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【レビュー・感想】東京事変『赤の同盟』を聴いてバンドとしての東京事変が帰ってきたと思った

自分が東京事変に感じる個性

 

語弊があるかもしれないが、東京事変というバンドはバラバラなバンドだと思う。

 

メンバー各々の個性が強すぎるのだ。しかも音楽性が全く違う方向性のメンバーが揃っている。各々の個性を個性を尊重してはいるが、誰かのプレイスタイルに合わせて演奏しようとはしない。

 

そのためバンドの演奏が崩れてバも不思議ではないようなギリギリのバランスで演奏が成り立っている。

 

つまり東京事変は「一体感」というよりも「せめぎ合い」と喩えた方がしっくりくる演奏をするのだ。全員が自分の実力や個性を100%出せる演奏でぶつかり合って、最終的に1つの音楽が創られる。個性はバラバラでも「良い音楽を創る」「良い演奏をする」という最終的な目標だけは同じ。その目標に向けて各自が自由に演奏している。

 

だから椎名林檎のソロ楽曲とも他のメンバーの別活動とも違う音楽になっていて、東京事変にしかない魅力があるのだ。

 

その魅力はずっと変わらない。8年ぶりに活動を再開してからも変わっていない。むしろその個性は強まっているように感じる。

 

再結成してから変わった部分

 

──かつて椎名さんは事変の結成から解散までの機能性を、教育(学習)機関~職業訓練校~研究室・実験室~生産工場と形容してきました。最後に、今回、再生を果たした事変の現在をどう捉えていますか?

 

それはもう職人集団、プロ集団です。1つの完成形を迎えたのではないでしょうか。

(引用:東京事変「ニュース」インタビュー)

 

東京事変が再始動後にリリースしたEP『ニュース』のインタビューで、椎名林檎はこのように語っていた。「1つの完成形を迎えた」という言葉はリスナーとしても納得である。

 

ニュース(初回生産限定仕様)

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  • アーティスト:東京事変
  • 発売日: 2020/04/08
  • メディア: CD
 

 

東京事変が活動を止めていた8年間の間、メンバーは様々な活動をしていた。

 

椎名林檎はソロ活動を再び活発に行い名曲をたくさん作っている。最近は他アーティストとのコラボレーションを増やし、東京事変結成前のソロとは違う新しい魅力で溢れた楽曲が多い。

 

亀田誠治は相変わらず様々なアーティストのプロデュースをしている。伊澤 一葉はThe HIATUSの正式メンバーとして活動したり、aikoや大橋トリオのレコーディングやライブに参加したりとサポートミュージシャンとしての活動も活発になった。

 

浮雲が自身が中心メンバーであるペトロールズの活動が以前に増して活発になり人気も上昇した。星野源のバックバンドのギタリストとしても活動している。刄田綴色はRADWIMPSのサポートドラマーとしたりとサポート活動も盛んだ。

 

ただでさえ凄いメンバーが、さらに経験を積んで進化して再集結した。それは1つの完成系という評価は正しいと思う。

 

しかし『ニュース』は「バンド」というよりも「クリエイター集団」として一流の作品を創ったような感じがした。メンバー各自が8年間で進化して部分を尊重しつつ作ったことで、音楽職人が作った完成度の高いEPという雰囲気なのだ。

 

それも素晴らしい作品に思うし、今までにないタイプの楽曲もあって新鮮ではある。しかし「バンド」としての勢いや衝動を感じる楽曲を今の東京事変でも聴きたいとも思った。

 

だから新曲『赤の同盟』を聴いてテンションが上がった。この曲から「バンド」としての東京事変の衝動や凄みを感じたからだ。

 

なぜ「バンド」ぽさを感じたのか?

 

 

始まった瞬間から「バンド」っぽさを感じた。

 

椎名林檎と伊澤一葉のピアノから始まる楽曲。ゆっくりと息を合わせて曲を始める空気感が生々しい。ジャズのようなアドリブ感のあるリズムの取り方。それも生々しさの理由かもしれない。

 

そしてドラムの刄田綴色の叩くシンバルの音を合図に全員での演奏が始まる。5人の合わさった音を聴いて「バンドの東京事変が帰ってきた」という気持ちになった。

 

再始動後に発表された『選ばれざる国民』や『永遠の不在証明』を聴いたときも「東京事変が帰ってきた」とは感じた。しかしそれは5人がもう一度一緒に音を鳴らしているという感動と、再始動してすぐに新しい東京事変の姿を観せてくれたという驚きによるものである。

 

『赤の同盟』はバンドとしての衝動的な勢いを感じた。それに感動した。難しいことなんて考えずに、頭を空っぽにしても「カッコイイ」と素直に思って痺れてしまうアンサンブル。

 

椎名林檎の歌声は相も変わらずに艶があってクールで素晴らしい。伊澤一葉のお洒落で落ち着いたピアノの心地よさと、それに真逆の音をぶつけるようにロックなドラムを叩く刄田綴色も良い。真逆なのにぶつかり合うと化学反応が発生するのか、めちゃくちゃカッコいいのだ。

 

亀田誠治のベースも最高。メロディを奏でるように動き回るベースライン。めちゃくちゃ個性が強いのに主張が強いわけではない。ベーシストとしてバンドをの屋台骨を支えるような演奏。そして浮雲の変態的なギタープレイ(褒めている)も素晴らしい。どうすればこんなフレーズを思い浮かぶのかと感心してしまう。

 

全員が自分の個性を全力で120%発揮しているのだ。

 

各メンバーが他の活動をしているとき以上に個性たっぷりな演奏。それがぶつかり合って新しい音楽が生まれる。曲が進むにつれバンドの演奏はどんどん盛り上がっていく。その瞬間がたまらなくカッコいい。

 

こんなに個性派揃いなのに一体感を感じる瞬間があることも魅力的だ。『赤の同盟』でいうならば2分49秒あたりで無音になる瞬間である。

 

激しく演奏していたバンドの音が無音になる。静と騒の対比により、無音の状態でもバンドの空気感が伝わってくる。そしてピアノの音が流れ、またバンドの演奏が始まる。バラバラな個性の5人が一つにまとまった瞬間。それが痺れるぐらいにカッコいい。

 

これが自分が東京事変に最も求めていることだ。

 

個性がぶつかり合うのに一つにまとまてバンドサウンドになっている。椎名林檎のソロとも違う。他のメンバーの別活動とも違う。東京事変だからこそ聴くことができる演奏。それが最高なのだ。

 

これを東京事変が活動を止めていた8年間ずっと求めていた。それをようやく聴くことができた。

 

音楽は不要不急と言われがちなここ最近ではある。しかし音楽は必要だし、東京事変は必要火急です。早う捕まえさせて。

 

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