはり初期衝動を忘れないバンドなのだ。そんな演奏なのだ。

 

本編ラストに演奏されたのは『ロックン・ロール』。

 

ロックン・ロール

ロックン・ロール

  • 東京初期衝動
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 激しさと勢いと切なさが同居するような楽曲。東京初期衝動というバンドの生き様を表現しているような楽曲。

 

『ロックン・ロール』を演奏している時の東京初期衝動は、特に魂を込めて音を奏でているように感じる。だからか身動きが取れなくなるほどに、その爆音に圧倒させられる。

 

ライブのラストに演奏されることが多い楽曲。だから物凄い熱量で胸を熱くさせてくれるのに、聴いていてほんのり寂しくなる。

 

すぐにアンコールを求める手拍子が巻き起こるが、出てきたのはメンバーではなく、ライブ主催の青木P。

 

そして「アンコールやりますけどお知らせがあります」と言って話し始めた。アンコールというサプライズを出来レースにしてしまう一言に、客席が少しだけザワつく。

 

しかしそのザワつきは喜びの拍手に変わる。全国ツアーと新EPの発表がされたのだ。ファンがロックバンドに最も求めているものは、新曲とライブをなのだ。

 

ステージに再登場したメンバーは挨拶もせずに『Because あいらぶゆー』を演奏。挨拶ではなく音楽でファンへの感謝と愛を表現しているように感じる。

 

Becauseあいらぶゆー

Becauseあいらぶゆー

  • 東京初期衝動
  • J-Pop
  • ¥255
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そしてバンドのタイトル曲『東京初期衝動』をエモーショナルに歌い演奏する。 衝動的で激しい鬼気迫るパフォーマンスではある。しかしその中にも、少しだけ穏やかな空気が流れているように感じた。

 

メンバーがめちゃくちゃ楽しそうに演奏しているのだ。時折メンバー同士で目を合わせて笑ったり、フロアに向けて笑顔を見せたり。この曲だけでなく他の演奏曲の時もそうだった。この日の東京初期衝動は、いつも以上に楽しそうに演奏していた。

 

新メンバーのベーシストあさかは特にたしそうだった。笑顔を見せるというよりも、思わず笑みが溢れてしまっているような感じ。心の底から音楽を奏でることや、バンドで演奏することを楽しんでいるようだ。

 

東京初期衝動の演奏には「ロックバンドとしての初期衝動」だけでなく「バンドで音を鳴らす楽しさへの初期衝動」も感じるのだ。だから胸が熱くなるし、心があたたかくなる。

 

最後に演奏されたのは新曲の『さまらぶ♡』。今までの東京初期衝動で最もポップでキャッチーなメロディの楽しい楽曲。この楽曲はさらに多くの人の心を掴みそうな予感がする。

 

 BAYCAMPでも新メンバーが加入した東京初期衝動のライブは観た。その時よりもさらに進化していて、さらに楽しそうに演奏していた。観る都度に成長を感じるし、観る都度に不思議と初期衝動を感じる。

 

だから東京初期衝動の今後が楽しみになってしまう。ワクワクしてしまう。

 

彼女たちの鳴らすロックンロールは鳴り止まないし、彼女たちから溢れ出る初期衝動はきっと終わらない。

 

東京初期衝動 『東京初期衝動の新春・あさか修行ツアー』 @渋谷 WWW X 2021.3.7

■セットリスト

1.再生ボタン
2.BABY DON'T CRY
3.ウチのカレピに手を出すな
4.高円寺ブス集合
5.黒ギャルのケツは煮卵に似てる
6.愛のむきだし
7.中央線
8.STAND BY ME
9.新曲
10.流星
11.新曲
12.兆楽
13.ロックン・ロール

EN1.Because あいらぶゆー
EN2.東京初期衝動
EN3.さまらぶ♡ (新曲)

 

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